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16 posts from December 2010

2010.12.31

基礎から解説:マーケティング関連 連載・バックナンバー リンク集

連載バックナンバーのリンク集を最新版に更新しました。

連載はBlogにバラバラな状態で都度収録してきましたが、その中でフレームワークの使用法の参考になるものを中心として、過去原稿でも内容的に古くなっていない連載3つを選んでお届けします。

このページへのリンクを左のナビゲーションに設定しますので、そちらからアクセスをしてください。
(このページをブックマークしていただいても結構です)。

バックナンバーとして収録しているのは、以下の3つです。
「顧客視点のマーケティング」「定番のヒミツ」 「“現場に効く”マーケティングの基本理論」

※下記の連載を読んでから、「書籍でバッチリ学びたい!」という方には下記をオススメします!

■初級~中級:「“いま”をつかむjマーケティング」・・・最新・2010年のマーケティングの事例を勝手分析+企業取材30連発で解説

■初級:「よくわかるこれからのマーケティング」・・・マーケティングの基本理論を102項目の用語別に図と事例で解説

■超初級:「実例でわかる!差別化マーケティング」・・・各種ヒット商品や世の中の動きを「勝手分析」した図解57連発


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「顧客視点のマーケティング」(2010.03~2011.02)

古くて新しい、否、永遠のキーワード「顧客視点」でマーケティングのフレームワークを事例と共に見直す4連載。


第1回:生き残りのキーワードは「顧客視点」"

第2回:マーケティングの全体像で考える

第3回:顧客に魅力を伝えるポジショニングが最大のキモ

第4回:顧客に受入れられる“整合性”を考える


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「定番のヒミツ」(2006.07~2009.06)


世の中には常に売れ続ける「定番」と呼ばれるものがある。なぜ定番は売れ続けることができるのか。
当連載はその謎をマーケティングのセオリーから考察する。
【注:具体的なロングセラーの商品・サービス、ブランドをフレームワークを用いてその秘密を解明しています。】


第1回:「BMW・その ポジショニングの強さ」

第2回「銀座・伊東屋 顧客対応の極意」

第3回「1世紀近くAIDEESを実践してきたL.L.Bean」

第4回「最高峰の誇りをかけた新たなる挑戦 モンブラン」

第5回「“江戸和竿”に“使い手への心遣い”を学ぶ」

第6回「皇室御用達の傘に整合性の美を見る」

第7回「花王『メリット』 売れ続けるとは、変わり続けることでもある」

第8回「シャーボ 顧客最適化戦略の30年」

第9回「ファンと拓く新たな1ページ・カップヌードル」

第10回「ユニクロには定番はないという事実」

第11回「「六甲のおいしい水・その成長戦略とこだわり」

第12回「モノの本質を極め、オシャレを身にまとったル・クルーゼの鍋」

第13回「カルピス~変えてはいけないもの、変えるべきもの」


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「“現場に効く”マーケティングの基本理論」(2007.10~2008.09)


あまりに“基本”と思われ、忘れられているようなマーケティング理論。しかし、日々の業務が行われる“現場”で今一度振り返ってみれば、思わぬ“再発見”があるものだ。
【注:マーケティングの基本フレームワークを事例と共に解説しています】

第1回「マーケティングってそもそもなんだ?」

第2回「マーケティングって“4Pですよね”?」

第3回「ミクロ環境分析とKBF・KSF」

第4回「SWOT分析と分析結果の解釈」

第5回「市場ポジションに応じた戦略の定石」

第6回「個々の人々をカタマリに代え、狙いを定める”セグメンテーション”と”ターゲティング”」

第7回「”ポジショニング”こそが最大の山場!」

第8回「”マーケティング・ミックス”と製品戦略」

第9回「”価格戦略”を失敗しないために」

第10回「”チャネル戦略”は慎重に」

第11回「“コミュニケーション戦略”は組み合わせが命」

第12回・最終回 「マーケティングの要諦とは何なのか?」

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ピラティスレッスンのご案内

「ダンスアート」のマーケティングで業務提携をしている、「ノイアートプロモーション」の主催するピラティスレッスンのご案内です。

  仕事や勉強ばかりしていないで、たまには健康的なコト、しませんか?

  ・・・ということで、弊社では金森も受講している「ピラティス」をご紹介しています。

  ピラティスは呼吸法+骨盤運動を基本としたゆるやかな動きから始まり、筋肉を解きほぐしていくエクササイズです。体幹のインナーマッスル(深層筋)を鍛える骨盤運動と筋力アップにより、基礎代謝を高めるためダイエット効果はもちろん、ゴルフやランニング、テニスの基礎体力を向上させることもできます。

 インストラクターは元・グロービス経営大学院単科生で、金森クラス受講生です。
 現在、バレエやコンテンポラリーダンスなどを対象に、

 「ダンスアートの世界をアーティストとオーディエンス(観客)と企業をマーケティングでつないで活性化する」

 ということを目的として提携しています。


 提携先の「ノイアートプロモーション」 の2大事業は以下の通りです。

 1.ダンスアートマネジメント (上記の目的達成のための活動)
 2.ピラティスレッスン (カラダを動かす喜びを通じたダンスアートの理解促進活動)

 下記のBlogにて、レッスンやイベント、トレーニング方法などの情報が随時更新されていますので、チェックしてみてください!!

 レッスン会場は午前中=千代田線・千駄木駅近く、夜=半蔵門線・半蔵門駅近くです。

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 こちらから→ http://ameblo.jp/odorueigyoman

 会場・日程など、ご案内チラシはこちらからダウンロードしてください →「0208.pdf」をダウンロード

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2010.12.30

2011年は「峻別の年」

 12月30日付・日経新聞は年末らしい特集が掲載されていた。「ニュースで振り返る2010年」。そのひとつに、「百貨店閉鎖相次ぐ 消費不振、都心に波及」という記事があった。「2010年に閉鎖した百貨店」という一覧表には11店舗の名が連ねられている。
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 添えられた写真では、西武の店舗エントランスで深々と頭を下げるスーツ姿の男性数人の姿が写されている。「最終日の営業を終え、一礼する西武有楽町店の店長ら(25日夜)」との説明がある頭を垂れる人物らの足元には「西武渋谷店で、西武池袋本店で、お逢いしましょう」との横断幕がある。

 百貨店は高級品を幅広く品揃えし、長きに渡って一億総中流のあこがれとして流通業界に君臨した。ターゲットは「中流階級以上の国民全て」。ポジショニングは「小売の王様」といわれる言葉が表している、「高級でよい品揃え」だ。それが戦略の基盤となっている。

 いわゆる「ビジネスモデル」を分解すると、「ストラテジーモデル(戦略)」「レベニューモデル(収益)」「オペレーションモデル(運用)」の3つに分かれる。

 80年代から市場のターゲットセグメントとその嗜好は細分化し、百貨店のストラテジーの機軸であるターゲティングとポジショニングが旧態化した。
 レベニューはどうか。売上=客数×客単価だが、91年バブル崩壊以降、来店客も減少し、高額品需要が低迷して客単価も減少した。利益=売上-コストだ。社員の平均年齢が上がって人件費が上昇。レベニュー構造が実質的に破綻した。
 商品は売り切りではなく委託販売が中心で、売れなければメーカーに返品することが基本だ。自社でリスクを取って、売り切るためのノウハウを蓄積するSPA(製販一体)にオペレーションモデルで差がついていった。また、アパレルのワールドなどのように、SPAにチャレンジしてノウハウを蓄積したメーカーは百貨店から離れていった。西武有楽町跡に入居が決まったルミネのように、テナントを機動的に入れ替え、「館」全体の集客力と収益性を常に一定以上に保つというノウハウの蓄積も遅れた。
 銀座の松坂屋は大胆なテナント戦略に転換したように見える。勢いのある海外ファストファッション勢の一角であるフォエバー21や、家電量販のラオックスを誘致した。しかし、それは2013年建て替えまでの期間限定の実験的展開であり、本業、自社の売り場とのシナジー効果はまだ出ていないという。
 なぜ、シナジーが出ないのか。ターゲティングとポジショニングの違いである。ファストファッションの客は、「安くてそれなりのもの」を提供するというポジショニングを店に求め、それを目的買いする層である。百貨店の客は「高級でよい品揃え」を供するというポジショニングを店に求め、さまざまな品物を見て歩き、買いまわりする層である。中国資本傘下となったラオックスの主要顧客は中国からの観光客である。日本人なら少し離れた有楽町のビックカメラの方が全般的に価格が安い傾向であることを知っている。中国人観光客りは、今のところ家電以外ならファストファッションの方がお気に入りだ。

 ここまで記事に関連して百貨店の現状を記してきた。問題は、前述の通りストラテジーとレベニュー、オペレーションからなる「ビジネスモデル」が外部環境と整合しなくなっており、戦略の機軸たるセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング、いわゆる「STP」も同様に外部環境に合わず、自社内部環境とも不整合を起こしていることにある。しかし、そうした状況は百貨店業界に限ったことではないはずだ。 
 市場の景況感は若干の上向きを見せている。二番底懸念も遠のいたといわれている。しかし、経営戦略の根本であるビジネスモデルと、マーケティングの基本であるSTPの不整合を起こしているような業態・企業には、市場の波を見切れていないことになり、回復基調にのる内部の力ももはや残されていないはずだ。チャンスがあるときほど、優勝劣敗が明確になる。2011年はそれが厳しく分かれる「峻別の年」になるだろう。


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2010.12.27

2011年、「異種格闘技戦」をどう生き抜くか?

