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16 posts from August 2010

2010.08.31

「熱いハート」に語りかける広工大

 生き残りをかけて激化する大学の学生獲得合戦。特に地方大学が苦戦を強いられている境下で、広島工大が実にステキなCMを展開している。

 もはや回避することができない加速度的な少子化によって、大学は淘汰の時代に入っている。生き残りをかけた動きが速かったのは関西勢の大学だ。東京一極集中によって関西パッシングされることを避けるために九州などで入試説明会を開催する。一方、東京の大学も関西で説明会を開くなどの動きを見せ、まさに仁義なき戦いの様相を呈している。そんな環境下で地元の進学予定者を関西・関東に吸引され、地方私大の苦戦が顕在化。既に来年度の学生募集をやめ、廃校を決定した大学もある状態だ。

 地方大学の一校である広島工業大学が、学生募集のすばらしいCMを放映している。
 <広島工業大学のテレビCMを、2010年4月より中国・四国地方を中心に放映しています>(広島工業大学・広報Webサイト)
 http://www.it-hiroshima.ac.jp/about/publicinfo/tvcm/

 「もしかして、広工大。男子篇」「もしかして、広工大。女子篇」の2バージョンがある。
 男子篇は、故障した電子レンジを「チンせんのよぉ!」と広島弁で不満を呈してガンガン叩く母親に、ちょうど帰宅した息子とおぼしき男子高生。「僕は叩かない」のテロップ。テキパキとレンジを分解。修理を試みる。オチは「よくわからん」と、結局、治らない。だが、実に楽しそうな、その表情がいい。「もしかして、広工大。」のサウンドロゴが入る。
 女子篇は、工場見学に来ている高校生グループの姿だ。工業ロボットの動きに、ヘルメット姿で、熱いまなざしを送る女子高生。「かっこいい・・・」と思わずつぶやく。「女子なのに、変ですか?」のテロップ。オチは、思わず鼻血をだす女子高生の姿に、「もしかして、広工大。」

 大学が生徒を集めるのに、「広くて美しいキャンパス」「楽しい行事」とか、どこもかしこも同じようなセールスポイントで、何だか良く分からなくなってしまっている今日このごろ。生き残りをかけた戦いで、焦れば焦るほど、ターゲットニーズを無視した機能訴求をするのは大学だけでなく、世の常。しかし、広工大のCMは、受験生が本当に好きな事、打ち込める事がここで出来るんだ、ということを、短くて台詞もほとんどなしで上手に見せている。

 「大学全入時代」といわれるようになり数年が経過し、大学進学率は50%に近づいている現状、大学は特別な存在ではなく、いってみればコモディティーになっている。プロダクトライフサイクルで考えれば、成熟期から衰退期に移行している状態だ。そんな時、「製品特性」で考えれば、競争のステージは、「付随機能」となるのが常だ。
 製品やサービスを購入して実現したい「中核」となる価値は、大学なら「学べること」「知的欲求を充足させられること」である。それを実現する「実体」価値は「教員の質」や「カリキュラム」。付随機能が「設備等の教育環境」「楽しく過ごせる行事」だ。
 コモディティーと化した大学が学生に訴えかける時、「付随機能」である、大学の設備などの「スペック合戦」になりがちなのが今日の姿である。

 ブランド論の大家、デビッド・A・アーカーが著した「ブランド・エクイティ戦略」(ダイヤモンド社)に、「コモディティー化」と「スペック訴求合戦」を脱するキーワードがある。「知覚品質」という考え方である。
 「知覚品質」とは「顧客が認めている、“その製品ならでは”の価値」である。スペックを重視する「工業的な品質」は当然、「客観的に測定可能な品質」であるが、それに対してアーカーの提唱する「知覚品質」は、目に見えない「顧客の頭の中の主観的な評価」である。言い換えれば、その顧客なりの“対価を支払う理由”である。

 広工大のCMは、「知的欲求を充足させられること」を情緒的価値として、真っ直ぐに訴えているところがすばらしい。
 学校で教育されたカリキュラムのおかげで「ゆとり」だのと言われ、大学を出ても「指示待ち」だの「安定志向」だのと言われがちなイマドキの学生。しかし、熱いハートを持って、学びの欲求を充足させたい志願者も必ずいるのだ。そんな若者が迷わず選択できるメッセージを、もっと多くの大学が送ってもいいと思った。

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2010.08.30

ブルドックソースの「たこ焼きセット」の謎に挑む!

 ブルドックソースといえば、日本のソース市場のシェア№1ブランドだ。その同社が、「家庭たこ焼き市場」に攻勢をかけているようだ。しかし、実に謎の多い商品であるといえる。

  <ブルドックソース、専門店のたこ焼が作れる材料セット「おうちで本格たこ焼材料セット」を発売>(マイライフ手帳@ニュース8月26日)
 http://tinyurl.com/2ba84vk
 <ブルドックソース、たこ焼専用ソース「ブルドック おうちで本格たこ焼屋さん 310g」を発売>(同8月29日)
 http://tinyurl.com/2f9z3jk

 短期間に立て続けに出された新商品のリリースであるが、1つめの記事がソースと粉と具材のセット、2つめの記事がたこ焼き専用ソースの発売記事だが、特にここではセット商品に注目してみたい。
 記事によれば、商品発売は<たこ焼粉の市場は家庭内食への回帰が大きく影響し拡大する傾向>という、マクロ環境におけるEconomical(経済的な影響要因)を捉えたものだ。さらに、<たこ焼粉を1袋使いきれない人が多いことを背景に、使いきりサイズの(4人前、約32個分)便利な材料セットを発売>したという。同じくマクロ環境における核家族化の進行というSocial(社会的な影響要因)を捉えたものだ。
ここまでは、新商品発売は戦略的合理性があるように思われる。

 競争市場分析的に考えてみよう。ブルドックソースはこの商品を、どのような顧客(Customer)に向けて発売し、どのような競合(Competitor)と戦うために上市したのであろうか。

 まずは、ブルドックソース自社(Company)がどのような存在か考えてみよう。
 前述の通りブルドックソースは日本のソース市場のシェア№1。第2位はオタフクソース。この両社のシェア争いの歴史はなかなか壮絶だ。以下、Wikipediaの記述を引用する。
 <(オタフクソースは)全国区のテレビでのPRで知名度が増し、全国進出した(お好みソースは1952年、業務用向けに発売。その後、一般にも発売されるようになった)。2005年に東京都のユニオンソースの株を51%取得。一時はブルドックソースを抜き日本最大のソース会社になった>。しかし、<(ブルドックソースは)2005年5月24日 大阪地方裁判所に会社更生法の適用を申請したイカリソースの支援を表明。その背景には、知名度、シェア共に低い関西地方への販路、市場拡大がある>という状況で、現在のシェア順位に落ち着いている。

