My Photo

サイト内検索


  • ウェブ全体から検索
    ココログ全体から検索
    このブログ内を検索

【マーケティング講座】

お勧めマーケティング関連書籍

  • 金森 努: 3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング(DOBOOKS)
    初めての人から実務者まで、「マーケティングを体系的に理解し、使えるようになること」を目的として刊行した本書は、2016年に「最新版」として第2版が発売されました。 それから6年が経過し、デジタル技術の進化やコロナ禍という大きな出来事もあり、世の中は既に「ニューノーマル」に突入しています。 その時代の変化に合わせて本文内容の改訂、新項目の追加や事例の差し替えなどを大幅に行ないました。
  • 金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)

    金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)
    「マーケティングって、なんとなく知っている」「マーケティングのフレームワークは、わかっているつもりだけど業務で使いこなせていない」・・・という方は意外と多いのが実情です。 「知っている」「わかっている」と、「使える」の間には、結構大きな溝があるのです。 その溝を、最低限の9つのフレームワークをしっかり理解し、「自分の業務で使いこなせる」ようになることを目指したのがこの書籍です。 前著、「最新版図解よくわかるこれからのマーケティング」は、「教科書」的にマーケティング全体を網羅しているのに対して、こちらの「9のフレームワーク・・・」は、「実務で使いこなすための「マニュアル」です。 もちろん、フレームワークをしっかり理解するための、実事例も豊富に掲載しています。 「よくわかる・・・」同様、多くの企業研修テキストとしてもご採用いただいています。

  • 金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)

    金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)
    旧版(水色の表紙)は6年間で1万部を販売し、それを機に内容の刷新を図りました。新章「ブランド」「社内マーケティングとマーケティングの実行」なども設け、旧版の70%を加筆修正・新項目の追加などを行っています。本書最新版は発売以来、10ヶ月で既に初版3千部を完売。以降増刷を重ね、約1万部を販売していおり、多くの個人の方、大学や企業研修で「マーケティングのテキスト」としてご愛顧いただいております。

  • 金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)

    金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)
    ヒット商品ネタ51連発!このブログ記事のネタを選りすぐってコンパクトで読みやすく図表付きに再編集しました!

  • 金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)

    金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)
    打倒「もしドラ」!を目論んだ(笑)ストーリー展開のマーケティング本。初心者にもわかりやすいマーケティングの全体像に基づき、実践・実務家も納得のリアリティーにこだわりました!

  • 金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える

    金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える
    ペンギンの世界を舞台に「考えるとはどういうことか」「論理的思考(ロジカルシンキング)とは何か」を考える、スラスラ読めて身につく本です。初心者の入門書として、一度学んだ人の復習にと活用できます。

  • 金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本

    金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本
    マーケティングをストーリーで学び、「知っている」が「使える」になる本。1つ1つのフレームワークが、面白いように「つながっていく」感覚を実感してください!

  • 金森 努: “いま”をつかむマーケティング

    金森 努: “いま”をつかむマーケティング
    7編の取材を含む、2010年のヒット商品など約30事例をフレームワークで切りまくった「マーケティング職人・金森」渾身の1冊。フレームワークを学びたい人にも、フレームワークの具体例を知りたい人にも、朝礼で話せるコネタが欲しい人にも役に立つこと間違いなしです!

  • 長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語

    長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語
    「分かるとできるは違う」と言われるが、両者間には距離がある。実業務のどこで使えるのか気づけない。だから使えない。本書はお菓子メーカーのマーケティング部を舞台にした「若者2人の成長物語」を通して、戦略思考、論理思考、クリティカル・シンキングなどの、様々な思考法が展開されていく。ストーリーで「使いどころ」をつかめば、実践できない悩みの解消が図れるだろう。 (★★★★★)

  • ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

    ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
    フレームワークの「使用上の注意」は、「人の心はフレームワークだけでは切れない」を常に認識することだ。「行動経済学」に注目すれば、経済合理性に背く人の行動の謎の意味が見えてくる。謎の解明を様々なユニークな実験を通して、著者ダン・アリエリー節で語る本書は、「フレームワーク思考」に偏りすぎた人の目から何枚もウロコを落としてくれるはずだ。 (★★★★★)

  • セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践

    セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践
    「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」や、「マーケティング近視眼(Marketing Myopia)」で有名なレビット教授の名著。製品とは何か。サービスとは何か。顧客とは何か。そして、マーケティングとは何かと問う、今まさに考え直すべき原点が克明に記されている名著。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
    コトラーはマーケティングは「製品中心(Product out)=1.0」「消費者中心(Customer Centric)=2.0」。それが「人間中心・価値主導(Social)=3.0」にバージョンアップしたと論じている。本書は「マーケティング戦略」の本というよりは、今日の「企業のあるべき姿」を示しているといえる。その意味では、「では、どうするのか?」に関しては、新たなソーシャルメディアの趨勢などに考慮しつつ、従来のコトラー流2.0を十分に理解しておくことが必要だ。 (★★★★)

  • 鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)

    鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)
    広告に関する本は、いわゆる広告論や広告制作の手法を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思います。「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめました。さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

  • 金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)

    金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)
    金森の著書です。フレームワークやキーワードやセオリー、事例をマーケティングマネジメントの流れに沿って102項目で詳説しました。フレームワークの使いこなしと事例には特にこだわりました。金森のオリジナル理論もあり!

  • 山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える

    山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える
    リーダーの戦略や、チャレンジャーがリーダーを倒す方法など、ポーター、コトラーの理論を更に実践的な事例と独自フレームワークで解説した良書。事例がちょっと古いが、今、読み返してもためになる。在庫が少ないので、中古本でも出ていれば即買いをお勧め。 (★★★★)

  • 金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)

    金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)
    このBlog記事一話一話が見開きで図解されたわかりやすい本になりました。ヒット商品のヒミツをフレームワークで斬りまくった、ネタ56連発。是非一冊!

  • 後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて

    後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて
    「レスポンス広告」とは資料・サンプルの請求や商品の注文を消費者から獲得するための広告のこと。そのための方法論は、ブランドイメージをよくするといった目的とは全く異なる。本書は多数の広告サンプル(精度の高いダミー)を用いてレスポンス広告のキモを具体的かつ詳細に解説している。「レスポンス広告の鬼」たる筆者ならではの渾身の1冊。 (★★★★★)

  • ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン

    ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン
    どんなすばらしいマーケティングプランも、結局は人が動かなければ成功しない。故に、リーダーシップ論が重要となる。本書はコッター教授の「企業変革8ステップ」が寓話の中でわかりやすく記されている良書である。金森絶賛の一冊です。 (★★★★★)

  • マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

    マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
    2000年発売の良書。旧タイトル「ティッピング・ポイント」が文庫本化されたもの。クチコミの本ではなく、イノベーションの普及が何かのきっかけで一気に進む様を、各種の事例を元に解明した、普及論にも通じる内容。(うっかりリストに入れ忘れてました)。オススメです。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学

    野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
    経済分野最強のジャーナリスト勝見 明紙と、経営学の大家野中 郁次郎先生という黄金コンビによる傑作。いくつもの企業でのイノベーション事例を物語風に紹介しながら、その変革の要諦を解明、さらなる提言をメッセージしている。読み応え十分。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの本質

    野中 郁次郎: イノベーションの本質
    最新刊の「イノベーションの作法」に比べると、少々こちらは「野中理論」の難しい部分が表面に出ているように思えるが、発売当初、ナレッジマネジメントの観点からしか読んでいなかったが、読み返してみれば、本書の1つめの事例である「サントリー・DAKARA」はマーケティングでも有名事例である。むしろ、本書での解説は、マーケティングのフレームワーク上の整合ではなく、そのコンセプト開発に力点が置かれており、その精緻な記述は圧巻であった。読み直して得した気分になったので、ここで併せて紹介する。 (★★★★)

  • グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

    グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
    だいぶ発売されてから時間が経ってしまったのですが・・・。 二度目に読んで、「お勧め」しようと思いました。 そのわけは、一度目は「いかに顧客と優良な関係を構築することが重要か」という当たり前なことを力説しているだけの本だと思ったからです。 事実、そうなんです。アドボカシー(advocacy=支援)という新しい言葉を遣っただけで。 ただ、その「当たり前なこと」のまとめ方が秀逸であり、我々マーケターにとっては「当たり前」でも、その考え方がどうしても理解できない石頭な人に読ませると、なかなか効果的だと分かりました。 さて、皆さんもそんな人が周りにいたら読ませてみては? (★★★)

  • レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」

    レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」
    ダイレクトマーケティングの創始者であり、金森の心の師でもある、レスター・ワンダーマンの「BEING DIRECT」(英文名)が12年ぶりに改訂されました。 詳しくは、Blog本文の10月16日の記事を参照ください。 必読の書です。 前版は電通出版だったので入手が少々面倒でしたが、今回は一般の出版社からの刊行なので、アマゾンで購入できます。この本の画像をクリックすれば、アマゾンのサイトにリンクしますので、是非! (★★★★★)

  • フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式

    フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式
    実は、この本は金森の入院中の頂き物。結構はまりました。 スウェーデンの売れっ子セミナー講師が自らのセミナーで用いている30の設問を、気の利いたイラストに載せて紹介している。「レンガの使い方を10通り挙げなさい」のような、「ん?どこかの自己啓発セミナーで聞いたな~」というようなネタもありますが、ひねりの効いた問いかけもいっぱい。ざっと流し読みしたら20分で読み終わってしまう絵本になってしまいますが、本気で問いかけの答えを考えると、なかなか論理思考も鍛えられます。金森もお気に入りの問いかけは出典を明らかにして、自分の企業研修で使わせてもらっています。 ちなみに、この本の2(続編)も出ています。2冊揃えば送料も無料。「あわせて買いたい!」。 (★★★★★)

  • パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う

    パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う
    重要な本をお薦めするのを忘れていました。この本も結構、私の座右の書となっています。「ミッションステートメント」の重要性もコラム等で繰り返し述べてきました。それがしっかりしていないが故に、会社自体が方向性を見失い、社員も求心力をなくす。また、顧客のことも忘れてしまう。ミッションステートメントは壁に黄ばんだ紙に書いてあるものを、朝礼で呪文のように唱和するためのものではないのです。社員全員、全階層がそれを本当に理解し、行動できれば会社に強大なパワーが生まれるはずです。この本は「強い企業の強いステートメント」が紹介・解説された良書です。 (★★★★)

  • エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学

    エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学
    もはや絶版でプレミアがついて現在ユーズドで3万円!(昨年までは2万円以下でした。定価は8千円弱)。 しかし、一度は翻訳版とはいえ原書を読みたいもの。 私のコラムでもよく取り上げています。 様々なマーケティングの入門書にも部分的に取り上げられていますが、誤った解釈も多く、「イノベーションの普及速度」などの重要項目も抜けています。 ただ、基本的には社会学の学術書なので、完読するのはチトごついかも。(それで星4つ。内容的には断然5つですが。)3万円ですが、手にはいるならラッキー。 10万円にならないうちに・・・? (★★★★)

  • ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業

    ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業
    すみません。これは宣伝です。 Blogにも「共著で実践的なナレッジマネジメントの本を出しました」と紹介いたしましたが、この度第二版(重版)ができました。 初版で終わったしまうことの多いビジネス書において重版はうれしい! まだお読みになっていない方は是非! (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪

    フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪
    これも分かっている人向き。 コトラーの中では「最も今日的な本」であると言えるでしょう。コトラー大先生と私ごときを並べて語るのは不遜の極みですが、私が旧社電通ワンダーマンのニューズレターや日経BizPlusの連載でしきりに訴えてきた内容が集約されている気がします。うーん、大先生と何か視点が共有できているようで読んでいて嬉しくなってしまった一冊でした。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト
    今度は分かっている人向け。そういう人はたぶんもう買っていると思いますが・・・。 コトラー特有の大作ではなく、マーケティングの中でも重要なコンセプトを80に集約して解説を加えた、ある意味他のコトラー本の「攻略本」とも言える。 常にデスクサイドに置いておき、用語集として使うもよし、ネタに困ったときにパラパラと眺める「ネタ本」としてもよし。マーケター必携の本であると言えましょう。 (★★★★★)

« 掃除機11万5,500円也。 | Main | INAXとTOTOのCM対決から見えてくるもの »

2010.09.04

吉野家「牛鍋丼」のチャレンジと課題を考察する

 9月7日(火)から吉野家が「牛鍋丼」並盛り280円を全国発売する。「一人負け」とまでいわれる牛丼戦争において、生き残りをかけた一手の決め手は?そして課題はどこにあるのか?

■「牛鍋丼」記者発表

 泥沼のような低価格競争を続ける牛丼戦争において、吉野家は新メニュー「牛鍋丼」に生き残りをかけた。9月2日午前、東京北区赤羽の吉野家本社において「牛鍋丼」の新製品発表会が行われた際、安部修仁代表取締役社長による「戦略新商品発表」のプレゼンテーションは、<前年比15%ダウンという大変厳しい状況が今年に入って続いていると明言>されたという(2010年9月2日Gigazine)

 【速報】吉野家が牛丼・豚丼よりもリーズナブルな新製品「牛鍋丼」を発表(同)
 http://tinyurl.com/2ddwj7w

 発表会の内容は各メディアで取り上げられているが、同Gigazineの記事は時系列で詳細にまとめられていて最も注目すべき点が多い。以下、同記事を中心に、他メディアの記事も織り交ぜて考察を進めよう。

■ポイントは肉以外の具材と少量化による原価率低減?

