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2010.11.30

「チキン人気の意外な人気の裏側」:ワールドビジネスサテライト特集より

 11月29日、ワールドビジネスサテライトの冒頭特集にビデオインタビュー出演をした。当日の午前11時にテレビ東京のクルーが取材に来て、12時間後には編集済みのビデオが放映されるというスピードは、さすがテレビという感じだ。しかし、テレビは往々にして話したかったことの一部しか放送されない。(昨夜は話の主旨が伝わるようには編集してもらえたのでありがたかったが)。そこで、当Blogで番組の内容を振り返りながら、金森の説明主旨を少し丁寧に採録したいと思う。


特集タイトル『チキン人気の意外な人気の裏側』


■ファストフード各社の近況

 特集冒頭は、意外にもロッテリアの担当者へのインタビューであった。マクドナルド対ケンタッキーという構図の「チキン戦争」が目に付くが、さすがロッテリア、巧みに追随している。

 ロッテリアフードサービス マーケティング本部 長元恒 本部長氏へのインタビュー。
「ちょうど今12月に入る時期」「チキンは)クリスマスのイメージもある」「食材でチキンを強化したい」
しょうゆマヨチキンバーガー11月18日から290円で販売など、ロッテリアはチキン商品を増やし、売れ行きがよければ定番メニューに加えるという。
 
 次に登場したのは、本命、マクドナルド。
日本マクドナルド 統括マネージャー 萩原和之氏へのインタビュー。
「年々 日本の外食市場におけるチキンの消費量が伸びてきている」「”ビーフのマクドナルド”のイメージが(非常に強いが、チキンやそれ以外のカテゴリーでブランド認知度のNo.1をとっていく戦略が今後の売り上げのベースラインを上げる非常に重要な戦略になる」。
 チキンメニュー登場記者会での原田社長の「既にチキンでも№1だが、名実共にトップを取る」という主旨の発言が社内に浸透し、さらに「売上げ底上げ」という戦略の目的が明確化されている点が興味深い。

■チキン需要の急増と卸業者の現状

 番組では、「外食産業が低迷している今、コンビニやファストフード ファミリーレストランなどで、チキン市場の売り上げが右肩上がりで伸びている」と紹介し、それらに食材としてのチキンを卸している業者を取材した。

 都内にある鶏肉専門商社「鳥新」。倉庫にうずたかく積み上げられ、パワーリフトで次々と運ばれていく段ボールに入ったチキンの箱には「BRAZIL」のマークが。
創業1895年老舗の鳥新は、これまで国産中心だったが、2年ほど前から輸入品の取り扱いを増やし、現在は4割が輸入鶏肉で、そのほとんどがブラジル産だという。
国産に勝る輸入品の強みは、国産の半額だというその価格。日本全体でも今、鶏肉の輸入は豚肉・牛肉に比べて急激に増えている。
さらに「鳥新」では、ある異変への対応に窮していた。国産・輸入合わせても、供給が追いつかないほどの注文が殺到しているという。
鳥新 専務 磯田義昭氏はインタビューに応える。
「リーマンショックで経済状況が悪くなり生産者が生産を絞り込んだ。そこでで需要が急に回復し始めた生産が追いつかなくなった」。
窮状をしのぐため、同社は国内の生産会社に対し、約7%の増産要求をしたという。

■企業が鶏肉に熱い視線を注ぐ理由(筆者解説部分)

 このパートは左の図を元に、番組インタビューの内容を補完して解説する。
 
1


 まず、世の中の大きな動きを振り返る。(図1)
 Political(政治・規制)の影響では2003年:BSEが発生し、で米国産牛肉の輸入が禁止された。結果として、消費者の牛肉離れが起きた。08年には「メタボ検診」が法制化され、健康志向が高まった。
 Economical(経済)の影響は、08年:世界金融危機が発生し、長引く不況が深刻さを増した。また、翌09年には、政府は月例経済報告会で「デフレ化」認めた。本格的なデフレ不況を誰もが認識した。
 Social(社会)の風潮は、健康志向の反動で、「メガ盛り」の流行が顕著となった。皮切りは07年発売の「メガマック」である。コンビニの弁当もメガ盛りが流行り、牛丼も「すき家」の「メガ」が話題となった。
 上記の各要素を総合すると、「消費者のニーズ」として、消費者の「牛肉離れ」に加えて、健康志向の高まりと、その反面、デフレ・不景気によるコストパフォーマンス(ボリューム感)を求める傾向も顕著であるといえる。その中で、チキンメニューはヘルシーで安価・ボリュームメニューにも対応しているという点が消費者の支持を集める理由となっていることがわかる。

 では、チキン以外の牛肉や豚肉はどうなのか。競合的な存在として検証してみる。
 牛肉は、1991年輸入自由化以来、国内に手厚い生産保護政策がとられるようになった。国産牛肉は「価格安定制度」に守られ、生産性が高まらない。少ない生産を補うべく、牛肉の輸入比率は60%に達しているが、38.5%という高い関税がかけられている。かつて、1960年代ごろまでは、牛・豚・鶏の価格差は僅差であったが、上記の理由で「安く・ボリュームを」という昨今の消費者のニーズには全く応えられなくなっている。
 豚肉はどうか。牛肉よりは生産性向上が顕著ではあるが、価格安定制度に守られている点は概ね牛肉と似た状況だ。つまり、食材としての低価格化には限界があるという状況である。

 番組で最近の市場での取引価格が紹介された。
牛肉   約1500円/キロ
鳥モモ肉 約600円/キロ
鳥むね肉 約250円/キロ

 鶏肉の状況を見てみよう。番組では卸業者の輸入肉が取り上げられていたが、まだ約7割と国内生産率が高いため関税はかからない。そして、価格安定制度でも守られてはいない。 輸入が増えたとしても、輸入関税は「骨付きモモ」が8.5%、「その他の部位」が11.9%と低い。さらに、牛・豚と比べると極めて生産性が高い。 飼育3ヶ月程度と短い期間で出荷できるため、健康リスクも低く 人件費と廃棄率が低くなる。 また、生産される肉量に対する飼料の比率が低いため、餌代安い。 ブロイラーはケージを積み上げて飼育するため、密度が高められる。平面で飼育する豚、1頭あたり広い面積を要する牛と大きく効率が異なる。つまり、鶏肉は、規模の経済が効く=最も工業化された食肉であるといえる。

 以上のことから、鶏肉は需要が増えれば規模の経済でコストが低減され、利益がさらに出る。ブームによって生産者も外食・小売も儲かるという構図が見えてくる。

■チキンブームは今後どうなるのか

2


 ファストフードでは「チキン戦争」ともいわれているが、「牛丼戦争」のように、チキンも低価格戦争にもつれ込むのか。この点に関しては左の(図2)で説明する。

 結論からすると、ファストフード業界は戦ってはいても、「価格競争回避」をしたい意向が見える。
 マクドナルドは前出の担当者インタビューにあるように、チキンシェア16%強で既にNo.1だ。当然、リーダー企業は自ら価格競争を仕掛けることを回避したい。その代わり、不動の1位を目指して新メニューと販促を連続展開しているが、価格は「中価格帯」におさえている。つまり、消費者にとってのコスト・パフォーマンスのバランスをうまく取って、シェアアップを図っているといえる。
迎え撃つケンタッキー・フライド・チキンは、チキン専業として防衛・新業態「揚げないチキンメニュー」で直接対決を回避している。つまり、付加価値メニューとして、むしろ高価格で展開する構えだ。ファストフードの業界的には、価格競争回避を志向しており、需要増を図るため、試用促進のためのキャンペーン値引きのみ展開している状況だ。チキン新メニューの充実で利益確保をし、値下げ合戦の牛丼業界と一線を画したいという意向が顕著である。

 しかし、広義での「チキン戦争」に参戦している他業態を見ると、様相は一変する。
 コンビニ業界では、揚げ物に代表される、「店内調理商品」は利益率が高いため、先細りするタバコの売上げ・利益の穴埋めの意味からも、積極的な販売を展開中だ。しかし、店員の店内オペレーションのいわば「片手間」的にはじめられた「店内調理」は高度な調理は無理であり、そのためメニューの差別化ができない。各社一斉に70円均一で利益ギリギリの戦いになった「おでん」の例のように、チキンも価格競争に走る恐れがある。
 持ち帰り弁当の業界も同様だ。ボリュームメニューとしてチキンを積極的に使用している。店内に中食対応の総菜を併設している店では、唐揚げ等が人気メニューとなっている。しかし、消費者の需要は高まるものの、200円・300円弁当の登場など価格競争がさらに進行中だ。その背景には差別化困難という理由も大きい。以上のように、コンビニ業界・弁当業界には価格競争に走る要素がある。
 つまり、差別化困難なコンビニ・弁当業界が価格競争になると、チキンメニュー市場全体に飛び火するという可能性は否定できない状況だといえる。

 このような状況とは別に、この原稿をまとめ直している間に、「島根県で鳥インフルエンザの疑い」というニュースも流れてきた。業界の動きには今後も注目に値するだろう。


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2010.11.29

「はみ出す」ロッテリアは何を目指しているのか?

 バンズから大きくはみ出したパティ代わりの肉が大迫力を醸し出す、ロッテリアの『はみだしステーキバーガー』。いい肉(1129)の日である11月29日に期間限定で発売が開始された。一体、何を目指しているのだろう。

 〜ロッテリアから、"年に一度のご褒美"バーガー 新登場!〜(同社ニュースリリース)
 http://www.lotteria.jp/news_release/2010/news11260001.html

 上記によると、今回の商品は一年間の愛顧の意を込めて「ご褒美」をコンセプトとしたという。「自分へのご褒美用バーガー」というわけだ。<"ご褒美"というコンセプトに相応しく、バンズからはみだすボリュームの「ステーキ肉」>を特徴としたとある。
 「ステーキ」が「ご褒美」といわれると、昭和の香りを感じてしまうのは筆者だけであろうか。「ビーフステーキ」。より的確に表現するなら「ビフテキ」。『語源となったのはフランス語のbifteckで、これをもとに日本では長らくビフテキと呼ばれた。』とWikipediaにも掲載されている。

 ロッテリアが「はみ出すほどのボリューム」を演出するのは、実は昨年に続いてである。昨年は「メンチカツ」であったので、大出世だ。
 ロッテリアが130gの“巨大メンチカツ”入りバーガーを発売2009年10月2日 東京ウォーカー(2009年10月2日 東京ウォーカー.)
 http://www.lotteria.jp/news_release/2010/news11260001.html
 価格は今回の「はみ出しステーキバーガー」が、<セット価格は、いい肉(1129)の日にちなみ、1,120円(1,129円の切り捨て金額1,120円)でご提供>(リリース)であるのに対し、昨年の「巨大メンチカツ入りバーガー」は<フレンチフライポテトMとドリンクRをつけたセットでも620円>(東京ウォーカー)とリーズナブルな価格設定であった。
 ご褒美とリーズナブルでは方向性が逆に感じるが、通底しているのは「ガッツリ系」である。Twitterでも今回のはみ出しステーキバーガーの話題では、「どうやって食べるんだ?」「喰いきれるか?」「しかし、食す!」と、ガッツリ戦士たちの話題をさらっていた。

 もう一方でロッテリアは「味」をも極めようとしている。2007年秋から、日本のファストフード業界で初めて使用したという、高コストなナチュラルチーズと、豪州産牛肉と豚肉の背油ミンチのパティだけのシンプルな味付けで勝負した「絶品バーガー」を発売。大人気を博した。2009年7月には、「おいしくなかったらその場で商品代金をその場で返金」という保証までつけて、「絶妙なバランスのおいしさを実現した王道バーガー」をコンセプトとした「絶妙バーガー」を発売。「美味しくない」という返金率はわずか0.2%に留まった。そしてこの秋、テレビ番組とのコラボレーションで、「イタリアンの貴公子」ともいわれる川越達也シェフの手による「イタリアンチキンバーガー」を期間限定発売した。

 ガッツリと美味しさ。と、くれば、もう一つの方向性は「財布にやさしい安さ」だ。それに応えるのが「うまいやすいメニュー」。ハンバーガーや唐揚げ、アップルパイ、ドリンクなどが100円で提供され、マクドナルドの100円、120円メニューにも負けていない。

 ハンバーガー業界のリーダー企業といえば、無敵の「コストリーダー戦略」をとる「日本マクドナルド」だ。ハンバーガー業界だけでなく、ケンタッキー・フライド・チキンにも戦端を開く「チキン戦争」を開始するなど、有り余る力で他を圧倒する。そんなリーダー企業に対抗するのは、「オーダーを受けてから作る」というコンセプトを堅持する、「差別化戦略」で戦うモスバーガーだ。店舗数で見れば、マクドナルドは2010年2月時点で3,686。モスが10月末で1,363。3倍近い開きがある。では、ロッテリアはといえば、2月時点で524と、モスに比べても半分以下の数しかない。
 リーダーにはなれず、対抗する力もない場合、「集中戦略」で特定の市場に集中するニッチャーのポジションを取る。独自の生存領域を確保するのだ。例えば、ハワイ生まれの「クア・アイナ」はハワイに2店舗、国内に15店舗展開し、「高級バーガー」という独自路線で根強いファン層を獲得している。

 ロッテリアのポジションはその意味では非常に微妙だ。
 1987年にマクドナルドがバーガー・ポテト・ドリンクをセットにして390円という「サンキューセット」を展開したことに対抗して、380円の「サンパチトリオ」をぶつけた。マクドナルドは翌年に360円の「サブロクセット」で応戦するなど、今日の「牛丼戦争」のような様相を見せていた。結果としては、低価格路線はロッテリアにとって、その後の新メニュー展開の失敗とあわせて経営を大きく圧迫していくことになったのである。
 チャレンジャーにも、ニッチャーにもなれない存在は、「フォロアー」となる。リーダー企業の陰に隠れて、積極的にコミュニケーション投資はしない。リーダーよりも一段価格を安く設定し、リーダー企業の築いた市場の、いわば「おこぼれ」を拾う。そんな存在となってしまう。
 だが、ロッテリアの展開は明らかにそれとは違う。勝負に出ている。だが、「量・味・価格」の3つの方向性全てを訴求しようという、いわば「全方位戦略」はリーダーの戦略であり、体力に劣るロッテリアが本来取り得る戦略ではないはずなのだ。そこが「微妙」と前述した理由だ。

 ロッテリアは何を目指しているのか。「はみだしステーキバーガー」のリリースを見ると、そこにヒントが隠されていた。

 今年のスローガンは「ひと手間がんばる、ロッテリア」。<お買い求めやすさはそのままに、食材の手配、キッチンでの調理、お客様へのサービスにも、"ひと手間"加えることにより、もっとおいしく、高品質で、満足度の高いファストフードを目指してまいりました>とある。例えば、「調理」。Webサイトに絶品・絶妙の両バーガーの「おいしさのヒミツ」として、通常のファストフードではあり得ない「店舗で焼く前に塩を振る」というオペレーションを実施しているとある。その理由は<パティの中に塩を入れておくと、焼くときに肉が必要以上に引き締まり、硬くなる>からだそうだ。「ひと手間」加えているのである。

 なぜ、ひと手間を加えるのか。当然、手間がかかり、味にバラツキがでるリスクとなる。それは、「ガッツリ系」の登場した理由とも共通する。「デカメンチカツバーガー」は東京ウォーカーの記事に、<「ハンバーガーにガッツリかぶりつきたい!」というボリューム重視派>の<「もっと食べ応えがあるバーガーメニューを!」という声から誕生した>とある。
 さらにロッテリアで「ガッツリ」といえば、忘れてはならないのが今年登場した「タワーチーズバーガー」だ。それは同社の目指す方向を如実に示しているといえる。
 同社のWebサイトに<今だけ、お客様の声に応えて「タワーチーズバーガー」完成!>と記されている。「タワーチーズバーガー」は、通常のチーズバーガーを顧客の要望に応じて増量(増段)し、10段なら通常1,060円のところ、お試し体験価格の990円で販売していた。ロッテリアは儲かるのか。一度に990円の売上げとなるのは魅力だ。しかし、バランスを取り積み上げる手間たるや、前出の「塩を振る」という「ひと手間」どころの騒ぎではない。

