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2010.12.30

2011年は「峻別の年」

 12月30日付・日経新聞は年末らしい特集が掲載されていた。「ニュースで振り返る2010年」。そのひとつに、「百貨店閉鎖相次ぐ 消費不振、都心に波及」という記事があった。「2010年に閉鎖した百貨店」という一覧表には11店舗の名が連ねられている。
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 添えられた写真では、西武の店舗エントランスで深々と頭を下げるスーツ姿の男性数人の姿が写されている。「最終日の営業を終え、一礼する西武有楽町店の店長ら(25日夜)」との説明がある頭を垂れる人物らの足元には「西武渋谷店で、西武池袋本店で、お逢いしましょう」との横断幕がある。

 百貨店は高級品を幅広く品揃えし、長きに渡って一億総中流のあこがれとして流通業界に君臨した。ターゲットは「中流階級以上の国民全て」。ポジショニングは「小売の王様」といわれる言葉が表している、「高級でよい品揃え」だ。それが戦略の基盤となっている。

 いわゆる「ビジネスモデル」を分解すると、「ストラテジーモデル(戦略)」「レベニューモデル(収益)」「オペレーションモデル(運用)」の3つに分かれる。

 80年代から市場のターゲットセグメントとその嗜好は細分化し、百貨店のストラテジーの機軸であるターゲティングとポジショニングが旧態化した。
 レベニューはどうか。売上=客数×客単価だが、91年バブル崩壊以降、来店客も減少し、高額品需要が低迷して客単価も減少した。利益=売上-コストだ。社員の平均年齢が上がって人件費が上昇。レベニュー構造が実質的に破綻した。
 商品は売り切りではなく委託販売が中心で、売れなければメーカーに返品することが基本だ。自社でリスクを取って、売り切るためのノウハウを蓄積するSPA(製販一体)にオペレーションモデルで差がついていった。また、アパレルのワールドなどのように、SPAにチャレンジしてノウハウを蓄積したメーカーは百貨店から離れていった。西武有楽町跡に入居が決まったルミネのように、テナントを機動的に入れ替え、「館」全体の集客力と収益性を常に一定以上に保つというノウハウの蓄積も遅れた。
 銀座の松坂屋は大胆なテナント戦略に転換したように見える。勢いのある海外ファストファッション勢の一角であるフォエバー21や、家電量販のラオックスを誘致した。しかし、それは2013年建て替えまでの期間限定の実験的展開であり、本業、自社の売り場とのシナジー効果はまだ出ていないという。
 なぜ、シナジーが出ないのか。ターゲティングとポジショニングの違いである。ファストファッションの客は、「安くてそれなりのもの」を提供するというポジショニングを店に求め、それを目的買いする層である。百貨店の客は「高級でよい品揃え」を供するというポジショニングを店に求め、さまざまな品物を見て歩き、買いまわりする層である。中国資本傘下となったラオックスの主要顧客は中国からの観光客である。日本人なら少し離れた有楽町のビックカメラの方が全般的に価格が安い傾向であることを知っている。中国人観光客りは、今のところ家電以外ならファストファッションの方がお気に入りだ。

 ここまで記事に関連して百貨店の現状を記してきた。問題は、前述の通りストラテジーとレベニュー、オペレーションからなる「ビジネスモデル」が外部環境と整合しなくなっており、戦略の機軸たるセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング、いわゆる「STP」も同様に外部環境に合わず、自社内部環境とも不整合を起こしていることにある。しかし、そうした状況は百貨店業界に限ったことではないはずだ。 
 市場の景況感は若干の上向きを見せている。二番底懸念も遠のいたといわれている。しかし、経営戦略の根本であるビジネスモデルと、マーケティングの基本であるSTPの不整合を起こしているような業態・企業には、市場の波を見切れていないことになり、回復基調にのる内部の力ももはや残されていないはずだ。チャンスがあるときほど、優勝劣敗が明確になる。2011年はそれが厳しく分かれる「峻別の年」になるだろう。


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