ファミマの「おとな研究所」から学ぶべきこと
ものすごく当たり前な話だが、「人は歳を取る」。その当たり前なことをきちんと認識して、対応することがビジネスにとっては極めて重要なことなのだ。
9月17日の日経MJ総合小売り欄に「ファミマ、中高年に的 『おとな研究所』で需要調査 まず健康志向の弁当発売」という記事が掲載されていた。50~65歳の中高年層向けの商品・サービスを開発するための組織を社内に設け、著名人の協力も仰ぐようだ。そこにはプロデューサー・残間里江子、コラムニスト・泉麻人、バレーボール元日本代表・三屋裕子などのお歴々が名を連ねている。詳細はファミリーマートのニュースリリースにも記されている。
<「おとなコンビニ研究所」新商品第1弾~club willbeとの共同開発商品3種類を発売~>
http://www.family.co.jp/company/news_releases/2010/100914_1.html
日経MJの記事では上田準二社長の<現在は来店客の約11%にとどまる50~65歳の比率を「」団塊世代が完全にリタイアする3、4年後には20%にまで高めたい>とする意気込みが伝えられていた。
上田社長の戦略はぶれていない。今年5月28日の日経MJのコラム「消費 見所 カン所」に上田社長の記事があった。 同社は2007年に50代後半から60代前半をテーマにした「チーム団塊」を発足。3月からは<“コンビニ弁当の定番おかず”である揚げ物を入れず、旬の野菜類をふんだんに用いた団塊世代ターゲットの弁当『春のこだわり和風御膳』を発売するなど、中高年層へアプローチ>を強化しているとあった。そして記事は<63歳の上田社長はコンビニエンスストア大手の社長でただ一人の団塊世代。「この世代の感性が自分のこととしてわかるのは私だけ。それが当社の強み」>というインタビューで締めくくられていた。今回の施策もその発展型であることがわかる。
しかし、だ。そもそも、コンビニの中高年層来店比率が低いのは問題ではないだろうか。
コンビニエンスストアが日本に登場した最初の年は諸説あるが、大手グループなら、1973年9月にファミリーマートは狭山市(埼玉)実験第1号店オープンさせ、セブンイレブンが1974年5月に江東区(東京)に1号店オープンさせている。以来、36~7年経っているわけだ。つまり、当時20歳の若者だった人も56~7歳になっている。コンビニといえば「若者」という客層が想起されるが、当時の若者も立派な中高年になっているのである。特に来店するための抵抗感やハードルがあるとは思えない。にもかかわらず、来店率が低いのはなぜだろう。
同じく業態から来店者は「若者」と思ってしまいがちがファストフードはどうだろうか。
統計的なデータがうまく探せなかったが、定性的な来店客の観察は店舗でできる。立地にもよるが、平日の午前中、ビジネスパーソンが慌ただしく朝マックを済ませた後ぐらいの時間帯には、三々五々集まってくるのは、新聞を読みコーヒーを飲んでゆったりするリタイア層とおぼしき60代後半以降の男性客だ。ランチタイムが終わった少し後。遅めの昼食やスイーツとコーヒーを60代以降のご婦人が目に付くのはモスバーガーである。
日本のファストフードの黎明期はコンビニより少し早い。1970年にケンタッキーフライドチキンとドムドムハンバーガー、71年にマクドナルドとミスタードーナツ、1972年にはロッテリア・モスバーガーが相次いでオープンした(Wikipediaより)。70年に20歳の若者だった人は60歳。30歳で子どもを連れて来店していたママは70歳になっているわけだ。ファストフードを習慣的に利用するようになっている客層。もはやガッツリしたメニューを食べるわけではないが、飲み物や軽めのメニューがあれば、利用することに抵抗はない。ことに、モスバーガーは野菜などへのこだわりなど、健康志向を打ち出しているため利用しやすいだろう。
ファミリーマートが力を入れるとしているのも、中高年のニーズをつかむ商品開発だ。もとより、コンビニという業態の利便性は高い。そこに欲しい物があるかどうかが問題なのだ。野菜や食品を多く扱う、いわゆる生鮮コンビニ。大きなスーパーまで出かけたくない、少量に小分けされた商品が購入したいとする高齢者が非常に多く利用し成功している。うまくニーズを捉えている好例である。
新たに登場した業態。その利用客も時間の経過と共に、歳を重ねている。その変化をきちんと捉え、変化するニーズに応えることは、当たり前なようで実は難しい。日本市場はもはや少子高齢化が避けられない。新たなユーザーの確保以上に、既存顧客のニーズを捉えることが大切なのだ。
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