 「もっとおいしいバーガーが食べたい」「もっとガッツリ食べたい」「もっと安く食べたい」。そんな顧客の声に全て応えようとすると、リーダーの戦略である「全方位戦略」になってしまう。しかし、規模の経済が活かせるコストリーダーでなければ、3つを同時に叶えることはできない。故に、昨年はまだ、リーマンショックの傷も癒えていない世の中で「デカメンチカツバーガー」を、「ガッツリ&安く」提供した。今年は「節約疲れ」ともいわれはじめた世の中で「はみだしステーキバーガー」を「おいしく&ガッツリ」提供しようという意図なのだろう。

 ロッテリアは「フォロアー」ではない。その戦略は、「顧客の要望に徹底的に応じる」ことによって、少ない店舗数でも支持顧客層を確保し、そのファンを独自の生存領域とすることによって、一つのニッチ戦略をとっているのである。


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2010.11.27

ピンポイントなターゲット像に賭けるワールドのSC対策

 単純化すれば、世の中には2種類の人間しかいない。「買ってくれる人」と、「買ってくれない人」。問題は、それが「誰」なのかを特定することが難しいことだ。それ故、「ターゲティング」に悩むのだ。

 11月24日付日経MJの連載コラム「戦略拠点明日を拓く」に極めて秀逸なターゲティングの例が掲載されていた。神奈川県相模原市にある、イトーヨーカドーのショッピングセンター「アリオ橋本」にワールドが展開する「スマーティー」。見出しに「セレクト感、40代女性に的」とある。しかし、ありがちな「40代女性がターゲット」などという漠然、かつ広範なターゲティングはしていない。そこがミソなのだ。
 記事には囲みでポイントが3つまとめられているので転載する。
 (1)セレクトショップなどで育った40代以上の女性を狙い、買い付け・雑貨を充実
 (2)30代の感性で50代半ばまでの体型に対応できるよう、大きめのサイズまで用意
 (3)ビートルズの公認グッズを扱い、週末などに訪れる男性客の需要も取り込む

 記事の内容を検証してみよう。商品(Product)は、「スマーティー」ブランドの商品は3割に抑え、ポイントの(1) にあるように、外部からの買い付けた服飾雑貨、クッションや自転車関連などの生活雑貨。衣類の品揃えはポイントの(2)にあるデザインとサイズの取りそろえである。また、接客も店の提供価値の一部、付随機能として充実させている。百貨店での接客経験のある年齢が高めの販売員を揃えている。また、(3)のビートルズの公認グッズが他に類を見ない品揃えの特徴だ。価格(Price)は、カットソーで2800円、雑貨で1900円とSCで買いやすい水準に設定しながら、高めの商品まで幅を持たせてあるという。

 では、ターゲットはどうか。「30代の感性で50代半ばまで」とあるから、いわゆる「アラフォー」が一番近い表現となるだろう。しかし、もっと具体的に設定している。「ファッションビルやセレクトショップ世代で、今は結婚して郊外に住む40代」とある。さらに、ビートルズの公認グッズが狙うのはサブターゲットである男性であるが、そこで利益を上げるのが主たる目的ではない。「奥さんが買い物をしている間に男性も楽しめる」という配慮であるという。つまり、「週末に夫婦で買い物にSCを訪れる夫婦」がターゲットなのだ。とかく夫は妻の買い物に付き合うことを面倒がる。そうした夫をDMU(Decision Making Unit=購買決定関与者)としてネガティブな行動から積極的に足を運ばせる戦略だ。

 上記を見ると、ターゲットである40代女性の姿が非常に具体的に見えてこないだろうか。若い頃の購買行動、現在の暮らしと購入する商品の価格帯や選択基準。さらには家庭内のDMUである夫との週末の行動と、その夫の心理まで。恐らく、「スマーティー」のターゲット設定には「ペルソナ」の手法が用いられている。

 「ペルソナ(persona)」という言葉は「仮面」や「登場人物」という意味を持つ。つまり商品のユーザー像を仮想の人格を詳細に作り上げていく手法だ。ペルソナを作り上げると、ターゲット像が極めてリアルになることによって、ターゲットのニーズや課題、購入動機などが理解できるようになり、今まで漠然としていたターゲット像とのギャップを埋めることができるようになる。また、関係者一同がターゲット像を共有しやすくなることから、マーケティングプランの全体の策定などや、詳細な販促プランや接客方法まで落とし込みをする時でもブレがなくなるというメリットがある。
 ペルソナを作る時は、できる限り詳細に、生身の一人の人物像を作り上げていくことが肝要だ。例えば、「西橋本4丁目のライオンズガーデンに住む金沢光恵さん44才は、○○大学を卒業後、商社の○○に勤務。○○自動車に勤務している3つ年上の夫との結婚を機に26才で退職。30歳で娘を出産。現在の趣味は紅茶とベランダガーデニングで、ハーブの栽培に凝っている。独身時代の買い物は・・・」というような具合だ。

 ペルソナのように、極めて具体的なターゲット像を描くと、必ずといっていいほど「そんなに絞り込んだらターゲットが少なくなってしまう」という意見が出る。しかし、冒頭に記したように、世の中には「買ってくれる人」と、「買ってくれない人」の2種類の人間しかいない。一度、思い切り絞り込んで、「こんな人なら、必ず買ってくれる」というターゲット像を描いてみることだ。そして、そのターゲットに自社がどの程度、到達(Reach)可能かを考え、どの程度の規模(Realistic Scale)があるのかを考える。さらに、そのターゲットを取り込むことによって、ターゲット像の異なる新たなターゲットに波及効果(Ripple Effect)があるかも考えるのだ。そうして、まだ「ターゲットボリュームが足りない」ということになったら、ターゲット像の条件を緩めて、「買ってくれる」という可能性が低くなりすぎない程度まで広げていけばいい。
 上記のやり方に厳密性を求めるなら、市場調査などの定量データにユーザーインタビューなどの定性データを加え、最後に想定に想定を重ねて一つの人物像を作り上げていくことになる。そうすれば、規模などが定量的にとらえられるようになる。しかし、定量的な確からしさにこだわりすぎるより、自社で設定しようとしているポジショニングや、商品をはじめとしたマーケティングミックス(4P)が明確にできることを重要視することだ。

 「スマーティー アリオ橋本店」のターゲットが、単純に「40代女性」や「アラフォー女性」だったら、どこのSCにもある没個性的なショップになっていることだろう。同店はそれを避けるために、ターゲット像を絞り込んで具体化し、先鋭的な特徴を出しているのである。
 スマーティーは神戸市の「イオンモール神戸北」に2号店も出店しており、2店の結果を検証して来春以降、店舗を拡大するという。果たして、「スマーティー」の3号店以下が続々と登場することになるのか、非常に楽しみだ。


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2010.11.25

点から線へ、網から面へ:ユニクロの出店政策を読み解く

 ユニクロの出店政策が好立地確保に向けて加速している。その意図を考察してみよう。

 11月24日付日経MJに「ユニクロ 都心主要駅の営業強化 東京都新宿、好立地に移転」という記事が掲載された。「期間限定 「ヒートテック」専門店も」という小見出しもある。記事内容はユニクロの「駅ナカ」ショップについてだ。同記事によると、ユニクロの現在の出店政策は「単位面積当りの販売力強化」であり、そのために基本路線として1300平方メートル超の大型店舗開発が優先しているという。その例外が駅ナカであり、30~165平方メートル程度の小型店を他社・他業態に先駆けて好立地確保のために展開しているということである。

 あなたが飲料を購入する時、それをどのように手に入れたいと望むだろうか。手に入れたい飲料の種類にもよるだろうから、少し整理する。缶や500mlペットボトルなどの小型容器に入ったタイプ。1.5リットルや2リットルの大型容器のタイプ。そして、とてもオシャレな海外ブランドが作っている希少性もある話題の飲料。各々の場合を考えて欲しい。

 閑話休題。ユニクロの出店政策における駅ナカの位置づけに関しては、日経MJの記事では「営業網の拡大を急ぐ」と書いてある。
 1984年に広島に第1号店を開業したユニクロは、広い駐車場を備えたロードサイド店というチャネル(Place)展開であり、そこでベーシックでユニセックスな服という製品(Product)を安価な価格(Price)で取りそろえ、チラシ広告で集客(Promotion)していた。ターゲットは家族連れ。家族が着る、安くてそこそこの品質の服が一度に揃うというポジショニングが支持されていた。つまり、郊外の個店という「点」に集客していたのが原点だ。
 出店政策が変化したのは、1998年の原宿出店以来である。前年に東証二部上場を果たし、豊富なキャッシュを手にしたことも大いに関係しているはずだ。2000年にはJR東日本・東日本キヨスク(現JR東日本リテールネット)と業務提携し、初の小型店、駅ナカ店である「ユニクロキヨスク新宿南口店」をオープンした。チラシに頼るのではなく、99年から米系広告代理店Wieden+Kennedy社との契約でブランド広告(Promotion)を強化し、ロードサイドではなく、人のいる都心や人が通る駅という場所(Place)に出店し、家族連れではなく、個々人をターゲットとした展開に切り替えたのである。
 以後、今日に至る展開は、商品(Product)はベーシック&ユニセックスからファッション性を高めた。2009年のデザイナー、ジル・サンダーとの監修契約、彼女自身のデザインによる「ユニクロ+J」の展開で、かつてはユニクロ製品と判らないように着るというポジショニングから、ユニクロブランド及び「+J」は積極的に購入・着用するブランドのポジショニングへと変化している。しかし、価格(Price)は以前と大きく変化はしておらず、割安感は向上していることも今日の高い顧客支持の源泉である。

 先に述べた、謎かけのような飲料の話に戻ろう。
 缶や500mlペットボトルなどの小型容器に入ったタイプの飲料を購入しようと思う時、恐らくあなたは喉の渇きを覚えているはずだ。そんな時は「すぐに手に入れたい」と思うだろう。故に、主たる販売チャネルは、どこにでもある自販機か、いつでも開いているコンビニとなる。場合によっては、自販機を目にした時に喉の渇きに気づいて購入するということもあるはずだ。
 1.5リットルや2リットルの大型容器のタイプの飲料を買おうと思うのは、持ち帰って家や職場にストックして飲むためだろう。その場で飲み干す人はまずいない。故に、スーパーで多くの種類から選んで、できれば安く買いたいと思うだろう。スーパーの特性上、レジで並ぶこともあるため、「すぐ飲みたい」と思う人には向かない。
 オシャレな海外ブランドが作っている希少性もある話題の飲料。限定発売かもしれない。だとすると、「何とか手に入れたい!」と思って、売っているところまで足を運んで購入するだろう。東京なら銀座、大坂なら心斎橋辺りにある百貨店の階上の売り場まで、エレベーターやエスカレーターに乗って買いにいく。

 ユニクロの現在の出店政策は上記の飲料の例と同じだ。日経MJの記事では「営業網の拡大を急ぐ」となっているが、その「網」のかけ方が極めて巧みなのだ。何に対して網をかけているのか。「人(ターゲット)」ではない。「人(ターゲット)」の「ニーズ」に対して網をかけているのである。
 ふと、足りない衣類が欲しいと思う。そんな時には、通勤帰りに立ち寄れる便利な駅ナカに店舗がある。通勤の「ついで買い」として、自販機を見て喉の渇きを思い出すように購入するというニーズも狙っている。多数の商品の中から選んで「まとめ買い」するというニーズに応えるのが、各拠点で展開されている大型店である。さらに、限定商品もある「+J」を扱っているのは心斎橋の旗艦店や銀座店をはじめとする、限定店舗である。その商品が欲しいと思って「目的買い」するファンが足を運ぶ。ブランドと店舗価値を高める狙いである。

 かつて「点」であったユニクロの店舗は、ロードサイドにその数を増やし「線」になり、都心部に出店をするようになって「網」になった。さらに、一律に網をかけるのではなく、ニーズに注目してターゲットがいるところに的確に網を仕掛けるようになったのである。
 さらに忘れてはならないのが、インターネットによる通販、及びモバイルの活用である。ユニクロの様々な先進的なWeb施策は稿を改め論じることとしたいが、ターゲットがどこにいようとも集客できる仕掛けとして機能している。もはや「網」は「面」となっているのである。

 本稿ではあえて“(Product)”と付記しているように、販売チャネル(Place)以外のマーケティングの4Pの要素を強調し、ターゲットとポジショニングに関しても言及している。ユニクロの出店政策は、ターゲティング→ポジショニング→4Pの各要素が顧客のニーズを中心として、きれいに整合しているからこそ、機能するのだという点も見逃せない。


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2010.11.24

値段4倍・売れ行き6割増!「新クイックルワイパー」のヒミツ

 11月24日付日経MJのコラム「ヒットのヒミツ」に紹介された、花王「クイックルワイパー ふわふわキャッチシート」のヒットのワケを深掘りしてみよう。

 記事によれば、掲題の通り同商品は10月末の発売から計画比6割増の売れ行きだという。しかも、従来の商品と比較すると1枚当りの価格が100円と4倍するという。ヒット商品には必ずワケがある。しかも、「高くても売れる」からには深いワケが。そのワケを分析してみよう。

 まず、クイックルワイパーという商品。「クイックル」は花王の住宅用洗剤やお掃除用品のブランドであるが、モップ状の柄と取り替えシートを装着するヘッド部分によって構成された「クイックルワイパー」が1994年に発売された。「くすみのない つややかフローリングへ」との商品のキャッチフレーズが示すように、商品の中核的な価値は「床掃除が簡便にできること」である。毎日掃除機をいちいち出さなくとも、この商品で簡易に代替できるのである。それをどのように実現できるかという実体価値は、腰をかがめて雑巾がけをするような苦労なくモップスタイルででき、しかもシートは使い捨てというラクチンさを実現したのである。
 1994年といえば、91年にバブルが崩壊し、93年に後に「失われた10年」と呼ばれた長期不景気に突入した翌年である。同年にバブルに咲いた最後の徒花・ジュリアナ東京が閉店し、テレビドラマ『家なき子』のセリフ「同情するならカネをくれ」が流行語大賞になるなど、景気の悪化が実感を伴ってきた年である。共働き世帯も年々増加していた。一方、バブルの反動による土地価格の下落もあり首都圏のマンション販売は94年から大量供給時代に入ったといわれている。つまり、カンタンに掃除を済ませたい世帯と、フローリングの住居が増えたというマクロ環境をとらえたヒット商品なのだ。

 そんなヒット商品にも競合が登場している。競合であるユニチャームの「ウェーブ 立体フロアワイパー」である。ポイントは、同社が不織布の技術と原料を用いた生産シナジーで参入し、本体も取り替えシートも花王のクイックルワイパーと共用化できるようにしてシェアの侵食をした。さらに、日経MJの記事によればPB(プライベートブランド)商品も登場して、花王のシェアは6割強まで低下したという。

 競合の参入に対してどのように対抗するのか。まずは、顧客の「ニーズギャップ」に注目することだ。中核的な価値は「床掃除が簡便にできること」であるが、あくまで掃除機の代替であり、簡易版である。だとすれば、「もっときれいに掃除したい」「これ一本で済ませたい」というニーズが生まれるはずだ。故に、花王もユニチャームも各々「立体吸着シート」「立体キャッチシート」という名でシートを立体化してゴミやホコリの吸着を高めるという実体価値を高めている。
 今回の「ふわふわキャッチシート」は、さらにその実体価値を強化した製品である。「ふわふわした長い繊維がすき間の奥まで届いてからめ取る仕組みで、従来の2倍強のごみを取り除けるという」(同記事)。

 しかし、仕様の強化だけでは、また競合に模倣されることは間違いない。そこで、花王は新たなターゲットを獲得すると同時に、付随機能の価値を高める戦略にでている。付随機能とは、「直接的に中核的な価値の実現に影響はないが、あれば魅力を高める要素」である。花王は「一昔前に比べて掃除の仕方を知らない若者も増えている。そこで、CMキャラクターには阿部サダヲさんを起用。特設サイトにDr.クイックル研究所と題して掃除法も提案した」(同記事)のである。CMとサイトで製品の使い方提案という付随機能でターゲットを拡大し、さらに製品の利点を詳細に訴求して、既存ユーザーの買い換えを促しているのだ。

 企業が利益を上げるためには、顧客のライフステージの中の購入タイミングに合わせることが第一歩だ。人生の大きな変化だけでなく、シーズナリティーも重要で、今は大掃除需要に向けたタイミングだ。そこで、同種の商品の買い換え、買い増しである「アップセリング」を図る。「従来の2倍強ごみが取れる」ことが理解されれば、シートが他社と共通化している以上、他社ユーザーの買い換えも期待できる。そして、Webサイトの「Dr.クイックル研究所」では、クイックルワイパーブランドの他商品による掃除方法も提案しており、関連商品の販売である「クロスセリング」も狙っている。そして、シートは使い捨てなので、囲い込んで収益を上げる「アフターマーケティング」を図る意図である。

 「自動お掃除ロボット」として、米iRobot社の「ルンバ」の販売が好調であったり、トイレ掃除もパナソニック電工の全自動お掃除トイレ「アラウーノ」が新築やリフォームで指名買いされたりと、掃除の簡便化に対するニーズは確実に高まっている。そうした世の中の変化も敏感に捕まえて、既存ターゲットには商品力強化を。新たなターゲットには使い方提案を行うというきめ細かな展開が、日用品という成熟市場には欠かせない。
 2015年には日本は人口だけでなく世帯数すら減少に転じる衰退市場になるマクロ環境にある。単純な価格競争による販売量競争ではなく、価値を高めて収益を上げる工夫が求められているのである。


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2010.11.22

吉野家は「完全復活」のシナリオを描けているのか?