 では、この商品のターゲットとなる顧客とそのニーズは何だろうか。
 東京文化圏に住んでいると、ブルドックソースが全国区のように思えるが実はそうではない。ソース市場は日本全国に中小メーカーや、いわゆる「地ソース」といわれる零細メーカーまでが散在し、社団法人日本ソース工業界に加盟しているメーカーだけで100社にのぼる。そして、地域によって支持されているブランドに大きな違いがある。とんかつだろうが、お好み焼きだろうが、焼きそばだろうか、何の区別もなく、「ブルドック中濃ソース」をかけてしまう関東人のデリカシーのなさに耐えられないとする関西人は多い。

 Twitterやメールで関西在住の方に聞いてみた。
関西人にとっては、たこ焼きはお好み焼き同様、おやつとしてだけではなくご飯と一緒に食べる「おかず」の部類に入り、高い頻度で食卓に並ぶ。そして、そこで用いられるソースはオリバー、イカリ、オタフクなどだという。もしくは、それらの市販のソースに、トンカツソース、どろソースなど、他のソースを混ぜたり、ケチャップ、蜂蜜、しょうゆなど、別の調味料を混ぜたりと、さらに一手間加える家庭も多いという。そして、そのソースブランドの中にブルドックソースの名前は決して出てこなかった。

 だとすると、「おうちで本格たこ焼材料セット」はリリースにあるように、内食需要の高まりでたこ焼きが食卓に登場する期待が高い環境の中、ブランドに馴染みのある関東人をターゲットとして発売されたものなのだろうか。確かに粉や天かす、紅ショウガなどの材料を揃えても、使用頻度が低いため使い切ることができない。一方、「オタフクソース」「日清製粉」から競合となるセット商品も発売されているが、ソースまでセットされているオールインワンな商品はない。初心者には利便性が高い商品だ。

 しかし、関東人にたこ焼きを家庭で食べさせるには高いハードルが存在する。「たこ焼き器」だ。関西では当たり前のように家庭にたこ焼き器が存在するという。ベルリンの壁崩壊の時に、ベルリンの壁の横の屋台で社長がたこ焼きを焼いたことで有名な山岡金属工業の家庭用ガスたこ焼き器のような本格派から、電熱式、ホットプレート付属のものまで様々あるがそのいずれも存在しない家庭は多い。内食志向の高まり、家族でさっと作って食べるといえば、関東ではお好み焼きがせいぜいだろう。その代替品の選択がなされた瞬間に、メジャーな日清製粉やオタフクソースの粉やセットを購入されてしまう。

 関東向けと思われる商品ではあるが、実際に家庭に導入されるにはあまりにハードルが高い。故に、ターゲットが見えない。それが、この商品の最大の謎である。

 ある兵庫在住の方がTwitterで指摘してくれた。「関西でも30代前半の新米主婦には、良いかも。小麦粉からどう作ったらよいかわからないヒトに。それに材料を色々買うと高くなるので。」とのことだった。また、32個、4人家族で1人8つは少し少ないが、たこ焼きメインの食事ではなく、気軽に食べるなら楽に作れて需要はあるかもとの指摘をしてくれた方もいた。

 限定的なターゲット、利用シーンではあるが、関西でも受容性はある商品のようだ。だとすれば、ブルドックソースにとっては、関西進出は悲願である。新米主婦の家庭に自社のソースの味を刷り込む。ガッツリたこ焼きを食べる時意外のシーンで、いつもとちょっと違うソースの味を試してもらう。そんな狙いがこの商品には込められているのかもしれない。
 あまり注意しなければ見落としてしまいそうな商品ターゲットを、今回は掘り下げてみた。商品は26日から店頭に並んでいるようだ。まずは、販売チャネルで棚が取れているのか。そして、そこから消費者が手にとって購入しているのか。関西方面の方からの情報に期待したい。


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2010.08.25

「シークレット菓子」のヒミツをマーケ的に深掘りしてみる

 「まゆ毛コアラ」「願いのピノ」「竹になったたけのこの里バー」・・・定番菓子のパッケージに時々混入している変わり種バージョン。「幸せになれる」という都市伝説もあるが、メーカーの真の意図は何だろうか。

 Web R25に興味深い記事が掲載されていた。
 <日常の小さな幸せ!? ラッキーなお菓子はこんなに増えていた>(2010.8.21)
 http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/wxr_detail/?id=20100819-00003285-r25

 記事は、「コアラのマーチ」.「カール」「たけのこの里バー」「ミルキー」「エビスビール」「パナップ」といった定番商品に、菓子そのものや、包み紙やパッケージに通常商品と異なった形状、デザインのものがあり、それらは「シークレット菓子」といわれているようだ。(エビスビールも列記されているが・・・)。

 記事にある、その起源に関する取材・考察が面白い。
 最も古い例は、88年ごろ「コアラのマーチの中に”まゆ毛コアラ”バージョンを発見すると幸せになれる」という噂が発生したものだという。但し、それは他の例と異なり、全体の中の単なる1デザインが消費者の気に留まっただけの自然発生的な現象だったという。さらに記事によれば、本格的な企業の仕掛けは2000年頃に始まったとしている。
 詳細は記事にあるとおりだが、メーカーは<各社一様に「ゲーム感覚でドキドキ・ワクワク感を楽しんでもらいたい」とのこと>とコメントしているという。

 安定的に収益を上げてくれる定番商品にとって、最大のリスクは「顧客離れ」だ。
 顧客が離れるパターンは、何らかの問題があって能動的に離反する場合が一つだ。顧客が個別識別されている場合、Churn(チャーン)という言葉が使われる。解約を防止することをチャーン・マネジメントなどといい、カード業界や通信サービスなどではおなじみの顧客管理プログラムとなっている。
 もう一つのパターンは、顧客がサラサラとこぼれ落ちていくように減少してしまう状態だ。Attrition(アトリション)といわれる。顧客が個別識別されていない場合は、こちらの言葉がよく用いられる。

 顧客が離れてしまうとどうなるか。当然、収益的に痛い。しかし、大切なのはそれが「どれくらい痛いことなのか」を正しく認識しておくことだ。

 「1:5の法則」と「5:25の法則」というものがある。
 1:5の法則は、「新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストの5倍かかる」こと。5:25の法則は、「顧客の離反を5%改善すれば、利益が25%改善される」ことを表している。
「ホントか?」といわれてしまうと、実はこの法則の出所はあまり明らかではない。ただ、有名な「80:20の法則(80%の収益は20%の上位優良顧客からもたらされる)」も、似たようなものだ。19世紀末のイタリアの経済学者、ヴィルフレム・パレートが「いずれの国でも約20%の富裕層がその国の約80%の冨を占有している」という富の偏在を発見したことを様々なことに当てはめて検証した経験則に過ぎない。大切なのは、「既顧客維持の重要性」を認識することなのだ。

