変わるチキンラーメン?日清の聖域なき「全麺革命」
日清食品の創業者、安藤 百福(あんどう ももふく)が1958年に開発した、世界初の即席麺といえば、誰しも知る「チキンラーメン」である。Wikipediaの記述によれば、<チキンラーメンの発売により、それまでの「支那そば」「中華そば」にかわり、「ラーメン」という呼び名が全国的に広まった>とあるので、全てのラーメンの原点のような存在だ。そんな歴史あるロングセラー商品が大きな変貌を遂げようとしている気配がある。
<「チキンラーメン」ブランドから初の太めん商品登場!>(7月28日日清食品ニュースリリース)
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上記リリースによれば、同ブランドのカップ麺、から「チキンラーメン ビッグカップ 太めん」「チキンラーメンどんぶり 太めん」「焼チキンカップ 太めん」という新製品が8月9日(月)、つまり本日発売されるという。注目はその製品仕様である。<このたびの3品は、通常の「チキンラーメン」のめんに比べ、幅は約1.25倍、厚みは約1.35倍と、「チキンラーメン」のおいしさを残しながらも、これまでにない食べごたえが楽しめます>(同)とある。
チキンラーメンの歴史を振り返ってみれば、これまでにも消費者ニーズに応えるべく、微に入り細をうがつような改良が加えられてきた。発売当初めんの形状は四角形だったが、その後どんぶりの形に合わせた円形に変更された。2003年からは、めんの塊の表面に、たまごを載せやすくするためのくぼみ 「たまごポケット」が付けられ、それがさらに、2008年から黄身は中央、白身はその周りのポケットに収まるように「"Wたまごポケット」へと進化した。丼を用意しなくとも食べられるようにと開発された、カップめんタイプの「チキンラーメンどんぶり」は1990年の登場だ。
今回のチキンラーメンの改良は、オリジナルのチキンラーメンではなく派生商品であるとはいえ、極めて大きな変更を加えているのだ。ラーメンの麺とは、味・食感・のどごしなどの要素が絡み合って、その商品「らしさ」を構成している重要な要素である。それに手を加えるとは、極めて大きな決断であったことがうかがい知れる。
その決断は、日清が昨年から断行している「全麺革命」の延長線上にあると考えられる。
全麺革命とは、ブランド横断プロジェクトであり、「日清のどん兵衛」の改良などのほか、「日清麺職人」、「太麺堂々」といった新商品を生み出している。
昨今の食のトレンドとしてつけ麺に始まり、「太麺」ブームが顕著だ。同社はそのニーズに対応することを考えたが、<中華めんはうどんと比べ、中華めん特有のコシを出す為に硬質な小麦粉を使用します。その為、湯戻りできる太いめんを製品化することが技術的に困難でした>とホームページに開発秘話が語られている。そのため、<製造工程のあらゆる条件を進化させ、その工程を組み合わせることで、ラーメンやうどんなど、さまざまなめんにふさわしい、それぞれの特徴を生み出すための技術革新>を行ったというのが、「全麺革命」の全容だ。
ロングセラー商品は、一見、変わらずに売れ続けている商品であると思われがちだ。しかし、実際には時代や環境、消費者のニーズの変化に対応して変化をし続けることで生き残っているのである。
例えば、菓子のポッキーは基本の「ポッキーチョコレート」だけでなく、ご当地ポッキーに至るまで、様々なバリエーションを展開している。コカ・コーラもクラッシックは変わらぬ味だが、現在では「ゼロ」の方がむしろ主流となっている。国民的大衆車であるカローラはその名前こそ継承されているが、1966年の登場以来10代のモデルチェンジを行いながら、様々な派生車種を生んでいる。
時代の変化、消費者のニーズの変化をつかみ、それに応える技術が開発されれば、自社の歴史ある看板ブランドの商品でも、メスを入れるという「聖域なき改革」を日清は断行したのである。
もちろん、ロングセラー商品として、変わることのない「こだわりポイント」を堅持している点も見逃せない。<めんは太くても3分で調理することができ、「すぐおいしい、すごくおいしい。」が特徴の「チキンラーメン」と同様にお楽しみいただけます>(同)とある。「すぐおいしい、すごくおいしい。」は、1984年にイラストレーターの南伸坊を起用したCMで用いられたキャッチコピー以来の、同商品の商品コンセプトとなっている言葉だ。こだわりのポイント、「らしさ」を失わないことも、ロングセラー商品として支持され続ける条件なのである。
ちなみに、チキンラーメンの看板ともいうべき要素がもう一つ、先月変更されている。キャラクターの「ひよこちゃん」だ。
チキンラーメンのキャラクターは、1965年から設定され、初代キャラクターとして、野球帽にそばかす顔の少年「ちびっこ」が描かれた。その後、1991年に2代目の「ひよこちゃん」にバトンタッチした。その「ひよこちゃん」が、つぶらな瞳になって、プロポーションもアタマでっかちな可愛さを増したイラストに改定されたのだ。昨今のキャラクターの流行を取り入れたためであると考えられる。
ともすると、ロングセラー商品はファン層が商品の歴史とともに歳を取ってしまいがちだ。若いファン層へのアピールなど、細かなところまで神経を遣って行っている点にも、生き残りのヒミツが見て取れる。
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