 吉野家が11月10日に発表した「10月の既存店売上高は前年同月比3.8%減」に対し、各メディア、満を持して投入した「牛鍋丼」の効果が「1ヶ月で早くも息切れ」と報じていた。果たして、吉野家は再び完全復活のシナリオを見失ってしまったのだろうか?

■客数の増加と客単価の減少

 吉野家は牛丼の価格を380円に据え置いて、競合のすき家・松屋と同等の価格でありながら差別化を図る280円メニュー「牛鍋丼」を10月に投入した。結果は来店客の約6割が牛鍋丼を注文し1ヶ月で1000万食を突破。客単価は15.0%%減とダウンしたが、来店客数が24.5%伸びた。9月の既存店売上高は前年同月比5.9%増と、19カ月ぶりの対前年同月比プラスをもたらしたという。(11月13日msn産経ニュース

■客数増加の鈍化と客単価減

 「牛鍋丼」への注文集中は、客単価の低下をももたらした。10月の既存店売上高は、3.8%減となり対前年続伸とはならなかった。また、来店客数も10.6%増だが9月の半分以下。一方で、客単価は13.0%減と9月とほぼ同水準でダウン。「客単価の落ち込みを客数増でカバーできなくなった」(同・msn産経ニュース)として、各メディアは吉野家の「息切れ」とか「失速」という表現で報じている。

■吉野家は「280円デフレ」に陥るのか?

 各メディアの報じるところは以上のような内容だが、前掲の産経ニュースはさらに踏み込んだ予想をしている。販売予定を遅らせて完成度を高めて投入した第2の280円メニュー「牛キムチクッパ」の効果に関する懸念である。500キロカロリーを切る低カロリーで、今まで取り込めていない女性客層を吸引して客数を増やす戦略で、「11月には当面、客数で7~8%、売り上げで5%の押し上げ効果がある」という、吉野家・安部社長のコメントを掲載しつつ、「2つになった280円メニューを注文する客の割合がさらに増え、看板の牛丼が売れず、単価の下落率がさらに広がるのは避けられそうもない」としている。

■原材料とオペレーションの問題は解決済み?

 産経ニュースはアナリストのコメントとして、「280円メニューは集客目的が強く、利益率は高くない」。牛丼以外に複数の主力メニューを販売すれば、「原材料費に加え、店舗オペレーションが複雑になり、運営コストも上昇する」という問題も指摘している。
 確かに利益率の問題は看過できないが、原材料費に関しては、牛丼の肉が米国産の「ショートプレート」という吉野家が牛丼に最も適した肉質とする肉のみを使用しているのに対し、牛鍋丼は米国産のその他の部位9割と豪州産を1割使用している。両メニューとも具材は85グラムだが、牛鍋丼はしらたきと豆腐が入っている。ごはんの量も牛丼より30グラム少ない。また、牛キムチクッパは肉は牛丼と同じ材料であるが、キムチも合わせて具材は70グラム。ごはんは160グラムだ。(日経MJ11月3日1面)
 オペレーションの問題も解決を図っている。タレは牛丼・牛鍋丼・牛キムチクッパ3種とも異なるが、牛丼のタレが入った大鍋には、タレを各々の肉・タマネギが混じらないように仕分けして味をしみこませる工夫が施してある。調理の一部を共通化することによって合理化を図っているのだ。また、店舗に関しては現在、スクラップ&ビルドを進めているが、その中で客数が少ない店舗は厨房を客席カウンターの正面に配置して従業員の動きを効率化、店員の労働時間短縮・人数削減を図れるようにしている。(同・日経MJ)

■吉野家の中・長期的な戦略が可能な吉野家の財務体質

 上記の通り、吉野家は短期的な問題よりも、中・長期的な改革シナリオが着々と進んでいると考えられる。それを可能にしているのは、「吉野家はいつつぶれるのか」といわれるのとは裏腹な同社の財務体質にある。バランスシート(BS)を比較すると、すき家を運営するゼンショーに対して吉野家の総資産は半分程度である。しかし、吉野家は自己資本比率が高く、ゼンショーより遙かに借金が少ない。ゼンショーは借り入れのうち、短期借り入も多く、日銭を効率よく回していくことが吉野家より求められているのである。つまり、吉野家はこの財務体質を前提として、280円メニューやオペレーション、店舗にいたるまで、今まさに、短期~中・長期の改革に入ったところなのだと解釈できる。

■短期客単価アップの実験施策

Okkake


 短期的に見れば、確かに牛鍋丼への注文集中は予想を超えていただろう。その対策として、吉野家はすき家の「トッピング牛丼」にも似た施策を実験展開している。ある先行販売店舗で追っかけ小鉢、はじめました。」との店外ポスターを筆者は見つけた。牛鍋丼を注文した客がサイドメニューとして「小鉢」を注文する。長ネギ、豆腐、各50円。ネギ+玉子70円。「牛鍋丼のお供に、もう一品。そんな時に、乗っけるもよし、つまむもよし。どうぞお好みで、お召し上がりください。」とある。サイドオーダーは客単価アップに直結する。さらに、トッピングして提供するのと異なり、店内オペレーションも簡易に済むといううまい施策だ。

■牛丼へのブリッジが欲しいところ

 もう一つ展開すべくは、本来の狙いである「牛丼380円」を温存している意義を有効に機能させることだ。筆者は牛鍋丼発売日に同メニューと、吉野家、さらに競合の牛丼を食べ比べてみたが、やはり、エコノミストの森永卓郎氏をはじめ、多くの人が支持するように吉野家の牛丼は肉質の柔らかさなどが突出している。故に、牛鍋丼を食べた人を牛丼にブリッジさせる施策が求められる。前掲の産経ニュースでは、業界関係者が競合店の客数増に関して、「牛鍋丼で一時的に吉野家に流れた客が戻ってきた」とコメントしている。クーポン施策はあくまでカンフルで、長引かせると反動が出るが、牛丼の美味さを再認識させて、 ブリッジさせる施策として行うなどの展開が欲しいところだ。

■プレミアムメニューへの期待

 筆者はかねてより、「吉野家の牛丼はプレミアム化せよ」と提唱してきた。プレミアムといっても、1000円もするような価格ではない。サラリーマンのランチ予算の上限ともいえる500円だ。(某週刊誌に500円プレミアムとコメントしたら、「勝手に1000円にせよ!」と書き換えられて掲載されてしまったことがあるが・・・)。日常食としての280円の両メニュー。ちょっと贅沢な380円の牛丼。時には張り込んで、500円牛丼というローテーションだ。「牛丼ばかり食べていられない!」という意見もあるかと思うが、380円を基本として、500円版を工夫すれば、支持する人は少なくないだろう。
 その意味では、産経ニュースも「吉野家でも、400円前後の新メニューの開発を急いでいる」と伝えているが、吉野家も公式にコメントしていた。但し、あくまで店内オペレーションの効率化を進めている以上、松屋のような定食メニューや、すき家のような多様なトッピングはむずかしいと考えられる。だとすると、そのメニューの方向性はやはり、「プレミアム牛丼」ではないだろうか。

商売の基本は、どこまでいっても「売上げ=客数×客単価×リピート率」だ。そして、その中からどれだけ利益を得られるかである。吉野家の改革は始まったばかりだ。ここで息切れをしている暇はない。


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2010.11.19

書店の向かう先は、ブランドショップなのか?

 あなたは家電量販店・PCコーナーの店員だったとする。「デスクトップからノートに買い換えたいんですけどぉ」という客が現れたら、その言葉の裏にどのような背景を読み取るだろうか。

 来店客を一瞥して、「どんなスペックのものをお探しですか?」と聞く。「モニター16インチ以上でブルーレイディスクと地デジ・BSチューナー内蔵がいいんですけど・・・」などと答えたら、「(しめしめ、イメージが具体的になっているじゃないか)では、オススメはコレですね!」とNECのLaVie Lシリーズなんかを提示する。
 しかし、そのニーズを掘り下げてみると、思いもよらぬ競合が浮かび上がってくることがある。実は「部屋が狭いため、スペースを有効に使いたい。だから、ブラウン管のテレビを地デジ対応に換えるついでに、古いデスクトップのPCをノートにして、DVDプレイヤーだけでなくブルーレイも見られるようにしたい」ということかもしれない。だとすれば、当面必要な「安価な液晶テレビ」を買って、部屋のスペースの有効利用は「整理家具」で済ませてしまうかもしれない。つまり、思わぬ競合に負けるのだ。

 思わぬ競合に圧されている業界がある。カバンの業界だ。
 11月11日の日本経済新聞に『付録に手提げやポーチ、雑誌が売れてかばん不振、「日常、事足りる」買い控え』という記事が掲載された。記事では、矢野経済研究所の担当者が<「リーマン・ショック後にブランド品が落ち込んだほか、旅行需要の減少と付録雑誌の好調が影響した」とし、「付録とはいえ人気ブランドのものも多くメーンに使う人も少なくない。それが(かばん自体の)買い控えにつながった」>とコメントしている。具体的な数字では、<09年のかばん類の小売市場規模は08年比9・2%減の9352億円。減少は8年連続だが、09年はマイナス幅が突出して大きい>という。また、都内勤務の女性会社員(30)のコメントを<「雑誌は付録で選ぶ。家には何十個もバッグ類がある」と笑う。この日も人気ブランド「アニエスベー」の手提げ付きの雑誌を購入。「付録で事足りるので、最近は全くバッグを買わなくなった」>と掲載している。

 ブランドもののカバンを買う顧客のニーズとは何か。全ての人がそうではないにしても、上記の状況を見ると、「何らかのブランドものであること」だったのではないだろうか。ブランドの持つ、その創業由来の堅牢さや、醸し出されるセンスなどが感じられない、付録の袋もの特有の画一的な質感。でも、ブランドの監修だったり、コラボレーションだったりする。「それで十分」としてしまう。
 長引くデフレ不況。リーマン・ショック後の雇用や所得に関する不安は。当然、世の中全体として、華美な消費は控える傾向が顕著になる。一方、雑誌業界を取りまく環境は、年々発行部数を減らし、廃刊も相次いでいる。その状況を打開すべく日本雑誌協会は、輸送に支障をきたすことを理由として、雑誌付録の素材や大きさなどに厳しい基準を設けていた「雑誌作成上の留意事項」を2001年に大幅に緩和。公正取引委員会も2007年に「景品表示法」を1000円未満の商品であれば、ベタ付け(総付け)景品の上限を100円から200円に引き上げる緩和を行った。これらの規制緩和と社会的な変化が後押しして、女性誌の付録が一気に加熱したのである。

 雑誌の力は強大だ。例えば宝島社の女性ファッション誌『sweet』は、2010年2月号(1月12日発売)で、発行部数が初めて100万部を突破し、105万6320部となった。1つのカバンを100万個作るということはあり得ない。しかし、付録ならそれが可能となる。同じものを大量に作れば、規模の経済・経験効果で1個あたりの生産に関わる固定費・変動費が極めて低く抑えられる。故に、景表法の定めの範囲であるコスト200円でも、それらしくブランドバッグができあがってしまうのだ。

 女性誌という製品の持つ価値も変遷している。ファッション雑誌の中核価値は「オシャレ情報」であり、その実体が「編集・記事」。付随機能が「付録」であったはずだ。それが、中核価値は「ブランド」であり、実体が「ポーチ」や「トートバッグ」。付随機能が「ブランドを含むオシャレ情報」と、主客逆転している。

 「情報」だけであれば、ネットに代替されるが、「モノ」を届けるチャネルとして考えれば、書店の持つ力は侮れない。
 書店数はこの10年で3割も減少しているとはいえ、2010年5月時点で全国に1万5300店ある。セブンイレブンの全国1万2100店(09年1月現在)を上回る数の、ブランドバッグが届けられる拠点があるということだ。日経新聞の記事では都内勤務の女性のコメントが掲載されていたが、通常であればブランドショップにカバンを買いに来るのに一苦労な地方在住者であっても、自宅近くの書店で手にすることができるのである。

 冒頭の家電量販店の例で考えれば、「テレビの買い換えを機に部屋を広くしたい」というノートPC購入希望者のニーズを取り込むなら、1つは思わぬ競合=「整理家具」にいかないように、PCに集約することのメリットをしっかりと訴求することだ。
 これは、ブランドメーカーそのものについていえることだろう。今まで、ともすればブランドの価値を、「そのブランドであること」という伝え方に偏ってはいなかったか。だからこそ、そのブランドのマークが付いていたり、監修ということになっていたりすれば「付録」でもいいとなってしまうのだ。ブランドの価値、こだわり、製品の優れた点をしっかりと伝えることが望まれる。

 ノートPCの場合のもう一つの方策は、家電量販店に同様なニーズを持った客が多く来店するのであれば、「整理家具」を扱ってしまうことだ。書店も減少の一途を脱するために換骨奪胎して、ファッションに関する「モノ+情報」の流通・販売拠点となることが考えられる。
 具体例がある。<宝島社がファッション雑貨店風の書籍売り場「書店内書店」を展開>(6月30日msn産経ニュース)という記事だ。
 宝島社からの働きかけで紀伊國屋書店福岡本店(福岡市)で試験的に<宝島書店」という看板を掲げた広さ約66平方メートルの売り場に、人気ファッションブランドを特集したムック本や雑誌、文庫、新書、DVDなど同社の売れ筋商品約150種類を集めた>という。売り場は<雑誌の付録として付けているブランドもののかばんやポーチなどを姿見とともに並べて「ファション雑貨売り場」のような雰囲気を演出するのが売りだ。従来の「本好き」以外の来店者を増やすことを狙って>いるという。

 いずれにせよ、モノを起点に考えるのではなく、「顧客ニーズ」を起点に考えることが重要なのだ。


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2010.11.18

バナナ自動販売機に学ぶ「AIDMA補完計画」

 この夏話題になった「バナナ自動販売機」をご存じだろうか。6月から渋谷に、8月には銀座にお目見えした「生のバナナを売っている自動販売機」だ。銀座は終了したものの、渋谷の自販機は今後も設置継続の予定であるという。一体、何が狙いなのだろうか?

