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2010.09.13

アクアフレッシュ・YouTube CMで辿るその変遷

 「大人も子どもも、気になる虫歯」。小さな男の子と母親が仲良く微笑む映像。よくある歯磨きのCMの一コマは、「でも、特に気にして欲しいのは永久歯が生えたばかりの時」と続いた。子ども向けの歯磨きかと思っていると、最後に「子どもから大人まで、強く健康な歯へ」というキメのコピーに「アクアフレッシュ」と商品名。
 http://www.youtube.com/watch?v=c7CALZxU0TE

 ロングセラー商品は、その名の通り、ユーザーに買い続けてもらうことによって長寿を実現している商品だ。しかし、何の努力もせず生き長らえられるほど世の中は甘くない。プロダクト・ライフサイクルの延命するために、ロングセラー商品は、様々なバリエーションを出したり、新たな製品特性を取り込んだりという努力をしている。
 歯磨き粉のアクアフレッシュも新開発の成分を様々取り込んで性能アップをしている。だが、そもそも、「永久歯が生えたばかりの子どものため」や「子どもから大人まで」という商品だっただろうか?そこで、この製品の変遷をYouTubeにアップされているCMを探しながら辿ってみることにする。

 アクアフレッシュが世に出たのはWikipediaによれば、1981年のこと。正確には日本市場進出であり、英国ビーチャム製薬より商標権の貸与と技術提携を受けてサンスターが発売したとある。発売翌年の1982年のCMがYouTubeにアップされている。
 http://www.youtube.com/watch?v=2crIzVUu-As&feature=related

 「白は輝く歯のために、ブルーは澄んだ息のために・“歯と息、キラキラしてる?”」のコピーが懐かしい。当時は歯の表面構造が云々とか、歯磨き粉の成分がどうのとか、難しいことは抜きで、とにかく爽やかさを訴求していた。それに対して、アクアフレッシュの2トーンカラーは極めてわかりやすかった。
 爽やかさが支持されて、当時はティーンエイジャーの指名買いブランドであった。今日と異なり、家族の中で各々が好みや歯や歯肉の状態に合わせて自分用の歯磨き粉を使うような文化はなかったといっていい。確実に自社ブランドを購入させるためには、家族の中に強力なDMU(Decision Making Unit=購買関与者)を確保することが欠かせない。「歯磨き粉はアクアフレッシュじゃなけりゃ嫌だからね!」と娘に言われて母親がそれを選ぶという構造だ。

 その後、1980年代後半に、アクアフレッシュは赤い歯垢除去成分を加えて今日の3色となった。当時のCMをみてみよう。
 http://www.youtube.com/watch?v=I6SIP7MJ19Q&feature=related

 メインキャラクターは志穂美悦子(長渕剛夫人)だが、子ども役で小さな男の子のお姉さん役として登場する美少女も当時大人気となった。この配役にあるように、キーマンがティーンエイジのお姉ちゃん。ディシジョンメーカー(購買決定者)が母親。ついでに使わされるのが10歳未満の弟というようなDMU構造が典型的だったといえるだろう。

 80年代後半の構造は、そのまま1992年のCMにも踏襲されている。
 http://www.youtube.com/watch?v=zg3tlLJZX68

 キーマンのお姉さんは中高生ぐらい。ついでの弟の役も少し成長している。この頃、筆者の記憶ではアクアフレッシュはCMのキャラクターと同年代の女子中高生に最も支持された歯磨きブランドであったように思う。CMには最もどうでもいいような存在として父親が新たに登場しているが、以降の出番はない。

 CM表現に変化の兆しが現れたのは、1996年のこと。
 http://www.youtube.com/watch?v=-x8VwJPNbvA&NR=1

 お姉さん役の少女が再びローティーンとなり、第二子が妹となるという変化だけでなく、製品の効果をendorse(裏書き・裏付け)する赤・白・青の各々の成分を文字で表現し、その成分を擬人化した外国人を登場させている。
 製品を巡る大きな環境の変化としては、翌97年にサンスターとの契約が終了、「コンタック」等の医薬品で知られていたスミスクライン・ビーチャム製薬(当時の日本法人、現GSK日本法人)による販売に移行した。(Wikipediaより)
 97年以降のCMはYouTube上では発見できないが、典型的なパターンは同製品のWebサイトにある。「驚き、歯のサイエンス篇」「アクアフレッシュ・つやプラス篇」などがそれだ。外国人の登場。3色の色の背景には、歯を科学した効き目が隠されているという訴求パターンである。
 http://aquafresh.jp/index.html

 日本の歯磨き粉市場において、圧倒的なリーダー企業はライオンであり、それをサンスターが追うという状況が長く続いていて、第3位以下は大きく水をあけられている。アクアフレッシュはその後、2002年にGSKが「ポリデント」で知られるブロックドラッグを買収。これにより既にブロック社製品を販売していたアース製薬に販売委託する(Wikipediaより)という状況になった。
 アース製薬が販売する歯磨き粉は、他には知覚過敏用の「シュミテクト」があるものの、一般向け製品はない。また、オーラルケア用品としては、マウスウォッシュの「モンダミン」があるとはいえ、アース製薬というコーポレートブランドとオーラルケアとは距離感がある。故に、アクアフレッシュの過去の知名度・ブランド資産を活かしつつ、海外製品のイメージを強めるという方針に基づいた表現であると考えられる。

 冒頭に上げた、最新のCMで「特に永久歯が生えたばかりの時・子どもから大人まで」を訴求しているのも、アース製薬の製品ラインナップに他の歯磨き粉ブランドが存在していないためであることがわかる。派生商品のアクアフレッシュ「エクストラクリーン」で、より歯を白くしたいとこだわる層を取り込み、「プロテクト+」で、より歯を強くするという層に訴求する。では、本体ブランドをどのように活用するのか。
 本稿でYouTubeのCMの変遷を追ってきたが、例えば1980年代後半篇に登場した美少女は現在40歳ぐらいだろう。ちょうど子どもが「永久歯が生えたばかりの時」に該当するのではないだろうか。自らが親しんだ製品が機能強化され、子どもにもピッタリな製品であると再認識されたら、その家庭のメイン歯磨き粉としての座を確保できることだろう。

 ロングセラー商品は、派生商品を出すだけでは生き残ることはできない。環境の変化、ターゲットの変化に対応して、自らのポジショニングも巧みに変えてこそ、買い続けられるようになるのである。
 最後に同様の例として、花王のシャンプー「メリット」の例を見てみよう。製品の発売は1970年だが、CMの初代キャラクターは田中祐子だ。(荒木由美子説もあり)。アクアフレッシュ同様、1980年代のCM。
 http://www.youtube.com/watch?v=R6qriX_ZUCw&feature=related

 ターゲティングとポジショニングは、「若い女性のための・フケかゆみを防ぐシャンプー」である。発売以来40年。もはや、フケかゆみに悩む若い女性はいない。競合の若い女性向けシャンプーは最新の成分を配合し、目新しく華やかな広告で訴求している。そんな中でメリットシャンプーは、長い年月、市場で培われたネームバリューを「安心感」と置き換え、フケ・かゆみをおさえるという効能に、さらに地肌と髪の潤いを保つという効果を加えて「家族全員のためのシャンプー」というポジショニングに変化を遂げたのである。

 変わらなければ生き残ることはできない。ロングセラー商品から学ぶところは大きいだろう。


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