 さて、定番品の生き残りの基本パターンは次々と商品バリエーションを増やすことだ。定番商品の代表格であるカップヌードル1971年の新発売以来の、いわゆる「カップヌードル」といわれる味の他に、様々な味のバリエーションを次々と展開している。菓子ならポッキーやキットカットなどが基本のフレーバーはそのままに、他ブランドやご当地商品に至るまで、様々なバリエーション展開をしている。
 「シークレット菓子」を展開するには、当然、別バージョンを作って、パッケージに混入させたり、別パッケージを混ぜたりするには手間がかかる。単なる「ファンサービス」と片付けられないコストもかかっているはずだ。しかし、新たなバリエーションを開発・上市するより遙かに低コストで済む。そして、ユーザーに飽きられないことと、チャネルの棚を確保することが可能になれば、メーカーとしてはこんなにうれしいことはない。

定番商品とはいえ、何もしないでポジションが盤石に保たれるほど甘くはない。顧客維持に懸命の努力をしているのだ。
 もしある日、自分が購入した菓子や食品・飲料の箱の中やパッケージに、ちょっと変わった「シークレット」を発見したら、そのラッキーで「自分の顧客がうまく維持できますように」と祈りつつ、「メーカーの努力も報われますように」と少しだけ幸運のお裾分けをしてあげればいいと思う。


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2010.08.24

ハデハデ靴・メレルの「大ヒットのヒミツ」と「挑戦」

 「自社の製品はどのような価値を持っているのか」を冷静に把握することは重要だ。それが、「誰から、どのように評価されるのか」を考えることは、さらに重要だ。

 「カラーバリエーションはマーケティングのどん詰り」などと言われることがある。すなわち、製品がコモデティー化して差別化要素が出尽くして、カラーバリエーションの数を増やすぐらいしか手がなくなっている状態をいう。
例えば、「ノートパソコン」を考えてみよう。廉価なネットブックが登場し、さらにiPadに代表されるタブレット端末にその座を奪われつつある、成熟期、もしくは衰退期にさしかかった製品だ。量販店の店頭を見れば、その筐体に様々なカラーバリエーションが展開されていることがわかる。バリエーションを増やすということは、在庫・売れ残りのリスクがその数だけ高まることを意味している。しかし、もはや色ぐらいしか差別化ポイントを構築できないため、仕方なしにメーカーは展開しているのだ。

 日経MJ8月23日ファッション&リビング欄の連載コラム「ブランド深化論」。<メレル(丸紅フットウェア)派手な色の靴 若者に浸透>という記事が掲載された。
 メレルは来年30周年を迎える米国のアウトドアシューズブランドで、98年に丸紅が独占輸入権を獲得。08年に<従来の黒やオリーブ、黄色の3色に加えて、緑や青などを加え7色展開を始めた>と記事にある。

 その製品がどのような価値を持っているのかという、価値構造を明確にするフレームワークが、フィリップ・コトラーの製品特性モデルである。製品の持つ価値構造を3つのレベルに分解する。3層は中心から「中核」「実体」「付随機能」である。

 「中核」とは、顧客が製品やサービスの購入で手に入れたい価値だ。前述のノートパソコンで考えれば、基本機能である「ドキュメントの作成」「インターネットの利用」「持ち運べること」が相当する。「実体」は「中核」の価値を実現するために欠かせない、製品の特性を構成する価値である。「軽量さ」「バッテリーの稼働時間」「耐久性」などが相当する。「付随機能」は、製品の中核価値に直接的な影響は及ぼさないが、その存在によってより魅力が高まる価値である。「カラーバリエーション」がまさにそれだ。

 では、アウトドアシューズであれば、どうだろうか。靴としての基本機能である「足の保護」「歩きやすさ」が「中核」となる。従来メレルが持っていた「悪路でも滑りにくい」や「丈夫なこと」「防水機能(ゴアテックス)」などが「実体」。そして、普通に考えれば、カラーバリエーションはノートパソコンの場合と同じく「付随機能」となる。あれば差別化要素にはなるが、それがなくともアウトドアシューズとしての使用には耐えうるからだ。

 メレルの大ヒットのヒミツは、その価値構造を「獲得すべきターゲットに対してどのように訴求すべきなのか」を検討した点にある。
 米国からの輸入品である、従来の地味なカラーの商品では、オシャレなアウトドアウェアのブームに乗ることはできないと判断し、日本独自のカラー展開を米国に掛け合い、反対を押し切って承認させたことで実現した商品だと記事にある。
 今日では同シューズは、野外フェスティバルに出かける若者や、「山ガール」などに大きな支持を得ているというが、それらのターゲット層にとって、アウトドアシューズのカラーバリエーションは、「実体」たる「欠かすことのできない価値」なのだ。なぜなら、山や屋外で「足の保護」がなされ、「歩きやすさ」が確保されているだけでなく、「オシャレでいられること」も、「実現したい中核たる価値」であるからだ。
 余談ながら、実は筆者もシリーズの目にも鮮やかな色に惹かれて朱赤のシューズを購入し、「せっかく靴もあることだから・・・」と昨夏は立山を歩いてきたのであった。まさに同社の戦略に乗った一人なのだ。

 ソニーの創業者、故・盛田 昭夫氏は著書「21世紀へ」の中で「製品を商品としようとする場合には、その製品を手に入れたいという欲求を人々の間に喚起させなければ、いかに優れた製品であっても商品にはなり得ない」と述べている。

 記事によると、メレルは今後さらなるチャレンジを考えているようだ。
 <メレルはほぼシューズが中心。今後はウェアなどの販売にも力を入れ、全身でメレルを楽しんでもらいたい>とメーカーのコメントが掲載されている。ザ・ノースフェースなどの総合アウトドアブランドへの挑戦だ。
 筆者はザ・ノースフェースのファンでもあるのだが、同ブランドもなかなかビビッドなカラーのウェアも展開している。しかし、メレルとしては、「アウトドアブランドで“色”といえばメレル」という、トップ・オブ・マインド(第一想起)を獲得することが求められる。かつて、「カジュアルウェアで“色”といえばベネトン」というブランド想起がなされていたように。
 ちょうど前出の記事と同日の日経MJ3面コラム・「底流を読む」に、<山ガールにみる需要想起>という記事が掲載されている。<日本生産性本部の「レジャー白書2010」によると2009年の登山人口は前年比2.1倍に急増した。今年もさらに増えている。ブームの牽引車は「山ガール」>とある。そして、<野外キャンプのファッションに広がり、「川ガール」「海ガール」も増えている>とある。
 メレルのターゲット顧客層はどんどん拡大している。しかし、ライバルも多い。その心をどこまでつかむことができるか、同社の挑戦に注目したい。


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2010.08.19

ニーズギャップに愚直に応えよ!焼きそばJANJANのヒミツ

 大ヒット商品、エースコックのカップ焼きそば「JANJAN」が発売以来わずか半年で製品リニューアルをする。そこに隠されたワケとはなんだろうか?

