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2010.09.06

INAXとTOTOのCM対決から見えてくるもの

 ふと、テレビを見ているとINAXとTOTOが印象的なCMを放映していた。両社の狙いはどこにあるのか?

 INAX(株式会社イナックス)とTOTO(トートー株式会社)は、かつては共に日本の陶磁器の売上高上位企業を独占していた森村グループに属していた企業であったが、2001年にはINAXがトステムと経営統合し、今日では強力なライバルの関係にある。両社は陶磁器の中でもトイレ、洗面器などの「衛生陶器」を主たる製品とし、その領域ではTOTOがシェア6割と日本№1の座に君臨している。また、同社はトイレにおいてはウォッシュレットを開発したほか、ユニットバスを始めて開発するなど、優れた新製品開発力を誇っている。一方、INAXも上海万博の日本産業館で「世界一トイレ」を展示して、高品質のアピールを行う一方、旧森村グループでタイル製造をしていた経緯から、独自の内装用建材の生産や、トステムと共同生産でユニットバスの20%のトップシェアを占めるなどTOTOを猛追している。

 INAXがTVで流しているのは、同社シャワートイレ製品のサービスサポートに関するものだ。
 <自主製品保守推進制度「INAX NEXT プログラム」について>
 http://www.inax.co.jp/aftersupport/safety/nextprogram/
 TVCMご紹介・SATIS「夜明け篇」30秒

 同商品には約10年経過すると「お知らせ表示」が点滅を始めるという。「長く安心してお使い頂くために」とアナウンス。「INAXでございます」とコールセンターのオペレーターの映像で、サービス品質を訴求する。キャッチコピーは「ロング・バリューという新しい価値」とある。
 INAXは「シャワートイレ」と称しているが、そもそもはTOTOが「ウォッシュレット」という商標で売り出し、1980年にちょっと不思議な女優・戸川純の「おしりだって洗ってほしい」というCMで一世を風靡したが、昨今では公衆トイレにも導入されるなど、すっかりコモデティー化している。コモデティー化・成熟期に入った商品は差別化が困難になるため商品の「付随機能」を訴求することとなる。サービスサポートは、それがなくとも商品の使用は可能だ。しかし、特に高齢者などにとって便座の加温機能などに異常があれば、低温やけどなどの障害を引き起こす危険がある。高齢化社会を見越しての訴求である。
 特に住宅設備メーカーにとって、この先の10年という期間がどのような意味を持つのかも見逃せない。日本の人口は2005年にマイナスに転じた。一方、世帯数は少人数・単身世帯化が進んで2015年に5,060万世帯まで増加し、その後減少に転じると推計されている(国立社会保障・人口問題研究所調べ)。つまり、今、買われたシャワートイレの「お知らせ表示」が点滅を始める10年後には、次の商品の売り先は減少を始めているのである。「安心」を訴求し、さらに「安心感」を提供し続けて、10年後に買い換えの用がある際に指名買いをしてもらうことが欠かせないのである。
 INAXの戦略は、アンゾフの成長戦略のマトリックスで考えれば、上記の「安心感訴求」で、既存顧客に既存製品の価値を高めて提供する「市場深耕」と、上海万博に代表される、新しい市場に既存製品を提供する「新市場開拓」であることがわかる。それを、TOTOに現段階ではシェアが劣後するトイレで勝負をかけているのだ。

 一方のTOTOは、既存市場に新たな製品を提供する「新商品開発」で、この縮小する日本市場での生き残りをかけている。
 <TOTO新商品CM公開中!>
 http://www.toto.co.jp/News/fair2010summer/cm.htm

 注目は、女優・小林聡美、俳優・光石研が、双子の兄弟の子供と出演するキッチン(CRASSO)と浴室(sazana)のCMだ。両商品のCMは出演者の双子の兄弟が共通なだけでなく、歌のメロディーと体操のコンセプトが共通である。特にCMソングの旋律は強烈で、一度聞いたら耳を離れない。ちなみに、メロディーは全て半音上げ、ピアノの黒鍵だけで弾く音程になっている。ビミョーな音程、不思議なダンス。そして、真面目だけどどこか無表情で訴えかけるような小林聡美と光石研、双子の演技。いわゆるAIDMAのAttention(興味)とInterest(関心)を強制的に持っていくようなCMなのだ。
 もちろん、CMはMemory(記憶)に残すことはできても、それだけでDesire(欲求)を高めることも、Action(購買行動)まで持っていくこともできない。しかし、新築やリフォームに関心がない人に響かなくとも、関心層にリーチして製品特性をアピールすることができれば成功なのだ。トイレの便器に比べ、キッチンや浴室はまだ、機能訴求が十分可能な商品だからだ。その機能性で、限られた日本の住宅件数というパイの奪い合いに生き残りをかけているのである。

 黙っていても商品が売れたのはもう40年以上前の話だ。それどころか、商品の成熟化で20~30年前のマーケティングのテーマであった「差別化」さえ、困難になってきている。さらには市場自体が縮小を始めているのが今日の日本の姿なのである。座していては死を待つばかり。モノ作りもCM作りも、市場と顧客の姿をつぶさに見て、何を訴えかけるのかを明確にすることが真に欠かせない。


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