 日経MJに「予期せぬライバルは国境を超え、業種、業態の垣根を越えてやってくる」と、昨今の市場環境の潮流に言及したコラムが掲載された。来年はさらにそれが強まるだろうという論調だ。では、「どう生き抜けば、勝ち抜けばいいのか」が問題だ。

 コラムは同紙・編集委員の連載「底流を読む」だ。12月27日付のタイトルは「市場は“異種格闘技”に」。サブタイトルが「敵は垣根を越えてやってくる」である。

 1つめの事例として、垣根を超えてきた敵、グリーやDeNAなどのソーシャルゲームやiPhoneなどのスマートフォンに攻撃された、任天堂が挙げられている。2010年4月~9月期の連結決算は最終赤字20億円。<11年3月期も売上高が1兆1000億円、経常利益が1450億円となる見込みで、それぞれピークだった09年3月期の6割、3割の水準>だという。
 任天堂の失速は、環境分析的にいえばマクロ環境分析(PEST:Political・Economical・Social・Technological)のTechnological(技術的成熟度の影響要因)にあたる。
 影響を及ぼす要因は、各々発生確率と予想の難易度、速度、防御の難易度が異なることに注意が必要だ。リーマン・ショックに端を発した経済危機は、「100年に一度」といわれる発生確率で予測も難しい。Economical(経済環境の影響要因)は不可避で劇的な変化を市場にもたらす。一方、日本の人口縮小はとっくの昔にわかっていたように、Social(社会環境の影響要因)はジワジワと変化する。対応は比較的しやすい。Political(政治と規制事項の影響要因)は、関連法規が変わると業界環境が劇的に変化してしまう。薬事法の規制緩和でセルフ販売が自由化され伸びたドラッグストアが、一層の規制緩和で大手流通の参入によって業界再編になっている例がそれにあたる。但し、法令は一朝一夕には作られないので、対応ができないわけではない。では、問題のTechnologicalはどうか。突然、特許を取られ技術が囲い込まれたり、新技術が開発されて既存技術が陳腐化したりということはある。しかし、その技術が商品化され市場で普及するには時間がかかる。市場の技術動向を見据えつつ、普及までの時間をどう使うかがキモだ。ちなみに、iPhoneは先端技術をほとんど使っていないので、任天堂対アップルをその観点で見れば、アップルのマーケティングの勝利といえるだろう。

 コラムの2つめの事例は日本マクドナルドのコーヒー販売の拡大だ。<約3300店に及ぶ店舗網とハンバーガー類の収益を原資に低価格コーヒーを提供、専業店を利用する顧客を奪取>とある。<今12月期の販売量見込みは3億3000万杯>と、<専業店大手を1億杯ほど上回る>という勢いを見せている。
 この事例は「業態の垣根越え」にあたる。そもそも、マクドナルドはどのような業態で戦っているのか。ドメイン(戦いの土俵)を考えてみよう。最も狭いドメインで考えれば、自ら「ハンバーガーレストラン」と称している業態だ。競合はハンバーガーチェーン各社。しかし、マクドナルドは小さな業界のリーダーに治まるつもりはなく、ドメインを拡大している。競合を和洋、ファミレス、そしてケータリングなどにまで拡大し、「1000円以内のカジュアルな外食を提供する事業」と考えているという。市場規模は8兆円だ。
 「垣根越え」で巨大な力を持った企業に押し潰されないためには、近隣業態のプレイヤーの動向をよく観察しておくことが欠かせない。マクドナルドは評判の悪かったコーヒーをプレミアムコーヒーに変えた。しかし、その前から新業態・新店舗の「マックカフェ」を展開しては撤退するという経験を2度している。その時点で、カフェ業態への本格進出を考えていたことが伺えるのである。

 動向を予測してどう手を打つのか。コラムは有名な米ウォールマート対トイザラスの事例に言及している。クリスマス商戦時に玩具売り場を大幅拡大して、トイザラスの牙城を崩した。「販売網と大量仕入れ」による「規模の経済」である。トイザラスも「玩具業界」では規模の経済を効かせてきた企業だが、「垣根越え」にやられたのだ。なぜか。「規模は、さらに巨大な規模に負けるから」だ。それを避けるためには、「経験効果」を構築しておくことが必要だ。効果・効率を高める、「人と組織」に付くノウハウの蓄積と活用である。
 例えば、文具メーカー再大手のコクヨグループで文具通販を展開するカウネットは、2007年に同業の文具通販会社2社を買収合併した。「規模化」することも大きな目的の一つであったはずだ。しかし、アスクルを追い抜くことはできなかった。先行するアスクルは、規模で戦っているだけでなく、蓄積した経験効果があるからだ。同社は岩田社長が「顧客の代弁者でありたい」と語るように、徹底した顧客志向を貫く思想と、それを体現するコンタクトセンターがあり、そこから吸い上げられた顧客の声が商品開発などに活かされている。顧客は「アスクルならでは」という「経験価値」を感じて利用している側面も大きい。
 前述の「コーヒー戦争」でマクドナルドに攻められる側に回った専業大手、スターバックスやドトールコーヒーも経験効果による戦い方、経験価値の提供で生き抜くことが求められる。「専業ならでは」の味や香りという商品の価値を高めるだけでなく、顧客応対や店内空間の作り方など、蓄積したノウハウで低価格に負けないことを目指すのだ。

 コラムの3つめの事例は家庭用品製造卸のアイリスオーヤマのLEDの製造販売。<家庭外壁などの電飾で培った技術を応用し中国で低コスト生産、家電大手メーカーが手薄のドラッグストアなどで販売を伸ばしシェアを拡大した>とある。アイリスオーヤマの勝ちのポイントは、「販路」だ。マーケティングの4P(Product=製品・Price=価格・Place=販路・Promotion=広告/販促)といわれる施策展開の要素の中で、販路は唯一、自社だけでコントロールできない要素だ。なぜなら、製品を作ることも、価格決定も、広告も自社だけで決定できるが、販路は利害関係が絡む「他社」との調整が欠かせない。調整には時間がかかる。故に、アイリスオーヤマは自社が得意な販路を中心に販売を伸ばしたのだ。他社が追随してドラッグストアに販路を広げようとしても、入り込むには時間がかかる。その参入障壁を持ちつつ、価格敏感度が高いターゲット顧客が集まり、販路であるドラッグストアも安い価格で提供できる商品を仕入れたいというニーズがある。そこに勝機があったのだ。競合に勝ち抜こうと思ったら、既存の販路をうまく活用することも欠かせないのである。

 2011年は、景気の踊り場や二番底懸念が遠のいたといわれる。しかし、まだまだ厳しい環境であることには変わりはない。いや、昨年から言われ始めたキーワード、「ハーフエコノミー」や「ニューノーマル」が示すのは、08年の経済危機以前に経済環境が戻ることはなく、異常事態と思っている環境が常態(ノーマル)化することを意味している。2011年もそれが継続する可能性は高い。
 生き抜くために、勝ち抜くためには、環境や競合、顧客をよく見て、自社の強みを最大化できる方法を愚直に探っていくことが欠かせないのである。

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2010.12.26

【おしらせ】Blog更新と書籍執筆

Blogの更新が滞っており申し訳ございません。

現在、2月刊行に向けた書籍原稿の執筆に集中しております。

新しいマーケティングの潮流をつかむべく、2010年中の「勝手分析」の棚卸しと大幅な加筆修正を行いつつ、9月下旬から新規に企業取材した7つの「事例分析」を書き下ろしております。

現在、年内脱稿に向けて大詰めを迎えています。

上記の事情により、年内のBlogの更新は年内あと1回を31日までにアップし、年明けは5日から再開とさせていただきます。


尚、書籍の情報は以下の通りです。


■タイトル:「“いま”をつかむマーケティング ~あれがヒットしたワケ・顧客が集まるヒミツ~ 」

■出版社:アニモ出版→ http://www.animo-pub.co.jp/

■刊行日:2月下旬

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2010.12.21

コンビニの売り場に学ぶ「顧客は誰か」?

 コンビニエンスストアの棚。日々、消費者は何気なくそこを眺め、商品を手に取っている。しかし、その裏側では壮絶な戦いが繰り広げられているのである。

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 ある日、コンビニのガム・タブレット類の棚に大きなPOPを掲げたコーナーが設置された。アサヒフードアンドヘルスケアの「ミンティア」が通常より多数のフェイスをおさえ、最上段の好位置を獲得している。そしてPOPには「デキる男の必須アイテム! ミンティアと1本満足バーを一緒に買うと 今なら30円引き」と書いてある。自社製品で「クロスマーチャンダイジング」を仕掛けているのだ。カテゴリをまたいで関連商品を一つのコーナーにまとめ、相乗効果で売り上げ増を図る手法である。

 「メーカーが自社製品のミンティアと一本満足バーを売りたいんだな」と思ったなら、それは半分あたりで、半分ハズレだ。メインで売りたいのは「ミンティア」の方。写真の棚の下をみて欲しい。並んでいるのは「フリスク」。通常はフリスクの方が好位置を獲得しているが、キャンペーン期間は下の棚に置かれている。価格に注目だ。ミンティアは100円。フリスクは194円と書いてあるのが見えるだろう。約倍の価格だ。

 では、質問。ミンティアとフリスク、どちらの方が売れているだろうか。
 答えは、「フリスク」。倍も高いのに売れているのだ。
 では、なぜ?
 
 その答えは、以下のリンク先の記事に詳しい。執筆しているのは船井総研の笠井清志氏。コンビニ一筋のコンサルタントだ。
 「フリスクがミンティアのシェアを奪っている」(Business Media誠・11月16日)
 http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1011/16/news002.html

 記事の中で重要なのは<売り手(コンビニ)としては、より売り上げが増やせる商品を重視した販売戦略をとりたいため、ミンティアよりもフリスクの拡販を重視した棚割りを意識します>という点だ。消費者はコンビニに対してあまり安さを求めない。また、コンビニは狭小な店舗でいかに効率よく売上げ坪単価を挙げるかに腐心する。結果として売れるなら、単価の高い商品の方がうれしいのだ。その店側の意図が棚割に表れ、売れ行きの差という結果に結びつくのだ。
 ミンティアと一本満足バーのクロスマーチャンダイジングのワケはもうわかっただろう。ミンティア100円+一本満足バー124円-30円値引き=194円。フリスクの店頭価格194円と同じ金額になる。30円の値引き原資はメーカー負担ではないだろうか。この施策は、コンビニに働きかけたメーカーからのミンティアのテコ入れなのである。

 笠原氏の記事で同様に意義深いものをもう一つ紹介しよう。
 「チルドカップコーヒーの定番、マウントレーニアが強いワケ」(Business Media誠・12月8日)
 http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1012/08/news008.html

 プラや紙のカップ、アルミ箔の蓋、側面にストローが貼付けてある「チルドカップ」の飲料。コンビニの店頭では、紙パック飲料の近辺にプリンやゼリーと共に棚が形成されている。
上記記事では、カテゴリートップの「マウントレーニア」(森永乳業)と、チャレンジャー「スターバックス」(サントリー食品)の戦いとなっているが、2ページ目のグラフでは「ドトールコーヒー」(オハヨー乳業)の伸びに目がいってしまうので注意が必要だ。重要な論旨はグラフではなく、「マウントレーニアはなぜ強いのか」というポイントだ。記事の解説によれば、<通常のチルドカップコーヒーだと約1週間程度のところ、マウントレーニアは約1カ月間もある。これはアセプティックカップという長期保存に向いた容器を使っていることに加えて、無菌充填を行っていることによるものである>という点だ。
 長期保存できると誰がうれしいのか。コンビニでチルドの飲料を買って帰って、自宅の冷蔵庫で長期保存する人はほとんどいない。すぐ飲んでしまう。うれしいのは、コンビニ。店側だ。ナゼなら、期限内に売れずに廃棄することになるリスクが低減できるからだ。