 バナナといえば、2008年にTBS系のテレビ番組でオペラ歌手の森久美子が挑戦した「朝食に水とバナナだけを摂る」という「バナナダイエット」を覚えているだろうか。話題が話題を呼び、全国のスーパーの店頭からバナナが軒並み売り切れになる騒動が起こったが、熱しやすく冷めやすいのが日本の消費者。昨今ではどこのスーパーにもバナナはきちんと並んでいる。

 バナナ自動販売機は「バナナブームよ、もう一度」という狙いではないようだ。ブームに頼らずとも、国内の果実消費量が減少傾向にあるのに対し、バナナの消費量は増加傾向にある。輸入果実の中でも数量、金額とも最多であり2005年時点で輸入果実(輸入統計品目表第8 類)では、数量では48.5%、価額では25.3%を占めているという。(神戸税関資料より)。

 「バナナ自動販売機」を展開した株式会社ドールによれば、<忙しくてなかなかスーパーマーケットにも行けず、健康や美容のためにフルーツを取りたくても取れない一人暮らしの学生やビジネスパーソンをはじめとした、あらゆるお客様の声にお応えする日本初のサービスです>と狙いを語っている。(7月22日同社ニュースリリース

 バナナダイエット騒動の後からか、一部のコンビニエンスストアやスターバックスでも1本売りのバナナを目にするようになった。バナナの販路は増えている。しかも、ターゲットとする「一人暮らしの学生やビジネスパーソン」が立ち寄りそうなところに。しかし、そこで目にするものの、筆者は購入している人の姿をあまり見たことがない。「そこにあっても、手に取らない」ということが問題なのだろう。

 「ドール」といえば。「バナナ」だ。実際にはパイナップルやグレープフルーツ、キウイやパパイヤ、マンゴーなど様々な果物を扱っているにも関わらずだ。「バナナはおやつ300円までの中に入りますか~?」という、こどもの頃の憧れ(←かなり年齢がバレる・・・)のブランドだったからというワケだけではない。最近では、テレビでは香取慎吾がアタマや耳、ひげ、指にまでバナナを生やした「Doleマン」に扮したコミカルなCMが忘れられないからという理由も大きい。なのに、若者やビジネスパーソンは買っていないようなのだ。・・・もしかしたら、「若者のバナナ離れ」か?まさか、バナナからも?

 消費者が商品を認知してから購買に至るまでの態度変容を表すモデルに、「AIDMA」がある。注意(Attention)→興味(Interest)→欲求(Desire)→記憶(Memory)→購買行動(Action)である。
 「Doleマン」のCMは面白い。テレビで目にすれば、確実に目が引き寄せられるし、興味も湧く。何度か見れば、しっかり記憶にも残る。しかし、自らとバナナの「接点」がなければ購買(Action)には至らない。故に、スーパーに行かない・いけない人との購買接点として「バナナ自動販売機」は機能する。

 しかし、数台の自動販売機でカバーできるターゲットは限られている。ましてやバナナは生ものだ。輸入→袋詰め→自販機に配荷→販売というバリューチェーン(VC)の中で、加工度を高めて付加価値を上げる部分は袋詰めだけで、利益率は高くないと考えられる。生もの故に、廃棄率も低くないだろう。自販機の設置・維持費を考えれば、1本130円の販売価格はよくてトントンぐらいではないか。では、何のために自販機を展開するのか。

 「Doleマン」のCMを起点とした上記のAIDMAを見ると、欲求(Desire:購買欲求)がスッポリ抜けていることがわかる。欲求が起こらなければ、コンビニやスターバックスでバナナを見ても手にとって購入することはない。では、ナゼ、欲求が起こらないのか。・・・バナナはオイシイのに・・・。
 ダイエットという特殊な購買理由を持った層。筆者以上の世代に多い、バナナが貴重品であった経験から、日常的にありがたく食べる層やその家族にとっては、バナナは身近な存在だ。しかし、バナナから縁遠くなってしまっている層にとっては、自らが「購入する」という行動を起こすこと自体が認識の範疇になくなる。「Doleマン」はあくまで、テレビCMのコンテンツの一つで、商品との結びつきを喪失し、欲求を喚起することはない。

 バナナ自動販売機の重要な役割。それは、バナナと縁遠くなっている層に、「そういえば、バナナ買って食べてもいいな」と「自分のこと」として注意を喚起し、購買欲求を起こさせることなのだ。
 バナナ自動販売機が話題となってメディアで取り上げられる。注意(Attention)→バナナ自動販売機という存在が面白く、興味(Interest)を持つ→いろいろな人が買っているという報道・情報に触れることによって、自分も機会があれば購入してみようという欲求(Desire)を持って、記憶(Memory)する→自販機に接触しなくとも、コンビニやスタバ、もしくは久々にスーパーに行った時、バナナが目に触れて購入する(Action)。

 消費者に向けて、広告という刺激を与えること。自動販売機という購買接点を展開すること。それぞれを単発で行っても最後の購買行動まで誘導することができなければ、商売としては完結しない。また、限定的な購買接点(自動販売機)だけでなく、様々な接点に向かわせる方が販売を完結できる可能性が高くなる。つまり、「バナナの自動販売機」は、広告だけでカバーできないターゲット層の購買を喚起するためのAIDMAを補完する機能を担っているのである。

 上記の通り、AIDMAは途中で止まってしまっては意味がない。最後の購買行動(Action)に消費者を導くために、1つだけでなくいくつものルートを設計し、刺激を与えて誘導していくことが肝要なのである。


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2010.11.17

売れるキーワード:「見えない価値」とは一体何だ?

 11月17日付日経MJ6面の小さなコラム「消費 見所 カン所」に、丸井グループの青井社長のコメントが掲載されていた。タイトルは「見えない価値取り入れ」。
「見えない価値」とは一体何だろうか。

 記事では<「見えない価値」とは、服の着心地やバッグの使い勝手といった使う人の内面的な価値のこと>だと青井社長はコメントしている。実績もある。<消費者の意見を元に履きやすさにこだわったパンプスを開発したところ、従来のプライベートブランド(PB=自主企画)商品の約8倍売れた>とある。
 使い心地や使い勝手は確かに重要だし、そうでなければ困る。だが、あえて、流通業のトップがそれを強調しているところに意味がある。青井社長は「内面的な価値」ともいっている。では、使い心地や使い勝手に優れた商品を手にした時に充足される、内面的な満足感とは何だろうか。恐らく「ああ、自分にピッタリだ。よかった!」だろう。
 そう考えると、実はその満足感の重要性が増しているのは、今日の消費者の価値観の大きな変化を表しているのだ。

 丸井といえば、かつてデザイナーズブランド全盛時代に青春時代を過ごした筆者が足繁く通ったものだ。その頃の服のサイズはMとLしかないとか、Fと記して「フリー」や「One Size Fits All」という設定が多かった。(当時の)若者としては少々小柄で、(当時は)細かった筆者にはなかなかに絶望的なサイズ設定で、「F:One Size Fits All」などという表示を見ると、「そんなわけあるかよ!」と内心で毒づいていたものだった。・・・だけど、買っちゃうのだ。ちょっとサイズが合わなくても、そのブランドが、流行の服が着たいから。
 かつては、「服に自分を合わせていた」のだ。それが、「自分にピッタリの服じゃなければ欲しくない」という意識に180度変わっている。
 この夏登場した、リーバイスのジーンズのレディースライン「Levi s Curve ID(カーブアイディー)」。全世界6万人、日本女性6千人のボディサイズから導き出した‘3つのカーブ’を元に3タイプ×ウエストサイズで展開されている。同商品のキャッチコピーがいい。「これからは、サイズより自分のシェイプにあわせる。」だ。まさに「自分にピッタリ」が価値であることを表している。

 「自分にピッタリ」を「relevant(適切な)」という言葉に置き換えてみると、あるブランド理論が援用できる。米国の大手広告代理店Young & Rubicam(日本では電通Young & Rubicam http://www.dyr.co.jp )はBAV(Brand Asset Valuator)という理論でグローバルブランドの評価を1993年から続けている。その基本的な指標の1つがThe Four Pillars(4つの柱)というものだ。Differentiation(差別化活力)=ブランドならではの違いをどの程度ダイナミックに提案しているか・Relevance(適切性)=どの程度自分にふさわしいと思われているか・Esteem(尊重・評価)=どの程度高く評価され尊重されているか・Knowledge(認知・理解)=どの程度認知理解されているか、だ。 実際には上記4指標のバランスなどで詳細な分析をするのだが、ここはDifferentiation(差別化活力)とRelevance(適切性)の関係だけに注目する。BAVでは、Differentiation > Relevanceという状態は、ブランドに他にはない個性や特徴を提案する活力ある状態だと見る。一方、その逆は、ブランドが差別化活力を失ってコモデティー化し、価格や便利さなどが購入理由の中心となっている危険な兆候であると見る。

 今日、ファッションはすっかりコモデティー化した。誰でも買うことができる低価格衣料を牽引するファストファッション勢。H&M日本上陸の2008年はコム・デ・ギャルソンとのコラボレーションが話題になったが、今年はランバンとのコラボだ。ユニクロはジル・サンダーがデザインする「+J」を、かつてのジル・サンダーブランドの価格と0が1つ違う価格で展開する。さらにZARAは、その年のトレンドをいち早く見極め、有名ブランドに遅れることわずか数週間で市場に投入する。ファッションで「人と違う価値」を消費者が手に入れるのはむずかしくなっている。
 そうなると、注目されるのが「自分にピッタリ」という価値だ。丸井のPB商品のパンプスが8倍売れたのも、そうした背景からである。

 日経MJの記事はまだ続く。<低価格衣料品店などが開発した保温性に優れた肌着が支持されているのも(青井社長は)同じ理由とみている>とある。ユニクロのヒートテック、イオンのヒートファクト、ヨーカ堂のパワーウォームなどだ。青井社長は<「開発者の視点で『高機能』という言葉がよく使われるが、お客さんからすると、冬でも厚着をしないでスマートに着こなせたり、Tシャツとしても着られたりする価値がある」からだ>という。
 「体表から放出される水蒸気を熱にして・・・云々」というようなしくみ。さらに、「一般的なコットン素材と比べて・・・云々」という性能。そこからもたらされるのは、「機能的価値」、つまりスペックだ。様々な製品で技術的成熟度が高まり、差別化が困難になった今日、単なるスペックだけを訴求することはできず、差別化困難になり価格競争となる。しかし、デフレの世の中では、安くしても売れない。

 ユニクロがこの冬売り出した「ヒートテックジーンズ」という商品。「冬でもジーンズをはきたい。でも、寒い。」という消費者のニーズギャップに応えるため、ヒートテック糸を織り込んだジーンズである。「発熱」「保温」「保湿」という3つの機能が示されているが、重要なのは「2枚ばきが不要です。寒い日も、ラクに細身シルエットを実現。」というコピーの方だ。その商品を用いると「どのような状態になれるのか」を示している。本当に「細身」なのかどうかは、はく人による。しかし、「今までモコモコしてたのは、ジーンズの下にタイツをはかなきゃならなかったから。これで、これからは細身シルエットになれるわ!」という気持ちになれることが大切なのだ。どのような気持ちになれるのか。つまり「情緒的価値」を提供しているのだ。

  日経MJの記事は<今後の商品開発でも、消費者目線で「見えない価値」を取り入れようと(丸井の青井社長は)意欲的だ>と締めくくっている。
 「自分にピッタリ」という「Relevantな価値」。「こんな気持ちになりたかった」と思わせる「情緒的価値」。そのどちらもが、機能やスペックで表せない「見えない価値」だ。さらに、その重要視するポイントや尺度は人によって異なる。だからこそ、より一人一人の顧客をよく見ることが重要となるのである。


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2010.11.16

ルミネ:有楽町マリオン・西武有楽町跡に自信の出店のワケは?

 12月末に閉店する西武有楽町が入っている有楽町マリオン。その大家である朝日新聞と松竹は10月末に後継店として駅ビル運営の「ルミネ」を選んだという。

 <有楽町マリオン「西武」跡に「ルミネ」新店-2011年秋オープンへ>(2010年11月11日:みんなの経済新聞ネットワーク・銀座経済新聞)
 http://ginza.keizai.biz/headline/1293/

 上記の記事にもあるように、<家電量販店大手「ヤマダ電機」が出店へ意欲を見せたことなども報じられ、今後の展開に注目が集まっていた>のであるが、朝日新聞と松竹の決め手は何だったのだろうか。

 上記記事と同日・11月11日付日本経済新聞夕刊コラム「ニュースの理由」にそのコタエが記されていた。タイトルは「ルミネ、有楽町に来秋出店」とある。ルミネが提示した出店条件は大家側とって最上ではなかったというが、それにも関わらず選ばれたのは、「駅ビル変身、手腕に白羽」という記事のサブタイトルが示すとおりだ。有楽町西武が開店したのは26年前。当時の<駅ビルは商業施設としての館の統一感が取れておらず「ダサイ場所」に近かった>(同・日経記事)とある。それを今日のように大変身させたのが、大家から「白羽の矢が立った理由」である。

 西武有楽町店の閉店以外にも、ここ数年で閉店した百貨店は多く、生き残りをかけた経営統合も相次いだ。日本百貨店協会が発表している「平成22年9月 全国百貨店売上高概況」という速報を見ると、地域別は全て対前年マイナス。商品別でもサービス、商品券、その他以外全てマイナス。壮絶な状況である。
 http://www.depart.or.jp/common_department_store_sale/list

 「百貨店」という言葉は、「Department store」の訳語だ。本来直訳すれば、「部門商店」だが、「何でも揃っている」との意を込めて「百貨」の文字が用いられている。そして、日本百貨店協会が設立されたのが1948年。第二次世界大戦終戦の3年後だ。その後、戦後復興期(1945年~1955年)、 第一次高度成長期(1955年~1965年)、第二次高度成長期(1965年~1970年)と歴史は進む。
 モノがない時代から、モノが大量に生産され、大量に消費されていく時代への変遷。「迅速な生産と供給」がビジネスの成功のカギ(KSF=Key Success Factor)であり、作れば売れる、並べれば売れた時代であった。百貨店は「小売の王様」と呼ばれていた。1973年、79年の2度のオイルショックもあり、70年代は低成長安定の時代とも呼ばれたが、消費は1986年からのバブル景気で消費は頂点を迎えた。
 西武有楽町店の入居した有楽町センタービル(マリオン)の開業が84年。バブル初期である。当時は「迅速な生産と供給」から、商品や広告での差別化へと企業課題が変化した。誰もが同じモノを欲しがった時代から、「十人十色」や「一人十色」といわれた「多様な消費」に応えた百貨店の最後の黄金期である。
 91年にバブルが崩壊し、93年から本格的な不景気、いわゆる「失われた10年」に突入し、消費は低迷した。モノが売れない環境で、「百貨」を揃えることは弱点となる。その頃から、取扱品目を絞った「七十貨店」や「三十貨店」という考え方が台頭してきた。事実、有楽町西武は延べ床面積が狭いこともあり、1995年にレディースファッション特化の戦略に転換した。

 この一連の百貨店の歴史と消費者の変化に、百貨店凋落の原因と、ルミネに寄せる有楽町マリオンの大家の期待が隠されている。
 そもそも、「百貨」を揃える意味は、高度成長期までは、「誰も欲しがるモノを、何でも揃えること」だ。その結果、「店に品物を並べれば、様々なものが売れていった」のだ。バブルの頃には、「目の肥えた消費者がやってきても、多様な消費にマッチするものが、店に必ずあるようにすること」が百貨の意味となったのだ。
 極論すれば、「百貨」を揃えていれば、「誰が・どんな理由で・何を買うのか」を詳細に突き詰めなくともよいわけだ。では、環境が変化し、「百貨」が弱点になって「七十貨」や「三十貨」に絞り込んだ時、それは詳細に突き詰められたのか。

 誰が=Target、どんな理由で買うのか=Key Buying Factor(KBF)がわかれば、どのような店にすればよいのかという位置づけや、魅力の打ち出し方=Positioningが明確になる。それができたルミネと、できなかった有楽町西武をはじめとする、多くの百貨店の命運を分けているのだ。
 前掲の日経新聞の記事に興味深い数字が掲載されている。
 <主力の新宿ルミネの1平方メートル当り売上高は約237万円で、西武有楽町店の2.7倍も売れている>という。

 百貨店勢は、近年になって、高島屋が新宿のテナント部分にユニクロを誘致し、銀座松坂屋が立て替えまでの期間限定でフォエバー21を誘致するなど、ファストファッションとの連携を模索しはじめた。また、伊勢丹が新宿店の地下に若年女性向けの「伊勢丹ガール」を、大丸と松坂屋を運営するJ.フロントリテイリングが同様のターゲット向けに大坂・京都の大丸、・銀座松坂屋で「うふふガールズ」の展開をはじめた。ルミネは西武がマリオンに出店した四半世紀前から<多くのテナントの商品が1万円を切る品揃えの中で顧客吸引力と販売力を蓄積>(同・日経記事)してきたのだ。