 <2010年上半期のヒット商品がリニューアル発売!焼そばはモテる時代へ!味もカタチも新定番!!平成22年9月13日(月) 発売>(2010年8月18日・ PR TIMES)
 http://tinyurl.com/2addeoe

 世は夏祭り、盆踊りの季節である。地域の人々とともに踊るのもいいが、屋台も楽しみのひとつだ。金魚すくいや輪投げ、射的などの獲得系と双璧を為すのが食欲系。綿菓子、杏飴といったB級スイーツを楽しんだら、次はたこ焼きにしようか、お好み焼きか、はたまた焼きそばかと悩むところだ。
昨今のB級グルメブームでも人気の焼きそばを選択してみよう。パックに盛られた焼きそばを割りばしですくい取って食べるその時に、いつも去来する思いがないだろうか。「具が少ない…」と。
 具が少ない焼きそばは悲しい。かつてはタコがほとんど入っていないたこ焼きも見受けられたが、今日はなぜか「大ダコ入り」と看板を掲げた屋台が多く、本当にタコが大きいかどうかはともかく、スカはない程度には改善された。しかし、焼きそばは相変わらずだ。申し訳程度にキャベツかちらほら顔を見せる他は、目に鮮やかな紅しょうがのみ。もし、肉の切れ端が発見できたら、それは僥倖というものだ。それでも文句を言わないのは、屋台のおじさんがこわいから…だけではなく、「まぁ、屋台の焼きそばってこんなもんさ」という共通認識、お約束みたいなものが存在するからである。

 さて、話をエースコックのカップ焼きそば「JANJAN」に移そう。この商品の開発経緯とその特徴の詳細は、新発売時に分析を行った過去記事を参照いただきたい。
 <「若者の焼きそば離れ」対応?エースコックが成功したワケ!>(2010年4月23日)
 http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2010/04/post-91f2.html

 上記記事をサマリーすると、以下の通りだ。
 ・エースコックは10~20代のカップ焼きそばの食用率が低下しているという事実をつかんだ。
 ・その理由は、容器の形状に大きな問題があり、若年層には「持ち運びが面倒」「容器が大きくて食べにくい」パソコン操作などをしながらの「ながら食べ」ができないという不満があった。
 ・さらに、若年層の嗜好に合わせて、味付けソースを添付するだけでなく、麺の中にソースを練り込んで「濃い味付け」にするほか、歯に付くので抵抗があるという「青のり」をあえて「かやく」に加えず、代わりに黒こしょうのスパイスを添付した。
 ・結果として、若年層ユーザーの取り込みに成功し、「焼きそばUFO」「 一平ちゃん夜店の焼そば」「ペヤングソースやきそば」といった従来のトップブランドの一角に食い込む販売成績を記録している。

 さて、「JANJAN」の今回のリニューアルのポイントは何だろうか。ズバリ、「具の増量」だ。
リリースには<シャキシャキした食感の良いキャベツを20%増量し、程よく味付けした肉そぼろで仕上げました>とある。
 従来のカップ焼きそばは、内容量を増量し、最大で通常サイズの倍というメガ盛り商品を出したり、ソースに加えてマヨネーズを添付するなどのフレーバーのバリエーションを加えたりという差別化が主であった。
 実はエースコックという会社はメガ盛りのカップ麺のパイオニアでもある。1988年に大型カップ麺の先駆けとなった「スーパーカップ」を発売し、翌99年にはさらに大型化した「スーパーカップ1.5倍」を発売。若年層の定番メニューとしての地位を獲得した。さらに、2005年にはメガフードブームの火付け役の一つともなった「スーパーカップ2.0倍」を発売し話題を呼んだ。しかし、ことカップ焼きそばは「メガ盛り」に走ってはいない。なぜか。それは、「ターゲットのニーズはそこではないから」だ。

 昨今のカップ麺はノンフライ麺の使用や、具材の強化、有名ラーメン店とのコラボレーションなどによって、より本格的なラーメンに近づこうとする潮流がある。しかし、カップ焼きそばにおいてはあまり進化が見られなかったのが「JANJAN」がヒットした背景でもある。カップ焼きそばは、屋台の焼きそば同様に、「具が少ない」。非日常的シチュエーション、ハレの日である「祭り」の中で食べるならそれもまた善しであるが、ケの日、日常生活の中でのそれは、とても悲しい。
 今までそれでも特に文句を言う人がいなかったのは、屋台の焼きそば同様に、「カップ焼きそばの具なんて、こんなもんだろう」共通認識、お約束みたいなものが存在したからだ。メーカーと、カップ焼きそばの固定的なユーザーの間で。しかし、エースコックは若年層という新たなターゲットの取り込みを図ったのだ。そこに、共通認識やお約束はない。本格化するカップ麺と比較して見劣りする具材は、「JANJAN」の新規性に満足しているユーザーの間でも、やがて不満として噴出する可能性が高い。

 「具材のキャベツを20%増量しました」。
 一見、何ということはない、当たり前に思えるリニューアルは、エースコックが「カップ焼きそば離れをしている若年ユーザーを取り込む」ということに見出した商機を、そのユーザーを将来的にも安定的に囲い込むために検討した結果であるのだ。ユーザーのニーズギャップに応えた新商品を発売し、さらにその先のニーズギャップに先回りして応えるリニューアルを行う。
 マーケティングの基本は「まず、顧客を見る」ことである。その意味からもこの事例の意義は深い。


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2010.08.18

カロリーメイトの「イエローマン」の狙いは何だ?

 「健やかなる君よ~♪」と元気が出そうな、どこかで聞いたことのある歌声が応援のメッセージを送ってくれる大塚製薬・カロリーメイトのCM。共感者も多く、大評判である。

 <カロリーメイト テレビCM 健やかなる君へ(夏)篇>
 http://www.otsuka.co.jp/adv/cmt/index.html

 CMを印象的にしているのは、ここ数年キャラクターとして登場している「イエローマン」だ。衣装はカロリーメイトの商品パッケージと同じ真っ黄色に太めの黒いラインが印象的な上下セットのジャージ。1978年公開の映画「死亡遊戯」でブルース・リーが着用していたトラック・スーツと同じデザインなのは有名な話。それを着てイエローマンに扮するのは個性派俳優の荒川良々である。
 昨年までのCMではイエローマンが、瑛太や森山未來、香里奈らが食事を取り損なうシーンで、カロリーメイトを少し意地悪な様子で見せつける「そこは持っとかないと。篇」がシリーズで制作されていたが、「健やかなる君へ(夏)篇」では、ビジネスシーンで様々な不条理に翻弄される若手ビジネスマンを、イエローマンが優しく応援する。応援歌ともいえる「健やかなる君よ~♪」の歌声の主は近藤房之助。アニメ・ちびまる子ちゃんのテーマソング、おどるポンポコリンの「パッパパラリラ~」の人である。

 さて、そんな一連のカロリーメイトのCMには大塚製薬のどのような意図が込められているのだろうか。

 カロリーメイトの現状を知ることができる面白い調査が先頃発表された。インターネット調査のマイボイスコム株式会社による自主調査「バランス栄養食品(第3回)」である。
 http://www.myvoice.co.jp/biz/surveys/14402/index.html