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 伊藤園の新製品、「輝くオトコのGOLDEN GUYサイダー」。「ジンジャー×ウコン」で、さらにアミノ酸のオリルニチン、アラニン、アルギニンまで入ったてんこ盛りの飲料だ。何よりその商品名とギラギラしたパッケージが目を惹く。
 ちょっと手を出すのをためらってしまいそうな飲料だが、「新発売」のPOPが付いて、しっかり棚のフェイスを複数確保している。コンビニが「売ろう」という意図の表れだ。
 この飲料に限らず、コンビニは新発売の飲料には力を入れる。ナゼか。
 第1回目の配荷分は、マージン率が高いのだ。メーカーが「売って欲しい」から。である。そのため、棚のフェイスを複数確保することができるのだ。

 上記、一連のコンビニエンスストア関連のエピソードのポイントは、「メーカーにとっては、販売チャネルも“顧客”である」ということだ。メーカーの人間なら当たり前なことだが、そうでないと、つい最終消費者(エンドユーザー)のことだけを考えてしまう。
 もう一つのポイントは、「DMU」という考え方だ。DMU(Decision Making Unit)とは直訳すると「購買決定単位」となるが、「購買決定関与者」と考えればいい。商品の購買に誰がどのような関心事を持って関わってくるのかということだ。

 コンビニエンスストアの場合、メーカーの直接の営業先は、コンビニチェーンで、そこのマーチャンダイザーと商談をする。個々の店舗に営業に来るのはタバコメーカーだけだ。チェーン本部のマーチャンダイザーの関心事は、もちろん個々の店舗で商品が売れることだが、そのためには「店舗のオーナーが売りたくなる商品を仕入れること」に腐心する。
 一方、店舗のオーナーは自店の売上げ最大化が関心事で、そのためにチェーン本部への発注端末とにらめっこをして、何をどれくらい発注しようか考えるのだ。本部とオーナーの関心事をおさえて、どちらも納得・満足させることをメーカーの営業は考えなければならないのである。

 今回はコンビニエンスストアを例に記したが、「誰が顧客なのか」と「DMU」というポイントに関しては、全てのビジネスで考慮すべきことである。それぞれの場合で考えてみて欲しい。


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2010.12.17

コンビニ・数量限定:スターバックス「ヴィア&マグ」の狙いは何だ?

 コンビニエンスストアの店頭で数量限定商品、スターバックス「ヴィア&マグ」が売り出されている。ヴィア イタリアンロースト 3本+コロンビア 2本+マグカップのセットで、お値段798円。am/pm、ローソンで発見。その他のコンビニエンスストアチェーンでも販売されているかもしれない。

 スターバックス「ヴィア(VIA)」は、スティックタイプのコーヒーだ。2009年3月。シアトル、シカゴ、ロンドンで試験販売が行われたという報道に対して、日本では「スターバックスがインスタントコーヒー?」と、多くのスタバファンから疑問符が投げかけられた。ハワード・シュルツCEOが「ドリップコーヒーをこっそりヴィアに変えて妻に出したがバレなかった」というという話が伝わると、「そんなバカな!?」と、半信半疑の声が沸き上がった。同年10月には米国、カナダの店舗とコストコなどの量販店で本格的な販売開始。日本では2010年3月に発売予定発表。翌4月14日に発売の時がやってきた。
 発売から4月18日までの5日間、通常店舗で提供しているドリップコーヒーとヴィアを飲み比べる「テイストチャレンジ」も行われたが、その反響は、意外にも静かなものだったといえるだろう。チャレンジキャンペーンも、店頭に並ぶヴィアもスルーする者も少なくなかった。

 ・・・正直に告白します。スミマセン。ウソというか、適切でない表現を書きました。

 「スルーする者」と第三者のことのように書いたが、誰あろう、筆者自身のことだ。スタバのコーヒーを愛するが故に、「所詮はインスタントの味だろう」とヴィアに裏切られることを恐れて試していなかったのだ。

 先月の後半頃だろうか。クリスマスブレンドが発売されたのと同時期に、スタッフがミニカップに入ったクリスマスブレンド・ヴィア版を店内で配る試飲キャンペーンを行っていた。差し出されたカップを拒否するほどまでにヴィアを否定していたわけではないので、受け取って一口飲んでみた。
 「うまい!」
 きっと目の前にハワード・シュルツCEOがいたら、ニヤニヤしながら「妻のことを味音痴みたいに言ったお前、謝れ!」と言うに違いない。そんな味わいだった。・・・今さらながらだが。うん。謝ります。ゴメンナサイ。I’m very sorry.

 コンビニに話を戻そう。
 コンビニだけでなく、スーパーやドラッグストアでの販売は今年9月3日から開始されている。ヴィアだけでなく「ORIGAMI」という日本オリジナルの、器具が要らないシンプルな1杯用のドリップタイプコーヒーと同時販売となった。味の素ゼネラルフーヅ(AGF)との販売提携商品で、棚に店頭ディスプレイを設置して注目度を高める力を入れた展開をした。それまでコンビニでのスタバブランドといえば、マウントレーニアやドトールコーヒーブランドの商品と競って並べられていた、チルドカップ商品だ。しかし、チルド商品はスタバの店舗では売っていない。サントリー食品が製造しているコンビニ専用品だ。それに対してヴィアは店舗と同じ商品がコンビニで販売されている。それはそもそも、異例の展開だといえる。
 さらに、「ロゴ入りグッズ」は異例だろう。スタバのブランドロゴの価値保護は徹底している。そのことからすれば、ロゴ入りグッズが店外で販売されるということは異例だろう。ホームページを見てみると、ロゴの画像は全てFlashで作られており、勝手にロゴ画像がダウンロードできないようになっているくらいなのだ。グッズも店頭において数量限定で販売されている。店舗以外で売られる例はあまり聞かない。

 コンビニで売られる「ヴィア&マグ」のターゲットは誰だろう。
 ヴィアは1本約100円。決して安くはない。コンビニで売られているuccのスティックコーヒーなら、紙コップ付きで1本約50円。ヴィアより安いスティック型インスタントコーヒーはいくらでもある。しかし、スタバの店舗で売っている最も安いコーヒーは「本日のコーヒー290円」だ。ヴィアの約3倍。ヴィア単体であれば、価格面でスタバを敬遠している層にスタバの味を「お試し」させるという効果があるだろう。
では、わざわざ「ロゴ入りマグカップ」をセットにする意味は何だろうか。
 「スタバファン」と一口にといっても色々だ。常に自宅・職場や外出先でも「スタバのじゃなけりゃ、コーヒーを飲まない!」という高ロイヤルユーザーばかりではない。自宅ではネスカフェを飲む場合もあるし、外出先でスタバが見つからなければ、エクセルシオールカフェやタリーズに入ってしまうこともあるという人も多いだろう。
 そんな人に、ヴィアはスタバ味とスタバブランドとの接触頻度を上げる効果がある。それによってロイヤルティー向上を図るのだ。その時、ロゴ入りカップ試用して飲むように同時販売すれば、さらなるロイヤルティー向上効果が期待できる。店頭での売られているマグカップの価格は800円。「ヴィア&マグ」の798円というセット価格はそれを狙っての、極めてお買い得な設定だといえるだろう。

 消費者の態度変容モデルといえば、「AIDMA(Attention:注目)→Interest:関心→Desire:欲求→Memory:記憶→Action:行動)」が有名だが、「AMTUL」というモデルもある。Awareness(認知)→Memory(記憶)→Trial(試用)→Usage(常用)→Loyal(忠誠)だ。AIDMAは最初のAから最後のAに向けた「初回購入」を表している。それに対して、AMTULはA→M→Tが、認知から試用まで。T→U→Lが試用を経て、日常的に試用するようになって、そのブランドから浮気をしないような状態になるまでの「反復購入」を表している。
 コンビニに登場した「ヴィア&マグ」は、まずはM=ヴィアの試用の獲得までをゴールとして狙う。そして、ロゴ入りマグカップを使って飲みながら、「普通のインスタントと全く違う!」と感動させ、徐々にロイヤルティーを刷り込んでいくのだ。

 通信販売業者などが顧客評価に用いる「RFM分析」という手法もある。
R:Recency=最新購買日:どれくらい最近に購入しているか、F:Frequency=累計購買回数:どのくらいの頻度で購入しているか、M:Monetary=累計購買金額:全部でいくら購入しているかである。RFMはそれらをポイント化して、顧客がどれくらい自社の利益に貢献してくれているかを把握するのである。
 筆者はヴィアを店舗で進められた時には買わなかったのだが、結局はコンビニで購入した。それを事務所で飲むようになってから、某社のエスプレッソマシンは開店休業状態に追い込まれてしまった。ふと気がつくと、コーヒーショップに入ろうと思った時に、多少遠くてもスタバまで足を運ぶことが多くなっている。RFMが向上しているのだ。

 スタバがスティックとマグとセットにしてコンビニで売る。その戦略は「お試し促進」だけでなく、筆者のようにスタバの「ヘビーファン」とまでなっていなかった層の、「AMTUL」をTからLに進め、さらに「RFM」を増大させることにつながっているのだろう。


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2010.12.15

なぜ売れる?「パナソニック・ナノケア」の謎を探る

 パナソニックのイオン・ミスト美顔器「ナノケア」が売れているという。しかし、その「売れる理由」を読み解くのは難しい。なぜなら、ある意味「売れるはずのない商品だから」だ。

 12月10日付・産経新聞に「節約疲れ…ごほうび奮発 クリスマス商戦、高額商品脚光」という記事が掲載された。いわゆる「節約疲れ」が出てきたところで、目減りしていたし運用資産が回復し、臨時収入で「ぜいたく消費」が起きているとアナリストがコメントしている。高額商品の1つとして紹介されているのが、ビックカメラで売れ筋になっているというパナソニックの「ナノケア」である。「プレゼント用の需要が高い」ともある。

