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2010.08.19

ニーズギャップに愚直に応えよ!焼きそばJANJANのヒミツ

 大ヒット商品、エースコックのカップ焼きそば「JANJAN」が発売以来わずか半年で製品リニューアルをする。そこに隠されたワケとはなんだろうか?

 <2010年上半期のヒット商品がリニューアル発売!焼そばはモテる時代へ!味もカタチも新定番!!平成22年9月13日(月) 発売>(2010年8月18日・ PR TIMES)
 http://tinyurl.com/2addeoe

 世は夏祭り、盆踊りの季節である。地域の人々とともに踊るのもいいが、屋台も楽しみのひとつだ。金魚すくいや輪投げ、射的などの獲得系と双璧を為すのが食欲系。綿菓子、杏飴といったB級スイーツを楽しんだら、次はたこ焼きにしようか、お好み焼きか、はたまた焼きそばかと悩むところだ。
昨今のB級グルメブームでも人気の焼きそばを選択してみよう。パックに盛られた焼きそばを割りばしですくい取って食べるその時に、いつも去来する思いがないだろうか。「具が少ない…」と。
 具が少ない焼きそばは悲しい。かつてはタコがほとんど入っていないたこ焼きも見受けられたが、今日はなぜか「大ダコ入り」と看板を掲げた屋台が多く、本当にタコが大きいかどうかはともかく、スカはない程度には改善された。しかし、焼きそばは相変わらずだ。申し訳程度にキャベツかちらほら顔を見せる他は、目に鮮やかな紅しょうがのみ。もし、肉の切れ端が発見できたら、それは僥倖というものだ。それでも文句を言わないのは、屋台のおじさんがこわいから…だけではなく、「まぁ、屋台の焼きそばってこんなもんさ」という共通認識、お約束みたいなものが存在するからである。

 さて、話をエースコックのカップ焼きそば「JANJAN」に移そう。この商品の開発経緯とその特徴の詳細は、新発売時に分析を行った過去記事を参照いただきたい。
 <「若者の焼きそば離れ」対応?エースコックが成功したワケ!>(2010年4月23日)
 http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2010/04/post-91f2.html

 上記記事をサマリーすると、以下の通りだ。
 ・エースコックは10~20代のカップ焼きそばの食用率が低下しているという事実をつかんだ。
 ・その理由は、容器の形状に大きな問題があり、若年層には「持ち運びが面倒」「容器が大きくて食べにくい」パソコン操作などをしながらの「ながら食べ」ができないという不満があった。
 ・さらに、若年層の嗜好に合わせて、味付けソースを添付するだけでなく、麺の中にソースを練り込んで「濃い味付け」にするほか、歯に付くので抵抗があるという「青のり」をあえて「かやく」に加えず、代わりに黒こしょうのスパイスを添付した。
 ・結果として、若年層ユーザーの取り込みに成功し、「焼きそばUFO」「 一平ちゃん夜店の焼そば」「ペヤングソースやきそば」といった従来のトップブランドの一角に食い込む販売成績を記録している。

 さて、「JANJAN」の今回のリニューアルのポイントは何だろうか。ズバリ、「具の増量」だ。
リリースには<シャキシャキした食感の良いキャベツを20%増量し、程よく味付けした肉そぼろで仕上げました>とある。
 従来のカップ焼きそばは、内容量を増量し、最大で通常サイズの倍というメガ盛り商品を出したり、ソースに加えてマヨネーズを添付するなどのフレーバーのバリエーションを加えたりという差別化が主であった。
 実はエースコックという会社はメガ盛りのカップ麺のパイオニアでもある。1988年に大型カップ麺の先駆けとなった「スーパーカップ」を発売し、翌99年にはさらに大型化した「スーパーカップ1.5倍」を発売。若年層の定番メニューとしての地位を獲得した。さらに、2005年にはメガフードブームの火付け役の一つともなった「スーパーカップ2.0倍」を発売し話題を呼んだ。しかし、ことカップ焼きそばは「メガ盛り」に走ってはいない。なぜか。それは、「ターゲットのニーズはそこではないから」だ。

 昨今のカップ麺はノンフライ麺の使用や、具材の強化、有名ラーメン店とのコラボレーションなどによって、より本格的なラーメンに近づこうとする潮流がある。しかし、カップ焼きそばにおいてはあまり進化が見られなかったのが「JANJAN」がヒットした背景でもある。カップ焼きそばは、屋台の焼きそば同様に、「具が少ない」。非日常的シチュエーション、ハレの日である「祭り」の中で食べるならそれもまた善しであるが、ケの日、日常生活の中でのそれは、とても悲しい。
 今までそれでも特に文句を言う人がいなかったのは、屋台の焼きそば同様に、「カップ焼きそばの具なんて、こんなもんだろう」共通認識、お約束みたいなものが存在したからだ。メーカーと、カップ焼きそばの固定的なユーザーの間で。しかし、エースコックは若年層という新たなターゲットの取り込みを図ったのだ。そこに、共通認識やお約束はない。本格化するカップ麺と比較して見劣りする具材は、「JANJAN」の新規性に満足しているユーザーの間でも、やがて不満として噴出する可能性が高い。

 「具材のキャベツを20%増量しました」。
 一見、何ということはない、当たり前に思えるリニューアルは、エースコックが「カップ焼きそば離れをしている若年ユーザーを取り込む」ということに見出した商機を、そのユーザーを将来的にも安定的に囲い込むために検討した結果であるのだ。ユーザーのニーズギャップに応えた新商品を発売し、さらにその先のニーズギャップに先回りして応えるリニューアルを行う。
 マーケティングの基本は「まず、顧客を見る」ことである。その意味からもこの事例の意義は深い。


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