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【マーケティング講座】

お勧めマーケティング関連書籍

  • 金森 努: 3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング(DOBOOKS)
    初めての人から実務者まで、「マーケティングを体系的に理解し、使えるようになること」を目的として刊行した本書は、2016年に「最新版」として第2版が発売されました。 それから6年が経過し、デジタル技術の進化やコロナ禍という大きな出来事もあり、世の中は既に「ニューノーマル」に突入しています。 その時代の変化に合わせて本文内容の改訂、新項目の追加や事例の差し替えなどを大幅に行ないました。
  • 金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)

    金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)
    「マーケティングって、なんとなく知っている」「マーケティングのフレームワークは、わかっているつもりだけど業務で使いこなせていない」・・・という方は意外と多いのが実情です。 「知っている」「わかっている」と、「使える」の間には、結構大きな溝があるのです。 その溝を、最低限の9つのフレームワークをしっかり理解し、「自分の業務で使いこなせる」ようになることを目指したのがこの書籍です。 前著、「最新版図解よくわかるこれからのマーケティング」は、「教科書」的にマーケティング全体を網羅しているのに対して、こちらの「9のフレームワーク・・・」は、「実務で使いこなすための「マニュアル」です。 もちろん、フレームワークをしっかり理解するための、実事例も豊富に掲載しています。 「よくわかる・・・」同様、多くの企業研修テキストとしてもご採用いただいています。

  • 金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)

    金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)
    旧版(水色の表紙)は6年間で1万部を販売し、それを機に内容の刷新を図りました。新章「ブランド」「社内マーケティングとマーケティングの実行」なども設け、旧版の70%を加筆修正・新項目の追加などを行っています。本書最新版は発売以来、10ヶ月で既に初版3千部を完売。以降増刷を重ね、約1万部を販売していおり、多くの個人の方、大学や企業研修で「マーケティングのテキスト」としてご愛顧いただいております。

  • 金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)

    金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)
    ヒット商品ネタ51連発!このブログ記事のネタを選りすぐってコンパクトで読みやすく図表付きに再編集しました!

  • 金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)

    金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)
    打倒「もしドラ」!を目論んだ(笑)ストーリー展開のマーケティング本。初心者にもわかりやすいマーケティングの全体像に基づき、実践・実務家も納得のリアリティーにこだわりました!

  • 金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える

    金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える
    ペンギンの世界を舞台に「考えるとはどういうことか」「論理的思考(ロジカルシンキング)とは何か」を考える、スラスラ読めて身につく本です。初心者の入門書として、一度学んだ人の復習にと活用できます。

  • 金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本

    金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本
    マーケティングをストーリーで学び、「知っている」が「使える」になる本。1つ1つのフレームワークが、面白いように「つながっていく」感覚を実感してください!

  • 金森 努: “いま”をつかむマーケティング

    金森 努: “いま”をつかむマーケティング
    7編の取材を含む、2010年のヒット商品など約30事例をフレームワークで切りまくった「マーケティング職人・金森」渾身の1冊。フレームワークを学びたい人にも、フレームワークの具体例を知りたい人にも、朝礼で話せるコネタが欲しい人にも役に立つこと間違いなしです!

  • 長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語

    長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語
    「分かるとできるは違う」と言われるが、両者間には距離がある。実業務のどこで使えるのか気づけない。だから使えない。本書はお菓子メーカーのマーケティング部を舞台にした「若者2人の成長物語」を通して、戦略思考、論理思考、クリティカル・シンキングなどの、様々な思考法が展開されていく。ストーリーで「使いどころ」をつかめば、実践できない悩みの解消が図れるだろう。 (★★★★★)

  • ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

    ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
    フレームワークの「使用上の注意」は、「人の心はフレームワークだけでは切れない」を常に認識することだ。「行動経済学」に注目すれば、経済合理性に背く人の行動の謎の意味が見えてくる。謎の解明を様々なユニークな実験を通して、著者ダン・アリエリー節で語る本書は、「フレームワーク思考」に偏りすぎた人の目から何枚もウロコを落としてくれるはずだ。 (★★★★★)

  • セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践

    セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践
    「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」や、「マーケティング近視眼(Marketing Myopia)」で有名なレビット教授の名著。製品とは何か。サービスとは何か。顧客とは何か。そして、マーケティングとは何かと問う、今まさに考え直すべき原点が克明に記されている名著。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
    コトラーはマーケティングは「製品中心(Product out)=1.0」「消費者中心(Customer Centric)=2.0」。それが「人間中心・価値主導(Social)=3.0」にバージョンアップしたと論じている。本書は「マーケティング戦略」の本というよりは、今日の「企業のあるべき姿」を示しているといえる。その意味では、「では、どうするのか?」に関しては、新たなソーシャルメディアの趨勢などに考慮しつつ、従来のコトラー流2.0を十分に理解しておくことが必要だ。 (★★★★)

  • 鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)

    鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)
    広告に関する本は、いわゆる広告論や広告制作の手法を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思います。「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめました。さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

  • 金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)

    金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)
    金森の著書です。フレームワークやキーワードやセオリー、事例をマーケティングマネジメントの流れに沿って102項目で詳説しました。フレームワークの使いこなしと事例には特にこだわりました。金森のオリジナル理論もあり!

  • 山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える

    山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える
    リーダーの戦略や、チャレンジャーがリーダーを倒す方法など、ポーター、コトラーの理論を更に実践的な事例と独自フレームワークで解説した良書。事例がちょっと古いが、今、読み返してもためになる。在庫が少ないので、中古本でも出ていれば即買いをお勧め。 (★★★★)

  • 金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)

    金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)
    このBlog記事一話一話が見開きで図解されたわかりやすい本になりました。ヒット商品のヒミツをフレームワークで斬りまくった、ネタ56連発。是非一冊!

  • 後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて

    後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて
    「レスポンス広告」とは資料・サンプルの請求や商品の注文を消費者から獲得するための広告のこと。そのための方法論は、ブランドイメージをよくするといった目的とは全く異なる。本書は多数の広告サンプル(精度の高いダミー)を用いてレスポンス広告のキモを具体的かつ詳細に解説している。「レスポンス広告の鬼」たる筆者ならではの渾身の1冊。 (★★★★★)

  • ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン

    ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン
    どんなすばらしいマーケティングプランも、結局は人が動かなければ成功しない。故に、リーダーシップ論が重要となる。本書はコッター教授の「企業変革8ステップ」が寓話の中でわかりやすく記されている良書である。金森絶賛の一冊です。 (★★★★★)

  • マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

    マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
    2000年発売の良書。旧タイトル「ティッピング・ポイント」が文庫本化されたもの。クチコミの本ではなく、イノベーションの普及が何かのきっかけで一気に進む様を、各種の事例を元に解明した、普及論にも通じる内容。(うっかりリストに入れ忘れてました)。オススメです。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学

    野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
    経済分野最強のジャーナリスト勝見 明紙と、経営学の大家野中 郁次郎先生という黄金コンビによる傑作。いくつもの企業でのイノベーション事例を物語風に紹介しながら、その変革の要諦を解明、さらなる提言をメッセージしている。読み応え十分。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの本質

    野中 郁次郎: イノベーションの本質
    最新刊の「イノベーションの作法」に比べると、少々こちらは「野中理論」の難しい部分が表面に出ているように思えるが、発売当初、ナレッジマネジメントの観点からしか読んでいなかったが、読み返してみれば、本書の1つめの事例である「サントリー・DAKARA」はマーケティングでも有名事例である。むしろ、本書での解説は、マーケティングのフレームワーク上の整合ではなく、そのコンセプト開発に力点が置かれており、その精緻な記述は圧巻であった。読み直して得した気分になったので、ここで併せて紹介する。 (★★★★)

  • グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

    グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
    だいぶ発売されてから時間が経ってしまったのですが・・・。 二度目に読んで、「お勧め」しようと思いました。 そのわけは、一度目は「いかに顧客と優良な関係を構築することが重要か」という当たり前なことを力説しているだけの本だと思ったからです。 事実、そうなんです。アドボカシー(advocacy=支援)という新しい言葉を遣っただけで。 ただ、その「当たり前なこと」のまとめ方が秀逸であり、我々マーケターにとっては「当たり前」でも、その考え方がどうしても理解できない石頭な人に読ませると、なかなか効果的だと分かりました。 さて、皆さんもそんな人が周りにいたら読ませてみては? (★★★)

  • レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」

    レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」
    ダイレクトマーケティングの創始者であり、金森の心の師でもある、レスター・ワンダーマンの「BEING DIRECT」(英文名)が12年ぶりに改訂されました。 詳しくは、Blog本文の10月16日の記事を参照ください。 必読の書です。 前版は電通出版だったので入手が少々面倒でしたが、今回は一般の出版社からの刊行なので、アマゾンで購入できます。この本の画像をクリックすれば、アマゾンのサイトにリンクしますので、是非! (★★★★★)

  • フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式

    フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式
    実は、この本は金森の入院中の頂き物。結構はまりました。 スウェーデンの売れっ子セミナー講師が自らのセミナーで用いている30の設問を、気の利いたイラストに載せて紹介している。「レンガの使い方を10通り挙げなさい」のような、「ん?どこかの自己啓発セミナーで聞いたな~」というようなネタもありますが、ひねりの効いた問いかけもいっぱい。ざっと流し読みしたら20分で読み終わってしまう絵本になってしまいますが、本気で問いかけの答えを考えると、なかなか論理思考も鍛えられます。金森もお気に入りの問いかけは出典を明らかにして、自分の企業研修で使わせてもらっています。 ちなみに、この本の2(続編)も出ています。2冊揃えば送料も無料。「あわせて買いたい!」。 (★★★★★)

  • パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う

    パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う
    重要な本をお薦めするのを忘れていました。この本も結構、私の座右の書となっています。「ミッションステートメント」の重要性もコラム等で繰り返し述べてきました。それがしっかりしていないが故に、会社自体が方向性を見失い、社員も求心力をなくす。また、顧客のことも忘れてしまう。ミッションステートメントは壁に黄ばんだ紙に書いてあるものを、朝礼で呪文のように唱和するためのものではないのです。社員全員、全階層がそれを本当に理解し、行動できれば会社に強大なパワーが生まれるはずです。この本は「強い企業の強いステートメント」が紹介・解説された良書です。 (★★★★)

  • エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学

    エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学
    もはや絶版でプレミアがついて現在ユーズドで3万円!(昨年までは2万円以下でした。定価は8千円弱)。 しかし、一度は翻訳版とはいえ原書を読みたいもの。 私のコラムでもよく取り上げています。 様々なマーケティングの入門書にも部分的に取り上げられていますが、誤った解釈も多く、「イノベーションの普及速度」などの重要項目も抜けています。 ただ、基本的には社会学の学術書なので、完読するのはチトごついかも。(それで星4つ。内容的には断然5つですが。)3万円ですが、手にはいるならラッキー。 10万円にならないうちに・・・? (★★★★)

  • ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業

    ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業
    すみません。これは宣伝です。 Blogにも「共著で実践的なナレッジマネジメントの本を出しました」と紹介いたしましたが、この度第二版(重版)ができました。 初版で終わったしまうことの多いビジネス書において重版はうれしい! まだお読みになっていない方は是非! (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪

    フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪
    これも分かっている人向き。 コトラーの中では「最も今日的な本」であると言えるでしょう。コトラー大先生と私ごときを並べて語るのは不遜の極みですが、私が旧社電通ワンダーマンのニューズレターや日経BizPlusの連載でしきりに訴えてきた内容が集約されている気がします。うーん、大先生と何か視点が共有できているようで読んでいて嬉しくなってしまった一冊でした。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト
    今度は分かっている人向け。そういう人はたぶんもう買っていると思いますが・・・。 コトラー特有の大作ではなく、マーケティングの中でも重要なコンセプトを80に集約して解説を加えた、ある意味他のコトラー本の「攻略本」とも言える。 常にデスクサイドに置いておき、用語集として使うもよし、ネタに困ったときにパラパラと眺める「ネタ本」としてもよし。マーケター必携の本であると言えましょう。 (★★★★★)

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2010.10.15

絶滅危惧種?衰退期の「スーツ市場」で、どう生き残るか?!