 実際にビックカメラ有楽町店を見てきた。特設の体験コーナーがあり、平日の日中にも関わらず、女性客と男性客が各々、品定めをしていた。男性が美顔器をプレゼントするのは女性のリクエストがあってこそなので、「ナノケア」は女性のハートをガッチリとつかんでいることがわかる。
 店頭の担当者に聞くと商品は3種類あり、特徴が異なるという。円筒形の「スチーマーナノケア」は、吹き出し口から出る「プラチナナノ粒子を含んだ温かいスチーム」を15分ほど浴びると、「キメが整った肌、ツヤのあるしなやかな髪」になるという。球形の「ナイトスチーマー ナノケア」は、枕の近くで付けっぱなしにして就寝すると、寝ている間に「肌のうるおいをキープ」してくれるという。もう一つ、二回りほど小ぶりな直径15センチほどの球形の商品は「デイモイスチャー ナノケア」。デスクやテーブルの上に置いて、仕事しながら、テレビ観ながら「肌のうるおいをキープし、うるおい美肌」になれるらしい。

 冒頭に「売れるはずのない商品」と書いたのにはワケがある。「イノベーション普及論」で有名なE.M.ロジャースは、革新的な商品が受入れられるためには、「観察可能性」が重要であると説いた。
具体的な例がある。ネズミの被害に悩む南米の農村において、「殺鼠剤」の普及が試みられた。毒入りの餌を食べたネズミは確実に死ぬ。しかし、殺鼠剤は普及しなかった。ナゼか。それは、「薬が効いていることが、目に見えなかったから」だ。殺鼠剤は遅効性で、ネズミは毒入りの餌を食べた後、物陰や屋外に出てジワジワと死ぬ。即効性の毒なら、村人の目の前で転げ回ってすぐ死ぬだろうが、そのシーンを目にすることがないため、効果があるのかを信じられなかったのだ。

 上記3種の「ナノケア」のうち、スチームが目に見えるのは「スチーマーナノケア」だけ。「ナイトスチーマー ナノケア」は「スチームに風を混入し、安全に配慮した温度設定で放出する」とのことで、スチームは目に見えない。さらに、「デイモイスチャー ナノケア」は本体にスチーム用の水をセットする容器すらない。「空気中の水分を集めて使用する」のだという。ビックカメラの売り場のデモ機では、来店客の女性が試していたが、傍から見ると機器の前に顔を突き出しているだけのようにしか見えないのだ。「観察可能性」がない。
 効果が実感できるようになるには、「ナイトスチーマー ナノケア」は「2週間継続使用時」、「デイモイスチャー ナノケア」は「1日約2時間を2週間使用した場合」という条件が付いている。デモ機でちょっと試したぐらいでは効果は実感できない。効果を現す元=スチームも目に見えない。だが、売れているのだ。

 売れている理由が、5月26日付・産経新聞・大坂版夕刊の記事で見つけることができた。「流行をつかめ!ビジネス最前線」というコラムだ。パナソニックは「高温のスチームを発生させる美顔器を販売し二けた成長を続けていた。しかし、爆発的な売れ行きにはならなかった」と記事にある。前出の1機種、「スチーマーナノケア」のことだろう。消費者調査をしたところ、「使い続ける自信がない」との声が多く寄せられたという。1日15分、美顔器の前にじっと座っていることができないというのだ。そこで同社は、「寝ながら美容」というコンセプトを考えたという。
忙しい現代社会において、「顧客満足」を獲得するための要素の一つは、「Time saving」だ。2009年のヒット商品番付にも載った花王の洗濯洗剤「アタックNeo」は洗濯の「すすぎ」を従来2回必要なところを1回で済む「泡切れの良さ」を実現し、「家事時間10分間短縮」という効用で大ヒットとなった。最近、テレビCMや交通広告でも数多く露出している、「家庭用自動掃除ロボット・ルンバ」も「お掃除するのは、ルンバの仕事」と、掃除からの解放という「Time saving」を訴求している。

 「顧客満足」を真の満足にさらに高めるためには、「Time saving」だけではまだ不十分だ。パナソニックも、「寝ながら美容」を機能的に実現したものの、「情緒的価値」が必要であると考えた末に、本体の「球形のデザイン」に行き着いた。産経新聞のコラムでは、「あの丸いの、ください」と30歳代のOLが大阪市内の家電量販店に来店した時の様子を伝えている。パナソニックビューティー・ヘルスケア商品チーム主事、山田詩織さんという担当者は「女性は丸い形に癒やされる。理屈じゃないんです」と、組み立てがしにくいという開発チームの意見を説得したという。
 利便性の提供という「Time saving」を達成したら、さらに「Peace of mind」という「癒し」を提供する。そこに至って、初めて真の満足を提供することができたことになる。「ナイトスチーマー ナノケア」は2008年11月の発売から09年3月までの累計で35万台を売上げ、当初計画である月1万台の2倍を上回る好調ぶりだという。

 2009年11月6日付・日経産業新聞のコラム「デザインここで勝負」に、「デイモイスチャー ナノケア」に関する記述がある。「ナイトスチーマー」の成功体験を活かし、「仕事場でのデスクワーク中に肌を保湿する」ための商品として2009年11月1日に市場に投入された。パナソニックでの立役者は、前出の山田詩織さんである。「ながら美容」という言葉が全商品で浸透しはじめたところで、その定着を狙い、「ナイトスチーマーをそのまま小さくしたような形に決めた」という。山田さんは2商品について「姉妹のような感じで使ってもらいたい」と語っている。事実、Amazonで「ナイトスチーマー」か「デイモイスチャー ナノケア」を検索すると、もう一方が「よく一緒に購入されている商品」として表示される。狙い通り、「クロスセリング」が成功しているのである。

 製品の使用感や効果はパナソニックのサイト内の「購入者の声!」というコンテンツだけでなく、「カカクコム」や様々なサイトでユーザーの生の声で確かめられる。だとすれば、重要なのは「スチームが見える、見いえない」ではないのだろう。まして、オフィスで使用しようと思ったら、デスクでもくもくとスチームを発生させるわけにはいかない。「目には見えなくても、いつでも自分をケアしてくれている」という感覚が大切なのだ。

 ロジャースが「イノベーション普及論」を記してから40年が経っている今日、忙しいながらも癒しを求める現代社会に暮らす人々のKBF(Key Buying Factor=購入要因)は、彼の想像を遙かに超えたものになっているのである。

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2010.12.14

売れるか?!「フレッシュネスバーガー印」の生活雑貨


 ハンバーガーチェーンのフレッシュネスバーガーが、自社ブランドロゴ入りの生活雑貨を店舗で販売するという。フード業界からの「ライフスタイル事業」へのドメイン拡張ともいえるが、その戦略は伸るのか、反るのか。

 12月12日付日経MJ・フードビジネス面に「フレッシュネス 生活用品など20品投入 PBでブランド力向上」という記事が掲載された。<扱うのはタブレット(12個入りで250円)や「トートバッグ」(500~600円)など20品目を予定している。自店の廃油を再利用して作ったせっけんや有機栽培にこだわったアメなどの菓子も現在開発中だ>と記事にある。同社社長も<「オーガニックやナチュラル感にこだわりたい」>(同記事)と製品化のコンセプトを語っている。

 オリジナル商品を展開する目的は大きく2つあるようだ。1つは「売上げ向上」。目標は店舗売上げの1割増という。もう1つが、「ブランド力の向上」。<現在、7万人が登録する携帯電話の会員向けに、同社ロゴの入った「エコバッグ」など数品目をプレゼントとして開発してきた。会員から好評なことから商品化に踏み切った>(同記事)とある。商品化への決断は、同社の顧客基盤に対する自信が背景にあるのだろう。<20~30代の女性を中心に単価の高いこだわったハンバーガーなどが人気で、業績は好調だ。「フレッシュネスファンが増えていることが要因」>と同社社長がコメントしている。

 フレッシュネスバーガーのハンバーガー業界におけるポジションはどのようなものなのか。業界シェアで見てみよう。日経新聞の過去の調査で2008年と2005年の数字がある。※以下、( )内が2005年の数字
 1位 マクドナルド 75.4%(70.1%)
 2位 モスバーガー 14.2%(17.4%)
 3位 ロッテリア   1.5%(6.6%)
 4位 ファーストキッチン 1.5%(1.8%)
 5位 フレッシュネスバーガー 1.5%(1.6%)

 明らかにマクドナルドの一人勝ちであり、勢いを増していることがわかる。3位以下のチェーンはその存在自体がマクドナルドにかき消されるなり、飲み込まれるなりしそうな状態だ。フレッシュネスバーガーが自社のブランド力を向上させ、顧客の囲い込みを図るのは生き残りがかかっているのだともいえる。

 その意味でも「フレッシュネスファンが増えている」という好機に乗って成長戦略を描かなければならない。そのための選択肢は「アンゾフのマトリックス」で考えれば4つだ。
 マトリクスは、縦軸に「既存市場で勝負するのか、新市場に展開するのか」という軸をとり、横軸に「既存製品で勝負するのか、新製品を開発するのか」という軸をとる。次にその掛け合わせで、既存市場を既存の製品で深掘りする「市場深耕」、新市場に既存製品を展開する「新市場開拓」、既存市場に新製品を投入する「新製品開発」、新製品を新市場に展開する「(狭義の)多角化」の4象限を作る。

 フレッシュネスバーガーの展開は、自社ブランドに囲い込んだ顧客に新商品を提供する「新製品開発」にあたる。マイケル・ポーターによれば、成長戦略としては、既存製品の使用用途を拡大したり、使用機会を増大させる提案をしたりする「市場深耕」が最も手堅く、その次が「新製品開発」であるという。そのココロは、どちらも既存顧客を相手にするため、ニーズも把握しやすくカン所がわかるからだ。その意味では、フレッシュネスバーガーの戦略は間違っていないといえる。

 しかし、別の見方をすれば少々危うい気もする。
 「ドメイン(domain)」という考え方がある。直訳すれば「領地・領土」のことだ。ビジネスにおいては、企業が戦う「土俵」を現わす。自らが有利に戦える土俵を選ぶことが戦略の基本である。また、何らかの時流の変化を捉え、有利な土俵を構築することも重要だ。
 マクドナルドのドメインは、フレッシュネスバーガーと同じ「ハンバーガーレストラン市場」である。そこで十分な領地(シェア)を既に獲得しているため、「1000円以内のカジュアルな外食市場」にドメイン(戦いの土俵)を拡張している。ファミレスその他、低価格帯の外食の市場規模は8兆円。そこをどれだけ取り込めるかという戦いを展開している。
 フレッシュネスバーガーはマクドナルドをはじめとする、上位チェーンとの競合しない収益源を求めて「生活雑貨市場」、もしくは「ライフスタイル事業」にドメインを拡張した。そこで成功する論拠としては、「携帯会員向けのロゴ入りエコバッグなどのプレゼントが好評だったから」ということになる。