 発表会においても、記者からの質疑応答に<牛丼の値下げは利益につながらない、他社が値下げをしたからこちらも……という、いわゆる「値下げ競争」には否定的な見解>を従来通り示したという(同)。既に一連の牛丼戦争に関する報道で有名になった事実ではあるが、吉野家は「吉野家の味を維持するため」として米国産牛肉にこだわっているため、他社より牛肉の原材料費が1.5倍高いという構造的な問題を抱え込んでいる。故に、安易な値下げができないのである。 
 <牛鍋丼は、牛肉、タマネギ、豆腐、しらたきを甘辛く煮込んでごはんにかけたもの>(livedoor News・nikkei TRENDY net 9月3日)だという。
 同記事<新メニュー「牛鍋丼」に託した吉野家の“280円戦略”>
 http://tinyurl.com/23ohd3o
 上記によれば、記者向けの試食において、<運ばれて来たときの印象は、「ちょっと小さい気がする」。直径が牛丼より3ミリ短い専用のどんぶりを使っているという。見た目は牛丼に似ているが、よく見ると豆腐としらたきが目に付く(特にしらたきが幅を利かせている)。牛肉の量は52gと牛丼(67g)より少なく、ごはんも230gと牛丼(260g)より少ない>という。
 確かに原価率の高いであろう牛肉が、しらたきと豆腐に代替され、ごはんや全体量も少なければ原価率低減には貢献するだろう。

■真のポイントは、「牛肉の変更」?!

 Gigazineの記事にも<「牛鍋丼」が低価格でありながら利益率がいいのは、牛肉以外の具材を使用して原価を抑えたことが要因としてあるといいます>とあるが、最も重要なのはそれに続く部分である。<米国からの牛肉輸入の際に、これまでのように牛丼に適したピンポイントの種類の肉ではなく、牛丼用と別に甘辛く煮るのに適した牛鍋用の肉とに分けて輸入できるのが非常に効率がいいためだということです>とある。さらに、J-CASTニュースの9月2日の記事は<使用する肉は9割が米国産でオースラリア産1割>との発表があったことを伝えている。
 吉野家が米国産牛肉にこだわっているのは、いわゆる「サシ」といわれる牛肉の脂肪の入り方が最もよく、柔らかさが出るからだといわれてきた。それ故、某庶民派経済評論家に代表されるような、コアな吉野家ファンは他社とは全く味と食感、柔らかさが違うと圧倒的に支持をしてきたのである。
 もう少し、従来の吉野家の肉について言及すると、Wikipediaの吉野家に関する記述の一部が重要だ。<吉野家は必ずしも米国産牛肉にこだわっているわけでもなく、「“安い・美味い・早い”が実現できる牛肉(ショートプレート)を、他に安定供給してくれるところがあったら米国産牛肉ではなくてもいい」との見解を示している>とある。
 Gigazineの記事にある<牛丼に適したピンポイントの種類の肉>がショートプレートを意味しているのは明らかだ。だとすると、牛鍋丼の肉は、部位も産地も従来の吉野家がこだわってきた肉とは別物であることを意味し、その部分での原価率低減効果が大きいのではないかと思われる。

■「同等の肉」「異なるメニュー」というパラドクス

 「牛丼用こだわりの肉」は牛鍋丼には用いられない。とすると、すき家、松屋の牛丼用いられている主に豪州産の肉質と同等のものであったと仮定すれば、280円という同等の価格で、一方は肉がメインの牛丼、吉野家はその他具材も入った牛鍋丼という「同等の肉の土俵で異なるメニューによる勝負をする」という問題が生じる。
 <試験販売でも『牛丼』から『牛鍋丼』にシフトする消費者もあったがそれほど多くはなかった><『牛丼』とのカニバリが懸念されるというよりは、新規の顧客の掘り起こしに貢献してくれる商品である」>との安部社長のコメントをマイライフ手帳@ニュース9月3日の記事( http://tinyurl.com/2blwtf8 )が伝えている。
確かに、吉野家の牛丼をその肉質にまでこだわり、高くとも支持するという客層は(減少傾向にあるが)存在する。しかし、肉質にこだわらず、とにかく安価に牛肉を食べたい人は、すき家を選択することになるのではないか。だとすれば、自社からの顧客流出防止、他社顧客の吸引という期待効果は実現できるのだろうか。牛鍋丼に商機があるとすれば、その味自体が、牛丼か牛鍋丼かというメニューの違いを乗り越えて評価された場合だ。それは可能なのだろうか。