 同様なテーマで各調査会社が自主調査を行っているが、各調査とも毎回、利用経験、利用意向の1位2位を占めるのは大塚製薬の2商品「カロリーメイト」と「ソイジョイ」である。今回のマイボイスコムの調査では、「1年以内で最もよく利用したバランス栄養食品」は、「カロリーメイト」が18.7%、「ソイジョイ」が15.9%とトップ2となっている。
 重要なのは、その集計には、「ここ1年では利用したことがない」が50.8%いることだ。利用者中で見れば、カロリーメイトとソイジョイを合わせればシェアは70%近くなり、「クープマンの目標値」で考えれば大塚製薬が絶対安定的な首位を占める「独占的市場シェア」を取っていることになる。

 未利用者が半数強いる。E.M.ロジャースの普及論で考えても利用者が半分ということは、各社のシェアを足し上げても、取り込めているのは革新的採用者(2.5%)、初期少数採用者(13.5%)、初期多数採用者(34%)までに留まっているのだ。最後に動き出す採用遅滞者(16%)はともかく、まだボリュームのある後期多数採用者(34%)の取り込みは必須である。

 調査の「バランス栄養食品の利用頻度」を見ると、もっと大塚製薬にとって重要な数字がある。「数ヶ月に1回程度」が31.5%を占め、週1回以上は各回答を合計しても17.1%に過ぎないのだ。
 「そこは持っとかないと。篇」で登場する、どちらかというと自分のせいで食事を摂り損なう人々と同じような失敗や、「健やかなる君へ(夏)篇」のような不条理にさらされることは、どれくらいの頻度であるだろうか。数ヶ月に1回だとすれば、とても幸せな人生を送っているといえるだろう。そして、ネット上に見る「健やかなる君へ(夏)篇」への共感コメントを見れば多くの人が同じような目に遭っていることがわかる。恐らく、その人々は同様に食事を摂り損なっているのだ。

 大塚製薬というのは不思議な会社だ。「自らの手で独創的な製品を創る」ことを企業理念の一つとしているが、そうして作り上げた製品を、「売れるまで売る」のである。カロリーメイトは1983年に発売されたが、「バランス栄養食品」というカテゴリーは大塚製薬が切り開いたものだ。主力商品の一つ、ポカリスェットの販売が軌道に乗るまで粘り強くサンプリングを繰り返したり、水分吸収に関する大規模な実証実験を行ったりしたことは有名だ。同社が非上場を貫くのは、その独自性を維持するためだとも言われている。
 「グラスに入っているワインを見て”ああ、もう半分しか残っていない”と嘆くのが悲観主義者。”おお、まだ半分も残っている”と喜ぶのが楽観主義者である」。 イギリスの劇作家、ジョージ・バーナード・ショー(George Bernard Shaw:1856~1950)の言葉だ。
 つまり、大塚製薬にとっては、「おお、まだバランス栄養食品を利用していない人が、まだ半分もいる」という市場環境であり、利用者もまだまだ、利用頻度を高める余地があるという状況なのだ。決して、半分取ったからもういいではないのだ。

 「ほ~ら、そんなシーンに出くわしたことがあるだろう?」と、イエローマンが「そこは持っとかないと。篇」で需要を喚起した。「健やかなる君へ(夏)篇」では、「意外な展開が仕事をドラマにする、かもだゼ!」とやさしいメッセージとともに、イエローマンがカロリーメイトを渡してくれるシーンを印象づけている。
  クライアントはいつもわがままで、上司の指示もいい加減。先輩たちは好き勝手なことばかり言うし、会社の方針もコロコロ変わる。そのしわ寄せはいつも自分の所に来るんだから・・・。
 まだまだ厳しい企業環境が続く中、そんなやるせない思いを抱えたビジネスパーソンは少なくない。そんな状況で、ぱっと頭に浮かぶ黄色いカラー、「バランス栄養食品」というカテゴリーで不動の地位、「Top of mind」を揺るぎないものにするのがCMに込められた意図だ。また、仮に、その時カロリーメイトが選択されなかったとしても、2位にはソイジョイが控えている。カテゴリー需要が伸びればトップシェアを持つ大塚製薬のチャンスとなるのである。


※関連参考記事:最も利用しているバランス栄養食品は?(Business Media 誠)
  http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1008/18/news012.html 

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2010.08.14

お知らせ:Kanamori Marketing Office Blogの仕様変更について

1.トップページの表示方式変更
2.各記事最下部へのTweetボタン(Twitter公式連動ボタン)設置

従来のトップページは過去10記事全文を表示する仕様としていましたが、過去20記事を各600文字表示し、続きを » Continue reading をクリックしていただく仕様としました。過去記事の一覧性を高めました。

niftyココログ標準仕様で各記事欄外にtマークのTwitter連動ボタンが設置されていますが、記事のURLがフルに表示され文字数を大量に使ってしまう問題があります。そこで、Twitter公式ボタンを設置しました。(7月以降の記事)
ボタンをクリックすると、別ウィンドが立ち上がり、記事タイトル+Blog名+短縮URLがテキストボックスに表示されます。(Twitter未ログインの場合はログインを求められます)。テキストボックスに入力し、Tweetをクリックすれば、Twitterのタイムラインに投稿が完了し、各ユーザーのHomeにも反映されます。よりスムーズに記事を引用したTweetを行うことができるようになりました。

変更後の使用感など、ご意見がございましたら、是非ともコメントお願い致します。

まだまだ使い勝手には問題もあるかと思いますが、今後もできる限り利便性を向上させて行きたいと考えております。
今後とも当Blogをご愛読いただけますようお願い致します。

 

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2010.08.13

ラジオ出演・コメント内容:特保飲料とゼロ飲料のまとめ

 昨夜、TBSラジオ「ニュース探求ラジオDig」に電話出演しました。
番組ホームページによると、『「Dig=掘る、探し当てること。ニュースを「掘る」番組です』とあり、『「知らせるニュース」から「一緒にわかるニュースへ」』がコンセプトのようです。

 さて、昨夜のテーマは「フードファディズム」。
 少々聞き慣れない言葉ですが、Wikipediaの記述によれば<フードファディズム(food faddism)とは、食べものや栄養が健康と病気に与える影響を過大に信じること、科学が立証した事実に関係なく何らかの食べものや栄養が与える影響を過大評価することである。ファドは、「のめり込む」という意味である。>とあります。

 番組ではスタジオゲストとして専門家であり、Wikipediaにも<日本に「フードファディズム」を紹介した最初期の人は、食品安全委員会リスクコミュニケーション専門調査会専門委員である群馬大学教授の高橋久仁子で、1998年頃のことだといわれている。>とある、高橋先生その人が出演されていました。
 で、私はといえば、そのテーマの導入部分として特定保健食品の話や、特保飲料、ゼロ系飲料の話題を食のトレンドとしてまとめ的に解説させていただきました。
以下、その内容を記述します。

<特保市場について>

「財団法人日本健康・栄養食品協会」が2年毎に市場規模の調査をしているが、特保市場の1997年の市場規模は1315億円。2009年は5494億円と約4倍の伸び。08年の経済危機の前年である07年は6798億円と約5倍であった。

<番組でのやりとり>

Q.「特保」認定の影響は実際どうなんでしょうか?
  トクホ(特別保健用食品)が飲料マーケットに与えた影響は大きい?

