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2010.11.25

点から線へ、網から面へ:ユニクロの出店政策を読み解く

 ユニクロの出店政策が好立地確保に向けて加速している。その意図を考察してみよう。

 11月24日付日経MJに「ユニクロ 都心主要駅の営業強化 東京都新宿、好立地に移転」という記事が掲載された。「期間限定 「ヒートテック」専門店も」という小見出しもある。記事内容はユニクロの「駅ナカ」ショップについてだ。同記事によると、ユニクロの現在の出店政策は「単位面積当りの販売力強化」であり、そのために基本路線として1300平方メートル超の大型店舗開発が優先しているという。その例外が駅ナカであり、30~165平方メートル程度の小型店を他社・他業態に先駆けて好立地確保のために展開しているということである。

 あなたが飲料を購入する時、それをどのように手に入れたいと望むだろうか。手に入れたい飲料の種類にもよるだろうから、少し整理する。缶や500mlペットボトルなどの小型容器に入ったタイプ。1.5リットルや2リットルの大型容器のタイプ。そして、とてもオシャレな海外ブランドが作っている希少性もある話題の飲料。各々の場合を考えて欲しい。

 閑話休題。ユニクロの出店政策における駅ナカの位置づけに関しては、日経MJの記事では「営業網の拡大を急ぐ」と書いてある。
 1984年に広島に第1号店を開業したユニクロは、広い駐車場を備えたロードサイド店というチャネル(Place)展開であり、そこでベーシックでユニセックスな服という製品(Product)を安価な価格(Price)で取りそろえ、チラシ広告で集客(Promotion)していた。ターゲットは家族連れ。家族が着る、安くてそこそこの品質の服が一度に揃うというポジショニングが支持されていた。つまり、郊外の個店という「点」に集客していたのが原点だ。
 出店政策が変化したのは、1998年の原宿出店以来である。前年に東証二部上場を果たし、豊富なキャッシュを手にしたことも大いに関係しているはずだ。2000年にはJR東日本・東日本キヨスク(現JR東日本リテールネット)と業務提携し、初の小型店、駅ナカ店である「ユニクロキヨスク新宿南口店」をオープンした。チラシに頼るのではなく、99年から米系広告代理店Wieden+Kennedy社との契約でブランド広告(Promotion)を強化し、ロードサイドではなく、人のいる都心や人が通る駅という場所(Place)に出店し、家族連れではなく、個々人をターゲットとした展開に切り替えたのである。
 以後、今日に至る展開は、商品(Product)はベーシック&ユニセックスからファッション性を高めた。2009年のデザイナー、ジル・サンダーとの監修契約、彼女自身のデザインによる「ユニクロ+J」の展開で、かつてはユニクロ製品と判らないように着るというポジショニングから、ユニクロブランド及び「+J」は積極的に購入・着用するブランドのポジショニングへと変化している。しかし、価格(Price)は以前と大きく変化はしておらず、割安感は向上していることも今日の高い顧客支持の源泉である。

 先に述べた、謎かけのような飲料の話に戻ろう。
 缶や500mlペットボトルなどの小型容器に入ったタイプの飲料を購入しようと思う時、恐らくあなたは喉の渇きを覚えているはずだ。そんな時は「すぐに手に入れたい」と思うだろう。故に、主たる販売チャネルは、どこにでもある自販機か、いつでも開いているコンビニとなる。場合によっては、自販機を目にした時に喉の渇きに気づいて購入するということもあるはずだ。
 1.5リットルや2リットルの大型容器のタイプの飲料を買おうと思うのは、持ち帰って家や職場にストックして飲むためだろう。その場で飲み干す人はまずいない。故に、スーパーで多くの種類から選んで、できれば安く買いたいと思うだろう。スーパーの特性上、レジで並ぶこともあるため、「すぐ飲みたい」と思う人には向かない。
 オシャレな海外ブランドが作っている希少性もある話題の飲料。限定発売かもしれない。だとすると、「何とか手に入れたい!」と思って、売っているところまで足を運んで購入するだろう。東京なら銀座、大坂なら心斎橋辺りにある百貨店の階上の売り場まで、エレベーターやエスカレーターに乗って買いにいく。

 ユニクロの現在の出店政策は上記の飲料の例と同じだ。日経MJの記事では「営業網の拡大を急ぐ」となっているが、その「網」のかけ方が極めて巧みなのだ。何に対して網をかけているのか。「人(ターゲット)」ではない。「人(ターゲット)」の「ニーズ」に対して網をかけているのである。
 ふと、足りない衣類が欲しいと思う。そんな時には、通勤帰りに立ち寄れる便利な駅ナカに店舗がある。通勤の「ついで買い」として、自販機を見て喉の渇きを思い出すように購入するというニーズも狙っている。多数の商品の中から選んで「まとめ買い」するというニーズに応えるのが、各拠点で展開されている大型店である。さらに、限定商品もある「+J」を扱っているのは心斎橋の旗艦店や銀座店をはじめとする、限定店舗である。その商品が欲しいと思って「目的買い」するファンが足を運ぶ。ブランドと店舗価値を高める狙いである。

 かつて「点」であったユニクロの店舗は、ロードサイドにその数を増やし「線」になり、都心部に出店をするようになって「網」になった。さらに、一律に網をかけるのではなく、ニーズに注目してターゲットがいるところに的確に網を仕掛けるようになったのである。
 さらに忘れてはならないのが、インターネットによる通販、及びモバイルの活用である。ユニクロの様々な先進的なWeb施策は稿を改め論じることとしたいが、ターゲットがどこにいようとも集客できる仕掛けとして機能している。もはや「網」は「面」となっているのである。

 本稿ではあえて“(Product)”と付記しているように、販売チャネル(Place)以外のマーケティングの4Pの要素を強調し、ターゲットとポジショニングに関しても言及している。ユニクロの出店政策は、ターゲティング→ポジショニング→4Pの各要素が顧客のニーズを中心として、きれいに整合しているからこそ、機能するのだという点も見逃せない。


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