■「原点回帰」とはいうけれど

 この牛鍋丼のそもそものコンセプトは「原点回帰」にあるという。nikkei TRENDY netの記事には<明治・大正時代に、牛肉や野菜、豆腐などを甘辛く煮込んだ『牛鍋』の具をごはんに乗せたのが、牛丼の始まり。『牛鍋丼』はその原点に立ち返った“復刻版”商品」(吉野家・安部修仁社長)>とある。
 Gigazineの記事には記者発表で紹介されたCMを撮影した動画がYoutubeにある。
 吉野家TVCM「今、蘇る味」編( http://tinyurl.com/26xu5jo )
 キャッチコピーは「100年変わらない、うまさだけを。」である。
 「原点回帰」に関する評価はnikkei TRENDY netの記者の感想が印象的だ。
 <「牛肉の代わりにしらたきを食べている」と思うと悲しくなるが、「これこそ牛丼の原点!」と、その歴史を噛みしめるのもよい。また、肉は薄いものの、手ごろな価格ですきやき丼が食べられると考えれば、お得な気もする。>
 他メディアの記事においても、試食の感想は「価格の割には悪くない」=「コストパフォーマンス」は取れているという主旨の記述が目立つ。300円以下の安価なランチの選択肢としてはアリということなのだろう。ただ、「原点回帰」はあくまで苦境打開のための、吉野家としてのキーワードである。顧客が「回帰」したいわけではない。顧客にとっては<牛丼ばかり食べている人には新味のある選択肢になるだろう>(nikkei TRENDY net)と、新たな選択肢が提示されたにすぎない。競合、例えばすき家280円、松屋320円の牛丼に優位性のある魅力が評価されなければ、他社顧客の吸引という生き残りをかけた目的は達成できない。

■ちゃっかり「クロスセリング効果」も仕込まれている点に注目

 牛鍋丼が顧客支持を獲得したとすれば、吉野家にとって、さらなる収益向上のチャンスがあることも実は見逃せない。
 <結構濃いめの味付けだったので、卵がほしくなりスタッフさんに頼んで持ってきてもらいました。甘辛いタレの味がしっかりついた肉を溶き卵に浸して食べると、かなりすき焼きを食べているのに近い気分になりました><従来の牛丼より100円安いため、ちょっとリッチに卵をつけても罪悪感は薄いかもしれません>(Gigazine)
 nikkei TRENDY netも<生玉子を加えても350円>と、ついつい卵を追加オーダーしたくなる味付けに仕上げてあるようなのだ。280円の牛丼に「おろしポン酢」「高菜マヨ」などのトッピングでプラス100円を稼ぎ出すのがすき家の得意技だ。しかし、多くの顧客が生卵を追加して、何も加工も調理もせずにプラス70円が実現できるとすれば、吉野家のクロスセリングは極めて効率的だといえるだろう。

 マイライフ手帳@ニュースによれば、同記者会見で<10月7日から「キムチクッパ」を280円で全国発売することも合わせて発表した>という。メニュー開発に及び腰に見えていた吉野家も、ついに抜本的な原材料の変更という大なたをふるう改革に乗り出した。まずは、牛鍋丼で顧客支持が得られるかにかかっている。


ツイッターでこのテーマに関するつぶやきをする時には、こちらのボタンをクリック

« 掃除機11万5,500円也。 | Main | INAXとTOTOのCM対決から見えてくるもの »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 吉野家「牛鍋丼」のチャレンジと課題を考察する:

» 黄金の豚 Wiki 新ドラマ [黄金の豚 最新情報]
移譲記章 カステラと牛乳の相性の良さ リック・オバリー Wikipedia 5頭のハンドウイルカのうちの一頭のキャシーが疲労と撮影用ライトの熱による皮膚の炎症 (イルカは皮膚の乾燥で火傷に近い状態になる)が原因で死亡する[2]と、 オバリーは、そのイルカは調教等を苦にして自ら命を絶ったと 信じている。 ... 黄金の太陽10/28 ■スクエニ「洋ゲーが売れる要素は “世界観の説得力”にある」(`・ω・´) 女はかわいく美しくあるべきで、男は強く... [Read More]

« 掃除機11万5,500円也。 | Main | INAXとTOTOのCM対決から見えてくるもの »