 この記事を読んでいるのが男性であれば、どのような服装をしているだろうか。金曜日ということもあってか、通勤時間帯もカジュアルな服装が目についた。「カジュアルフライデーか」と思いつつ、その言葉自体が死語になりつつあることに気がついた。

 スーツ姿がすっかり減ったわけだ。何しろ、この12年で「メンズスーツ市場」は半減したという。
  <服が売れない……メンズスーツ市場は12年前の半分以下>(10月6日Business Media 誠)
 http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1010/06/news067.html

 矢野経済研究所が10月5日に発表した、「国内アパレル市場に関する調査結果」が元になっている記事によれば、アパレル市場は<1991年のピーク時には約13兆円あった同市場の規模は、約20年間で3割ほど縮小した>というが、その中でも<紳士服市場の1割を占めるメンズスーツ市場は、前年比19.5%減の2330億6500万円となり、1997年に5335億円あった同市場は12年間で半減したことになる>とある。

 ピークであった12年前を思い出してみれば、1990年代後半からインターネット、通信、ITの技術的発展によって、米国で、次いで日本でもベンチャー企業が台頭を始め、いわゆるドットコムバブルとかITバブルとかいわれた現象が拡大していった時期である。どこの大学生かと思うような服装の人がフェラーリに乗ったネットベンチャーの社長だったりしていた。カジュアルウェアがビジネスの世界で拡大した時期であったといえるだろう。
 そもそも「casual」という単語の意味は服装においては「略式の」と「普段着の」との両方の意味があるが、当時のネットベンチャー文化は発祥の米国西海岸式に倣ってか後者の「普段着」的なスタイルが主であった。
 その後の男性ビジネスパーソンの服装に大きな影響を与えたのは、小泉政権下の2005年に始められた「クールビズ」だ。内閣総理大臣・小泉純一郎のアドバイスのもと、小池百合子環境大臣の肝いりで始まった施策は、当初は室温上限を28度として、その室温の中で効率的に働くことが出来る軽装全般を指していた。つまり、「casual」の意味を「略式の」と捉える主旨が強かった。しかし、アパレル各社がそのチャンスを見逃すはずもなく、単にスーツ姿からネクタイを外しただけのスタイルが「ダサイ」「日曜日のお父さんスタイル」的に捉えられる風潮があった。さらには環境省主催のクールビズのお手本的「ファッションショー」まで開催された。衣服の買い換えによる日本の経済効果は1000億円以上と試算されている。(出所:Wikipedia)

 スーツを脱ぎ捨て、「カジュアル」になった男性ビジネスパーソンたち。ふと気がつけば世界的にもスーツを着ない民族になっているようだ。

  <職場でのスーツ着用率、日本は世界で10位=調査>(8月5日・ロイター)  
 http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-16655720100805?sp=true

 記事では<調査は計1万2500人を対象に実施。職場での服装に関する意識の違いを調べるため、仕事にスーツやきちんとした格好で行くかどうか>などを質問したところ、<職場でのスーツ着用率が最も高いのはインドで、日本は10位だった>という。トップのインドは58%で、米国は37%、日本は35%だという。
 
 既に日本のスーツ族は「絶滅危惧種」であり、「スーツ」は前世紀の遺物となりつつあるのか。そうでなくとも、日本の人口は少子高齢化が進み、団塊の世代の完全リタイア後にはスーツ市場はますますプロダクトライフサイクルの「衰退期」の坂を転がり落ちていくことになる。
 しかし、日本にビジネスシーンから「スーツ姿」が完全に消え去ることは、恐らくない。市場は極端に縮小したパイの食い合いになるのである。

 1993年から2003年が「失われた10年」と呼ばれていた日本経済は、2008年においても長引くデフレ不況から抜け出せないでいた。そこに米国発の「リーマンショック」が直撃した。いつの間にかメディアに記される文字は「失われた20年」と書き換わっており、まだしばらくは出口が見えないことを予感させた。
 不景気の中、手っ取り早く消費者の歓心を買うには「価格訴求」に限る。大手流通や紳士服専業量販各社は1万円を切るスーツをこぞって発売した。折しも「超・就職氷河期」に突入し、スーツ1着では活動が終えられないリクルート学生や、お小遣いが極限まで削られたお父さんたちに歓迎され、激安スーツは売れに売れた。しかし、2010年に入って潮目が変わったようだ。

