バーガーキングはサブウェイのTwitter活用を学べ!
2001年に日本市場から撤退したバーガーキングが、ロッテリアとリヴァンプの資本で再上陸して丸3年となる。現在の3倍にあたる100店舗に向けた出店を掲げる同社の課題を考えてみたい。
日経MJ8月6日フードビジネス面に「100店めざし出店加速 バーガーキング 藤河社長に聞く」という記事が掲載された。3年の間は「立地や顧客のターゲティングなどの面でいい学習期間だった」(藤河社長)とし、今後は準備期間から100店攻勢に舵を切ると明言している。
目標達成のためにはバーガーキングとしてのブランドと差別化ポイントをどう作っていくかが問われる。特に、ハンバーガー業界においてはシェア70%を握るマクドナルドが快進撃を続けている。一方、2009年12月31日にウェンディーズが日本市場から撤退し、全店舗を閉鎖するなど優勝劣敗が明確になっている。
差別化ポイントでいえば、バーガーキングのハンバーガーの特徴はそのサイズにあった。「とてつもなく大きい」を意味する「ワッパー」という商品がメインだ。ビーフパテの直径は5インチ(約13センチ)・4オンス(約113グラム)。しかし、日本における近年のメガフードブームや、競合であるマクドナルドの「クォーターパウンダー」によってその優位性は失われている。クォーターパウンダー、つまりパテの重量は1/4ポンド=約113グラムと同じになっているのだ。故に、記事中で藤河社長は「それだけでは弱い」としている。
同社は直火でパテを焼く「フレームグリル」という調理法による、香ばしくもジューシーに焼き上がった味と風味が最大の特徴だろう。筆者も実はその大ファンでもある。一口食べれば違いがわかる。しかし、意外と言葉や文章で使えることが難しい。サイズ以上にその味わいをいかに伝え、体験させるかが勝負となるだろう。
一方、記事中にある藤河社長が勝負のしどころとして述べているのが、「ハブ イット ユア ウェイ(HAVE IT YOUR WAY)」というサービスだ。レタス、オニオン、ピクルス、ケチャップソースの増減量が無料でオーダーできる。その他、有料でトマトやチーズ、ベーコンやパテの追加・増量もできる。そのサービスが海外ではコアなファンをかかえるキモになっているというが、現在の日本では8%しか利用者がいないという。
8%という数値が実はバーガーキングの今後の課題を如実に表しているといえるだろう。E.M.ロジャースのイノベーション普及論で考えれば、新しいものにすぐに飛びつくマニアな「イノベーター」層が市場には2.5%存在しているという。ファストフードに関しては筆者はこの層だ。イノベーターの後に、その新たなモノの価値を冷静に判断・評価して採用するのが「アーリーアダプター」という層だ。市場に12.5%存在する。つまり、現在バーガーキングがコアなファンとして囲い込めているのは、アーリーアダプターの半分までであり、その他は「浮動票」であるという状態にあるわけだ。アーリーアダプターをしっかり取り込めば、その後の一般大衆である「アーリーマジョリティー」が動き出す。いわゆる、そのキャズム(谷間)を超えられるかが100店に向けた課題なのだ。
自分の好みに合わせてバーガーをカスタマイズできる「HAVE IT YOUR WAY」は、実はとても楽しく美味しい。筆者のオススメは「レタス・オニオン・ピクルス全部増量、ケチャップをあふれるほどたっぷり」である。しかし、奥ゆかしい日本人としては、無料の増量や、「ピクルス抜き」などの減量でも店員に手間をかけさせることを躊躇する人は多い。サービスの「認知度を上げるべくプロモーションを強化していく」と記事にあるが、そんなにカンタンなことではないだろう。
ひとつ手本になると考えられるのか、サンドイッチの「サブウェイ」の展開だ。
そもそもサブウェイは、基本のサンドイッチのメニューは決まっているものの、パンの種類から、野菜の増減量、トッピング、ドレッシングの種類までを手際よくオーダーしていくことが求められる。それだけでも大変なのに、「○○を増量してください!」とは、思っていてもなかなか言い出せないという声が多かった。
そこで効果を挙げたのがTwitterだ。
subwayjpというアカウントで、「野菜のサブウェイ:野菜ラボの中の人」が運営している。約1万4千人のフォロアーと様々なコミュニケーションやメニューの紹介をしつつ、初心者には「オーダーのしかた」を定期的にアップして利用を促しているのだ。具体的には以下の通り。
<[再掲]サブウェイご利用のコツ♪サブウェイは野菜(オニオン、レタス、トマト、ピーマン、ピクルス、オリーブ)と追加調味料(塩コショウ、マヨネーズ、マスタード、ケチャップ、ハラペーニョ)の増量が無料です。野菜の注文場所まできたら、「野菜増量で(キリッ」とお声掛けを♪>
筆者自身も実はオーダー時の気恥ずかしさから、サブウェイには足が向いていなかったのだが、「野菜増量で(キリッ」に動かされて、今ではすっかりファンになっている。
現在、バーガーキングはTwitterの公式アカウントはなく、いくつかの店舗が独自で運営しているようだが、同社ユーザーとTwitterの親和性は低くない。2010年4月、ロッテリアの経営からリヴァンプが離れた際、いくつかのロッテリア店舗が居抜きでバーガーキングに変わった。そのひとつ、飯田橋店ではアルバイト店員がリニューアルオープンを事前にTwitterで告知し、開店時に40人が行列したという事例がある。
<飯田橋に「バーガーキング」-オープン告知はツイッターで>(2010年4月19日市ヶ谷経済新聞)
http://ichigaya.keizai.biz/headline/833/
現在も飯田橋店のアカウントは1300人を超えるフォロアーを持って活況だが、公式アカウントの有効活用が望まれるところである。
バーガーキングのメニューを見れば、ワッパーチーズとポテト、ドリンクのセットは810円。一方、マクドナルドのクォーターパウンダーチーズのセットは790円(地域別東京価格)だ。高価格帯メニューと比較すれば、価格的に劣後するわけではない。
ハンバーガー業界に強大なコストリーダーの力で君臨するマクドナルド。そこから、少しでもシェアを切り取ろうとするならば、いかに差別化をし、そのポイントを顧客に伝えるかにかかっている。
藤河社長は「日本マクドナルドを経てロッテリア執行役員を歴任したハンバーガーのプロ」と記事で紹介されている。胸中に秘策を持っているであろうことは間違いないが、まずはTwitterの活用を検討されたらいかがかと、バーガーキングとサブウェイ両方のファンとして考えた次第だ。
« 縮む未来を映す「松坂屋上野店のデパ地下」 | Main | 変わるチキンラーメン?日清の聖域なき「全麺革命」 »
Comments