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2010.12.21

コンビニの売り場に学ぶ「顧客は誰か」?

 コンビニエンスストアの棚。日々、消費者は何気なくそこを眺め、商品を手に取っている。しかし、その裏側では壮絶な戦いが繰り広げられているのである。

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 ある日、コンビニのガム・タブレット類の棚に大きなPOPを掲げたコーナーが設置された。アサヒフードアンドヘルスケアの「ミンティア」が通常より多数のフェイスをおさえ、最上段の好位置を獲得している。そしてPOPには「デキる男の必須アイテム! ミンティアと1本満足バーを一緒に買うと 今なら30円引き」と書いてある。自社製品で「クロスマーチャンダイジング」を仕掛けているのだ。カテゴリをまたいで関連商品を一つのコーナーにまとめ、相乗効果で売り上げ増を図る手法である。

 「メーカーが自社製品のミンティアと一本満足バーを売りたいんだな」と思ったなら、それは半分あたりで、半分ハズレだ。メインで売りたいのは「ミンティア」の方。写真の棚の下をみて欲しい。並んでいるのは「フリスク」。通常はフリスクの方が好位置を獲得しているが、キャンペーン期間は下の棚に置かれている。価格に注目だ。ミンティアは100円。フリスクは194円と書いてあるのが見えるだろう。約倍の価格だ。

 では、質問。ミンティアとフリスク、どちらの方が売れているだろうか。
 答えは、「フリスク」。倍も高いのに売れているのだ。
 では、なぜ?
 
 その答えは、以下のリンク先の記事に詳しい。執筆しているのは船井総研の笠井清志氏。コンビニ一筋のコンサルタントだ。
 「フリスクがミンティアのシェアを奪っている」(Business Media誠・11月16日)
 http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1011/16/news002.html

 記事の中で重要なのは<売り手(コンビニ)としては、より売り上げが増やせる商品を重視した販売戦略をとりたいため、ミンティアよりもフリスクの拡販を重視した棚割りを意識します>という点だ。消費者はコンビニに対してあまり安さを求めない。また、コンビニは狭小な店舗でいかに効率よく売上げ坪単価を挙げるかに腐心する。結果として売れるなら、単価の高い商品の方がうれしいのだ。その店側の意図が棚割に表れ、売れ行きの差という結果に結びつくのだ。
 ミンティアと一本満足バーのクロスマーチャンダイジングのワケはもうわかっただろう。ミンティア100円+一本満足バー124円-30円値引き=194円。フリスクの店頭価格194円と同じ金額になる。30円の値引き原資はメーカー負担ではないだろうか。この施策は、コンビニに働きかけたメーカーからのミンティアのテコ入れなのである。

 笠原氏の記事で同様に意義深いものをもう一つ紹介しよう。
 「チルドカップコーヒーの定番、マウントレーニアが強いワケ」(Business Media誠・12月8日)
 http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1012/08/news008.html

 プラや紙のカップ、アルミ箔の蓋、側面にストローが貼付けてある「チルドカップ」の飲料。コンビニの店頭では、紙パック飲料の近辺にプリンやゼリーと共に棚が形成されている。
上記記事では、カテゴリートップの「マウントレーニア」(森永乳業)と、チャレンジャー「スターバックス」(サントリー食品)の戦いとなっているが、2ページ目のグラフでは「ドトールコーヒー」(オハヨー乳業)の伸びに目がいってしまうので注意が必要だ。重要な論旨はグラフではなく、「マウントレーニアはなぜ強いのか」というポイントだ。記事の解説によれば、<通常のチルドカップコーヒーだと約1週間程度のところ、マウントレーニアは約1カ月間もある。これはアセプティックカップという長期保存に向いた容器を使っていることに加えて、無菌充填を行っていることによるものである>という点だ。
 長期保存できると誰がうれしいのか。コンビニでチルドの飲料を買って帰って、自宅の冷蔵庫で長期保存する人はほとんどいない。すぐ飲んでしまう。うれしいのは、コンビニ。店側だ。ナゼなら、期限内に売れずに廃棄することになるリスクが低減できるからだ。

Ito_guy


 伊藤園の新製品、「輝くオトコのGOLDEN GUYサイダー」。「ジンジャー×ウコン」で、さらにアミノ酸のオリルニチン、アラニン、アルギニンまで入ったてんこ盛りの飲料だ。何よりその商品名とギラギラしたパッケージが目を惹く。
 ちょっと手を出すのをためらってしまいそうな飲料だが、「新発売」のPOPが付いて、しっかり棚のフェイスを複数確保している。コンビニが「売ろう」という意図の表れだ。
 この飲料に限らず、コンビニは新発売の飲料には力を入れる。ナゼか。
 第1回目の配荷分は、マージン率が高いのだ。メーカーが「売って欲しい」から。である。そのため、棚のフェイスを複数確保することができるのだ。

 上記、一連のコンビニエンスストア関連のエピソードのポイントは、「メーカーにとっては、販売チャネルも“顧客”である」ということだ。メーカーの人間なら当たり前なことだが、そうでないと、つい最終消費者(エンドユーザー)のことだけを考えてしまう。
 もう一つのポイントは、「DMU」という考え方だ。DMU(Decision Making Unit)とは直訳すると「購買決定単位」となるが、「購買決定関与者」と考えればいい。商品の購買に誰がどのような関心事を持って関わってくるのかということだ。

 コンビニエンスストアの場合、メーカーの直接の営業先は、コンビニチェーンで、そこのマーチャンダイザーと商談をする。個々の店舗に営業に来るのはタバコメーカーだけだ。チェーン本部のマーチャンダイザーの関心事は、もちろん個々の店舗で商品が売れることだが、そのためには「店舗のオーナーが売りたくなる商品を仕入れること」に腐心する。
 一方、店舗のオーナーは自店の売上げ最大化が関心事で、そのためにチェーン本部への発注端末とにらめっこをして、何をどれくらい発注しようか考えるのだ。本部とオーナーの関心事をおさえて、どちらも納得・満足させることをメーカーの営業は考えなければならないのである。

 今回はコンビニエンスストアを例に記したが、「誰が顧客なのか」と「DMU」というポイントに関しては、全てのビジネスで考慮すべきことである。それぞれの場合で考えてみて欲しい。


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