 「フレッシュネスファンが増えている」ということから考えれば、ロゴ入り商品の販売は受入れられるかもしれない。ハンバーガーではなく、ブランドとしてのコンセプトである「オーガニック&ナチュラル」なグッズを販売するのは、「関連商品の販売」を意味する「クロスセリング」にあたる。そこで1割の売上げ増を狙うという戦略は1つの選択肢ではある。
 しかし、それを買うのは非常にコアなファンではないだろうか。なぜなら、プレゼントとして「もらう」と「買う」のは大きな違いがあるからだ。また、生活雑貨をあえてフレッシュネスバーガーで購入しようというKBF(Key Buying Factor=購入要因)となるまでに、同社ブランドがパワーを持っているかが問われる。

 もし販売をしないのであれば、オリジナルグッズを商品購入額に応じてポイントを蓄積して交換するミスタードーナツと同様な展開も考えられる。ミスドの売り物はあくまでドーナツ。グッズは販売しない。お金を出しても買えないからこそ、プレゼントほしさにドーナツを食べに来てポイントをためる人も少なくない。

 ミスドと同様に、魅力的な景品で本業の売上げを押し上げている例として、化粧品通販の「再春館製薬」がある。同社は基礎化粧品を中心とした商品を販売しているが、購入額に応じて顧客にポイントを付与している。ポイントに応じた交換景品としては、サプリメントやヘアケア・ボディーケア品などが多数取りそろえられており、カタログ化されている。どの賞品も「お金を出して買いたい」と思わせる品物だが、同社は「自社のドメインはあくまで化粧品を売る会社」として、販売は行わない方針だという。そして、その賞品が購入顧客の購入額を押し上げているのも確かだ。

 本業の販売量を増す施策を「アップセリング」という。フレッシュネスバーガーの今回のもう一つの狙いである「ブランド力の向上」に関しては、販売ではなく景品として、本業の商品=ハンバーガーと関連メニューの販売量を増やす。利用頻度を高めるという方法も選択肢としてあったといえる。つまり、アンゾフのマトリックスにおいて最も手堅い「市場深耕」である。

 フレッシュネスバーガーの店舗数は、現在約200店。その全店に展開するのは来年春だという。どのような結果になるのか、注目したい。


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2010.12.09

だれが百貨店を殺すのか?ネットで百貨店は変わるのか?

 業績不振に悩み続ける百貨店業界。「ネット流」の新しい動きが見え始めたというが、どうにも「ビミョー」なのだ。そうこうしているうちに、他業態にお株を奪われつつある観もある。

 12月8日付け日経新聞・消費面に「百貨店の買い物 様変わり 人気ランキングで売り場に直行」という記事が掲載された。若い男女が壁面パネルを見ている姿を撮影した写真には、「アンケートを反映させ商品をランキング形式で紹介する“モバイルランキング”(東京都千代田区丸の内の大丸百貨店)」という説明が添えられている。同店で今春から開始されたサービスで、ランキング上位の商品は売れ行きが飛び抜けてよいという。
 記事にある来店客の声は、「知らないブランドもランキング形式だと安心」「ランキングはほかの人が何を買おうとしているか一目でわかって便利」と好評だ。他社も同様の動きをしている。西武百貨店池袋本店では化粧品の売れ筋順位の紹介コーナーを、伊勢丹新宿本店は食品売り場で分野ごとの売れ筋1位商品のパンフレット設置をはじめたとある。

 記事の副題には「手早く情報、ネット流」と記されている。「買い物のスタイルが変わってきた要因とみられるのがネットの普及だという。「ネットは検索キーワードを入れるだけで瞬時に売れ筋がわかる」という特徴の影響から、大丸の担当者は「ネットの影響で手早く情報をほしがる人が増えている」と指摘。電通総研の四元部長も「商品情報の吟味 他社に頼る傾向」と題して消費者を取りまく情報量の飛躍的増大の影響を囲みでコメントしている。

 百貨店の業績は低迷を続けている。売上高対前年割れが、今年10月に31ヶ月連続を記録したと日本百貨店協会は発表した。その苦境を乗り切るため、確かに百貨店はネットと換骨奪胎して競合するよりも協調を模索しはじめている。
 東武百貨店では楽天とコラボレーションして「うまいもの市」という、楽天出展者を集めての物産展を開催し好評を博した。丸井は店舗に楽天出展者の常設売り場を置き、楽天市場には自社PB商品の靴・バッグのショップを出店する相互補完的な協業をはじめた。「百貨店からのネットへの接近」が消費者の「ネット志向」と相まって変化に拍車をかけているのは確かだろう。

 一方、人的な接客を磨いている業態もある。12月8日付け日経MJ・総合小売面の連載コラム「消費 見所カン所」。イオンモールの村上社長が、ショッピングセンター(SC)に入居する専門店の販売員による、接客技術コンテストを視察した感想として、「専門店の接客力向上 実感」見出しの言葉を語っている。イオンモールが運営する全国55カ所のSCは厳しい市場環境の中でも、専門店部分の既存店売上高が11月まで12ヶ月連続で前年を上回る。その原動力が「接客力」にあるというのだ。

 記事の引用「ネットは検索キーワードを入れるだけで瞬時に売れ筋がわかる」と前掲したが、「検索」は能動的な行動だ。電通総研・四元部長が記事で消費者を取りまく情報量の飛躍的増加によって、ランキングやその分野の「カリスマ」の意見に頼る消費者が増えているのではないか」という主旨の指摘をしている。ランキングを見ることや、カリスマにオススメされることは「受動」だ。「カリスマのオススメ」は、若年層に人気のセレクトショップなどでは当たり前。顧客はそれを求めて来店する。店側としては、その巧拙が売上げを左右する。その意味では、消費者と店舗は相互依存の関係にあるといえる。

 東京立川市の高島屋立川店。同店は2007年から「お声がけを控えるおもてなし」として、「S.E.Eカード」という施策を開始した。来店客が入り口でストラップ付きのカードを受け取り首からかけておくと、全ての販売員があいさつ以外、顧客の要望があるまで声がけを控えるというものだ。当然、何のオススメもされない。
 百貨店の接客の基本は「動的待機」だ。顧客にプレッシャーを与えないように、顧客が何か質問などをしたそうな気配を見せるまで、商品の整理などの作業・動作をしながら待機するのである。じっと見つめたり、むやみに声をかけたりするのではない。しかし、あえて「お声がけを控えるおもてなし」とするのは、そうした接客スキルが百貨店から失われてしまったことを意味するものとも考えられる。

印象的なのが、前出の日経記事にある大丸の来店客である女性のコメントだ。「百貨店は商品がたくさんありすぎて、どれがいいかわからない」という。「たくさんありすぎる」くらいに商品があるから「百貨店」というのが当たり前だが、それは困るということのようだ。
 専門店が接客に力を入れ、売上げを伸ばす一方、百貨店の店頭では来店客がたくさんの品物の中から目当てを選ぶことができずに迷う。百貨店自身はネット流のランキング表示と接客禁止を模索する。
 ランキングは、いわゆる「売れ筋」であり、必ずしも「その顧客が欲しているもの」ではない。ネットには顧客の購買履歴や属性データを参照したオススメの手法もあるが、顧客を見てオススメすることは、本来百貨店の十八番のはずだ。「百貨店のネット化」は、百貨店にとっても顧客にとっても、幸せなことではないように思う。


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2010.12.08

「オトナの関係・こどもの関係」「オトナの時間・こどもの時間」

 「大学生はTwitterをあまり使っていないし、利用意向も低い」。そんな調査結果が発表された。そこから、人間関係の構築と可処分時間に関して考察してみたい。

 <大学生に聞く、Twitterを利用していない理由>(12月7日・Business Media誠)
 http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1012/07/news019.html

 首都圏の大学生816人を対象とした東京広告協会の調査では、Twitterの利用について、57.0%が「利用したくない(利用し続けたくないを含む)」という。利用・アカウント登録状況は「利用している」23.4%、「登録しているが全く利用していない」12.3%、「登録なし」64.3%。利用しない理由は、「興味がない/なくても困らない」が169人でトップ。以下、「常に更新しないといけない感じがする/面倒くさい」129人、「使い方が分からない」80人、「mixiなどの他のツールで十分足りている」72人、「Twitterが何か分からない」48人と続いたと発表されている。

 上記記事と関連して考えたいのは、先月11月23日にネット上でわき起ったある議論だ。
ネットメディアである「Tech Wave」に、ある大学生が『蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義』という記事を寄稿したことに端を発する。記事は現役大学生らしい視点で「そもそも“ソーシャル”とはなんぞや」「SNSの定義・バーチャルとは」といった論述を展開している。議論となったそれらの定義の正否はともかく、大学生という存在が自分の周囲の人間関係と、いわゆる「ソーシャルメディア」というものをどのようにとらえているのかを知る貴重な内容であることは間違いない。
 <蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義【水谷翔】>(11月22日・Tech Wave)
 http://techwave.jp/archives/51525441.html
 <蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義 大学生が書いたTechWaveの記事への反応まとめ>(Togetter)
 http://togetter.com/li/71864

 大学生の“ソーシャルメディア論”は、筆者なり解釈すると、少々乱暴ながら次のようになる。
  1.大学生という存在は、現実(リアル)な人間関係を極めて重要視(大切に)しており、それをインターネット上にも持ち込んでいて、現実の人間関係を補完・深化するメディアとしてmixiに代表されるSNSが利用されている。
  2.上記を前提とすると、CGM(Consumer Generated Media)やUGC(User Generated Content)という実名・匿名混在の不特定多数の人々が集う、記事中では「インターネット」と定義されるメディアと、リアルな友人・知人が集う「ソーシャルネット」であるSNSを峻別している。

 記事は一人の大学生の意見であり、Togetterの投稿での議論では、同世代と思われるユーザーからの異論も散見される。しかし、現役大学生の「人間関係」を基軸とした考え方としては正鵠を射ているように思う。

