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2010.12.03

今こそ、「マーケティングとは?」を深く考えてみよう

 日本は90年代初頭のバブル崩壊以来の、長きに渡る不況から抜け出すことができぬまま、世界的な経済危機にも巻き込まれた。1993年からの「失われた10年」という言葉は、いつしか「失われた20年」と数を増している。このまま2012年に「20年」が終わる日が来ても、人口減少は既に顕著であり、2015年から始まると予測されている世帯数減少も目前に迫っている。日本は市場縮小国なのだ。GDPが中国に抜かれただけでなく、産業の各分野で国際的な優位性が失われている。そんな今日だからこそ、「マーケティング」の意味を考え直してみたい。

  電通グループのマーケティング戦略企画会社である「電通イーマーケティングワン」が11月24日に配信した、同社独自の「CRM意識調査」に関するニュースリリースはある意味、衝撃的だ。
 『マーケッターの危機感が浮き彫りに~「自社のマーケティング活動は後れている」56% CRMの領域拡大 現在の顧客だけでなく、新規見込み顧客も含めた顧客リレーション構築へ』
 http://www.dem1g.jp/topics/topics_101124.html
 
 ショックなことは2つある。1つは回答企業の過半が自社のマーケティングに対して遅れを自覚していることだ。しかし、それは2つめのショックなことに比べれば些末なことだ。遅れは取り戻せばいいのだから。問題は、企業のマーケターがその<具体的な項目として「見込み顧客の育成・創出」(約61%)、「新規見込み顧客獲得戦略・施策検討」(約59%)など、“新規見込み顧客を対象にしたマーケティング活動”を特に成功していない活動と考えている>(同社リリース)と回答していることだ。
 同調査はCRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)、つまり、顧客といかに良好な関係を構築・維持・向上させ、永続的な収益を上げていくかという考え方に関した調査である。CRMは、市場の拡大期における新規顧客獲得(acquisition)に偏ったマーケティングへの反省を込めて、顧客の継続促進(retention)の比重を高めて関係性を構築・強化しようという考え方である。それにも関わらず、「新規獲得」が大きなテーマになっているのである。そこからは、マーケターの焦燥感がにじみ出して見える。「モノが売れない時代」であり、不景気の中で、いかに企業として生き残りを図っていくかが試される中、調査結果はタイトル通り「マーケッターの危機感が浮き彫り」になっているのだ。

 そもそも、マーケティングとは何か。
 ピーター・ドラッカーの「販売(selling)の必要性をなくすこと」という定義が最も端的な定義である。ドラッガーの言う「販売」とは、とにかく闇雲に売り込んだり、無理な安売りをしたり、無駄な広告を大量に投下したりという状態を表わしている。そんなことをするよりも、まずは顧客を知り、顧客の望むものを提供できるようにすれば、おのずとモノは売れていくのだという論である。もう少し長い言葉でも、わかりやすく明言している。
 「マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、おのずから売れるようにすることである。(The aim of marketing is to know and understand the customer so well that the product or service fits her and sells itself. Ideally, marketing should result in a customer who is ready to buy.)」

 ドラッカーの言葉と同じ意味合いで、「ものづくり」の企業に向けて具体的に、これからの課題を提示した記事が12月2日付日経新聞夕刊に掲載された。5面コラム「十字路」:東レ経営研究所チーフエコノミスト・増田貴司氏による執筆だ。<最近、製造業企業が保守・リースやソリューション提案といったサービス事業に進出する動きが活発化している>という書き出しである。具体的には、新興国などの追い上げで、日本のお家芸たるハイテク製品までが短期間でコモデティー化し、価格競争に突入する中、<先進国の製造業が収益を高めるためには「モノの価値」ではなく、「モノを通じて実現するサービスの価値」で勝負することが重要になってきた>とするものだ。そこで<きめ細やかで親切、丁寧な、日本流の「おもてなし」のサービスが海外ビジネスで強力な武器になりうる>と論じる。

 前段の「モノを通じて実現するサービスの価値」とは、フィリップ・コトラーが、マーケティングとは「価値の交換活動」であるとして論じた言葉そのものだ。コトラーのマーケティングの定義は以下の通りである。
 「マーケティングとは、製品と価値を生み出して他者と交換することによって、個人や団体が必要なものや欲しいものを手に入れるために利用する社会上・経営上のプロセスである」。
 顧客はモノに対価を払っているのではない。その背後にある「価値」に対して対価を払うのである。つまり、「モノを通じて実現するサービスの価値」だ。

 では、顧客が求める「価値」とは何か。そして、それをどのように把握して、実現するのか。それには、マーケティングの最重要テーマである「ニーズの把握・深掘り」について理解しなければならない。
 セオドア・レビットは、「昨年度、4分の1インチのドリルが100万個売れた。これは、人が4分の1インチのドリルを欲したからでなくて、4分の1インチの穴を欲したからである」と自著に記している。一般にはもっとわかりやすく、「顧客はドリルが欲しいのではない。穴が空けたいのだ。」という意義に置き換えて説明される。つまり、顧客は「モノ」ではなく、それによって実現された「理想的な状態」を手に入れたいのである。つまり、「モノを通じて実現するサービスの価値」だ。

 繰り返し、「モノを通じて実現するサービスの価値」というコラムの言葉を引用した。ここで重要となるのが、その言葉の「主語」が誰かということだ。
 ダイレクトマーケティングの父、レスター・ワンダーマンは「19の法則」の第1番目に「主人公は商品ではなく、顧客である。(The Consumer, not the Product must be the hero.)」と述べた。

 電通イーマーケティングワンの調査では、日本の「危機感に苛まれるマーケター」の姿が浮き彫りにされ、「モノが売れない時代」に、新規顧客を獲得せんと焦る気持ちが読み取れる結果が出た。しかし、既存顧客を相手にするにしろ、新規顧客を獲得するにしろ、「顧客は誰か」「顧客のニーズは何か」が明確になっていなければ、話は始まらない。
 
 「マーケティングとは?」・・・そんな素朴な質問に端的に応えようとすると、意外と難しいことに気づく。しかし、こんな時代だからこそ、その意味を常に意識していることが欠かせないのである。厳しい時代だからこそ、それを忘れずにいたい。


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Comments

マーケティングについて調べていた所、
こちらのブログにたどり着きました。

とても参考になる記事にたどり着けて嬉しいです。
ありがとうございました。

Posted by: ブルーオーシャン | 2010.12.07 at 07:42 PM

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