掃除機11万5,500円也。
手元に自由にお金が11万円あったら、何に使うだろうか。夏休み前のタイミングだったら、「旅行費用」にと思うかもしれない。何かモノを買うとしたら、「家電」と考える人は多いだろう。しかし、「家電」の中で「掃除機」に11万円を使う人という人はいるだろうか。
三洋電機が11万円(税別・税込み11万5,500円)の掃除機を発売するという。
<空気までお掃除するクリーナー 0.08μm以上の微粒子をほぼ100%キャッチへ進化した空間清浄サイクロン「airsis(エアシス)」を発売>(9月1日同社ニュースリリース)
http://jp.sanyo.com/news/2010/09/01-1.html
「airsis(エアシス)」は同社が2007年から発売を始め、改良を重ね、性能を高めてきた「サイクロン型」の掃除機シリーズだ。紙パックを使わない「サイクロン型」の掃除機の普及率は現在40%にのぼるという。(同リリースより)
サイクロン型の効用は、吸気が紙パックを通過しないことから、パック内に溜まったゴミやホコリで吸引力が衰えることなく、その臭いを排気中に混入させないことにある。草分け的な存在としては、海外メーカーのダイソン社が有名だ。1990年代前半、紙パック式の安価な掃除機がほとんどであった日本市場に、独自の「サイクロンテクノロジー」で参入。「吸引力が衰えない、ただ一つの掃除機」というポジショニングで、7~8万円という当時としては信じられないような高価な価格を設定した。確かな吸引力をはじめとした性能と、メカニカルなデザインでファンをつかんでブランドを確立したダイソンに対し、日本メーカーもサイクロン型を採用して追撃を開始したのが2000年以降であった。
高価なことで知られるダイソンの掃除機だが、その旗艦モデルである「DC26 モーターヘッド コンプリート」でさえ、同社のオンラインショップでの価格は税込み87,800円だ。エアシスの最新型はそれさえも軽く超える価格設定をしている。本当に売れるのだろうか。
エアシスという商品のもたらす価値を「製品特性分析」で考えてみよう。
掃除機の中核たる便益は、<部屋をきれいに掃除すること>だ。それを実現するために欠かせない実体価値が<ゴミやホコリを残さない強力な吸引力>である。中核的便益とは直接関わりはないが、製品価値を高める付随機能は、ダイソンなら<デザイン>である。
では、エアシスの場合の<空気清浄機能>は、部屋をきれいに掃除することとは直接関係ないと考えれば、付随機能となる。しかし、そもそもの「きれいにする」ということのコンセプトが三洋電機の場合、独特なのだ。
三洋電機のエアシスは<、お掃除の常識であった床面だけの掃除スタイルから、床も空気も掃除する“空間清浄スタイル”>(同)という独自価値を従来から訴求している。新発売される最新型では<0.08μm以上の微粒子までほぼ100%キャッチ><浮遊菌を99.9999%、浮遊ウイルスも99.999%除去>(同)という性能を実現している。
独自のコンセプトも、それを評価してくれる人がいなければ、売れない。リリースでも<クリーナーの2010年度国内出荷台数は景気の低迷継続を予測し、前年並みの約520万台(前年比100%)を見込んでいます(当社推定)>としている。マクロ環境(PEST分析)におけるEconomicalな要素は明らかにネガティブだ。果たして需要はあるのか。
景気の低迷は消費者の生活スタイルを変化させる。Socialな要素を考えれば、レジャーや外食なども内向きになり、屋内居住時間が増えていることが挙げられる。さらに健康問題では、ハウスダストアレルギーの問題は年々増大している。
室内のアレルゲンを残さず吸引する強力なパワーはサイクロン型というTechnologicalで実現できた。しかし、そのパワーは同時に排気によって床面のホコリを巻き上げるという問題を発生させるという。(同社リリースより)
3C分析のCustomer(市場の環境と顧客のニーズ)を考えれば、マクロ環境の変化の中で、アレルギーの発症を防止するために、徹底して室内を空気まできれいにするというニーズを持ったターゲット層が存在することがわかる。そして、Competitor(競合)は空気を「きれいにする」という機能までは訴求していない。そこで、Company(自社)は、「床だけでなく、空気まで部屋を丸ごときれいにする」というコンセプトで徹底してターゲットのニーズに応える戦略を徹底する。床面のホコリ巻き上げ問題は、<排気口より下部に設けたシャッターから出る空気のカーテン>(同)によって効率よく空気をきれいにするという。さらに、付随機能として、<掃除機がけが終わった後、空気清浄機のようにお部屋の空気を清浄する「空気清浄モード」>(同)までが装備されている。
「11万円の掃除機」を全ての人に売ろうとしても、売れるものではない。しかし、それを切実に必要とするターゲット層とそのニーズを抽出し、ニーズギャップを解消してあるべき姿の実現を図る。その時、ターゲット顧客が「それなら払ってもいい」という価格(Customer Value)を算出した時に、11万円という価格設定(Pricing)に行き着いたのだろう。
エアシスの月間生産計画は1万台だという。
(2010年09月01日/Sakura Financial News http://news.livedoor.com/article/detail/4982017/ )
三洋電機の読みがどこまで当たるか、注目してみたい。
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