 飲料は手軽に摂取できることから、特保商品が多く存在します。
 2003年に花王から、通常の緑茶より多くの茶カテキンを含むため体脂肪を下げる効果があるという「ヘルシア緑茶」が発売されました。2006年には脂肪吸収を抑え、食後の中性脂肪の上昇を抑える効果を売りにしている、サントリーの「黒烏龍茶」が発売されました。
 大きなポイントとしては、2008年のいわゆる「メタボ検診」の法制化が挙げられます。それ以降、痩身効果に対する期待からその人気に拍車がかかって、多く人が飲用するようになりました。
 企業にとっても特保飲料は旨味のある商材です。通常の飲料は500mlで150円が相場ですが、特保飲料は350mlと少量でも高額なのが特徴です。ヘルシア緑茶は189円、黒烏龍茶は168円です。値段が高くても特保としての効果に期待する消費者の心理を突いた価格設定となっているといえるでしょう。


Q.他にも、「体に良いとされている」商品のマーケットはやはり盛況?
  炭酸飲料のゼロカロリー、ビールの糖質ゼロは有力商品に。業界はどう商品開発してきたか?
 
 カラダにいいという意味では、飲料では「ゼロ」ブームが顕著です。
 まず、従来の高カロリーなイメージを覆す、カロリーゼロの「ペプシ・ネックス」が2006年の春に発売され、翌年に「コカ・コーラ・ゼロ」が発売されました。その後、サイダーなどもゼロ化され、現在では各ブランドの主流はゼロに置き換わったといえるでしょう。
 飲料市場では2007年頃まで緑茶飲料が成長を続けていましたが、それを「ゼロ炭酸飲料」が奪った格好で、緑茶飲料の成長がマイナスに転じています。緑茶飲料を選択していた多くの消費者は、実は「お茶が好きだから」ではなく、「カロリーがないから」だったのです。 甘い味わいと炭酸の刺激が楽しめる炭酸飲料がカロリーゼロになったら、「そっちの方がいいや!」と多くの人がスイッチしたのだと思います。

 ビール系飲料の世界でもゼロは注目されています。
 元々ビールに比べて痛風などの原因となる「プリン体」が少ないという理由で、発泡酒や第3のビールを選択する人が多くいましたが、そうした人々から、各メーカーが開発した「糖質ゼロ」は高い支持を得ました。
 昨年4月に発売された「キリン・フリー」は完全にアルコールがゼロのノンアルコールビール飲料として大ヒットとなりました。さらにサントリーが糖質もカロリーも「ゼロ」を実現した「オールフリー」を開発。今月3日から発売を開始したところ、予想を大きく上回る消費者の熱狂的な人気で、わずか1週間後の10日には生産が追いつかずに9月上旬まで販売休止となる事態に陥りました。これは、まさにfood faddismの語源であるfad(のめり込む・流行)を表した現象だと思います。


Q.企業はイメージの良い商品をどう伸ばすか?
  イメージの悪い商品をどうやって良いイメージに転換させるか?

 悪いイメージを転換したというのであれば、まざに「太る原因」といわれていた炭酸飲料を、「太らない」=「ゼロ」にしたことが挙げられますが、さらにゼロ系飲料は次のステージに突入しています。
高い人気を誇る「ゼロ飲料」ですが、消費者からは飽和感が漂いはじめているのも事実です。そのため、「ゼロ」に「足し算」や「引き算」をした商品が発売されはじめました。
 コーラ飲料の「コカ・コーラ・ゼロフリー」は、糖分ゼロでカロリーゼロ、さらにカフェインもゼロにして、「就寝前のリラックスタイムに飲む大人のコーラ」を提案しています。カフェインまでなくしたら、もはやコーラではない気もしますが、徹底した「引き算」の発想です。
 一方、アサヒ飲料は新商品の「グリーンコーラ」を発売し、同じくカフェインゼロの「大人のコーラ」としての提案ですが、あえて味わいを高めるため、糖分を使用しています。「引き算」と「足し算」の発想です。さらに、キリンビバレッジは、大人向けとして「大人のキリンレモン」と「メッツ・ワイルドチャージ」を発売しました。どちらもカロリーゼロですが、それぞれカラダにいいアミノ酸といわれるオルニチンとアルギニンを加えた「足し算」の商品です。
 ゼロ系飲料も生き残りの時代に入ったのではないかと思います。その環境に中で、さらに伸ばしていくためには、消費者に向けた新たな提案が求められているのです。

 以上が私のコメントです。番組では、その後高橋先生から「食べても効かないコラーゲンの話」や「アミノ酸の話」「添加物の話」などが解説され、ニュースの深掘りがなされました。
 番組収録中の様子は、番組ホームページに掲載されています。
 こちら→ http://www.tbsradio.jp/dig/2010/08/post-287.html 

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セミナーを開催します:これからの広告人に必要な「広告ビジネス戦略」セミナー

書籍「広告ビジネス戦略」の出版記念を兼ねたセミナーを開催します。

 広告の基礎はわかっている。
 でも、「マーケティングの全体像の中における広告」を見失いがち。
 ・・・そんな広告人は実は少なくありません。実は私も前職で広告の仕事をしている時はそうでした。


 こんなお悩みはありませんか?

 ・マーケティング全般と、広告・販売促進・広報の関わり方がよく分からない。
 ・広告ありき・媒体ありき前提の提案では、もはや広告主に受け入れられない。
 ・広告表現を制作する場合の、「ターゲット・訴求ポイント」の抽出が上手く出来ない。
 ・キャンペーンを企画する場合の課題抽出や、課題に応じたコミュニケーションミックスが上手く出来ない。


 セミナーのポイント

 このセミナーでは「広告論」や「プランニング手法」よりも、「マーケティング戦略の中での広告」を中心としてレクチャーし、実際の広告表現が「どうしてそうなった?」のかという意図も明らかにしていきます。
 書籍「広告ビジネス戦略」で実際の広告主に取材を敢行した事例もご紹介します。

 ○広告表現の背景はどのような課題があり表現が開発されたのか?(広告表現事例)
  ・広告表現の背景には、どのようなマーケティング課題があり、その上でどのような理由から「ターゲットと訴求ポイント」が導かれて、広告表現が作成されたのか解説。
  -日本コカコーラ・あやたか
  -エースコック・はるさめヌードル

 ○このキャンペーンの背景にはどのような課題があり態度変容に沿ったキャンペーンが開発されたのか?(キャンペーン事例)
 ・態度変容の各プロセスの課題に応じて、どのようにコミュニケーションミックスし、広告キャンペーンを行ったのか解説。
  -ロッテ・フイッツ
  -再春館製薬所・ドモホルンリンクル


■開催日時:<参加しやすい土曜日開催です!!>
 2010/08/21(土) 13:30~17:30

■会場 :千代田区半蔵門 PE&HR社 hanzomon office(INSIGHT NOW!セミナールーム)
      http://www.insightnow.jp/blogs/id/52

■定員 :  20 人

 詳細とお申し込みはこちら → http://tinyurl.com/2algcsp 


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2010.08.12

巧妙!「蚊に効くカトリス」のCMに隠された罠!