 有楽町マリオンでルミネが取ろうとしているポジショニングは極めて明確だ。前掲の日経の記事に意味深い記述がある。
 マリオン入居が決まったルミネが<アパレルなどに示している出店要請の文書>には<一等地の商業施設にありがちな「高級」という文字が一つもない>という。さらに、<「日本初、エリア初、新業態など、常に話題の中心になります」と力強く書いてある>という。

 出店要請の文書には<「銀座でも、丸の内でもない有楽町スタイルを創造」>という一文もある。
 東京駅丸の内側の目の前、丸ビルと新丸ビルのテナント。さらにその裏の通りを有楽町のペニンシュラホテルまで結ぶ道はちょっとしたブランド街だ。会社員・OLを中心とした客層だ。銀座は並木通り界隈がブランドショップの集積地となっており、中央通りの3・4丁目には銀座松屋、三越銀座店がある。集っているのは昔ながらの銀座の客層といえるだろう。5丁目から新橋方向は松坂屋があるものの、ファストファッション街と変貌を遂げつつある。平日にはアジアからの観光客、休日には家族連れが多く見られる。そんな丸の内、銀座とは一線を画するというのだ。
 有楽町駅を降りると、かつて人の流れはマリオンの阪急と西武の間の通路を抜け、晴海通りに抜けて銀座へと向かっていった。現在は、明らかにもう一つの人の流れができている。有楽町駅前の再開発で2007年10月にできた、丸井を中核とする複合商業施設「イトシア」の辺りから外堀通り方向に向かう。途中、従来からある高速高架下のテナント商業施設「西銀座デパート」を通り、2007年9月に銀座読売ビルの跡地にできた、東急ハンズ銀座店を含むテナントビル「マロニエゲート」へ。
 2007年以前の有楽町界隈は、もっと人が少なく、老若男女の比率も割りと均等。お洒落な人もいれば、ラフな人も多い場所だった。昨今は若年層の姿がよく見かけられる。渋谷や池袋、新宿といった他エリアと異なるオシャレも感じられる。その層が「有楽町スタイル」を訴求してマリオンに吸引したいルミネのターゲットだろう。彼ら、彼女らを確実に振り向かせ、さらに新たな顧客を有楽町に呼び込む自信がルミネにはあるのだ。

 ルミネが開業する2011年秋、1年後に百貨店業界はどうなっているだろうか。たぶん、大きく変わっていることはないだろう。そして、ルミネは、どのような「有楽町スタイル」を見せてくれるのだろうか。1年後を楽しみに、もう少し有楽町界隈と銀座、丸の内を観察しておきたい。


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2010.11.15

モスバーガーの新たなる挑戦・「モスカフェ」の実験を読み解く

 モスバーガーがカフェ業態の「モスカフェ」を11月15日にオープンした。首都圏に3店舗ある既存カフェ業態店とは異なる、新たな「モスカフェ」ブランドを立ち上げたのだ。その実験店舗的な意図を読み解いてみよう。

 <新たな看板を採用した新型店舗「モスカフェ 西銀座店」11月15日(月)オープン~店舗限定「オリジナルカップケーキ」8種を新発売~>(11月11日株式会社モスフードサービス・ニュースリリース)
 http://www.mos.co.jp/company/pr_pdf/pr_101111_1.pdf

 上記リリースによると、既存ブランドで展開しているカフェ業態店は、江ノ島、大崎、銀座という立地だ。江ノ島は観光地立地で、大崎は運営会社のモスフードサービスが入居しているオフィスビルの2階だ。今回の「モスカフェ」の立地に一番近いのは銀座だが、立地は銀座の外れの8丁目、新橋に近い既存店を衣替えしたものだ。
 今回の「モスカフェ 西銀座店」は、JR有楽町から徒歩3分。東京メトロ各線の銀座駅とも直結した高速道路の高架下「西銀座デパート」の1階にある。付近は有楽町西武閉店後にルミネが入居の名乗りを上げているマリオンや、丸井有楽町店、プランタン銀座など従来の銀座より客層が一段若い「有楽町エリア」を形成しつつある熱いスポットである。

■立地(Place)の意味を深掘りする

 リリースによると、<今後、メニュー構成や看板の効果などを検証し、他のカフェタイプ店舗への水平展開を行うとともに、都心部を中心とした一等立地への新規出店を行っていきます>とある。前述の各々立地条件が異なる既存カフェ3店舗での拡大を経て、最も狙っているのは都心一等地での展開だろう。
 モスバーガーといえば、ファストフードの概念と一線を画す、注文があってから作り始める「アフターオーダー方式」のこだわりなどが有名だが、1972年の創業以来長く、資金不足で広告宣伝が十分にできずに、「美味しさで口コミを広げて集客する」という2等立地での出店が長く続いた。2004年から従来の赤い看板(いわゆる「赤モス」)から緑の看板(「緑モス」)への掛け替えが始まった頃より、駅近などの好立地に進出が始まったが、今後は都心一等地をカフェ業態で狙う戦略が見て取れる。

■ターゲットを競合・マクドナルドとの関係で深掘りする

 都心一等地のカフェ業態で狙う背景とターゲットは誰か。
 リリースでは<既存の 「モスバーガー」のお客さま以外の層の取り込みも狙っていきます>とあり、さらに、立地の特性から<平日は近隣のOLや会社員、休日にはショッピング客が多く見込める>としている。
 モスバーガーは昨今好業績を記録している。それを支えているのは、2008年の年末に発売が開始され、今年8月末に3600万食の販売を記録した「とびきりハンバーグサンド」だ。国産肉100%の安心感を訴求し、牛豚合い挽きのパティにシンプルな具材・ソースでうまさを強調した商品は、「100%オージービーフ」がメインのハンバーガー業界のリーダー企業、マクドナルドに対するチャレンジャーの差別化戦略としては大成功であった。
 そのチャレンジャーとしての次の一手が「カフェ業態」なのだ。
 競合といっても圧倒的な力を持つリーダー企業のマクドナルドであるが、こと、カフェ業態に関しては「トラウマ」ともいうべきものがあるはずだ。
 マクドナルドは新業態・カフェ店舗として「マックカフェ」の名で1998年にスタートし、
店舗を矢継ぎ早に展開したものの、翌年撤退。2度目は2007年に同名の店舗を複数展開したが、翌年には早々に縮小・撤退。現在は既存店舗の一部で「カフェメニュー」のブランドネームとなっている。
 マクドナルドの「マックカフェメニュー」、及び2008年に価格はそのままに品質をプレミアム化したコーヒーは、従来のファストフード利用客以外を吸引するのに貢献しているという。もちろん、「コーヒー無料」のリーダー企業ならではの力技が効いていることも見逃せない。
 「従来客(≒ファストフード利用客)以外の取り込み」というターゲティングにおいて、被る部分も多そうだが、モスはどんな武器で戦おうとしているのだろうか。

■商品(Product)と価格(Price)及び立地(Place)の関係で読み解く

 「モスカフェ」の最大の特徴はスイーツだ。<カフェ店舗限定メニューとして、(同グループとして24店舗を運営する店)マザーリーフのパティシエによるオリジナル カップケーキ8種を新発売します>とリリースにある。その反面、バーガー類をモスバーガー、とびきりハンバーグサンドチーズなどの定番商品に絞り込んでいることがわかる。一方、食事系メニューは「カフェごはん」として、ジャマイカチキンごはん、サラダ仕立てのタコライスなどのいわゆる、カフェめし的ラインナップが揃う。ドリンクはホット黒蜜抹茶ラテ、アイスマンゴーフルーツティーなど、もちろん既存店にはないオリジナルメニューが並んでいる。さらに、アルコールも扱っていることが大きな特徴だ。メニューから見れば、既にマクドナルドをはじめとする、ファストフードとは全く異なるターゲットを狙っていることがわかる。
 価格的にわかりやすいのが、「カフェごはん」とドリンクの組み合わせだろう。ごはん680円+ドリンクの中心価格帯420円=1,100円。昨今のサラリーマンの昼食としては2~3食分に相当するが、都心一等地のランチとしては妥当な価格といえる。モスバーガー320円+プレミアムブレンドコーヒー330円+カップケーキ350円=1,000円もわかりやすい。
 「モスカフェ」の一つの狙いは、組み合わせ販売(クロスセリング)での収益アップだ。セットメニューが主流の昨今のファストフードで1,000円超えのオーダーする人はあまりいない。しかし、地代家賃の高い都心一等地では「客単価」を高めることが重要なのである。

■「売上=客数×客単価」の原則で読み解く

 「客単価」の以上に重要なのが「客数」だ。なるべく多く来店客を集めること。しかし、店舗ビジネスには「客席数」という絶対的な制約がある。
 「モスカフェ」の戦略は、「閑散時間」を作らないことであると考えられる。そのために「4毛作」で収穫をしようという意図だ。
まず、朝は定番バーガーとドリンクで朝食対応。昼はカフェごはん+ドリンクか、バーガー+ドリンク+スイーツ。午後は夕方までドリンク+スイーツ。夜はカフェめし+アルコールで夕食対応(もちろん、女性の「お一人様」需要も視野に入れている)。つまり、限りある席数を回転数を高めることによって、「坪単価」を上げる戦略であると考えられる。
 モスは前述の、注文があってから作り始める「アフターオーダー方式」などで、ファストフードと一線を画してはいるものの、顧客から見ればあくまで「ハンバーガー店」だ。朝食から喫茶、夕食まで全てに対応する店という認識を得るのはむずかしい。その点、「カフェ」という、言葉としては普及したが厳密な定義はなく、人によってイメージや求めるものが異なる存在は、うまく訴求すればターゲットの拡大と利用機会の増大、客単価向上などが見込めることになる。

 モスの「カフェ進出」は「カフェ業界」での勝負となる。リリースには<「モスカフェ」専用ロゴを使用した新たなデザインの看板を採用し、カフェタイプ店舗をわかりやすく訴求>とあるが、「カフェ業界」でどこまで「モス」のブランドが通用するかが問われることになる。


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2010.11.11

チキン戦争:ケンタッキーは「集中戦略」で逃げ切れるか?

 今年の夏の訪れと共に勃発した、マクドナルド対ケンタッキー・フライド・チキンの「チキン戦争」。猛暑を通り越した激暑だったこの夏の暑ささながらに、マクドナルドが激しい攻撃を仕掛けるも、ほぼ静観を決めていたケンタッキーに動きが見えてきた。果たして戦いの行方やいかに?

 マクドナルドのホームページを見ると、会社概要の業務内容には「ハンバーガー・レストラン・チェーンの経営並びにそれに付帯する一切の事業」と書いてある。そして、原材料の安心を説明するページには「100%ビーフパティ」を訴求している。そう、マクドナルドといえば、消費者のアタマの中には「100%ビーフハンバーガー!」だったはずだ。しかし・・・

 「チキン№1はマクドナルドだ!」とマクドナルドの原田社長が言い出したことから、チキン戦争は戦端が開かれた。
6月20日のチキンメニュー製品発表会での発言。「チキン市場3950億円のうち、マクドナルドは640億円。すでに16.3%のトップシェアを持っているが、まだマクドナルド=チキンという認知がされていない層がある。」(J-CASTニュース 6月20日)ということで、不動の1位を目指し、マクドナルドの侵攻が始まった。キャラクターに笑福亭鶴瓶を起用したCM大攻勢とメニューの連続投下。この秋も新メニュー「アイコンチキン」がシリーズで投入されている。

 そもそも、「チキン戦争」といわれ始めたのは、7月8日に渋谷の公園通りにケンタッキー・フライド・チキンの次世代店舗がオープンし、そのすぐ隣にはマクドナルドの戦略的次世代店舗があるという象徴的な光景だからだ。
 その後、守勢のケンタッキー・フライド・チキンはといえば、静観を決め込んでいるように見えたが、ついに動きが見えた。
 11月11日付日本経済新聞11面に<日本ケンタッキー 健康配慮型拡充 新型店、3年で100店>という記事が掲載された。店内の様子を撮影した写真には<揚げずに焼いたチキンなどで健康志向の消費者を取り込む>とある。
 新型店とは、上記7月8日に渋谷の公園通りにオープンしたタイプの店舗を指しており、その特徴は、オーブンで焼いたノンフライのチキンや、野菜を使ったサンドイッチやサラダなどのヘルシーメニューだ。「揚げないのにフライドチキン。野菜たっぷりで健康になる」という、「ファストフード&揚げ物の美味しさ」と「健康」という二律背反の解決が「次世代のケンタッキーの姿である」というポジショニングを示しているのだ。
 記事には、新型店を渋谷公園通り店に続いて<初のFC店として福岡中央区で2号店を出す。2010年度中に2~3店を設け、全国の都市部を中心に店舗網を築く>とある。実験店舗的な意味合いもあった渋谷公園通り店に続く2号店がFC契約形式となり、立地も具体的に決まった。今後に向けた本格的な始動ということだ。
では、ケンタッキーは「チキン戦争」をどのように戦っていこうというのだろうか。

 ハーバード大学経営大学院教授のマイケル・ポーターは「事業戦略の3類型」を示した。コスト競争力で勝っていく「コストリーダーシップ戦略」。差別化をして競争相手より優位に立つ「差別化戦略」。特定分野に的を絞り、経営資源を集中する「集中戦略」である。

 マクドナルドは極めてわかりやすい「コストリーダーシップ戦略」だ。それも極めて徹底した。2009年12月31日時点で国内3715店にのぼる店舗数を背景にした規模の経済、調達力に敵うものはいない。しかも、低コストと収益性を重視して直営志向からFC展開移行する一方、前年度の通期決算の場で、収益性の低い店舗を12カ月以内に433店舗を閉鎖することを発表した。飲食業の売上げ№1をゼンショーに明け渡したが、直営志向・売上げ重視の同社と対照的な戦略であるといえる。

 コストリーダーは通常、業界の中でただ1社しか存在し得ない。そして、それに対抗するためには「差別化」が必要だ。しかし、ケンタッキーはマクドナルドが「ハンバーガーレストラン事業」の枠を超えて、チキンだけでなくファストフード全般を戦場としているのに対して、ケンタッキーはもともと「フライドチキン」という狭いドメインで商いをしていた。つまり、「集中戦略」を取っていたわけだ。それを「揚げないチキンメニュー」に注力する戦略によって、「チキン」全般にドメインを拡張したことになる。
 ドメインを拡張すると、チキンが売り物の外食店全般が競合となるが、それを100店規模に拡大することで規模の経済を効かせ、調達力を強化してコスト優位に立とうとしていると考えられる。「チキン」という特定分野に的を絞りつつ、その中でコスト競争力で勝っていく「コスト集中戦略」である。

 ケンタッキーの「集中戦略」のキモはもう一つある。ターゲット層の集中だ。
 渋谷公園通り店オープンの日本ケンタッキー・フライド・チキンのニュースリリースにも、<若い女性層をターゲットに、お食事に、カフェタイムに、ちょっとしたブレイクにと、お気軽にご利用いただける店舗>というターゲティングとポジショニングが明記されていた。上記の日経記事でも「20~30代の女性」と記載されている。

 「集中する」ということは「捨てる」ことでもある。「集中と選択」というわりには、「選択しても集中できていない戦略」が散見される。「捨てる勇気」が持てないのだ。
 渋谷公園通り店オープンのリリースでは<白とシルバーを基調としたカラーに赤を効果的に配して新しいKFCを演出します>とあり、日経の記事でもそれが20~30代の女性を意識したものであるとして、今後の出店においてもそれを踏襲するという文脈で書いてある。

 マクドナルドの顧客層は種々雑多だ。オモチャ付きのハッピーセットやDSのゲーム配信など、こどもを連れたファミリーを中心に据えつつも、都市部ではお一人様席を充実させたり、次世代店舗では若年層を意識したり、一方で1971年以来開業39年の歴史から、顧客にはマクドナルドに慣れ親しんだ中高年も多い。
 リーダー企業の戦略は「全方位戦略」が基本だ。特定ターゲットに集中して「捨てる」ことはしないはずだ。捨てて規模を失えば、コストリーダーでなくなる。そこに、ケンタッキーの付け入るスキが出てくる。
 コストリーダーシップ戦略におけるリスクは、特定のセグメントが成長して、市場全体の規模に影響を及ぼすようになることだ。ケンタッキーが狙い通り揚げないチキン・ヘルシーメニューの魅力で20~30代の女性を取り込み、利用率、利用頻度を高めていき囲い込みを図る。そして、マクドナルドのチキン利用者全体からその層をスッポリ奪い取るようになれば、ケンタッキーがマクドナルドのチキン制覇を阻んだことになる。

