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2010.10.05

吉野家「牛キムチクッパ」発売延期はなぜ?(試食レポート付き)

吉野家「牛キムチクッパ」発売延期はなぜ?(試食レポート付き)

 各メディアによると、吉野家は4日、9月7日に発売した「牛鍋丼」の販売数が1千万食を超えたと発表した。一方で、すき家・松屋との牛丼低価格戦争離脱のための、もう一つの戦略商品「牛キムチクッパ」を約1ヶ月発売延期し、11月目処としたという。その理由と影響は何だろうか。

 何度も繰り返される牛丼値下げ合戦は、先月7日から吉野家が280円の「牛鍋丼」を発売したことによって、新たなステージに突入した。吉野家の新商品を牽制する意味で、すき家が「秋の感謝祭」として、並盛・250円という低価格キャンペーンを実施。松屋も、8月に引き続き、異例の2ヶ月連続で9月もキャンペーンを実施した。吉野家の今後も命運をかけた「牛鍋丼」の出鼻をくじく作戦だった。
 しかし、軍配は吉野家に上がった。1ヶ月で販売数1千万食を達成。メディアによれば、来店客の約6割が注文しているという。「低価格で他社に流れた自社顧客を取り戻し、メニューの新規性で他社客を取り込む」吉野家の戦略骨子は当面達成できていると判断できるだろう。自社に戻ってきた顧客は、牛鍋丼だけでなく、牛丼にも回帰している。筆者もそうであり、店内を見回しても牛丼注文者も数多い。それが4割の数字をたたき出しているのだろう。

 今後も他社は、相変わらず定価280円~320円。頻繁に最低価格の250円キャンペーン構成を続けると思われる。なぜなら、そもそもその価格レンジは、不景気の折、ランチ予算を300円~500円に抑えたいとする人が多く、コンビニ弁当などが割高だと敬遠されはじめる動きがある中で、牛丼チェーンがその層の吸引に成功しているからだ。コンビニで300円で買えるものは、大型のカップ麺と昆布などの安い具のおにぎり1個でしかない。とても寂しい。300円前後の牛丼が人気になるのは自然な流れなのだ。

 他社の攻勢をしのぐためにも、吉野家は280円メニューを1枚看板のままにしておくことはできない。そのための新メニュー第2弾「牛キムチクッパ」なのだ。しかし、各メディアは<「牛鍋丼が予想を上回る反響があり、 第2弾については準備に万全を期す必要があると判断した」>と同社の発表を掲載している。

 新メニューの展開は、現場オペレーションに大きな負荷がかかる。そのため、牛鍋丼の発売に際し、豚丼などの豚系メニューは現在も販売を休止している。しかし、従来、メニューの貧弱さが指摘され、それが顧客囲い込みの弱さの現況であるとの指摘も強いため、新メニューの展開も急ぎたいところだ。
 それだけではない。牛鍋丼の肉は、従来吉野家がこだわってきた「米国産・ショートプレート部位」とは別部位の米国産牛9割と豪州産1割のブレンドである。故に、その原材料の価格低下を図るためにも「使用量を高める」=「販売数を増やす」ことが欠かせない。「規模化」である。そのためには、牛鍋丼が大人気であるといっても、新メニューも加えて販売数を加速したいはずだ。

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 発売延期の原因の糸口を探るために、筆者は「牛キムチクッパ」の先行販売店で試食をしてみた。

 吉野家は新メニュー上市の前に、いくつかの店舗で先行販売によるテストを行うのが常である。場所は東京墨田区・錦糸町北口店。「牛キムチクッパ 新登場 280円」の店頭のぼりが深夜23時の夜にも鮮やかである。店内が8割客で埋まっており、注文の割合は牛鍋丼4割・牛丼3割・牛キムチクッパ2割・その他(ナゼか牛シャケ定食など)1割というところ。熱心な牛丼ファンや、新たに取り込まれた牛鍋丼ファンが多いのか、新メニューに躊躇する客が多いのか、牛キムチクッパは出ていない。
 注文をしてみると、「牛キムチクッパ“だけ”でいいですか?」と聞かれる。どうやら、半熟玉子のトッピングがお勧めらしい。このあたりは、牛鍋丼も生玉子を併せるとよりすき焼き風になるという設計と同じで、「アドオン・セリング(追加販売)」を狙っていることがわかる。が、辞退。
 店に客数は多いのに、新メニューも遅滞なく、というより驚くほど早く提供された。さりげないトッピングのお勧め。スムーズな配膳と、「準備に万全を期す」理由は店内オペレーションではないようだ。


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 試食をしてみる。ナメてかかると驚くほど辛く、本格派な雰囲気を醸し出している。具材は牛肉、白菜キムチ、タマネギ。牛肉は牛丼・牛鍋丼と同じ下味が付いていることがわかる。キムチもサイドオーダーのものと共通な気がする。タマネギも牛丼系と共通だろう。それらをうまく辛みのスープで合わせて「キムチクッパ」に仕上げてある。味は十分合格点だ。というより、美味い。
 が、ここから先は個人差による評価が大きくなると思われるが、吉野家メニューでかねてから問題になる「量」が気になった。
 全体量は何グラムあるかわからないのだが、全体がスープに浸っており、スプーンで食べるようになっているため、サラサラとすぐに食べきってしまう。辛みが強いので一気食いは無理だが、それにしても、他の丼を食べるよりはあっさり終わる。
 次に気になる店は肉だ。「肉が少ない」も、良く指摘されるところだが、しらたきと焼き豆腐で肉量を抑えた牛鍋丼よりも少なく感じる。肉質は「牛鍋丼」はショートプレート部位ではないので、若干柔らかさに欠ける部分も気になったが、「牛キムチクッパ」はむしろ、サシ(脂)がうまく入った、牛丼用肉のような柔らかさを感じた。その柔らかさ故に、軽やかに咀嚼・嚥下され口腔をサラリと通り抜けてしまう。
 結構辛いので、決定的に物足りなさを感じることはないのだが、280円で「並・トッピングなし」で食するには若干のボリューム不足を感じた。

 「準備に万全を期す」というその意味が、筆者の感じたボリューム感の問題を先行販売店で試食した来店客の様子から感じ取った結果であったとしたら、これからのチャレンジはかなり大変なものになるだろう。大規模チェーン店のメニューは厳密な原価計算のもと、設計されている。「それでは少々量を増やそうか」とはできない。
 しかし、明るい材料もある。何といっても、計画を上回る「1千万食越え」を達成しているのだ。原価低減を規模の経済によって図れる可能性もある。また、他の報道では、連結子会社のステーキの「どん」なども原材料低減とコスト圧縮で黒字化を達成したという。特に、同じく牛肉を扱う「どん」が好調になり客数が伸び、吉野家と原材料の共通購入を図れる部分が多くなれば、それだけ仕入れ原価低減が図れる。ゼンショーもステーキを扱う「ココス」などの連結子会社と共同で牛一頭買いをして原価低減を図っている。吉野家も「ショートプレート部位」だけにこだわらないメニューを開発した以上、調達部分の見直しが可能となり、安くてボリュームのある牛肉を使えるようになるかもしれない。

 広報の発表では、牛キムチクッパの発売が正式に何日になるかは明かされていない。拙速より巧遅を尊び、万全の準備で美味しくてたっぷり食べられる、低価格牛丼に十分対抗できる第2の戦略商品としての発売を待ちたいと思う。


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