 「こんなことでCMになるのかの、実験!」調子っぱずれの素人くさい歌声が耳から離れない「蚊に効くカトリス」のCM。しかし、その背後に隠された意図は、実験どころか精緻に練り上げられたものに違いないのだ。

 「蚊取り線香」に始まり、「殺虫剤キンチョール」、化学ぞうきん「サッサ」、使い捨てカイロ「どんと」などの数々の商品を世に送り出してきたのは「大日本除虫菊株式会社」。その名前が意外と知られていないのは、「金鳥(KINCHO)」のブランド名があまりに有名だからだろう。そして、その知名度はCMの効果によるところが大きい 1986年「タンスにゴン、亭主元気で留守がいい」、91年「ムシムシコロコロキンチョール」、92年「30日、30日イッポンポン、キンチョウリキッドイッポンポン」・・・。いくつもの大ヒットCMを世に送り出してきた。そして、今、ネット上でも大きな話題となっているのが「蚊に効くカトリス」のCMである。

 <蚊に効くカトリス「実験」篇>(CM動画:同社ホームページより)
 http://www.kincho.co.jp/cm/html/katorisu_jikken/index.html

 <「こんなことでCMになるのかの実験」と半ば自虐的な唄で、クスッとでも笑っていただけたら、こちらの狙い通りです>とホームページでCM制作のエピソードを伝えているが、ズバリ狙い通りTwitterでは「カトリス」のキーワードでいくつものツイートが」ヒットする。gooのBlog検索やkizashi.comの検索でも多数のBlogが話題として取り上げていることがわかる。口コミ効果バッチリ。

 インパクトのある歌声と歌詞が話題になりがちだが、それが思い出される時、同時にCMの映像も脳裏に浮かばないだろうか。「ドライアイスをかけてみました」というテロップに続き、煙がきれいに周囲に拡散していく、あの映像だ。ホームページでは<効きめが広がっていく様子をどうやったら視覚的に伝えられるか・・いろいろ試行錯誤した中で、ドライアイスをかけるのが最もわかりやすかったので、これを採用しました。カトリスは、煙もニオイもないけれど、ちゃんと効いていることがわかっていただけたでしょうか>と伝えている。まさに、それがこのCMで伝えたかったことなのだ。

 除虫剤の歴史をひもといてみれば、1890年(明治23年)に世界初の棒状蚊取り線香「棒状蚊取り線香」が発売された。その後、改良が加えられ、1902年に渦巻型蚊取り線香が発売された。1910年に「金鳥」の商標が登録され、以後、「金鳥蚊取り線香」が除虫剤の代名詞となった。
 長きにわたる王座の地位に挑戦者が現れたのが、1963年のこと。噴霧式殺虫剤トップシェアのフマキラーが、世界初の電気蚊取り器「ベープ」を世に送り出したのだ。化合物をマットにしみこませ電気で加温することで、蚊取り線香より高い効果と長い燃焼時間を実現した。しかし、それは当初全く売れなかった。「ベープマット」は安全性と、燃焼時間、煙が出ないという点において、蚊取り線香に対して明らかな優位性があったにもかかわらずだ。

 従来にない全く新しい商品、つまりイノベーションの普及要件として、E.M.ロジャースが「観察可能性」を挙げている。
 南米の農村において、ネズミによる被害をなくすために殺鼠剤の普及が行われた。毒入りの餌を食べたネズミは確実に死ぬ。しかし、殺鼠剤は村人の間では普及しなかった。理由は「効果が実感できなかったから」だ。殺鼠剤は遅効性の毒で、ネズミは毒入りの餌を食べた後、物陰や屋外に出てジワジワと死ぬ。即効性の毒なら、村人の目の前でのたうち回って死ぬだろうが、そのシーンを目にすることがないため、果たして効果があるのかを信じられなかったのだ。
 ベープの例も同じだ。当初、ベープは無臭で、加温しても外見の変化が全くなかった。一晩、蚊に刺されずにすんだ。部屋をつぶさに観察すれば、いく匹かの死んでいる蚊が見えるがそんなことをする人はいない。故に、ベープの効果が実感できなかったのだ。その後、ベープは加温した際に立ち上る臭いをつけ。そして、マットに青い色をつけ、使用後には燃えかすをイメージさせるような白い色になるようにしたのである。

 外出先で蚊の攻撃を避けようと思えば、虫除けスプレーを肌に撒布する方法が一般的だ。しかし、スプレーは汗で流れたり、擦れたりすると効果を失う。また、一日中持続するわけではない。また、どうしても、肌に塗って蚊を避けるだけだと、どうしてもディフェンシブ、消極的な防護策に感じられる。少なくとも、この世で蚊に刺されることが一番ぐらいに大嫌いな筆者にとっては。そこで、電池式でどこにでも持ち運べる携帯用の「カトリス」だ。薬剤を積極的に自分の周りに振りまいて、ほんの少しでも蚊に寄せ付けるスキを与えない。非常に攻撃的な防護策ではないか。しかし、カトリスは、「煙やニオイを出さずに蚊を退治できる」「よい意味で存在感のない蚊取り器」が商品コンセプトなのだ。CMの企画意図にあるように、「効きめの広がりがどうにも伝わりにくい」のである。だからといって、ベープのように虫除けの臭いを振りまいて歩き回るのをよしとする人は少ないはずだ。蚊嫌いの筆者だってイヤだ。
 そこで、「今回のCMでは、テレビをご覧の方にカトリスの効き目の広がりが視覚的に伝わるような企画を考えました」という意図が効いてくるのである。

 「実験!」といっている、その実験内容は、恐らく「どこまで口コミで広げられるか」だろう。印象的なCMソングの歌詞と歌声。映像はシンプルにして「効果の可視化」という伝えたいこと一点に絞り込む。そうすることによって、見る者のアタマにしっかりと刷り込むことができる。最後の調子っぱずれな「実験!」の声がアタマの中でループする度に、誰かに伝えずにはいられなくなる。 「実験!」は大成功だろう。ここでも筆者がその意図にはまっているわけなのだから。

 

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2010.08.10

次世代自販機は液晶テレビの夢を見るか?