 一方、リーダーの戦略の定石は「同質化」だ。チャレンジャーが開発・上市してヒットし始めた商品をスピードに勝る開発力を活かして迅速に模倣。強大な販売力であっという間に市場を席巻して競争力を削ぐのである。
 「揚げないチキン」のため、ケンタッキーは専用のオーブンを用意して調理しているという。新型店舗の全国店舗 展開がゆっくりなのは、フロアの改装だけでなく、既存の厨房にオーブンを入れるスペースを確保するなどの改造がハードルになっているのではないかと思われる。とはいえ、マクドナルドが本気を出して、オーブン付き厨房完備の次世代店舗を展開し、そこで「揚げないチキン」を出すかもしれない。それだけの意気込みと、資本力はマクドナルドにはあるのだ。

 勝負の行方はまだ見えない。本格的な戦いのゴングは、まだ鳴ったばかりだ。


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2010.11.10

伊藤園「TULLY'Sブランド製品CM大攻勢」への道のり

 伊藤園がTULLY'S(タリーズ)コーヒーブランド商品のCMで大攻勢をかける予定のようだ。4月末までに6,000GRP。年間1万GRPとの計画もある。ざっくり言って、半年で1人60回、年間100回はそのCMを見ることになるほどの大攻勢だ。その戦略的な意図、そして、そこにいたるまでの道のりを考えてみよう。

 <伊藤園、缶コーヒーに6000GRP タリーズ新商品で攻勢>(日本の広告会社・宣伝会議11月4日)
 http://www.ad-navi.jp/news/adti101104d.html

 記事には<伊藤園は3日、1日に発売する缶コーヒー新商品2種のテレビCMの放送を始める。10月29日、都内で開いた発表会で「出稿量は2011年4月末までに6000GRPを投下する」と社三雄・専務取締役商品企画本部長が明らかにした。社専務は「1年間では10000GRPは必要」との見方も示した>とある。
※GRP(Gross Rating Point)=一定期間に流したCM1本ごとの視聴率の合計

 かなりの広告攻勢であるといっていい。そのワケは、「今、乗っている波に乗り続けるため」だ。日本の飲料メーカートップ3といえば、長く日本コカ・コーラ、サントリー、キリンビバレッジという指定席が続いていた。その第3位を伊藤園は奪取したのである。

 8月19日の 読売新聞に業界の変動を伝える記事が掲載されていた。
 <清涼飲料3位攻防戦…伊藤園、キリンビバを逆転か>というタイトルで、<調査会社「飲料総研」によると、今年上半期(1~6月)の販売量は、キリンビバが前年比7%減の7930万ケースで、伊藤園が5%増の7920万ケースと詰め寄った>と伝えている。伊藤園の好調の主因は「お~い、お茶」の味改良と、紅茶飲料(ティーズティー)によるものとしている。
 続いて10月29日の日経新聞は、<伊藤園、清涼飲料3位に 新分野開拓が奏功>というタイトルで、<清涼飲料各社の今年1~9月の販売量で、伊藤園がキリンビバレッジを抜き、初の業界3位となった>と、逆転の結果を伝えている。

 伊藤園「お~いお茶」は緑茶カテゴリーのトップブランドで、他にも「充実野菜」などの野菜飲料も知名度は高い。しかし、それ以外のカテゴリーが弱すぎるという弱みがあった。そこで、<飲料分野で販売量が最も多いコーヒー市場に切り込んだ。「タリーズ」ブランドで昨年11月にコーヒー飲料を投入。紅茶飲料でも昨年8月に「ティーズティー」という新ブランドを立ち上げた。テレビ広告などで消費者にもブランドが浸透した>(同日経新聞)ということが勝因だ。
 しかし、ローマは一日にしてならず。新製品がすぐに作れるわけではなく、ましてや広告の出稿量を増やせばシェアが増えるわけではない。

 上記の日経の記事にもあるように、飲料業界の一番の稼ぎ頭はやはり「缶コーヒー」。日本コカ・コーラのジョージアは、ブランド全体では年間4千億の売上げともいわれている。また、伊藤園の茶系飲料のもう一つの柱である野菜飲料に比べて、原材料費率が低く収益性もいいのである。
その、缶コーヒー市場に参入するべく、伊藤園は数年間の歳月と資金を投じてきた。
 2006年にタリーズに出資・連結子会社化し、2007年にチルドカップの「TULLY'S COFFEE BARISTA'S SPECIAL」をタリーズと共同開発して、関東甲信越のコンビニで限定販売。その2年後である2009年に、タリーズブランドの缶コーヒーを全国販売したのだ。

 伊藤園が缶コーヒーにこだわるのは、稼ぎ頭であり、収益性がいいためだけではない。
 飲料メーカーだけではないが、メーカーの力の源泉の一つは「チャネル支配力」にある。つまり、「売り場をいかに確保するか」である。そして、特に飲料業界の場合、自動販売機の保有台数が販売力の雌雄を決する。日本には265万台の自動販売機が設置されている。(2006年度末時点:2007年12月16日日経新聞 ※総設置台数は統計によって誤差があるので注意)。そのうち、94万台がコカ・コーラの自販機だ。同社の力の源泉は自販機の力に負うところが大きい。利益率が薄くなるコンビニやスーパーなどの販路に頼らなくとも、自社で売り場が展開できる。設置さえすれば、自由に自社製品のラインナップを展開できることも魅力である。
 しかし、伊藤園には自販機に積極展開できない理由があった。同2006年度末時点で12万1000台に留まっている。自販機を展開するには、上記コカ・コーラのように並べるべき商品ラインナップが必要となる。伊藤園には強い炭酸の刺激がクセになる「天然水ソーダ」などもあるが、やはりイマイチマイナーな存在だ。ましてや、街ナカの自販機のユーザーは9割が男性で、売上げの半分は缶コーヒーが稼ぎ出しているという。缶コーヒー不在では自販機を設置しても画竜点睛を欠くことになる。その意味でも、時間がかかろうとも、「売れる缶コーヒーを作って育成すること」が大きな課題であったわけだ。それが、タリーズ買収から4年間をかけて達成しようとしているわけだ。

 売れる商品の目処が立ったら、いよいよ売り場拡大を急がなくてはならない。2009年10月6日の日経新聞に「伊藤園、大塚ベバレジ傘下の自販機運営会社に出資」という報道があった。14億円を投じたという、その狙いは伊藤園の商品を、大塚ベバレジ傘下の自販機運営会社の持つ3万台の自販機に入れることである。
 国内の自販機は飽和している。伊藤園は年間1万台の自販機をコンスタントに設置してきたが(2007年7月26日放送・日経スペシャル「ガイアの夜明け」)、<自販機の設置市場は成熟しており、設置台数は05年の228万台をピークに前年を下回り続けている。全国清涼飲料工業会(東京都中央区)によると「限られた新しい設置場所の奪い合いになっている」という。>(2010年8月24日神奈川新聞)。そんな環境で、一気に商品の販路である自販機を確保するために、多額の投資を決断したのだ。

 自販機で売れる商品を展開することは、もう一つ大きな意味がある。
 自販機が飽和する。自然と過当競争が起きる。ましてや長引くデフレの世の中である。昨今、街ナカの自販機を見れば、100円前後の「安売り専用自販機」や、通常の自販機でも10~20円の値引き販売をしているのが目に入る。商品の魅力を高め、価格を維持すること。それも欠かせない戦略なのである。

 これからイヤでもタリーズの缶コーヒーのCMを目にすることになるだろう。しかし、その裏には、CM(広告・Promotion)だけでなく、魅力ある商品(Product)の開発と自販機という販売チャネル(Place)の確保に多額の投資をして、価格(Price)を維持して販売をしようという、マーケティングミックス(4P)がきれいに整合した中・長期的な戦略が描かれていたのである。


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2010.11.09

「コンビニおでん70円均一」の謎を深掘りする


 冬の定番、「コンビニおでん」。昨今、各チェーンともお約束的に「70円均一」になっている。そのワケを日経新聞の関連記事をもとに深掘りして考察してみよう。

 10月13日付日経本紙35面の小さなコラム「数字すうじ」にその話題が掲載されていた。タイトルは「70円――コンビニおでんセール、なぜか各社が横並び」。コンビニ各チェーンのコメントを掲載しているところに注目したい。<ある大手チェーンは「70円均一はセブンイレブンが先行し、対抗上、同じ価格になった」と説明。70円は「店名のセブンにちなんだのでは」とみる。別のチェーンは「利益がとれるぎりぎりの値段。7個買ってワンコインで済むわかりやすさもある」と明かす。一方、セブン―イレブン・ジャパンは「不動の一番人気の大根が75円なので、それを下回る価格設定とした」と「店名由来説」を否定>とある。

 「コンビニのおでんは、なぜ70円均一なのか?」。上記記事では判ったような、判らないような状態なので考察を深めてみたいと思う。

 そもそも、コンビニがおでんに注力するのはナゼか?
 それは後でも引用するが、11月3日付日経MJ5面のコラム「光る技術 光る戦略」に記述されている。<おでんは一般的に利益率が高く、コンビニエンスストア各社にとって秋冬の主力商品の一つ>とある。

 では、なぜ、利益率が高いのか?それは、「加工度」というキーワードで説明できる。
 コンビニだけの話ではないが、一般的に「加工度を上げる=付加価値が増す」ことになるので、販売価格を高めることができる。魚を考えてみればいい。魚をそのままビニール袋に入れて売るよりも、切り身にしてパックした方がグラム単価は上がる。切り身ではなく、刺身にした方がさらに単価は上がる。刺身ではなく寿司になれば最も単価が高い状態になる。もちろん、その間にトレーや刺身のツマ、寿司のシャリなどの材料費や何より人件費がかかるが、利益=売上げ-コストなので、単価アップ分がコストを上回ればオイシイ商材となる。
 コンビニ店頭で販売される商品は、ナショナルブランドかPB(プライベートブランド)の別はあっても完成品だ。利益=販売価格-卸値で決まっている。店頭でさらに収益を上げるなら、店員であるパート・アルバイトの人件費は既に決まっているので、店内で加工度を高めて収益を上げられる「店内調理品」を充実させることに走るわけだ。

 収益率の高い店内調理品の中でも、最も単価アップが期待できるのが「おでん」であると思われる。ナゼなら、「コロッケ1つ」とか、「チキン1つ」というように、揚げ物系の店内調理品は基本的には単品注文だ。しかし、おでんで「はんぺん1枚」とか「大根1つ」とか単品で注文する人は、まずいない。
 同一商品の買い増し・買い換えを促進することを「アップセリング」という。その意味で、おでんは店内調理品の優等生であるのだ。

 しかし、上記11月3日の日経MJの記事には昨今の変調が記されている。<消費者の節約志向や他チェーンとの競合激化で、おでんの購入数量も1人当り4個程度で頭打ち感が出ている>という。
そこで、70円均一の1つの理由が考えられる。もちろん、前掲のコラム「数字すうじ」のように、コメントにある値引き合戦的な意味合いもあるが、「7個買ってワンコインというわかりやすさ」というコメントが最も正解に近いだろう。
 おでんにはネタがたくさんある。セブンイレブンのコメントでは大根が最強とのことだが、各社が魅力を出そうとすれば、限られたスペースの中で工夫して変わり種も取り込むこととなり、種類は増える。しかし、数が多くなれば人は結局無難ないつものものを選んでしまう。
 行動経済学・葛藤下の選択理論における「現状維持の法則」という。以前、放映されていた、プリンストン大学の行動経済学者・シャフィール博士が解説をする大和証券グループのCMを覚えている人もいるだろう。
 おでんの場合も数多いネタを目の前にして、迷ったあげく、結局、大根といくつかの定番ネタに落ち着く人も多いだろう。さらにネタごとに価格がバラバラだったら、支払総額の計算が面倒で、新しいものに手を出して「思ったより高く付いた!」ということになるリスクを回避しようという意識が働く。故に、「均一価格のわかりやすさ」が必要であり、「消費者に対するお得感」と「競合との価格比較」で「70円」という金額が決まり、「70円均一」にたどりついたのだと思われる。

 「70円均一」から一歩踏み出しているチェーンもある。サークルKサンクスだ。前出の11月3日日経MJコラムには「サークルKサンクス“チョイ足し” おでん、気軽に“自分流”」という見出しと、おでん売り場写真には「“チョイ足し”コーナーに並ぶ札から好きな商品を選ぶ」という説明が付いている。おでん鍋の前に8種類の札が設置されている。つゆに溶かして味を変える、スープ代わりにする「カレー」「チゲ」「とんこつ」「コラーゲン」の粉末スープ。具材として追加して主食機能を持たせる「おこげ」「焼き餅」「うどん」。人気の「ピリ辛練りラー油」も用意されている。
 記事によると、同社では<従来の70円~125円から80円と100円の2つの均一価格に見直した。計算しやすさを重視した取り組み>であるとし、70円ではないが、上記と同様に「現状維持の法則」を打破する狙いが見える。
 「チョイ足し」の展開は、購入数量を増やす「アップセリング」に加えて、「関連商品の購入」を意味する「クロスセリング」で収益の向上を図る狙いだ。クロスセリングをしつつ、飽きさせないために様々な具材を試させる。そのため、<表面に焦げ目を入れる焼き餅などは「通常は100円を超す商品」というが、あえて100円を切る90円に設定した>という。つまり、収益が低い、場合によっては赤字を覚悟で客を集める商品=「ロスリーダー」も設定しているのである。
 そうして注目させて、手に取らせたい客は誰か。同社の真の狙いは、前出の「おでんの購入数量1人当り4個程度で頭打ち」打開のため、「新規顧客を獲得すること」だという。どこでも同じような売り方。店内に漂う香り。味。それに対して「チョイ足し」で魅力を高め、「70円均一」から抜け出て「80円・100円均一」に賭けているのである。

 「コンビニおでん70円均一」の謎。それを掘り下げて考えると、その裏には「タスポ特需」に沸いた翌年の対前年比ダウン。11月からの大幅値上げという「タバコ依存」から抜け出ようと必死で工夫を重ねるコンビニチェーン各社の姿が見えるのである。


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2010.11.08

売れない理由を顧客視点で見直せ!無印良品のジャケットに学ぶ

 「ヒットまでには実は長い寄り道があった」と、「無印良品」のマネージャーが語っているのは、あるジャケットの話。店頭で鳴かず飛ばずで、半年で大幅値引きの在庫一掃から、「顧客視点」で全面的な見直しを図り、計画の3倍という売上げにまで化けさせたという。11月8日付日経MJ3面コラム「着眼着想」に掲載された記事をもう少し深掘りして考えてみよう。

 記事にある、売れずに在庫一掃となったジャケットは、ナイロン素材でたたんでもシワにならない「たためるジャケット」という商品だという。

 カジュアル化する一方に思える男性のファッションだが、ジャケットは意外と外せないアイテムだ。カジュアルでもちょっとキリッとしたテイストを出したい時。ちょっと改まった場所に行く時など。その証拠に、2010年流行の一つは、「ジャージー素材のジャケット」だ。見た目はちゃんとしたジャケットなのに、ストレッチ素材なので、とても楽。肩パットなども入っていないため、カジュアルウエアにもよく合って、1着あれば大活躍だ。

 無印良品の「たためるジャケット」が登場したのは、そんな今年のトレンドが生まれる2年前。2008年のこと。「着心地が楽」というより、「たためる」という名前と素材は、「不意に必要になった時」や、「必要に応じて一時的に着用する」ことを主眼としているはずだ。
 ジャケットに大敵なのはシワ。スーツであれば、パンツの折り目がないのは何ともいただけないが、ジャケット単体のカジュアル姿でも、シワシワではどうにも情けない。かといって、シワにならないように持ち歩こうとすると、何とも邪魔になる。今年流行のジャージー素材も比較的シワになりにくいが、畳んでカバンに入れるにはかさばる。