 では、Twitterを「オトナたち(社会人)」はどのように利用しているのか。
 オトナの間でもTwitterを「使い方がわからない」「面倒」という、冒頭の大学生の調査結果と同様の理由で使用していない人はまだまだ多い。しかし、そろそろTwitterは「キャズム超え」をして一般化したという見方も多い。そんな現状で、オトナたちの一部(というより結構な数)の人々は、匿名・不特定多数の「フォロアー」の数を集めるのに血道を上げて「follow me」と懸命につぶやき、「フォロアーが1,000名を超えました!」と喜んでいる。極めて希薄な関係構築をしているのだ。もう一方で、ツイート(=つぶやき・投稿)の内容も140字という制限もあり、「今、○○食べてるなう」的な、これまた希薄な内容を、著名人も含めて書いている。

 筆者は大学で講師をしていたり、大学生が主催するビジネスコンテストに毎年協力していたりという関係で、大学生のTwitterのフォロアーが多い。上記のオトナたちと何ら変わらない利用実態の人もいるので一概にはいえないが、全体的な傾向としては、大学生はアカウントを増やすことに慎重で、ツイート内容も「つぶやき」というよりは、自分の「考え」や「思い」を文字として表しているように思う。そして、多分に「寡筆」。投稿数が少ない。

 Twitterの利用意向とその実態から考えても、大学生の世界は現実世界の仲間が中心であり、それが最も大事なのだ。オトナもかつての自分たちを思い出すとわかるだろう。それに対して、オトナになれば、「とりあえず名刺交換はしたけれど、それっきり」的な関係が山ほどできる。人間関係の構築の仕方が全く違うのだ。もちろん、オトナもプライベートな関係をとても大事にする人も多い。そんな人は、匿名アカウントでmixiを使って限られた仲間うちを対象に楽しんでいたりする。
 大学生が寡筆なのは、その時間の使い方に関係する部分が多いだろう。大学のキャンパスで仲間と過ごす時間。授業の時間。アルバイトの時間。意外と、バーチャルに充てる可処分時間は少ない。故に、ツイートしている時間をみると、一人の夜(深夜)に集中している。オトナも仕事の時間に拘束されているものの、既に自分のペースを作ることになれているため、「スキマ時間」でツイートすることができる。そうした違いが大きいのではないか。

 昨今では「Twitter面接」なる言葉も登場しつつあるなど、厳しい就職環境の中で少しでも情報収集をしたり、人間関係の接点を広げようとしたりと、大学生のTwitter利用は高まっている。しかし、最も重要な価値観としては、4年間という限られた「人生の夏休み」を有意義に過ごすためには、希薄なバーチャルの関係より、リアルな仲間との関係・時間が大切というのが本音だろう。それが冒頭の調査結果、「利用したくない」57.0%に現れているのだろう。

 新しい有望なメディアがあれば、それを有効に活用しようとすることは重要だ。しかし、そのユーザーの心理を十分考慮して、どのようなターゲット層に適し、適さない層は誰で、その理由は何なのかを十分考えることが欠かせない。調査結果はそれを示しているといっていいだろう。


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2010.12.07

日経の「ブランド広告」は誰がために?

 街にクリスマスソングが流れ、イルミネーションがツリーで瞬く季節がやってきた。男性諸氏は彼女・奥方へのプレゼントは決まっただろうか?

 12月6日の夜、タウンウォッチのため銀座通りを歩いていて、クリスタル製品・アクセサリーで人気の「スワロフスキー(Swarovski)」の前を通りがかった。店舗を覗いてみたら、多数の男性がショーウィンドウにへばりついていた。
 そういえば、朝に読んだ同日の日経MJの連載コラム「マーケティング 八塩圭子ゼミ」には、「ブランドの神通力」というタイトルでクリスマスプレゼントには「ブランドものを贈れば間違いがない」と書いてあった。集団と社会との「同調」という消費者心理や、日本人独特の価値観を説明する例示として用いている論だが、「さすが八塩先生、バブルを知っているオトナは言うことが違う!」と、同世代として密かに思ってしまった。

 八塩先生は記事中で「なぜ人は高級ブランドのファッションやバッグを身につけたいと思うのか」と問うているが、その「理由」は記事に書いてある。本稿では、いわゆる「高級ブランド」という多少背伸びをしなければならない品々は、どのような購買意志決定がなされていくのかを考えてみよう。

 先週の日経新聞の夕刊を思い出せるだろうか。記事ではない。広告だ。きらめく星の如きブランドもののオンパレード。毎年恒例、日経名物(?)のクリスマス・ブランド特集である。
「覚えていない・・・」と思った人。では質問。日経新聞の夕刊は誰が読んでいる?そして、そこに掲載されている広告を主体的に見た?
 全ての人が該当することではなく、未婚・一人暮らしなどの場合は条件外だが、妻帯者の家庭では多くの場合、夕刊は家にいる妻が先に見る。そこでブランドものに目が行き、興味に駆られてしばし眺め、欲求がかき立てられ(AIDMAの法則のA~Dの過程である)、該当ページを開いて、帰宅した夫の目に触れやすい場所にこれ見よがしに置いておくのだ。静かなるおねだり。もしくは、無言の圧力。いや、もしかすると赤ペンで商品に○が付けてあるかもしれない。ポストイットが貼ってあるかもしれない。もはや明確な示威行為である。

 無言の圧力や示威に屈した夫は、いつ行動を起こすのか。ブランドショップにとっては今週あたりが前哨戦。来週あたりが決戦だ。サラリーマンのボーナス支給日がそのあたりから始まるからである。つまり、冒頭のスワロフスキーの店の男性陣は、ボーナス前に、購入に向けた「品定め」をしていたわけだ。
 「でも、日経に載っていたブランドは、“スワロ”はまだかわいい方で、目が飛び出るほど高くて“ちょっと背伸び”どころか“清水の舞台”だ」と思った人。その人は比較的若い人ではないだろうか。今日、年齢と所得は必ずしも正比例しないものの、年功序列は根強い。そして、「若者の新聞離れ」と言われるように、若年層の購読率は高くはない。日経の夕刊を宅配で購読し、隅々まで読んでいる人は年齢層が高い。若年層は「電子版」への移行も多いだろう。故に、読者は収入や生活に余裕があり、高級ブランドもの清水の舞台から飛び降りなくても購入することができる。そうしたターゲットを狙った広告展開なのである。

 上記で「ターゲット」と書いた。確かに直接的なターゲットは、日経夕刊の読者で、比較的金銭的に余裕のある男性層ということになる。しかし、前段で夕刊広告をめぐる、妻の動きを記した。その点も購買にいたる原動力として見逃せない。
 「DMU」という。Decision Making Unit。「購買決定単位」と訳されるが、「モノの購買に関与する人々」という意味だ。ターゲティングにおいては、時に単独のターゲットだけを見るのではなく、「DMUが誰で、どのような関心事を持っているのか」を洗い出して、適切に働きかけを行うことが欠かせない。
 上記の例では、夫はターゲット(Target)であり、購買意志決定者(Decision maker)だ。ターゲットがプレゼントに迷っている時。もしくは、関心を示さない、もしくはあろう事か忘れている時、それに対して、強力な影響者(Influencer)として妻が関与するという関係になる。さらに、妻が働きかけた時、夫は「日経に載っているのだから、品物に間違いはないだろう」と信用する。日経はエンドーサー(endorser:裏書人=裏付け・信用力を与える人)として作用する。日経MJの読者なら、「ブランドもので間違いなし」と言った八塩先生もエンドーサーである。

 商売は完結しなければキャッシュを生まない。誰が、どのような関心事を持っていて、いつ、だれに、どう働きかければ、「購買」に向けて人を動かしていくことができるのかという詳細な設計が欠かせないのだ。
ジングルベルを聞きながら、店頭でプレゼントのラッピングを頼む時に、そこにいたるまでの過程を思い出してみて欲しい。


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2010.12.06

マクドナルドがデリバリー市場を破壊する?

 日本マクドナルドが今月末から東京・世田谷の店舗で試験的にデリバリーサービスを開始し、来年4月までに都内で10店舗程度、夏をめどに全国展開をするという。

 デリバリーサービスは原則24時間体制。ハンバーガーやポテト、ドリンクなどの注文をコールセンターで受け付け、バイクで店舗から10分以内の地域に配達する。配達の経費、主に人件費が従来よりかかるため、そのコストは別途宅配料を顧客から徴収するか、メニューを値上げすることを検討しているという。

 マクドナルドの店舗数は、現在効率化を図るため削減中ではあるが、2010年2月時点で3,686もある。最終形としてその数のデリバリーサービスが動き出すのだ。宅配ピザ市場のリーダー企業は、売上げ・店舗数とも第1位はピザーラだが、約570店とハンバーガー業界第3位のロッテリアと同等(2位はモスバーガーの約1,360店)の店舗数しかない。また、店舗数が1,000を超えている宅配対応の外食チェーンとしては、カレーのCoCo壱番屋があるが、同社は全店対応しているわけではない。

 そもそも、消費者がデリバリーサービスに期待することとは何だろうか。
デリバリー。古い言葉で言うならば「店屋物」もしくは、「出前」。両者に続くのは「~で済ます」という言葉なので、「味」に期待するのではなく、「手軽さ」や「時間節減効果」である。「Time save」が中核的価値なら、それがどのように実現されるかという実体は、チェーン化されたデリバリーサービスならではの「当たり外れがない」ということだ。

 マーケティングとは消費者と企業の「価値の交換活動」である。「価値」の実現と、その「対価」に注目してみよう。
 例えば、「飲料」の中核価値は、「喉の渇きが癒せる」ことだ。商品ならミネラルウォーターで実現でき、対価は100円程度である。単に喉の渇きが癒せるだけでなく、「スッキリする・おいしい」という味という「実体」をともなうなら、清涼飲料水という商品で150円程度の対価で販売できる。
 デリバリーサービスにおいてはどうか。
手軽という中核価値を実現している、従来型の飲食店、例えば住宅街に近い中華料理屋の場合。出前をしない、いわゆるラーメン専業店の相場は、概ねその時代の「タクシー初乗り料金」と同等とよくいわれることから、750円~800円程度。住宅地の店はそれより安く650円~700円程度だろう。そば屋の基本的なメニューも同等だ。価格は店内価格と出前の場合と同じ。配達料込みである。
 デリバリー専業のピザーラ。ロングセラーの「ピザ・モントレー(トマト味・カレー味)」はMサイズで2,100円。2人で分ければ1人前1,050円で配達料込みということになる。 
 CoCo壱番屋は配達料がカレー1皿あたり100円+1軒200円だ。カレーの価格はメニューによるが、中間価格帯は750円程度だろう。1皿配達なら1,050円となる。費用の根拠としては、片道10分の宅配に時給1,000円のアルバイトを使った場合、1注文あたり333円価格に転嫁すれば赤字にはならない。ピザーラのように価格に込みにするか、CoCo壱番屋のように別料金にするかの違いで、両者の価格帯が同等なのはポリシーが同じだからだろう。こう考えると、配達料が高く感じるが、「手軽」という中核的価値に加えて、「当たり外れがない味」という実体の付加価値分も含めて消費者は受入れていることがわかる。

