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2010.08.10

次世代自販機は液晶テレビの夢を見るか?

 「顧客接点における“コミュニケーション”をコンセプトとした」。
 2010年8月10日、JR東日本のエキナカで約1万台の飲料自動販売機を運営するJR東日本ウォータービジネスの「次世代自販機の開発経緯および概要説明」の記者会見。社長の田村修氏はそう語った。

 JR東日本ウォータービジネスが運営する自販機の特徴は、複数の飲料メーカーの商品が混載され、「ブランドミックス」で販売されていることだ。街ナカの自販機は何らかの形で飲料メーカーの資本によって運営されているため、メーカーに偏った形での品揃えとなっている。資本関係がなく、飲料メーカーと対等であるため、顧客に近いJR東日本ウォータービジネスはユーザーニーズを吸い上げてメーカーに提案し、エキナカ限定のコラボ商品を過去に10商品以上、開発・販売している。
 さらに同社が近年、力を入れているのが自販機のSuica対応である。小銭がいらず、10秒足らずでスピーディーに飲料の購入ができるという顧客利便性を実現したことにより、現在、自販機利用者の43%がSuica支払いだという。
 エキナカ好立地という条件もあるが、街ナカ自販機が設置過剰と不景気の影響で軒並み売上げが低迷している中、同社は2006 年の会社設立から4 年で売上高を134%伸長させている。保有する自販機の台数はほとんど変わっていないのにである。つまり、顧客志向を追求し、利便性と提供価値を高めた結果であるといえる。

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 そんな同社の次の一手が「次世代自販機」である。
 「自販機イノベーション」を掲げる同社が、「顧客起点で自販機の変革に取り組み、お客さまとのコミュニケーションにより、ちょっとFUN(楽しく)でSPECIAL(特別な)なひとときをご提供します」をコンセプトに開発したという。

 通常の自販機は商品見本が窓に並び、その下に購入ボタンがあるという構造が普通だ。それに対して、次世代機は本体前面に47インチの大型液晶ディスプレイを搭載し、商品画像を表示。画像にタッチして商品を選択する。また、利用者が近くにいない時は液晶ディスプレイに広告等のコンテンツを表示できる。
 ディスプレイ以上の大きな特徴は、本体に上部に搭載されたセンサの存在だ。カメラで顔を認識し、利用者の属性(年代・性別)を判別ができるという。それによって、判別した属性別に適した商品のお勧めを行うことと、利用商品×属性をPOS情報として取得できる。従来型の自販機では、「どの自販機から何がどれくらい売れたか」はわかるものの、「誰(どんな人)が、何を買ったか」という、コンビニでは当たり前に取得している、いわゆるPOSデータが取れなかった。それから考えれば、後者は大きな進歩である。

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 次世代機のデザインはインダストリアルデザイナーの柴田文江氏が担当した。デザインコンセプトは「BoxからBoardへ」。飲料が収納された箱=冷蔵庫から頭脳を持ったディスプレイへという意図だという。実際には、裏側には商品や様々な機能が詰まった「箱」であるが、それらは本体背面に隠して操作系を前面に出し、フラットなデザインを実現した。
 
 記者会見後に、JR品川駅に設置された実機でのデモンストレーションが行われた。実機の動きを見ると、そのデザイン意図と、田村社長のいう「コミュニケーション」の意味がよく理解できる。

 液晶画面の表示は輝度が高く、画像も精密できれいだ。記者会見の説明通り、利用者が近くにいない時には、今の季節は涼しげな水の画像などが飲料の購入を誘う。広告スペース、デジタルサイネージとしての機能だ。
利用者が近づくと、商品一覧の「ストアモード」に切り替わり、センサが顔認識した属性に応じた商品にお勧めマークが表示される。デモンストレーターの20代女性にはジャスミンティーなど3商品が推奨された。40代男性の田村社長がデモを行った時には、缶コーヒーなどが推奨表示された。
 画像にタッチして商品を選択すると、画面に商品が大写しされ、確認が促される。現金の投入か、Suicaのタッチで購入が確定する。購入確定すると、自販機のキャラクターの表情などが映し出され、購入のお礼のメッセージなどが表示される。(写真:田村社長と決済後の表示)

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 購入前後の、何気ない一連の流れだが、筆者はそこに、従来になかった自販機との新たな関係性を見た。
 
 担当デザイナー・柴田文江氏のコンセプトは「BoxからBoardへ」であったが、確かに従来の自販機は駅のコンコースやホームに置いてあるだけの「箱」だった。ここのところ連日の猛暑で、存在感が増している気もするが、用のない時には視界にあっても意識もしない。それが、離れたところから魅力的な映像で誘いかけてくるのである。
 お勧め表示も面白い。近づいて認識された時点で、初めて表示されるのだ。自販機に限らず、様々な展示商品に「オススメ!」とか「大人気!」とかいうPOPが掲出されている例は多い。「何の根拠でオススメしてんだろう?」とか、「大人気ではなく、売る側の気持ちではないのか?」と思いつつも指名買いする意志がない時には参考にしてしまいがちだ。それが、自分が近づいて初めて、「自分へのオススメ」がなされると、その意義はさらに高まる。「顔認識の精度は性別94%、年代(+-10%)75%。複数人筐体前にいれば、一番近い人を感知する。完璧ではないので、お勧め表示は、ある程度当たり障りのないものにしている」(記者会見での説明)というが、もっと精度が高まって、そのロジックが利用者に認知・理解されれば、さらにお勧めを受容し有効に活用されることになるだろう。
 購入後のお礼表示だけは、キャラクターも含めてもう少し工夫の余地があるように感じる。それでも、従来が「ゴトン」と商品を落下させるだけか、「ありがとうございました」と少し電子的なトーンの女性の声が流れるだけの従来機より可能性を感じる。

 「顧客接点における“コミュニケーション”をコンセプトとした」という次世代自販機。
家庭の中でもBox=冷蔵庫に思い入れを持つ人はあまり多くないだろう。しかし、Board=頭脳を持ったディスプレイ=テレビなら思い入れを持って様々な操作ややりとりを行う。その意味で、次世代自販機は利用者とコミュニケーションを行う入り口に立つことができたといえるだろう。
 今日、テレビはデジタル化し、さらに高度なやりとりができるようになった。視聴者の意見や注文を運営者・メディアに個別に回答ことだってできる。そう考えると、次世代自販機は、もっともっと、かしこくなれる可能性だってかかえているのだ。さらなる進化に期待も高まる。


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