 では、そもそも、「不意に必要になった時」や、「必要に応じて一時的に着用する」なんてシーンがやってくるのはどんな時だろうか。記事では売れなかった原因を<「畳めるとどんなメリットがあるのか、消費者には伝わらなかった」という結論に到達。使用シーンを旅行に絞って商品を改良することに決めた>とある。
 「商品を改良」とあるものの、実は、マーケティング・ミックス(4P)をきれいに整合させていることが判る。以下が改良のポイントだ。

・商品(Product):商品名も商品の一部だが、<わかりやすさを最優先した>として、「旅に便利なジャケット」と改めた。シワになりにくさはそのままに、持ち運びを考え、通常の夏物ジャケットの半分の150gに仕上げた。旅行者のニーズであるパスポートや小物収納に便利なようにポケットの形状やサイズを変更したり、付加したりした。
・販路(Place):取扱店は<空港内の4店舗と、ホームページの旅行コーナーのみ>に絞った。
・広告(Promotion):旅行雑誌だけに限定して出稿した。
 と、上記のように<(商品の)機能、(販路の)立地、(広告と商品の名前という)訴求方法。「3つがリンクしてヒット商品に生まれ変わった」>とマネージャーのコメントを伝えている。
 記事の内容にもう一つ付け加えたいのが、価格(Price)である8,900円は、売れなかった時と変わっていないのかもしれないが、他の要素とうまく整合している。海外旅行は早めに空港に着く。ブラブラと店舗を見て目に付いた便利そうなジャケットが1万円を切る価格であれば、「ハレの日」で気前のいい出費モードになっている人を購入に向かわせることもできる。さらに、旅行情報を収集中のWeb閲覧者も、旅行計画が決まっている人なら、同様に準備品購入リストに入れさせて、ホームページか空港店舗で買わせることができる。「旅行で必要かも!」という需要を喚起して、「これなら買ってもいい」と思わせるカスタマーバリューに適合した価格設定になっているのだ。

 売れる商品には、良いマーケティング・ミックス(4P)の「整合性」がある。しかし、「旅に便利なジャケット」の整合性は4Pだけではない。
 4Pを考えるためには、「誰に」「どのように魅力を打ち出すのか」という、ターゲティング、ポジショニングが欠かせない。同商品であれば、「旅行に行く人」に、「一枚持っていれば、不意に必要な時に困らず、かさばらずシワになりにくいジャケット」という明確な設定がある。
 マーケティングマネジメントは、「ダメだった時には遡って考える」ことが大切なのだ。

 この事例には、もう一つ重要な学ぶべきポイントなのである。そもそも、ターゲットを絞り込んだ点が勝因であることだ。

 「ターゲットを絞り込んだら、対象者が少なくなってしまい、売れる数が少なくなってしまう」。そんな話をよく聞く。「作れば売れる」「誰もが同じニーズや嗜好を持っていた」時代。高度成長期の成功体験を引きずっている企業やビジネスパーソンに多い。そんな人は「旅に便利なジャケット」のような商品リニューアル計画を上申すれば、「そんなに対象者や販路、広告を絞ったらほとんど売れないだろう!」というはずだ。

 では、無印良品の「たためるジャケット」のターゲットは誰だっただろうか。男性用なので、女性は除外できるし、大人用なのでこどもも除外だ。無印良品の非顧客も除外してもいい。だが、それ以外の設定はない。幅広いターゲットが、商品を見て、自ら使い道を考えて「これはいい!」と価値を見出さなければ売れない状態だったのだ。故に、在庫一掃処分の憂き目を見た。

 「誰もが欲しがる時代」であった高度成長期から、「モノあまりの時代」といわれたバブル経済華やかなりし頃を経て、「消費者が消費しなくなった時代」ともいわれる今日。誰もが欲しがるモノも、差別化さえすれば売れるという経済環境もない。ピンポイントでターゲットを絞って、買ってもらえるような明確なポジショニングを示し、目にとまって、手に取られて、買いたくなるような商品と価格を提示して、ようやく売れるのである。

 「ヒットまでには実は長い寄り道があった」という記事のマネージャーの言葉は、「売れるためには緻密なマーケティングマネジメントの整合性が欠かせない」という事実。そして、何よりも最終的には「顧客視点に立ち返って見直すことが大切」という鉄則にも通じる。貴重な事例として覚えておきたいものである。


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http://pingoo.jp/ping/

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2010.11.05

雑誌「BIG ISSUE」の売り子にもらったもの

 売り手と買い手の関係は、有形・無形の商品と対価の交換において対等である。しかし、「顧客満足」という考え方が台頭して以来、売り手が弱者となりがちではないか。商品の対価+αのサービスが売り手に求められる。それは基本的な接遇であったり、サプライズでスペシャルなサービスであったりするが、顧客は自らの支払う対価以上の満足を得ることが当然の権利と思いがちだ。筆者はある日、そんなことを思い直させる出来事にであった。

 「ビッグイシュー(BIG ISSUE)」という雑誌を知っているだろうか。知らない人は「全32ページで300円」という体裁と価格を聞くと「高い!」と驚くかもしれない。しかし、その価格にはワケがあるのだ。「ホームレスの自立支援」である。1991年に英国で発足し、世界で展開。日本版は2003年にスタートした。300円の定価には、路上で雑誌を販売する売り子であるホームレスの取り分、160円が含まれている。ホームページ( http://www.bigissue.jp/about/index.html )の説明では、雑誌の販売収入を得てする「路上生活→簡易宿泊所(1泊千円前後)→アパート賃貸・住所取得→住所をベースに新たな就職活動開始」という自立への目標ステップが記されている。老子の言葉「授人以魚 不如授人以漁」(人に魚を与えれば一日で食べてしまうが、釣りを教えれば一生食べていける)と同じ考え方だ。現在、多くの売り子が路上生活を脱し、恒常的な住所取得のために頑張っているという。

 とはいえ、目標達成は容易ではない。暑さ寒さに耐え、1冊ずつ、160円の収益を積み上げていく日々だ。「ベンダー」と呼ばれる売り子としての登録を証明する身分証を首からさげる以外、販売にマニュアルはなく、通行人に買ってもらうためには各自の努力に依る。
 「BIG ISSUE」のホームページのトップの画像を見ると、雑誌を高く掲げて通行人にアピールしている販売スタイルが掲載されている。( http://www.bigissue.jp/ )「ああ、あの人たちか!」と思い出した人も多いだろう。買ってもらうために、多くの売り子は身なりをこざっぱりとし、ホームレスには見えない。

 筆者はといえば、2006年ごろ存在を知り、売り子を見かけると購入する読者となっている。ページ数が少ない割には記事がしっかりしており、例えば最新号はロックバンド、ボン・ジョヴィのリーダー、ジョン・ボン・ジョヴィの独占インタビュー記事が掲載されている。彼がホームレス支援活動を行っていることなどはWikipediaにも載っていないし、コアなファンでもなければ知らないのではないだろうか。そんなオリジナリティーも魅力だ。

 長い前説から、ようやく本題に入る。前述のジョン・ボン・ジョヴィが表紙で微笑む、最新号を筆者が手にした時の話である。

 ある日の夕暮れ時、筆者は足早に有楽町・交通会館側の駅前を歩いていた。目にBIG ISSUEの売り子が目に入ったが、少々急いでいたことと、財布に小銭がなかったことを思い出して、その横を通り過ぎた。通りすがりざまに売り子と目が合った。そして、なんとなく気になって、100メートルぐらい進んでから引き返し、彼に「ください」と声をかけた。
 すると、その売り子は「きょうは線路の反対側に来て売ってるからね」と笑顔を浮かべて妙なことを口にした。その笑顔、少しいたずらっぽい目の光を見た刹那に記憶が蘇った。BIG ISSUEを買う場所はいつもバラバラで、出張先の名古屋駅前で買ったこともある。だた、確かにこの売り子から何度か購入したことがある。
 彼は話を続けた。「いつも反対側(東京国際フォーラム)を通るでしょ?今日はどうしたのかな、違う人だったのかなと思っちゃった」。

 彼は、何度か不定期に購入しただけの相手のことを覚えていたのだ。そして、覚えていることがさも当然というように話しかけて来たのだ。それ以前に、すれ違いざまに「ここにいるよ」と目で合図を送ってくれていたのだ。

 「顧客の認知」。売り手が顧客を覚えていること。それは商売の基本だ。しかし、不特定多数の顧客を相手に低廉な商品を販売する場合、なかなかに実現は困難だ。それを彼はやってのけている。簡易宿泊所と食料を確保するためには、BIG ISSUEを毎日10~20冊は売らなくてはならないのにだ。

 そこまで考えてから、ふと、「きょうは線路の反対側に来て売ってるからね」と唐突に言った彼の言葉を思い出した。彼は、買い手である筆者も売り手である彼を認知していると信じて「きょうは・・・」と話を切り出したのだ。
売り手が顧客を覚えていたとしても、顧客も売り手を覚えておく義理はない。ましてや、通りすがりに何度か雑誌を買っただけの相手だ。「顧客も自分を覚えていてくれるに違いない」と思うのは、単なる彼の思い込みにすぎない。だが・・・。
 あまたいるBIG ISSUEの売り子。何人もから購入した経験の中で、思い起こしてみれば彼ほど明るく人なつこい表情と話をする人が何人いただろうか。そして、ホームレスとは思えない、前向きな目の輝きを持った人は。そもそも、通り過ぎてからその目が気になって、きびすを返して彼の元へ引き返してきたのだ。
 
 雑誌を手渡し、千円札を受け取って釣り銭を数えながら、彼は言葉を続けた。「年末宝くじが始まったら、また反対側に戻っちゃうからね」。
その言葉に筆者は「ああ、それじゃあ、今度は気をつけて探してみるよ」とほほえみを返した。

 雑誌「BIG ISSUE」の売り子の彼にもらったもの。
 それは、「形容しがたい満足感」だった。何か、胸が温かくなるような。

 売り手と買い手の関係は、商品と対価の交換において対等である。であれば、「顧客満足」があるなら、「販売者満足」があってもいいのではないか。顧客は自分のことを売り手が認知してくれていることに満足する。顧客も売り手を認知していれば、売り手もうれしくなるはずだ。きっと、有楽町駅の裏表でBIG ISSUEを売る彼には、そんな、売り手と買い手が敬意を払う、「人と人」としての相互信頼感関係ができあがっている顧客が何人かいるのだろう。

 もちろん、低廉な商品であれば、不特定多数の顧客が購入する。同じ商品を扱う売り手や、同じ販売窓口に立つ売り手も何人もがいて、入れ替わることもある。お互いがお互いを必ず覚えていることは困難だ。だが、売り手と買い手がお互いに、相手を認知して対応しようという努力を続けるならば、お互いの心が温かくなるような出来事が起きる確率は高くなるはずだ。

 顧客は自らの支払う対価以上の満足を得ることが当然の権利と思いがちだ。そして顧客の過度な要求にモチベーションが低下した売り手は、顧客への信頼と敬意を忘れ、対応が形骸化する。そんな悪循環を顧客の側から断ち切る努力があってもいいと思った。少なくとも、どんな商品を購入する時にでも、売り手のステキな対応にであった時には、顧客の側も敬意を払い、相手を認知するようにしたいと思った。


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2010.11.04

フラット化する大学生・校風の希薄化傾向の原因を考察する

 「バンカラ」とか「ハイカラ」とか、例示するには既に死語だが、かつて各大学には強烈なカラーが存在した。カラーというのでなければ校風といっていいかもしれない。それが希薄化している気がする。ナゼだろうか。

 筆者の母校は東洋大学で、現在は本業の傍ら青山学院大学で非常勤として教鞭を執っている。大学卒業の年は1989年。バブル経済真っ盛りだった。その頃の青学のイメージは、お金持ちで、とってもオシャレで「ナウなシティーボーイ」で、「女の子にモテモテ」な感じだった。一方、当時の東洋大生は、入学金や授業料の安さもあってか地方出身者も多く、どこか垢抜けない感じが漂っていた。(※個人の感想です)

 ところが…20年以上経った今日、教壇に立つために通う表参道の青学キャンパスと、卒業生として図書館の蔵書を利用したり知人の教員を訪ねたりと訪れる白山の東洋大キャンパスで、学生の雰囲気にそんなに差異がなくなっているように感じるのだ。
個人の感想だけではない。過日、ある業界の人事担当者が一堂に会する懇談会で話をしたところ、採用担当者も同様に様々な大学の学生から感じる雰囲気に差異がなくなっているという。あの、早稲田・慶応というかつては青学・東洋以上に両極といわれていた大学の学生ですらそうだという。


 ナゼ、そうなったのか。マーケティング環境分析的に考えてみよう。PEST分析(マクロ環境分析)だ。


■政治的な影響要因(Political)

 Politicalには「規制事項の変化」も含まれる。問題は「就職協定」だ。1994年に国会で当時の鳩山邦夫労働大臣は「経済界と文部省の方で話し合って自主的にやっていること」と答弁している(Wikipediaより)。つまり、正確には政治や法律ではないながら、企業と大学・短大の間の間で結ばれていた1996年に廃しされた影響は極めて大きい。翌1997年以降、各企業側・学校が独自基準で動き始め、就職活動年々早期化。現在、四年制大学は協定が存在していた頃の4年次の夏~秋に始まっていたものが、3年次の初秋から始まっている。

■経済的な影響要因(Economical)

 91年のバブル崩壊後の93年~2003年は「失われ10年」と呼ばれているが、景気循環で考えると、2002年3月~2007年11月まで69ヶ月間続いた、いわゆる「いざなみ景気」があった。しかし、あまり消費者には実感がないまま、秋にリーマンショック~世界同時不況が勃発した。
 前項の就職と関連して、「就職氷河期」といわれる期間は失われた10年初年の93年~2005年といわれている。日本生産性本部が毎年発表している「今年の新入社員のタイプ」では、2007年は「デイトレーダー型」などと名付けられ、「景気の回復で久々の大量採用だったが、氷河期前とは異なり、細かい損得勘定で銘柄(会社)の物色を継続し、安定株主になりにくい」として、一時的に売り手市場だったことが判る。しかし、09年からは「超・氷河期」といわれる状況になった。就職活動はますます熾烈を極めることとなっている。
 就職だけでなく、在校生の生活にも昨今の不景気が多大な影響を与えている。
 2010年2月10日に、読売新聞に、「大学生への仕送り額ダウン、25年前の水準に」という記事が掲載された。「親元から離れて暮らす大学生への仕送り額が、25年前の水準まで落ち込んでいることが10日、全国大学生活協同組合連合会(東京)の調査でわかった。」ということだ。
 では、「アルバイトをすればいいじゃない?」といっても、それもなかなかままならない。就職活動は年々早期化し、激化している。かといって単位取得のためには授業にも出なければならない。昔の学生のようにアルバイトをびっちり入れることができないのだ。

■社会的な影響要因(Social)

 日本の生産年齢人口(15~64才)は1995年をピークに96年から減少。97年から少子化社会といわれるようになった。その影響で2007年頃から大学の入学希望者総数が入学定員総数を下回わる「全入時代」に突入。各大学の生き残りが始まった。
 その中で、大学の入学金・授業料は初期費用を安くして授業料を高めにするなど様々な徴収方法の変更をしたり、奨学制度の整備をしたりと、相対的に学生及び親の負担を軽減して多くの学生を集める傾向が各校で強まっている。その結果、大学間での費用格差が減少している。
 学生のカルチャーやファッションに注目してみると、かつては男子学生でいえば、「ホットドッグプレス」や「ポパイ」、「メンズクラブ」「メンズノンノ」というような雑誌からの情報に偏向していたが、インターネットやモバイルの発達によって、学生・若者同士の生の情報がリアルタイムで入手できるようになった。また、ショッピングも流行のエリア、店に行かずともECでマストアイテムが各日におさえられるようになった。また、買い物のしかたも、お手本コーディネイト例をそっくりそのまま購入する「コーデ買い」(←ちょっと言葉古い?)も一般的になっているようだ。
 買い物に言及するならば、現在の若者は「好景気を知らない世代」であり、かつてのバブル世代にあったような、贅沢で人と違う目立つための消費には関心を示さない。身の丈消費はファストファッションやユニクロなどの大量生産・大量販売モデルであるSPA型のブランドに人気が集まる。

