ラーメン店の定番コショウGABANに学ぶB to Bマーケ
ラーメン店など、飲食店のテーブルでおなじみのコショウ「GABAN」。その創業期の営業物語がポータルサイト・exciteのコラムで紹介されていた。そこにはB to Bマーケティングのキモが隠されていたのである。
<飲食店のコショウはなぜGABAN?>(9月15日exciteコネタ)
http://www.excite.co.jp/News/bit/E1284295853462.html
GABANは株式会社ギャバンの登録商標である。同社は香辛料の輸入・製造販売
輸入食品販売を行っている会社であるとWebサイトに記載がある。2003年1月に味の素と業務提携契約を締結。04年8月にはハウス食品とも業務提携契約を締結し、そのハウスとの提携で07年6月には女優・黒木メイサがCMに出演した「GABANポテトチップス」も発売している。
主力商品は、メタリックのシルバーとブルーに「GABAN」のロゴがカッコイイ、コショウだ。その缶をラーメン店などのテーブルに見ることは多いだろう。Exciteの記事ではなぜ、外食店に深く食い込むことができたのか、そのヒミツをメーカーに取材して書かれている。
<「創業者は札幌ラーメン横丁を一軒一軒まわって、1缶ずつ販売した経緯があります。ブラックペッパーはラーメンに極めてマッチし、札幌ラーメンが全国に広がるのに合わせて、いつしかラーメン屋さんのカウンターになくてはならないものになっていったのです。また、ホテル・レストランのシェフを直接訪ね、品質の違いを説明するために、その場で缶を開けて香りを確かめてもらったり、簡単な料理をつくり納得してもらうよう手を尽くしました」>とある。
B to BマーケティングにおいてはB to Cとマーケティングの4Pが大きく異なることが多い。Promotionは、CMなどの広告で行われることは少ない。まずは「人的販売」。営業担当者が動いてナンボの世界だ。ギャバンはそれを創業者自らが行ったのだ。さらに、Productも商品そのものの評価だけでなく、商品に関する提案やサポートやトレーニング、アフターサービスなどの付随機能も重要視される。料理を作って提案するなどの施策が奏功していることがわかる。そして、その営業がうまくいくか否かでPriceが大きく異なる。B to Cのようにメーカーが設定している定価や希望小売価格にはほとんど意味がない。「まずは見積から」の世界である故に、製品の価値をどのように伝え、高められているかがキモなのである。その意味ではPlace(チャネル・販路)の設計も重要だ。顧客が簡単に理解できるような商品なら、代理店などを使った営業でも構わないが、説明・説得な必須なようなら直営するしかない。ギャバンの場合、それが創業者自身による営業であったわけだ。
B to Bでもう一つ重要なことは、DMU(Decision Making Unit:購買意志決定・関与者)を洗い出し、動かすことだ。ギャバンの創業者営業の話には、記事の続きがある。
<シェフのお墨付きを手に、そのレストランが取引する問屋を紹介してもらうことで、取扱店は少しずつ増加。この手法が、1980年代には中国料理店や焼肉店でも行われ、今のように全国のあらゆる飲食店で、GABANのコショウが見られるようになったという>とある。
コショウなどの香辛料はメーカーから飲食店が仕入れる場合よりも、問屋が仲介する場合が多い。その場合、シェフ自身は仕入れを決める立場の人(=Decision maker)であるが、問屋はさらにまだギャバンを認知していないシェフに紹介してくれるという影響者(influencer)というDMUになる。シェフは「美味しい料理を作る」という関心事があり、問屋には「飲食店が喜んで仕入れてくれる商品を取りそろえたい」という関心事がある。DMUがどこにいる誰で、どんな関心事を持っているのかを把握することが重要なのだ。
では、GABANはシェフ達にどのような商品として受入れられたのだろうか。ポジショニングの問題だ。B to Bの場合、B to Cと異なって、どのような要素を訴求すればいいかを二軸のポジショニングマップで検討するよりも、シンプルにして重要なことがある。Q・C・Dの3つの要素をどう訴求するかだ。Q=Quality(品質)、C=Cost(価格)、D=Delivery(納期)である。例えば、日本電産の永守社長は自社のスローガンとして、「確かな技術、値段は高め、しかし納期は半分」といっている。明確なポジショニングを示しているわけだ。
では、GABANはどうだろうか。創業者が説得するだけあって、品質にはじしんがあるところだ。記事にも<1940年代後半から50年代にかけて、日本に流通するコショウの多くには、小麦粉やパン粉が混ざっていた。原因は原料不足。そこで創業者は、食事の洋風化が進めば香辛料の需要も増え、“混ざり物がないコショウは売れるはず”と考えた。そうして1954年、エイト食品(現ギャバン)が設立された>とある。まずは、品質ありきなのだ。価格と納期に関しては記述がないが、恐らくGABANは「品質は最高、価格は高め、納期は普通」のようなQCDのポジショニングなのではないだろうか。
B to Bマーケティングは公開された事例がなく、他社から学べる機会が少ないという声がよく聞かれる。しかし、つぶさに観察すれば、ラーメン店のテーブルでも見つけることができる。そして、そのセオリーを愚直に踏襲することが成功の秘密であったりするのである。
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