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2010.08.30

ブルドックソースの「たこ焼きセット」の謎に挑む!

 ブルドックソースといえば、日本のソース市場のシェア№1ブランドだ。その同社が、「家庭たこ焼き市場」に攻勢をかけているようだ。しかし、実に謎の多い商品であるといえる。

  <ブルドックソース、専門店のたこ焼が作れる材料セット「おうちで本格たこ焼材料セット」を発売>(マイライフ手帳@ニュース8月26日)
 http://tinyurl.com/2ba84vk
 <ブルドックソース、たこ焼専用ソース「ブルドック おうちで本格たこ焼屋さん 310g」を発売>(同8月29日)
 http://tinyurl.com/2f9z3jk

 短期間に立て続けに出された新商品のリリースであるが、1つめの記事がソースと粉と具材のセット、2つめの記事がたこ焼き専用ソースの発売記事だが、特にここではセット商品に注目してみたい。
 記事によれば、商品発売は<たこ焼粉の市場は家庭内食への回帰が大きく影響し拡大する傾向>という、マクロ環境におけるEconomical(経済的な影響要因)を捉えたものだ。さらに、<たこ焼粉を1袋使いきれない人が多いことを背景に、使いきりサイズの(4人前、約32個分)便利な材料セットを発売>したという。同じくマクロ環境における核家族化の進行というSocial(社会的な影響要因)を捉えたものだ。
ここまでは、新商品発売は戦略的合理性があるように思われる。

 競争市場分析的に考えてみよう。ブルドックソースはこの商品を、どのような顧客(Customer)に向けて発売し、どのような競合(Competitor)と戦うために上市したのであろうか。

 まずは、ブルドックソース自社(Company)がどのような存在か考えてみよう。
 前述の通りブルドックソースは日本のソース市場のシェア№1。第2位はオタフクソース。この両社のシェア争いの歴史はなかなか壮絶だ。以下、Wikipediaの記述を引用する。
 <(オタフクソースは)全国区のテレビでのPRで知名度が増し、全国進出した(お好みソースは1952年、業務用向けに発売。その後、一般にも発売されるようになった)。2005年に東京都のユニオンソースの株を51%取得。一時はブルドックソースを抜き日本最大のソース会社になった>。しかし、<(ブルドックソースは)2005年5月24日 大阪地方裁判所に会社更生法の適用を申請したイカリソースの支援を表明。その背景には、知名度、シェア共に低い関西地方への販路、市場拡大がある>という状況で、現在のシェア順位に落ち着いている。

 では、この商品のターゲットとなる顧客とそのニーズは何だろうか。
 東京文化圏に住んでいると、ブルドックソースが全国区のように思えるが実はそうではない。ソース市場は日本全国に中小メーカーや、いわゆる「地ソース」といわれる零細メーカーまでが散在し、社団法人日本ソース工業界に加盟しているメーカーだけで100社にのぼる。そして、地域によって支持されているブランドに大きな違いがある。とんかつだろうが、お好み焼きだろうが、焼きそばだろうか、何の区別もなく、「ブルドック中濃ソース」をかけてしまう関東人のデリカシーのなさに耐えられないとする関西人は多い。

 Twitterやメールで関西在住の方に聞いてみた。
関西人にとっては、たこ焼きはお好み焼き同様、おやつとしてだけではなくご飯と一緒に食べる「おかず」の部類に入り、高い頻度で食卓に並ぶ。そして、そこで用いられるソースはオリバー、イカリ、オタフクなどだという。もしくは、それらの市販のソースに、トンカツソース、どろソースなど、他のソースを混ぜたり、ケチャップ、蜂蜜、しょうゆなど、別の調味料を混ぜたりと、さらに一手間加える家庭も多いという。そして、そのソースブランドの中にブルドックソースの名前は決して出てこなかった。

 だとすると、「おうちで本格たこ焼材料セット」はリリースにあるように、内食需要の高まりでたこ焼きが食卓に登場する期待が高い環境の中、ブランドに馴染みのある関東人をターゲットとして発売されたものなのだろうか。確かに粉や天かす、紅ショウガなどの材料を揃えても、使用頻度が低いため使い切ることができない。一方、「オタフクソース」「日清製粉」から競合となるセット商品も発売されているが、ソースまでセットされているオールインワンな商品はない。初心者には利便性が高い商品だ。

 しかし、関東人にたこ焼きを家庭で食べさせるには高いハードルが存在する。「たこ焼き器」だ。関西では当たり前のように家庭にたこ焼き器が存在するという。ベルリンの壁崩壊の時に、ベルリンの壁の横の屋台で社長がたこ焼きを焼いたことで有名な山岡金属工業の家庭用ガスたこ焼き器のような本格派から、電熱式、ホットプレート付属のものまで様々あるがそのいずれも存在しない家庭は多い。内食志向の高まり、家族でさっと作って食べるといえば、関東ではお好み焼きがせいぜいだろう。その代替品の選択がなされた瞬間に、メジャーな日清製粉やオタフクソースの粉やセットを購入されてしまう。

 関東向けと思われる商品ではあるが、実際に家庭に導入されるにはあまりにハードルが高い。故に、ターゲットが見えない。それが、この商品の最大の謎である。

 ある兵庫在住の方がTwitterで指摘してくれた。「関西でも30代前半の新米主婦には、良いかも。小麦粉からどう作ったらよいかわからないヒトに。それに材料を色々買うと高くなるので。」とのことだった。また、32個、4人家族で1人8つは少し少ないが、たこ焼きメインの食事ではなく、気軽に食べるなら楽に作れて需要はあるかもとの指摘をしてくれた方もいた。

 限定的なターゲット、利用シーンではあるが、関西でも受容性はある商品のようだ。だとすれば、ブルドックソースにとっては、関西進出は悲願である。新米主婦の家庭に自社のソースの味を刷り込む。ガッツリたこ焼きを食べる時意外のシーンで、いつもとちょっと違うソースの味を試してもらう。そんな狙いがこの商品には込められているのかもしれない。
 あまり注意しなければ見落としてしまいそうな商品ターゲットを、今回は掘り下げてみた。商品は26日から店頭に並んでいるようだ。まずは、販売チャネルで棚が取れているのか。そして、そこから消費者が手にとって購入しているのか。関西方面の方からの情報に期待したい。


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Comments

こんにちは。
たこ焼き屋として、商品が気になります。。

東京の人は、本当にたこ焼きを食べないし、こだわりも全くないんですよね。味も「普通の頂戴」みたいな感じで、何でもいいレベルの食べ物の扱いです。

大阪にもいろんな人がいるものの、総じて東京の人よりは意識レベルが高いです。

ソースは、ものによりますねぇ。おいしいものもあれば、そうでないものもある感じ。おっしゃるとおり、東京の人はブルドック中濃ですねぇ。私も、そう。

Posted by: ひー(冷凍たこ焼き販売してます♪) | 2010.08.31 02:16 AM

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