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2010.12.17

コンビニ・数量限定:スターバックス「ヴィア&マグ」の狙いは何だ?

 コンビニエンスストアの店頭で数量限定商品、スターバックス「ヴィア&マグ」が売り出されている。ヴィア イタリアンロースト 3本+コロンビア 2本+マグカップのセットで、お値段798円。am/pm、ローソンで発見。その他のコンビニエンスストアチェーンでも販売されているかもしれない。

 スターバックス「ヴィア(VIA)」は、スティックタイプのコーヒーだ。2009年3月。シアトル、シカゴ、ロンドンで試験販売が行われたという報道に対して、日本では「スターバックスがインスタントコーヒー?」と、多くのスタバファンから疑問符が投げかけられた。ハワード・シュルツCEOが「ドリップコーヒーをこっそりヴィアに変えて妻に出したがバレなかった」というという話が伝わると、「そんなバカな!?」と、半信半疑の声が沸き上がった。同年10月には米国、カナダの店舗とコストコなどの量販店で本格的な販売開始。日本では2010年3月に発売予定発表。翌4月14日に発売の時がやってきた。
 発売から4月18日までの5日間、通常店舗で提供しているドリップコーヒーとヴィアを飲み比べる「テイストチャレンジ」も行われたが、その反響は、意外にも静かなものだったといえるだろう。チャレンジキャンペーンも、店頭に並ぶヴィアもスルーする者も少なくなかった。

 ・・・正直に告白します。スミマセン。ウソというか、適切でない表現を書きました。

 「スルーする者」と第三者のことのように書いたが、誰あろう、筆者自身のことだ。スタバのコーヒーを愛するが故に、「所詮はインスタントの味だろう」とヴィアに裏切られることを恐れて試していなかったのだ。

 先月の後半頃だろうか。クリスマスブレンドが発売されたのと同時期に、スタッフがミニカップに入ったクリスマスブレンド・ヴィア版を店内で配る試飲キャンペーンを行っていた。差し出されたカップを拒否するほどまでにヴィアを否定していたわけではないので、受け取って一口飲んでみた。
 「うまい!」
 きっと目の前にハワード・シュルツCEOがいたら、ニヤニヤしながら「妻のことを味音痴みたいに言ったお前、謝れ!」と言うに違いない。そんな味わいだった。・・・今さらながらだが。うん。謝ります。ゴメンナサイ。I’m very sorry.

 コンビニに話を戻そう。
 コンビニだけでなく、スーパーやドラッグストアでの販売は今年9月3日から開始されている。ヴィアだけでなく「ORIGAMI」という日本オリジナルの、器具が要らないシンプルな1杯用のドリップタイプコーヒーと同時販売となった。味の素ゼネラルフーヅ(AGF)との販売提携商品で、棚に店頭ディスプレイを設置して注目度を高める力を入れた展開をした。それまでコンビニでのスタバブランドといえば、マウントレーニアやドトールコーヒーブランドの商品と競って並べられていた、チルドカップ商品だ。しかし、チルド商品はスタバの店舗では売っていない。サントリー食品が製造しているコンビニ専用品だ。それに対してヴィアは店舗と同じ商品がコンビニで販売されている。それはそもそも、異例の展開だといえる。
 さらに、「ロゴ入りグッズ」は異例だろう。スタバのブランドロゴの価値保護は徹底している。そのことからすれば、ロゴ入りグッズが店外で販売されるということは異例だろう。ホームページを見てみると、ロゴの画像は全てFlashで作られており、勝手にロゴ画像がダウンロードできないようになっているくらいなのだ。グッズも店頭において数量限定で販売されている。店舗以外で売られる例はあまり聞かない。

 コンビニで売られる「ヴィア&マグ」のターゲットは誰だろう。
 ヴィアは1本約100円。決して安くはない。コンビニで売られているuccのスティックコーヒーなら、紙コップ付きで1本約50円。ヴィアより安いスティック型インスタントコーヒーはいくらでもある。しかし、スタバの店舗で売っている最も安いコーヒーは「本日のコーヒー290円」だ。ヴィアの約3倍。ヴィア単体であれば、価格面でスタバを敬遠している層にスタバの味を「お試し」させるという効果があるだろう。
では、わざわざ「ロゴ入りマグカップ」をセットにする意味は何だろうか。
 「スタバファン」と一口にといっても色々だ。常に自宅・職場や外出先でも「スタバのじゃなけりゃ、コーヒーを飲まない!」という高ロイヤルユーザーばかりではない。自宅ではネスカフェを飲む場合もあるし、外出先でスタバが見つからなければ、エクセルシオールカフェやタリーズに入ってしまうこともあるという人も多いだろう。
 そんな人に、ヴィアはスタバ味とスタバブランドとの接触頻度を上げる効果がある。それによってロイヤルティー向上を図るのだ。その時、ロゴ入りカップ試用して飲むように同時販売すれば、さらなるロイヤルティー向上効果が期待できる。店頭での売られているマグカップの価格は800円。「ヴィア&マグ」の798円というセット価格はそれを狙っての、極めてお買い得な設定だといえるだろう。

 消費者の態度変容モデルといえば、「AIDMA(Attention:注目)→Interest:関心→Desire:欲求→Memory:記憶→Action:行動)」が有名だが、「AMTUL」というモデルもある。Awareness(認知)→Memory(記憶)→Trial(試用)→Usage(常用)→Loyal(忠誠)だ。AIDMAは最初のAから最後のAに向けた「初回購入」を表している。それに対して、AMTULはA→M→Tが、認知から試用まで。T→U→Lが試用を経て、日常的に試用するようになって、そのブランドから浮気をしないような状態になるまでの「反復購入」を表している。
 コンビニに登場した「ヴィア&マグ」は、まずはM=ヴィアの試用の獲得までをゴールとして狙う。そして、ロゴ入りマグカップを使って飲みながら、「普通のインスタントと全く違う!」と感動させ、徐々にロイヤルティーを刷り込んでいくのだ。

 通信販売業者などが顧客評価に用いる「RFM分析」という手法もある。
R:Recency=最新購買日:どれくらい最近に購入しているか、F:Frequency=累計購買回数:どのくらいの頻度で購入しているか、M:Monetary=累計購買金額:全部でいくら購入しているかである。RFMはそれらをポイント化して、顧客がどれくらい自社の利益に貢献してくれているかを把握するのである。
 筆者はヴィアを店舗で進められた時には買わなかったのだが、結局はコンビニで購入した。それを事務所で飲むようになってから、某社のエスプレッソマシンは開店休業状態に追い込まれてしまった。ふと気がつくと、コーヒーショップに入ろうと思った時に、多少遠くてもスタバまで足を運ぶことが多くなっている。RFMが向上しているのだ。

 スタバがスティックとマグとセットにしてコンビニで売る。その戦略は「お試し促進」だけでなく、筆者のようにスタバの「ヘビーファン」とまでなっていなかった層の、「AMTUL」をTからLに進め、さらに「RFM」を増大させることにつながっているのだろう。


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Comments

はじめまして。
大学二回生です。
いつも拝見しています。
スターバックスは自分にも身近なものですごくわかりやすかったです。

Posted by: 駒田 | 2010.12.17 at 02:03 PM

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