「シークレット菓子」のヒミツをマーケ的に深掘りしてみる
「まゆ毛コアラ」「願いのピノ」「竹になったたけのこの里バー」・・・定番菓子のパッケージに時々混入している変わり種バージョン。「幸せになれる」という都市伝説もあるが、メーカーの真の意図は何だろうか。
Web R25に興味深い記事が掲載されていた。
<日常の小さな幸せ!? ラッキーなお菓子はこんなに増えていた>(2010.8.21)
http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/wxr_detail/?id=20100819-00003285-r25
記事は、「コアラのマーチ」.「カール」「たけのこの里バー」「ミルキー」「エビスビール」「パナップ」といった定番商品に、菓子そのものや、包み紙やパッケージに通常商品と異なった形状、デザインのものがあり、それらは「シークレット菓子」といわれているようだ。(エビスビールも列記されているが・・・)。
記事にある、その起源に関する取材・考察が面白い。
最も古い例は、88年ごろ「コアラのマーチの中に”まゆ毛コアラ”バージョンを発見すると幸せになれる」という噂が発生したものだという。但し、それは他の例と異なり、全体の中の単なる1デザインが消費者の気に留まっただけの自然発生的な現象だったという。さらに記事によれば、本格的な企業の仕掛けは2000年頃に始まったとしている。
詳細は記事にあるとおりだが、メーカーは<各社一様に「ゲーム感覚でドキドキ・ワクワク感を楽しんでもらいたい」とのこと>とコメントしているという。
安定的に収益を上げてくれる定番商品にとって、最大のリスクは「顧客離れ」だ。
顧客が離れるパターンは、何らかの問題があって能動的に離反する場合が一つだ。顧客が個別識別されている場合、Churn(チャーン)という言葉が使われる。解約を防止することをチャーン・マネジメントなどといい、カード業界や通信サービスなどではおなじみの顧客管理プログラムとなっている。
もう一つのパターンは、顧客がサラサラとこぼれ落ちていくように減少してしまう状態だ。Attrition(アトリション)といわれる。顧客が個別識別されていない場合は、こちらの言葉がよく用いられる。
顧客が離れてしまうとどうなるか。当然、収益的に痛い。しかし、大切なのはそれが「どれくらい痛いことなのか」を正しく認識しておくことだ。
「1:5の法則」と「5:25の法則」というものがある。
1:5の法則は、「新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストの5倍かかる」こと。5:25の法則は、「顧客の離反を5%改善すれば、利益が25%改善される」ことを表している。
「ホントか?」といわれてしまうと、実はこの法則の出所はあまり明らかではない。ただ、有名な「80:20の法則(80%の収益は20%の上位優良顧客からもたらされる)」も、似たようなものだ。19世紀末のイタリアの経済学者、ヴィルフレム・パレートが「いずれの国でも約20%の富裕層がその国の約80%の冨を占有している」という富の偏在を発見したことを様々なことに当てはめて検証した経験則に過ぎない。大切なのは、「既顧客維持の重要性」を認識することなのだ。
さて、定番品の生き残りの基本パターンは次々と商品バリエーションを増やすことだ。定番商品の代表格であるカップヌードル1971年の新発売以来の、いわゆる「カップヌードル」といわれる味の他に、様々な味のバリエーションを次々と展開している。菓子ならポッキーやキットカットなどが基本のフレーバーはそのままに、他ブランドやご当地商品に至るまで、様々なバリエーション展開をしている。
「シークレット菓子」を展開するには、当然、別バージョンを作って、パッケージに混入させたり、別パッケージを混ぜたりするには手間がかかる。単なる「ファンサービス」と片付けられないコストもかかっているはずだ。しかし、新たなバリエーションを開発・上市するより遙かに低コストで済む。そして、ユーザーに飽きられないことと、チャネルの棚を確保することが可能になれば、メーカーとしてはこんなにうれしいことはない。
定番商品とはいえ、何もしないでポジションが盤石に保たれるほど甘くはない。顧客維持に懸命の努力をしているのだ。
もしある日、自分が購入した菓子や食品・飲料の箱の中やパッケージに、ちょっと変わった「シークレット」を発見したら、そのラッキーで「自分の顧客がうまく維持できますように」と祈りつつ、「メーカーの努力も報われますように」と少しだけ幸運のお裾分けをしてあげればいいと思う。
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