  <9800円スーツ売れ残り 百貨店「安売り戦略」に異変>(J-CASTニュース・5月17日)
 http://www.j-cast.com/2010/05/17066679.html?p=1

  記事では< 松屋銀座で9800円スーツがセール初日に完売した2009年から一転、10年はセールから1週間経っても売れ残っているという。代わりに売れているのが高級生地を使った3、4万円台のスーツだ>などと、百貨店担当者の「客単価上昇、景気が多少戻ってきた感じ」というコメント共に<消費者が価格重視から品質志向にシフトしているようだ>と伝えている。

 紳士服量販店も高価格帯を狙いにきた。10月15日の日経MJファッション&リビング欄に「はるやま、記事厚めのスーツ 海外企業と開発」という記事が掲載された。中高年の富裕層を狙い、流行の軽くて薄いイタリアメーカーの記事ではなく、中高年から根強い支持のある英国生地を用いて61,950円などのスーツを売り出すという。決して高級スーツの価格ではないが、レディーメイドでもあり、廉価なイメージのある紳士服量販店の商品としては高額だといえる。
 しかし、今日の潮流は、前出のJ-CASTニュースの記事が指摘するように、「高額品」が支持されているのではなく、「品質志向」へのシフトであることがポイントなのだ。

 少し前の放送だが、日経スペシャル「ガイアの夜明け」5月18日の放送では、『銀座デパート最終戦争~百貨店は新しい価値を作り出せるか?~ 』というテーマが放映された。
  http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber/preview100518.html

  「銀座スーツ戦争 松屋銀座の大勝負」という話題では、百貨店紳士服苦境の中、09年に対前年比160%という記録をたたき出した松屋のバイヤー、宮崎俊一氏が仕掛ける有名なスーツ販売催事「銀座の男市」の仕掛けが紹介された。同催事では目玉商品として、完全ハンドメードで3万5000円という常識破りのスーツが人気を博する。それこそがまさに、「品質志向」を示すものである。

 商品の「価格」と「価値」の関係は、「安かろう悪かろう」から、「高くて高品質」まで、概ね正比例を示す。それを「バリューライン」という。バブル経済華やかなりし頃は、「高くて高品質」がもてはやされ、ともすれば、「価格が高いこと」自体が価値ともされて、「高くてそこそこの品質」や「高くて品質が低い」ものまでが売れた。今日ではあり得ない話だ。さらに、今日では「価格なりの品質」であるバリューライン上の商品も売れなくなっている。それが、J-CASTニュースが伝えた9,800円スーツが売れ残る理由である。
 大手流通も1万円以下スーツが売れなくなることを黙ってみているわけではない。
 イオンは跳んでもはねても快適に着られるストレッチ製法で、水を被っても平気な撥水加工まで施してあるスーツを7,800円で発売している。「イオン アクションストレッチスーツ」。その商品特性を見事に表現したCMも大量に投下されている。
 http://www.youtube.com/watch?v=tIZOhEnL6Yw (YouTube動画)

 「高価で高い品質」の商品で勝負する戦略を「プレミアム戦略」という。「安さに徹して品質も低くする」戦略は「エコノミー戦略」という。バリューライン上の高低両端のポジションだ。「銀座の男市」に代表されるのは、「中価格で高い品質」を実現する「高価値戦略」。7,800円で機能てんこ盛りのイオンのスーツは「低い価格で中程度の品質」に高める「グッドバリュー戦略」である。共に、バリューラインを超えたポジションを実現しているのである。

 バリューライン上の究極のポジションは「低価格で高価格品と同等の品質」を実現する「スーパーバリュー戦略」である。しかし、その実現は容易ではない。
 少子高齢化と服装のカジュアル化で市場のパイの縮小が続く紳士スーツ市場。生き残りのためには、その困難なポジションをスーパーや量販店という本来の廉価市場のプレイヤーと、百貨店などの高額品市場のプレイヤーが共に狙いに行くことは間違いない。まさに生き残りのための知恵と力比べが続くのである。


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