 価格設定には3Cの視点が必要だ。自社視点(Company)・顧客視点(Customer)・競合視点(Competitor)である。
 前述の例で、「顧客視点」で「この程度までなら払っていいと思う価格(Customer Value)」に基づいているのが、「ラーメン1杯=タクシーの初乗り料金相当」だ。そして、専門店でないので、それより少し安めに設定して、配達料込みにしているのが、住宅地の中華屋やそば屋の価格だ。その価格に比べて、「自社視点」で配達料を価格に転嫁し手いる分だけ割高になっているのがピザーラやCoCo壱番屋の例。そして、先行するデリバリー専業や、デリバリー対応飲食チェーン対して「競合視点」で勝負をかける価格設定に出ると筆者が予想するのが日本マクドナルドの展開だ。

 サービス開始に当たって、値上げか、別途宅配料を徴収と表明している。しかし、まずは1店舗で試験を開始し、次に4店舗。その次に全国展開という段階的施策は「赤字を出さないギリギリの配達料金(もしくは値上げ)」を探るためだと思われる。
 代表的なセットメニューである「ビッグマックセット」は、地域別価格の平均が650円程度となるだろう。その場合、ピザーラやCoCo壱番屋の配達料と同じロジックなら、メニュー100円値上げ+配達料1軒200円で、配達人件費1件333円を賄って約1,000円となるはずだ。しかし、「顧客が払ってもいい」というcustomer Valueでマクドナルドのセットに1,000円はないだろう。故に、できるだけ低廉な価格転嫁か配達料の設定を考えているはずなのだ。例えば、「配達はセットメニューのみ。店頭メニュー価格+100円で、注文は3件以上。宅配料は無料」というような設定だ。

 手軽に、低廉な料金で、誰もが知っているマクドナルドのメニューが配達してもらえる。それが実現した時、「手軽」という中核価値だけの「店屋物」や、「当たり外れがない味」という実体を伴ったデリバリー専業や対応店に対しても、競合優位なポジションをマクドナルドは構築することになる。

 マクドナルドは他業態に対して価格的に「競合優位」を構築しようと考えてはいないかもしれない。しかし、強大な力を持ったコストリーダーが、別の業界に進出したり、今まで以上に注力したりした時、既存のプレイヤーは甚大な被害を受けることがある。例えるなら、米国において2005年にウォールマートが玩具に力を入れたことによって、米・トイザらスは一時、投資会社に身売りをすることになるという憂き目を見た。
 24時間体制・1,300店以上の市場カバレッジとコスト競争力で、外食事業において向かうところ敵なしの日本マクドナルドが、デリバリー事業に進出をするということは大きな変化を業界内にもたらすことは間違いないのである。
来年の夏、全国規模での展開がどのような形になるのか、目が離せない。


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2010.12.03

今こそ、「マーケティングとは?」を深く考えてみよう

 日本は90年代初頭のバブル崩壊以来の、長きに渡る不況から抜け出すことができぬまま、世界的な経済危機にも巻き込まれた。1993年からの「失われた10年」という言葉は、いつしか「失われた20年」と数を増している。このまま2012年に「20年」が終わる日が来ても、人口減少は既に顕著であり、2015年から始まると予測されている世帯数減少も目前に迫っている。日本は市場縮小国なのだ。GDPが中国に抜かれただけでなく、産業の各分野で国際的な優位性が失われている。そんな今日だからこそ、「マーケティング」の意味を考え直してみたい。

  電通グループのマーケティング戦略企画会社である「電通イーマーケティングワン」が11月24日に配信した、同社独自の「CRM意識調査」に関するニュースリリースはある意味、衝撃的だ。
 『マーケッターの危機感が浮き彫りに~「自社のマーケティング活動は後れている」56% CRMの領域拡大 現在の顧客だけでなく、新規見込み顧客も含めた顧客リレーション構築へ』
 http://www.dem1g.jp/topics/topics_101124.html
 
 ショックなことは2つある。1つは回答企業の過半が自社のマーケティングに対して遅れを自覚していることだ。しかし、それは2つめのショックなことに比べれば些末なことだ。遅れは取り戻せばいいのだから。問題は、企業のマーケターがその<具体的な項目として「見込み顧客の育成・創出」(約61%)、「新規見込み顧客獲得戦略・施策検討」(約59%)など、“新規見込み顧客を対象にしたマーケティング活動”を特に成功していない活動と考えている>(同社リリース)と回答していることだ。
 同調査はCRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)、つまり、顧客といかに良好な関係を構築・維持・向上させ、永続的な収益を上げていくかという考え方に関した調査である。CRMは、市場の拡大期における新規顧客獲得(acquisition)に偏ったマーケティングへの反省を込めて、顧客の継続促進(retention)の比重を高めて関係性を構築・強化しようという考え方である。それにも関わらず、「新規獲得」が大きなテーマになっているのである。そこからは、マーケターの焦燥感がにじみ出して見える。「モノが売れない時代」であり、不景気の中で、いかに企業として生き残りを図っていくかが試される中、調査結果はタイトル通り「マーケッターの危機感が浮き彫り」になっているのだ。

 そもそも、マーケティングとは何か。
 ピーター・ドラッカーの「販売(selling)の必要性をなくすこと」という定義が最も端的な定義である。ドラッガーの言う「販売」とは、とにかく闇雲に売り込んだり、無理な安売りをしたり、無駄な広告を大量に投下したりという状態を表わしている。そんなことをするよりも、まずは顧客を知り、顧客の望むものを提供できるようにすれば、おのずとモノは売れていくのだという論である。もう少し長い言葉でも、わかりやすく明言している。
 「マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、おのずから売れるようにすることである。(The aim of marketing is to know and understand the customer so well that the product or service fits her and sells itself. Ideally, marketing should result in a customer who is ready to buy.)」

 ドラッカーの言葉と同じ意味合いで、「ものづくり」の企業に向けて具体的に、これからの課題を提示した記事が12月2日付日経新聞夕刊に掲載された。5面コラム「十字路」:東レ経営研究所チーフエコノミスト・増田貴司氏による執筆だ。<最近、製造業企業が保守・リースやソリューション提案といったサービス事業に進出する動きが活発化している>という書き出しである。具体的には、新興国などの追い上げで、日本のお家芸たるハイテク製品までが短期間でコモデティー化し、価格競争に突入する中、<先進国の製造業が収益を高めるためには「モノの価値」ではなく、「モノを通じて実現するサービスの価値」で勝負することが重要になってきた>とするものだ。そこで<きめ細やかで親切、丁寧な、日本流の「おもてなし」のサービスが海外ビジネスで強力な武器になりうる>と論じる。

 前段の「モノを通じて実現するサービスの価値」とは、フィリップ・コトラーが、マーケティングとは「価値の交換活動」であるとして論じた言葉そのものだ。コトラーのマーケティングの定義は以下の通りである。
 「マーケティングとは、製品と価値を生み出して他者と交換することによって、個人や団体が必要なものや欲しいものを手に入れるために利用する社会上・経営上のプロセスである」。
 顧客はモノに対価を払っているのではない。その背後にある「価値」に対して対価を払うのである。つまり、「モノを通じて実現するサービスの価値」だ。

 では、顧客が求める「価値」とは何か。そして、それをどのように把握して、実現するのか。それには、マーケティングの最重要テーマである「ニーズの把握・深掘り」について理解しなければならない。
 セオドア・レビットは、「昨年度、4分の1インチのドリルが100万個売れた。これは、人が4分の1インチのドリルを欲したからでなくて、4分の1インチの穴を欲したからである」と自著に記している。一般にはもっとわかりやすく、「顧客はドリルが欲しいのではない。穴が空けたいのだ。」という意義に置き換えて説明される。つまり、顧客は「モノ」ではなく、それによって実現された「理想的な状態」を手に入れたいのである。つまり、「モノを通じて実現するサービスの価値」だ。

 繰り返し、「モノを通じて実現するサービスの価値」というコラムの言葉を引用した。ここで重要となるのが、その言葉の「主語」が誰かということだ。
 ダイレクトマーケティングの父、レスター・ワンダーマンは「19の法則」の第1番目に「主人公は商品ではなく、顧客である。(The Consumer, not the Product must be the hero.)」と述べた。

 電通イーマーケティングワンの調査では、日本の「危機感に苛まれるマーケター」の姿が浮き彫りにされ、「モノが売れない時代」に、新規顧客を獲得せんと焦る気持ちが読み取れる結果が出た。しかし、既存顧客を相手にするにしろ、新規顧客を獲得するにしろ、「顧客は誰か」「顧客のニーズは何か」が明確になっていなければ、話は始まらない。
 
 「マーケティングとは?」・・・そんな素朴な質問に端的に応えようとすると、意外と難しいことに気づく。しかし、こんな時代だからこそ、その意味を常に意識していることが欠かせないのである。厳しい時代だからこそ、それを忘れずにいたい。


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2010.12.02

パン焼き器GOPAN大人気のヒミツに迫る!

