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2010.12.27

2011年、「異種格闘技戦」をどう生き抜くか?

 日経MJに「予期せぬライバルは国境を超え、業種、業態の垣根を越えてやってくる」と、昨今の市場環境の潮流に言及したコラムが掲載された。来年はさらにそれが強まるだろうという論調だ。では、「どう生き抜けば、勝ち抜けばいいのか」が問題だ。

 コラムは同紙・編集委員の連載「底流を読む」だ。12月27日付のタイトルは「市場は“異種格闘技”に」。サブタイトルが「敵は垣根を越えてやってくる」である。

 1つめの事例として、垣根を超えてきた敵、グリーやDeNAなどのソーシャルゲームやiPhoneなどのスマートフォンに攻撃された、任天堂が挙げられている。2010年4月~9月期の連結決算は最終赤字20億円。<11年3月期も売上高が1兆1000億円、経常利益が1450億円となる見込みで、それぞれピークだった09年3月期の6割、3割の水準>だという。
 任天堂の失速は、環境分析的にいえばマクロ環境分析(PEST:Political・Economical・Social・Technological)のTechnological(技術的成熟度の影響要因)にあたる。
 影響を及ぼす要因は、各々発生確率と予想の難易度、速度、防御の難易度が異なることに注意が必要だ。リーマン・ショックに端を発した経済危機は、「100年に一度」といわれる発生確率で予測も難しい。Economical(経済環境の影響要因)は不可避で劇的な変化を市場にもたらす。一方、日本の人口縮小はとっくの昔にわかっていたように、Social(社会環境の影響要因)はジワジワと変化する。対応は比較的しやすい。Political(政治と規制事項の影響要因)は、関連法規が変わると業界環境が劇的に変化してしまう。薬事法の規制緩和でセルフ販売が自由化され伸びたドラッグストアが、一層の規制緩和で大手流通の参入によって業界再編になっている例がそれにあたる。但し、法令は一朝一夕には作られないので、対応ができないわけではない。では、問題のTechnologicalはどうか。突然、特許を取られ技術が囲い込まれたり、新技術が開発されて既存技術が陳腐化したりということはある。しかし、その技術が商品化され市場で普及するには時間がかかる。市場の技術動向を見据えつつ、普及までの時間をどう使うかがキモだ。ちなみに、iPhoneは先端技術をほとんど使っていないので、任天堂対アップルをその観点で見れば、アップルのマーケティングの勝利といえるだろう。

 コラムの2つめの事例は日本マクドナルドのコーヒー販売の拡大だ。<約3300店に及ぶ店舗網とハンバーガー類の収益を原資に低価格コーヒーを提供、専業店を利用する顧客を奪取>とある。<今12月期の販売量見込みは3億3000万杯>と、<専業店大手を1億杯ほど上回る>という勢いを見せている。
 この事例は「業態の垣根越え」にあたる。そもそも、マクドナルドはどのような業態で戦っているのか。ドメイン(戦いの土俵)を考えてみよう。最も狭いドメインで考えれば、自ら「ハンバーガーレストラン」と称している業態だ。競合はハンバーガーチェーン各社。しかし、マクドナルドは小さな業界のリーダーに治まるつもりはなく、ドメインを拡大している。競合を和洋、ファミレス、そしてケータリングなどにまで拡大し、「1000円以内のカジュアルな外食を提供する事業」と考えているという。市場規模は8兆円だ。
 「垣根越え」で巨大な力を持った企業に押し潰されないためには、近隣業態のプレイヤーの動向をよく観察しておくことが欠かせない。マクドナルドは評判の悪かったコーヒーをプレミアムコーヒーに変えた。しかし、その前から新業態・新店舗の「マックカフェ」を展開しては撤退するという経験を2度している。その時点で、カフェ業態への本格進出を考えていたことが伺えるのである。

 動向を予測してどう手を打つのか。コラムは有名な米ウォールマート対トイザラスの事例に言及している。クリスマス商戦時に玩具売り場を大幅拡大して、トイザラスの牙城を崩した。「販売網と大量仕入れ」による「規模の経済」である。トイザラスも「玩具業界」では規模の経済を効かせてきた企業だが、「垣根越え」にやられたのだ。なぜか。「規模は、さらに巨大な規模に負けるから」だ。それを避けるためには、「経験効果」を構築しておくことが必要だ。効果・効率を高める、「人と組織」に付くノウハウの蓄積と活用である。
 例えば、文具メーカー再大手のコクヨグループで文具通販を展開するカウネットは、2007年に同業の文具通販会社2社を買収合併した。「規模化」することも大きな目的の一つであったはずだ。しかし、アスクルを追い抜くことはできなかった。先行するアスクルは、規模で戦っているだけでなく、蓄積した経験効果があるからだ。同社は岩田社長が「顧客の代弁者でありたい」と語るように、徹底した顧客志向を貫く思想と、それを体現するコンタクトセンターがあり、そこから吸い上げられた顧客の声が商品開発などに活かされている。顧客は「アスクルならでは」という「経験価値」を感じて利用している側面も大きい。
 前述の「コーヒー戦争」でマクドナルドに攻められる側に回った専業大手、スターバックスやドトールコーヒーも経験効果による戦い方、経験価値の提供で生き抜くことが求められる。「専業ならでは」の味や香りという商品の価値を高めるだけでなく、顧客応対や店内空間の作り方など、蓄積したノウハウで低価格に負けないことを目指すのだ。

 コラムの3つめの事例は家庭用品製造卸のアイリスオーヤマのLEDの製造販売。<家庭外壁などの電飾で培った技術を応用し中国で低コスト生産、家電大手メーカーが手薄のドラッグストアなどで販売を伸ばしシェアを拡大した>とある。アイリスオーヤマの勝ちのポイントは、「販路」だ。マーケティングの4P(Product=製品・Price=価格・Place=販路・Promotion=広告/販促)といわれる施策展開の要素の中で、販路は唯一、自社だけでコントロールできない要素だ。なぜなら、製品を作ることも、価格決定も、広告も自社だけで決定できるが、販路は利害関係が絡む「他社」との調整が欠かせない。調整には時間がかかる。故に、アイリスオーヤマは自社が得意な販路を中心に販売を伸ばしたのだ。他社が追随してドラッグストアに販路を広げようとしても、入り込むには時間がかかる。その参入障壁を持ちつつ、価格敏感度が高いターゲット顧客が集まり、販路であるドラッグストアも安い価格で提供できる商品を仕入れたいというニーズがある。そこに勝機があったのだ。競合に勝ち抜こうと思ったら、既存の販路をうまく活用することも欠かせないのである。

 2011年は、景気の踊り場や二番底懸念が遠のいたといわれる。しかし、まだまだ厳しい環境であることには変わりはない。いや、昨年から言われ始めたキーワード、「ハーフエコノミー」や「ニューノーマル」が示すのは、08年の経済危機以前に経済環境が戻ることはなく、異常事態と思っている環境が常態(ノーマル)化することを意味している。2011年もそれが継続する可能性は高い。
 生き抜くために、勝ち抜くためには、環境や競合、顧客をよく見て、自社の強みを最大化できる方法を愚直に探っていくことが欠かせないのである。

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