ミルク入り登場?ブレンド茶戦線異状あり
アサヒ飲料のニュースリリース。「ミルクを加えたクリーミーな十六茶!」が発売されるという。いわゆる「ミルクティー」ではない。十六茶は複数の茶葉や原料で淹れた「ブレンド茶」というカテゴリーの商品である。1993年の発売以来17年を経て、十六茶がミルクと邂逅することとなった背景は何だろうか。
アサヒ飲料ニュースリリース http://tinyurl.com/2dyslw8
リリースでは、「穀物由来の香ばしい香りと、ミルクのクリーミーな味わいがマッチ」とある。「紅茶の香りとミルクのマッチングは大好きだけど、香ばしいのは何だかちょっと抵抗あるなぁ…」と思ってTwitterでツイート(つぶやき)してみた。するとフォロアーの方から、「スタバのほうじ茶ラテを思い出しました。ミスマッチですが、オーダーしている人は結構見かけました。私も試飲しましたが、意外とイケます。」とのレスポンスが。うーん、確かにそう考えればアリかもしれない。しかし、ブランド本体から商品を派生させる「ブランドエクステンション」は失敗すると本体ブランド価値を棄損するという影響がある。
ブレンド茶カテゴリーの歴史を振り返ってみよう。
カテゴリーを最初に開拓したのは、十六茶だ。 最初の発売年とされている93年とは、 シャンソン化粧品が1985から年ティー・バッグタイプの「十六茶」を発売していたものを、アサヒ飲料缶・ペット容器入り飲料「お茶どうぞ」シリーズのサブブランドとしてとして発売した年だ。大ヒットとなり、97年には「十六茶」ブランドとして独立。99年に累計出荷数が1億箱を記録したという。(Wikipedia及びアサヒ飲料ホームページを参照)
しかし、飲料業界のリーダー企業、日本コカ・コーラが同質化戦略を仕掛けてきた。「爽健美茶」を93年に茶系飲料「茶流彩彩」のサブブランドとして発売を開始。十六茶の売上げをじわじわと浸食し、99年の大ヒットを経て単独ブランドとして独立した。(Wikipediaより)。シェアは完全に逆転し、ブレンド茶カテゴリーの約7割を爽健美茶が占めるに至ったのである。さらに日本コカ・コーラは2006年5月に「からだ巡茶」を発売。ブレンド茶カテゴリーを無敵の2トップ体制で盤石なものにしたのである。
チャレンジャーが現れたのは2008年5月のこと。キリンビバレッジから12種の素材をブレンドした「潤る茶」が発売された。CMキャラクターに人気絶頂の仲間由紀恵を起用し、力を入れた。さらに翌年、ミネラル(カリウム)・ビタミンC、さらにコラーゲンといういかにもカラダが潤いそうな原料を加えパッケージを改訂。CMも大量に投下した。しかし、検討空しく、2010年4月、発売中止となった。
再びカテゴリーの戦いが激化したのは潤る茶が静かに市場から姿を消した同年同月。まずは、アサヒ飲料が十六茶でカテゴリー首位奪還をしけた。爽健美茶に対する明確な差別化を図りリニューアル。パジャマ姿の新垣結衣をCMに起用し、「朝ブレンド・カフェイン0」とパッケージに明記したのだ。原料由来で若干カフェインを含有する爽健美茶の弱点を突いたのである。
そこに割って入ったのが、キリンビバレッジだ。まさかの「生茶」ブランドをエクステンションしたブレンド茶を投入。ジャニーズのNEWS・山下智久が「どっちの生がいい?」と問いかけるのは従来の緑茶ともう一方こそが、潤る茶の弔い合戦とばかりにコラーゲンを投入した「生茶 朝のうるおうブレンド茶」なのだ。
生茶も踏み出した「ブランドエクステンション」に話を戻そう。
派生商品に既存ブランドを冠して、知名度や信頼性が得られやすい状態で上市する。生き残りの厳しい市場での生存確率を高める手法でもある。特に新商品を絶えず発売してブランドそのものを存続させることが求められる食品や飲料の世界では、常套手段であるともいえる。ブレンド茶カテゴリーでは、爽健美茶が2007年から期間限定商品を年に数種発売する戦略をとっている。そして、2009年8月の「爽健美茶 黒冴」発売で本格的にブランドエクステンションに乗り出したといえる。期間限定商品ではなく、継続したブランドに育成すべくCMも大量に投下した。そして、何と、そのターゲットは男性なのだ。
「爽やかに、健やかに、美しく」を意味する商品名。美しい女性CMキャラクターを用いたCMを連続投入して築き上げたブランド。それを、男性向けに共用する。
ブランドエクステンションで従来と異なるターゲットを設定した場合、既存ターゲットの離反が懸念される。烏龍茶成分を主とした「黒冴」は、「爽健美茶」ブランドの認知度と信頼性で、これまた激戦区である烏龍茶カテゴリーユーザーを吸引することができる。反面、危険な賭けでもある。賭けに打って出られたのは、そもそも爽健美茶のユーザー層が男性にも拡大していたことと、女性ターゲットを自社後発のからだ巡茶がしっかり囲い込めるように成長していたからだと思われる。
生茶をブランドエクステンションした、「生茶 朝のうるおうブレンド茶」は、CM大量投下、山下智久の語るメッセージ、「どっちの生がいい?」は裏返せば「どちらも生茶である」というendorsement(裏書き・保証)の成果か、市場に受入れられ売れ行き好調のようだ。
では、ミルクを加えたクリーミーな十六茶であるところの、「ラテブレンド 十六茶」はどうだろうか。
茶葉+ミルクといえば、紅茶のミルクティーが一般的であり、現在各社がしのぎを削っているカテゴリーだ。ヒットのポイントは、糖類ゼロで低カロリー化したことによる。そして、その主たるターゲットは男性層だ。紅茶カテゴリーでヒット商品が乏しかったアサヒ飲料は木村拓哉をキャラクターに起用した「TeaO(テオ)」がヒット中だ。ミルクティー以外はカロリーもゼロ化しており、「甘い紅茶で癒される」と男性層を中心に売れ行き好調である。
筆者のような中高年男性にとっては、「低カロリーで甘いミルクティー」は癒しにもなって、受入れやすい。しかし、保守的な嗜好からは「ブレンド茶の香ばしさや独特の風味とミルクは合うのか?」と疑問を抱いてしまう。
しかし、ブレンド茶カテゴリーは女性層の支持が高い。十六茶ブランドは認知度・信頼性も十分だ。そこで、女性をメインターゲットとして茶葉+ミルクの文脈で「ラテブレンド 十六茶」が誕生したのではないかと思われる。
「ラテブレンド 十六茶」の発売は11月2日だという。果たして、ブランドエクステンションは成功するのか。女性層の反応を見つつ、オジサンも試してみようと思う。
どのような味なのかまだわからないが、もしかしたら今年2月2日に新発売され、1ヶ月で年間販売目標の半分を売り切ったという「キリン 午後の紅茶 エスプレッソティー」のようなメガヒットになるかもしれない。
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