 三洋電機の「GOPAN(ゴパン)」の人気がとまらない。そう、あの家庭で米から焼きたてパンが作れるパン焼き器だ。

 もはや「GOPAN騒動」と呼んでもいいだろう。7月に10月8日発売すると発表したと同時にテレビなどで大きな話題になり、予約注文が殺到。発売を1ヶ月延期し、11月11日の発売と同時にさらに予約は加速。今年度販売見通の5万8千台を既に超えたため、製造が間に合わないとして予約受付を中止。受付再開は来年4月だという。「それでも手に入れたい!」という人も後を絶たない。ネットのオークションでは、実勢価格の4万9800円の約倍、10万円の価格がついている。

 11月26日付 日経MJ1面に『パン焼き器「GOPAN」体験型販促 流通を刺激』と、関連記事が掲載されている。三洋電機コンシューマエレクトロニクスは、ホームベーカリー市場年間43万5000台のうち3~4万台のシェアを持っている状態だったという。それが、単一機種で従来の販売数の倍以上にのぼる予約を獲得したことになる。記事では、そのヒミツを<「消費者の体験を重視し、都内で期間限定のカフェを開いたり、都内の成果・製パン材料点でデモンストレーションしたりした」>という点を強調している。それが<コメコパンが普及する中で膨らんでいた「わが家でも作りたい」という潜在需要が一気に顕在化した>と分析している。

 確かにGOPANの大ヒットには販売促進(Promotion)の成功という要素が大きく働いている。それも、従来型のマスメディアのプッシュ型コミュニケーションではなく、インターネットを中心としたプル型・口コミ中心のコミュニケーションが販売を加速した点が大きい。それは、2009年8月に発売され、ネットでの話題が話題を呼んで、今なお店頭では品薄が続く「桃屋の辛そうで辛くない少し辛いラー油」、通称「桃ラー」のヒットにも通じる。「手に入るうちに、何とかして手に入れよう」「手に入らないと聞くと欲しくなる」という、一種の飢餓状態がネット上で沸き上がったのだ。

 プロモーションは意図して成功した部分と、意図以上に盛り上がって受注がさばききれない悩ましい部分をもたらしたが、GOPANという製品(Product)のすばらしさと相まって効果を挙げたことを忘れてはならない。GOPANは「世界初のコメからパンが作れるホームベーカリー」であり、そもそも「米粉が入手しにくいため米粒をペーストにして焼く方法を考案した」というイノベーションなのである。

 イノベーションが普及する要件をE.M.ロジャースが5つにまとめている。
  1)相対優位性:前述の通り、従来も米粉を用いるパン焼き器はあったが、米粒から作れるという代え難い優位性がある。また、米粉は小麦粉と比べて独特のモチモチ感があり、それ自体が既にブームともなっていた。
  2)両立性:既にあるものと置き換えたり、放棄したりせずに済むという意味では、既存のパン焼き器ユーザーよりも、新規ユーザーが新たに「ホームベーカリー」を取り入れ、同じ米粒という食材で「パン食」と「ごはん食」を両立できるという、両立性の気軽さが受けたのだと思われる。
  3)試用可能性:お試しやデモでの購入前確認ができることは、三洋電機の販促の設計通りだ。さらに、試食した人などが「海苔の佃煮や納豆など、和食素材をのせて食べるとおいしい」などという書き込みをネットにしていることも試用の代替として機能している。
  4)複雑性:消費者が理解できないほど原理が複雑ではなく、ありがたさがわかる適度な複雑さを持っていることも普及の要件だが、「米粉を本体内で炊飯器のようにコメを水に浸して軟らかくしたうえで、高速回転する羽根で砕きペースト状にして焼き上げる」というような説明がメーカーからなされている。なるほど感が適度にあるといえるだろう。
  5)観察可能性:「目に見える効果」を意味するが、誰も製品を手にしていない状態で盛り上がっているため、家庭内での使用者の観察はなされていない。しかし、前述の試用可能性にあるネットの書き込みなどを参照することによって、「見える化」された効果を代替的に実現している。

 本体の約5万円という価格(Price)はどう消費者に受入れられたのだろうか。従来品の2倍の価格だという。さらにネットでのオークション価格はさらにその倍の価格が付いて、それでも買い手がついている。
 価格はイニシャルコストとランニングコストの両面で考えると売れるワケが見えてくる。三洋電機によると米粒を使って1斤のパンを作る費用は、従来の米粉を使う機種は340円であるのに対し、米やイースト、グルテン、砂糖などの材料を合計しても150円だという。つまり、コンビニやパン屋で食パンを買うのと同価格なのだ。初期費用はかかるものの、それ以降は食パンを買ったり、ごはんを炊いたりするのと同じ感覚で、ランニング費用を意識することなく、焼きたてモチモチのパンが楽しめるということなのだ。

 販促(Promotion)、製品(Product)、価格(Price)と、ヒットのヒミツを検証してきたが、流通(Place)はどうだろうか。日経MJの記事に記載がある。<「ブログやツイッターでも大きな話題になった。こうした消費者の反応に接したバイヤーが売れると確信し、思った以上の発注につながった」>という。

 つまり、GOPANの大人気は、メーカーの販促(Promotion)で作られたものではなく、消費者がプル型で話題を盛り上げたもので、その背景には優れた革新的な商品(Product)の特性があり、消費者が納得する価格(Price)があった。そして、消費者の人気、話題を見て、流通(Place)も販促に協力したり、大量の発注を決めたりしたという背景があるのだ。

 売れる商品にはワケがある。それは、いわゆるマーケティングの4P(Product・Price・Place・Promotion)のどこか1つが優れているのではなく、相互補完的にヒット商品としてのヒミツを作り出しているのである。


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2010.12.01

変わらなければ生き残れない:スーパー・DSの今を読む

 日経MJの12月1日付けと11月26日付けの紙面に、ディスカウントストアとスーパーの「これからの姿」を示すような記事が掲載されていた。そこから何を学び取ればいいのだろうか。

 12月1日の一面記事は、著しい成長を遂げているという、九州発のディスカウントストア(DS)「トライアルカンパニー」。「激安PB 数こそ力 59円ポテチでも利益」との大きな見出しが紙面に記されている。「主な激安PB」として紹介されているその他の商品は、缶コーラ29円、2リットルペットの緑茶79円、カップ麺59円、キムチ300グラム129円と、どれも文字通りの激安である。
 別の見出しとして「国内外 厚い生産網」という文字が記されている。前述のポテチは中国メーカーへの委託生産。以下、コーラは日本、緑茶は自社生産、カップ麺は韓国、キムチは中国だ。激安価格を支える委託先のメーカー数は、非公開ながら日中韓で数百社に上ると紙面にある。
 同社の戦略は明解だ。現社長が米国でウォールマートの経営に驚き、徹底してそれを研究し模倣する戦略を決意した同社は、調達・物流・販売と、それを支えるバックエンドのシステムと人材の活用まで「ウォールマートの徹底模倣」を貫く。「少しでも安く。少しでも効率的に」。そのための「しくみ」をウォールマートに学んで最も今日的に実現したことが、同社の強みなのだ。
 しかし、日本の人口は2005年に減少に転じた。世帯数も2015年から減少に転じるという推計がなされている。そんな「縮む日本」でどれだけ規模を拡大しようというのか。そんな同社の視線の先には、中国市場がある。ウォールマート同様、最大の武器であるシステムは中国・大連にシステム子会社を設立して構築した。システム部門の70名の中国人だけでなく、グループ全体2800人の正社員中、4割が中国人だという。将来の中国市場での店舗展開を視野に入れてのことと記事にある。

 「縮む日本」の中での最適化を目指す企業もある。同日の日経MJ5面のコラム「売る技術 光る戦略」に紹介されている「京成ストア」。「改装し接客充実」「対面販売、調理も眼前で」と見出しにある。千葉県松戸市にある店舗には60歳以上の高齢者の来店客が多いことから、野菜を顧客の要望に応じて細かくカットするなど、徹底した接客路線が高齢者に好評だという。特にカボチャなど堅い野菜を自分で着るのが困難な客に一段の小分けを行うというサービスを行っている。総菜も四方をガラス張りにした調理場で作り、ライブ感を演出し、出来たてを提供する。コロッケや天ぷらなどが好評といい、80歳の顧客の「作っているところが見えるとおいしそうに感じる」という声を紹介している。揚げ物は老人世帯には面倒になり、つい自分では作らないことが多い。それをおいしく提供しているのだ。
 日本は前回2005年の国勢調査で、65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合である「高齢化率」が初めて20%を超えた。2010年の集計がまだであるが、推計では既に23.1%、4人に1人に迫る数字になっているとされている。同社は「価格では勝負できないし、小手先の改装では限界がある」と、接客重視を実現するための全面改装を順次予定しているという。高齢少人数世帯化すれば、大量の商品を安く売ることに意味はなくなる。そこでは、高齢者に親身に接客することが最大の武器となるのだ。改装店舗では直後に対前年比5割増しの売上げ。その後も毎月1割増を記録しているという。

 11月26日付けの5面には「小型スーパー 個性競う」という記事が掲載されている。大手スーパー各社が都心で小型店の出店を増やしているという旨の記事だ。都心ではかつて、都心部からどんどん人口が周辺部に流出した「ドーナツ現象」の反対で、「アンパン現象」とも呼ばれる人口回帰が起きている。その需要を狙う動きである。「ヨーカ堂 こだわりの商品」「イオン ローコスト運営」と、各々の戦略の骨子が見出しとなっている。
 都心型小型店のひな形として10月に出店したという食品館阿佐谷店(東京・杉並)は、比較的生活にゆとりのある高齢者、共働き夫婦、単身者を顧客に想定し、通常店にあまり厚内のない商品や刺身などの鮮魚を店内加工するなど高価格帯の商品構成に特徴を出している 対照的と紹介されているのがイオン「まいばすけっと」の展開だ。プライベートブランド(PB)を中心とした100円以下のペットボトル飲料、ビール飲料。弁当の価格も398円。店舗はオフィスやコンビニエンスストアの跡地を活用し、出店コストを抑えるとある。
 都心回帰は職住近接のメリットの反面、古くからの商店街は既に廃れて買い物に窮する地域も少なくない。また、都心のコンビニは既に過当競争が激化した状態にあり、廃店も相次いでいる。両者の狙いは、同じ小型店による都心部出店でも狙うターゲットとそのニーズが異なる。しかし、「生活圏において、各々のターゲットが欲しいものが手に入らないという不便さを解消する」ことに勝機を見出しているのだ。

 「変わらなければ生き残れない」。かつては「小売の王様」と呼ばれた百貨店。その一角であり、バブルの頃に華々しくデビューした有楽町西武が、12月1日から最後の売り尽くしセールを始めた。
 市場環境は刻一刻と変化している。確実に日本の人口は縮小し、高齢化し、生活圏も狭くなってきている。その中で、日本市場で力をつけて、新たな成長市場である中国を目指す動きもある。一方で、高齢化した顧客に寄り添う動きもある。狭い生活圏の中でのニーズを拾う動きもある。ディスカウントストアとスーパーの業界は、生き残りを賭けて狙いを研ぎ澄まし、得意技を磨いて、確実に姿を変えつつある。


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