■技術的な影響要因(Technological)

 友人や仲間とのコミュニケーションにも、前項の情報やモノの入手にもデジタルデバイスは欠かせない。しかし、それらは購入費だけでなくランニング費用の通信費負担が重い。ある青学の学生に聞いたところ、スマートフォンとPCの両方を使用している彼は、1ヶ月のアルバイト代の3割は通信費に費やすという。ましてや前述の通り、アルバイトをする時間は限られている。仕送りも少ない。全体として少ない可処分費用が侵食されてしまうのだ。


 PESTの項目を洗い出してみると、各項目の意味するところは各大学のカラーを構成する学生自身の環境や志向がフラット化していることがわかる。

 少子化による全入時代において、大学の生き残りのために入学金・授業料格差は減少して、金銭面での入学ハードルは全体として下がった。
 入学後の生活は親からの仕送りが減る一方で、全ての学生にとって欠かせなくなっているデジタルコミュニケーション機器と通信費が誰にも等しく支払いを発生させている。さらに3年次以降は就職活動でアルバイトも制限され、自由になる時間も収入も少なくなる。学生間の「貧富の差」は減少する要因が多くなっているといえる。
一方、ほぼ全学生がデジタルデバイスを使用していることから、情報へのアクセシビリティーとリアルタイム性が高まり、情報格差がなくなった。情報を得て購入するモノは大量生産・大量販売型が多くなっている。全体としてはファッションや情報感度は高まるが、一方で没個性化は否めない。

 つまり、大学の入試難易度の差異は相変わらずあるものの、金銭的な入学のしやすさは全体的に低くなる一方、学生を取りまく、金・時間・モノ・情報という要素において、個々人の差がなくなっている。その結果、個性がフラット化した個々人が各大学に散らばっているという状態が、「大学カラーの希薄化」を招いているのだと推察できる。

 大学カラーの希薄化は、卒業生にとってはゆゆしき問題であり、嘆かわしき自体かもしれない。しかし、大学カラーの希薄化は時代の趨勢だろう。それに、ひとたび社会に出れば、「○○大学出身」という肩書きは以前のように意味をなさなくなっている。前述のある業界の人事担当者も「出身大学は問わない。人物本位だ」と口を揃えていた。
 大学生を取りまく環境は厳しく、また、大学生だけでなく没個性化・フラット化は現代社会全体の傾向かもしれない。しかし、筆者は大学生に就職のためだけではなく「個性のフラット化」に抵抗して欲しいと思う。「人と同じ自分」はいない。「唯一無二の自分」を自覚することが、生きていくための力になると考えるからだ。


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2010.11.02

BOP攻略:インドの6400円冷蔵庫に見る「整合性」

 成功するマーケティング戦略、良いマーケティング・マネジメントの要件を上げるとすれば、その一つは間違いなく「整合性」である。それは普遍的な原則であるといってもいい。事例として、インドの低所得階層における冷蔵庫普及プロジェクトの発展段階を見てみよう。

 11月 1日付日経夕刊に「6400円冷蔵庫 郵便局と販売提携 印家電大手、農村に配送網」という見出しの小さな記事が掲載された。
 「6400円冷蔵庫」とは、インド・ゴドレジ財閥の家電大手ゴドレジ・アンド・ボイス・マニファクチャリング社が開発した、「チョットクール」という製品だ。製品仕様は、記事では<重量は8~9キログラム。コンプレッサーを使わず、「サーモエレクトリック」と呼ぶ電子冷却方式で庫内をセ氏5~15度に保ち、野菜、果実、飲料を保冷できる。冷蔵室はない>と紹介している。

 機能を必要最低限に絞り込んだ仕様が同じインドでタタ財閥が開発した自動車「ナノ」を想起させることから、「冷蔵庫版ナノ」と紹介しているメディアもある。しかし、機能をそぎ落すだけでなく、ターゲット層が生活の中でどのように使用するのか。そのために実現すべき仕様は何か。購入しうる価格で実現するために高価な部品と代替できるテクノロジーは何かというような探求を続けた過程は、「ナノ」の開発プロジェクト以上に意義深いといえる。
 詳細はJICA(独立行政法人国際協力機構)のWebサイトにゴドレジ・ボイス社 副社長G・サンドラマン氏の講演録と解説が掲載されているので、まずはリンク先を一読されたい。

 <BOP層向けの簡易冷蔵庫「チョットクール」の開発ストーリーとVLFMプログラム>
 http://www.jica.go.jp/india/office/information/event/2010/100526.html

 上記は現在注目を集めるBOP(Bottom of the Economic Pyramid=世界人口の約72%、約40億人存在する年間所得3,000ドル未満の開発途上国の低所得階層)へのアプローチ事例としても意義深いが、前掲の日経夕刊記事と併せて考えると、マーケティングの整合性がよくわかる。

 モノ作りとしての「チョットクール」の秀逸さはリンク先のJICAの記事でよく理解できるだろう。インドのBOPをターゲットとしてそのニーズギャップをしっかりとおさえていることが起点だ。JICAのページのG・サンドラマン氏の講演録より引用すると<インド人の80%以上は冷蔵庫を利用していません。インドでは最安価格帯の冷蔵庫でも6,000ルピー(約13,200円)はします。10億人を超えるBOP層は支払うことができませんし、多くは電気へのアクセスがありません。しかし、もし牛乳を保存したり、野菜や果物を傷むことなく保存したり、数本の冷たい水を得ることができれば彼らの日常生活は著しく向上することができます>という状況だ。

 ターゲットとその潜在ニーズを見極めた上で、どのようなポジショニングにすればターゲット層に受入れられるのかを考えた過程も秀逸だ。講演録では<チョットクールは冷蔵庫ではありません!チョットクールは別の商品カテゴリなのです!>とある。電気が通っていない場合もある。リビングで寝起きするような狭小な住宅に住んでいる。中古冷蔵庫のある家庭でも食料の長期保存はしないため水以外は保存されていないという状態。そんなターゲットに対して、「低価格な小型冷蔵庫を作りました!」というより、彼らの生活によりマッチする新しい製品カテゴリであると訴求した方が受入れやすいのだ。軽量なため、使用場所を固定しない可搬性がある。<12ボルトの直流電圧で機能し、バッテリーでもインバーターでも、太陽エネルギーでも機能>するため、電気が通っていなくても大丈夫。形状も絞り込まれた機能も、確かに従来のいわゆる「冷蔵庫」とは一線を画している。

 ここまでで、インドにおける社会的(Social)・経済的(エコノミカル)なマクロ環境と、その中でのBOPというターゲット層とニーズ、ターゲットに受入れられるポジショニング。そして、ポジショニングを体現する製品(Product)と、その販売価格(Price)が整合していることが判るだろう。
 しかし、問題はターゲット層に製品が行き渡ることだ。講演録にも<BOP層への道筋は簡単なものではなく、いくつかの挑戦に直面しました。広く薄く広がる市場、顧客の購買力の低さ、利用者側の認識の限界、大きな文化的多様性などです>とある。中でも最も厄介なのは「広く薄く広がる市場」へのアプローチ方法である。
潜在ニーズはあるものの、新たなポジショニングの商品を説明し、販売するには販売チャネル(Place)の整備がカギとなるのだ。そこで、日経の記事にある「郵便局と販売提携」なのである。

 日経の記事によれば、「インド西部マハドラシュ州の郵便局と提携した」とのことだが、契約主体は政府系の「インド・ポスト」ではないかと思われる。販売方法は、<郵便局員が受注、配達、集金を担う>というしくみで、<受注1件ごとに275ルピー(約500円)を(ゴドレジ社が)郵便局側に支払う>というバックマージン方式だ。<同州の郵便局員は約6万3千人、うち配達人が8600人。冷蔵庫のない世帯の多い農村部にも拠点・人員を配置する点に着目して提携した>という。
 従来にない新たなポジショニングの商品は、説明を要する商品である。その点、配達員による販売であれば、その機能を担うことができる。また、(市場の地理的広さが判らないが)8600人という人数は、ある程度のカバレッジを確保できているのだろう。ターゲティング、ポジショニング、製品(Product)、価格(Price)、販売チャネル(Place)の整合性が確保できていることが判る。
 では、マーケティングミックス、いわゆる4Pの最後の1つ、Promotionはどうだろうか。4PにおけるPromotionは、「コミュニケーション」と読み替えることが多い。意味するところは、「販売促進(セールス・プロモーション)」や「広告」だけではなく、「広報」や、人が直接説明や実演、サンプル配布や営業を行う「人的販売」までを、きちんと総合的に組み合わせて考えるということだ。「コミュニケーションミックス」という。その点においては、販売チャネルである郵便配達員が「人的販売」をも担っている。さらに昨今は「口コミ」もコミュニケーションミックスに加えて考えるが、一連の施策で対象地域に口コミが伝播することも期待できる。

 G・サンドラマン氏が<BOP層への道筋は簡単なものではなく、いくつかの挑戦に直面しました>というとおり、「チョットクール」はいくつもの難所を乗り越え普及を図っているところだ。乗り越えるべき最後の難所を、販売チャネル(Place)とコミュニケーション(Promotion)という問題解決に効く1粒で2度美味しい「郵便局と販売提携」を実現させたのである。

 BOP層へのアプローチは多くの日本企業も取り組んでいるが、「チョットクール」のマーケティングミックス(4P)及び環境とSTP(Segmentation・Targeting・Positioning)との整合性は学ぶべき事例であるといえる。
 但し、今一度認識したいのは、BOPの対極にある成熟市場である日本におけるマーケティングでも、「整合性」は欠かすことのできない大原則なのである。その視点で、成功したマーケティング戦略の事例を見直してみることもお勧めしたい。


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2010.11.01

「利用シーン別売り場」でデジカメを売るカシオの狙い

 カシオ計算機は飽和し、低価格化に歯止めがかからないコンパクトデジカメ市場に対し、新たな売場提案でテコ入れを図る戦略に出た。

 11月1日付日経MJ家電&eビジネス欄に掲載されたコラム。「コンパクトデジカメ メーカー売場提案 利用シーンや一体展示 スペック訴求から脱却」という見出しの文字が目に入る。マーケティングを正しく理解している者ならば、これらの言葉を見ただけでカシオが「マーケティングの本質」に立ち戻ることで、成熟期のコンパクトデジカメ市場での生き残りを図る戦略に出たことがわかる。

 製品、及び製品カテゴリの製品の市場への浸透状況は、導入期→成長期→成熟期→衰退期という普及過程(プロダクトライフサイクル)を辿る。製品が市場の潜在顧客の大部分に行き渡った段階である成熟期においては、ブランドや製品バリエーションが多様化すると同時に価格競争が熾烈化する。やがて競争に敗れた弱いブランドが脱落していき、衰退期に至ることになる。
 「まだまだユーザーも多いし衰退期になるのは早いだろう」と思うかもしれない。だが本当にそうだろうか。こと、「コンパクトデジカメ」というカテゴリで考えれば、オリンパスが往年の名機PENの名を冠した機種を投入して火を付けた「ミラーレス一眼カメラ」というカテゴリがある。ソニーはミノルタ時代からの一眼レフカメラブランドのαシリーズで、「NEX」シリーズというミラーレス一眼カメラを投入した。ミラーレスは一眼カメラの特徴である光学ファインダーがなく、液晶画面で対象を確認して撮影するスタイルで、見かけや使い勝手はコンパクトデジカメと大差がない。パナソニック「LUMIX」シリーズは以前から一眼とコンパクトを同ブランドで展開している。
 従来の一眼レフカメラの光学ファインダーをのぞいて撮影し、どのように撮れたかはシャッターを押してから液晶で確認するという使い方は、一般の消費者にとって少々敷居が高い。しかし、ミラーレス一眼はコンパクトデジカメと大差ない。すると、「もっとうまく、きれいに撮りたい」と思う消費者は価格が高くともそちらに乗り換えていくことになる。結果的に、コンパクトデジカメ市場に残るのは、「こだわりの低い消費者」で、価格低下を引き起こすという構図になる。

 コンパクトデジカメ市場の値崩れ状況は、記事によれば、<9月の平均単価は1万8400円(税抜き)で前年同月比22%下がった。デジカメ全体(12%下落)と比べて値下がり幅が大きい>という。値下げ合戦による価格下落と弱者敗退は衰退期の特徴。その前兆が出ているといえるだろう。

 プロダクトライフサイクルの変化と共に、消費者のニーズは通常どのように変化していくのか。フィリップ・コトラーの「製品特性3層モデル」と併せて考えるなら、デジカメの場合、以下のようになる。
 導入期では、顧客が製品を手に入れて実現したい「中核価値」だけでも購入してもらえる。デジカメラでは「デジタルで画像がきれいに残せること」だ。カシオが1995年にQV-10という25万画素の機種を市場に投入した。価格は65,000円であった。以降、各社の画素数競争が始まった。
成長期においては、中核価値は当たり前な要素となり、中核をどのように実現するかという「実体価値」が競争課題となる。「高倍率なレンズのズーム比率」や、ライカ、ツアイスなど「有名な海外光学カメラブランドのレンズを搭載」するなどの展開を行った。カシオはEXILIM(エクシリウム)という「薄型コンパクトで携行性のよい本体」にこだわった。各社のスペック競争である。
 そして、成熟期においては、さらに中核価値とは直接関係のない「付随機能」での競争となる。「印刷機能内蔵」や「無線LAN内蔵」など、様々な付随機能が開発・搭載されている。カシオは「動画・静止画合成機能」をEXILIMに搭載した。

 記事では、<コンパクトデジカメ売り場はいまだに有効画素数、レンズの広角対応、液晶の大きさなどスペックごとに商品を陳列する店も多い>と指摘している。市場のライフサイクルに追いつかず、成長期の戦場を来店客に見せているのだ。だからといって、付随機能を全面に出しても、それで売れるわけではない。付随機能とは、本来「中核価値の実現とは直接関係ないが、魅力を高める要素」である。誰もが一様に欲するわけではない。

 カシオが家電量販店各社に提案している売り場は、「旅行向け」「アウトドア向け」などの利用シーンごとに商品を陳列する売り方だという。

 「デジタルカメラ」を欲しいと思う人のニーズは何か。前述の中核価値である「デジタルで画像がきれいに残せること」であるが、今日、マニア以外フィルムカメラを使う人はほとんどいないので、「きれいに写真が撮りたい」ともっと単純に考えた方がいい。
 では、なぜ、どのように「きれいに写真が撮りたい」のかというニーズの深掘りをしてみれば、人によって、様々なシーンを想い出や記録を残すということと、思い描く想い出のカタチ(残したい絵柄)があることがわかる。そうしたニーズに対応した機種が一目でわかる売り場をつくって、「よく判らないから、安いのでいいか!」となることを阻止しようという試みだ。

 記事では、ソニーマーケティングの対応も紹介されている。<「コンパクトも動画対応が増え、静止画機能を訴求するだけでは客のニーズに合致しなくなる可能性もある」>として、ビデオカメラとの一体展示を行うという。
 前述の通り、デジカメを購入するニーズは「きれいに写真が撮りたい」であり、もう一段深掘りすれば「きれいに想い出(記録)を残したい」だ。想い出は静止画だけで完結するものではなく、検討過程で動画で残したいと思うようになる人も多いはずだ。その取りこぼしを防止する狙いだろう。

 ハーバード大学大学院の教授であったセオドア・レビットは、著書『レビットのマーケティング思考法』(ダイヤモンド社)で、「工場では化粧品をつくる。店舗では希望を売る」として、以下のように記している。
 <レブロンを名だたる巨大企業に育て上げた天才的経営者、チャールズ・レブソンはこう言った。「工場では化粧品をつくる。店舗では希望を売る」。なるほど、女性は化粧品を買う。だが、女性は化粧品を買うのではない。希望を買っているのだ。レブソンは人間の衝動を正しく理解して、その上にあの金字塔を建てたのである>。

 消費者ニーズをとらえて、それを深掘りする。マーケティングの基本の基ではなるが、言うは易く行うは難しだ。しかし、今日ほど、その原点に回帰すべき時代はないといえるだろう。


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