 「顧客接点における“コミュニケーション”をコンセプトとした」。
 2010年8月10日、JR東日本のエキナカで約1万台の飲料自動販売機を運営するJR東日本ウォータービジネスの「次世代自販機の開発経緯および概要説明」の記者会見。社長の田村修氏はそう語った。

 JR東日本ウォータービジネスが運営する自販機の特徴は、複数の飲料メーカーの商品が混載され、「ブランドミックス」で販売されていることだ。街ナカの自販機は何らかの形で飲料メーカーの資本によって運営されているため、メーカーに偏った形での品揃えとなっている。資本関係がなく、飲料メーカーと対等であるため、顧客に近いJR東日本ウォータービジネスはユーザーニーズを吸い上げてメーカーに提案し、エキナカ限定のコラボ商品を過去に10商品以上、開発・販売している。
 さらに同社が近年、力を入れているのが自販機のSuica対応である。小銭がいらず、10秒足らずでスピーディーに飲料の購入ができるという顧客利便性を実現したことにより、現在、自販機利用者の43%がSuica支払いだという。
 エキナカ好立地という条件もあるが、街ナカ自販機が設置過剰と不景気の影響で軒並み売上げが低迷している中、同社は2006 年の会社設立から4 年で売上高を134%伸長させている。保有する自販機の台数はほとんど変わっていないのにである。つまり、顧客志向を追求し、利便性と提供価値を高めた結果であるといえる。

Front


 そんな同社の次の一手が「次世代自販機」である。
 「自販機イノベーション」を掲げる同社が、「顧客起点で自販機の変革に取り組み、お客さまとのコミュニケーションにより、ちょっとFUN(楽しく)でSPECIAL(特別な)なひとときをご提供します」をコンセプトに開発したという。

 通常の自販機は商品見本が窓に並び、その下に購入ボタンがあるという構造が普通だ。それに対して、次世代機は本体前面に47インチの大型液晶ディスプレイを搭載し、商品画像を表示。画像にタッチして商品を選択する。また、利用者が近くにいない時は液晶ディスプレイに広告等のコンテンツを表示できる。
 ディスプレイ以上の大きな特徴は、本体に上部に搭載されたセンサの存在だ。カメラで顔を認識し、利用者の属性(年代・性別)を判別ができるという。それによって、判別した属性別に適した商品のお勧めを行うことと、利用商品×属性をPOS情報として取得できる。従来型の自販機では、「どの自販機から何がどれくらい売れたか」はわかるものの、「誰(どんな人)が、何を買ったか」という、コンビニでは当たり前に取得している、いわゆるPOSデータが取れなかった。それから考えれば、後者は大きな進歩である。

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 次世代機のデザインはインダストリアルデザイナーの柴田文江氏が担当した。デザインコンセプトは「BoxからBoardへ」。飲料が収納された箱=冷蔵庫から頭脳を持ったディスプレイへという意図だという。実際には、裏側には商品や様々な機能が詰まった「箱」であるが、それらは本体背面に隠して操作系を前面に出し、フラットなデザインを実現した。
 
 記者会見後に、JR品川駅に設置された実機でのデモンストレーションが行われた。実機の動きを見ると、そのデザイン意図と、田村社長のいう「コミュニケーション」の意味がよく理解できる。

 液晶画面の表示は輝度が高く、画像も精密できれいだ。記者会見の説明通り、利用者が近くにいない時には、今の季節は涼しげな水の画像などが飲料の購入を誘う。広告スペース、デジタルサイネージとしての機能だ。
利用者が近づくと、商品一覧の「ストアモード」に切り替わり、センサが顔認識した属性に応じた商品にお勧めマークが表示される。デモンストレーターの20代女性にはジャスミンティーなど3商品が推奨された。40代男性の田村社長がデモを行った時には、缶コーヒーなどが推奨表示された。
 画像にタッチして商品を選択すると、画面に商品が大写しされ、確認が促される。現金の投入か、Suicaのタッチで購入が確定する。購入確定すると、自販機のキャラクターの表情などが映し出され、購入のお礼のメッセージなどが表示される。(写真:田村社長と決済後の表示)

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 購入前後の、何気ない一連の流れだが、筆者はそこに、従来になかった自販機との新たな関係性を見た。
 
 担当デザイナー・柴田文江氏のコンセプトは「BoxからBoardへ」であったが、確かに従来の自販機は駅のコンコースやホームに置いてあるだけの「箱」だった。ここのところ連日の猛暑で、存在感が増している気もするが、用のない時には視界にあっても意識もしない。それが、離れたところから魅力的な映像で誘いかけてくるのである。
 お勧め表示も面白い。近づいて認識された時点で、初めて表示されるのだ。自販機に限らず、様々な展示商品に「オススメ!」とか「大人気!」とかいうPOPが掲出されている例は多い。「何の根拠でオススメしてんだろう?」とか、「大人気ではなく、売る側の気持ちではないのか?」と思いつつも指名買いする意志がない時には参考にしてしまいがちだ。それが、自分が近づいて初めて、「自分へのオススメ」がなされると、その意義はさらに高まる。「顔認識の精度は性別94%、年代(+-10%)75%。複数人筐体前にいれば、一番近い人を感知する。完璧ではないので、お勧め表示は、ある程度当たり障りのないものにしている」(記者会見での説明)というが、もっと精度が高まって、そのロジックが利用者に認知・理解されれば、さらにお勧めを受容し有効に活用されることになるだろう。
 購入後のお礼表示だけは、キャラクターも含めてもう少し工夫の余地があるように感じる。それでも、従来が「ゴトン」と商品を落下させるだけか、「ありがとうございました」と少し電子的なトーンの女性の声が流れるだけの従来機より可能性を感じる。

 「顧客接点における“コミュニケーション”をコンセプトとした」という次世代自販機。
家庭の中でもBox=冷蔵庫に思い入れを持つ人はあまり多くないだろう。しかし、Board=頭脳を持ったディスプレイ=テレビなら思い入れを持って様々な操作ややりとりを行う。その意味で、次世代自販機は利用者とコミュニケーションを行う入り口に立つことができたといえるだろう。
 今日、テレビはデジタル化し、さらに高度なやりとりができるようになった。視聴者の意見や注文を運営者・メディアに個別に回答ことだってできる。そう考えると、次世代自販機は、もっともっと、かしこくなれる可能性だってかかえているのだ。さらなる進化に期待も高まる。


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2010.08.09

変わるチキンラーメン?日清の聖域なき「全麺革命」

 日清食品の創業者、安藤 百福(あんどう ももふく)が1958年に開発した、世界初の即席麺といえば、誰しも知る「チキンラーメン」である。Wikipediaの記述によれば、<チキンラーメンの発売により、それまでの「支那そば」「中華そば」にかわり、「ラーメン」という呼び名が全国的に広まった>とあるので、全てのラーメンの原点のような存在だ。そんな歴史あるロングセラー商品が大きな変貌を遂げようとしている気配がある。

 <「チキンラーメン」ブランドから初の太めん商品登場!>(7月28日日清食品ニュースリリース)
 http://tinyurl.com/27rynzc

 上記リリースによれば、同ブランドのカップ麺、から「チキンラーメン ビッグカップ 太めん」「チキンラーメンどんぶり 太めん」「焼チキンカップ 太めん」という新製品が8月9日(月)、つまり本日発売されるという。注目はその製品仕様である。<このたびの3品は、通常の「チキンラーメン」のめんに比べ、幅は約1.25倍、厚みは約1.35倍と、「チキンラーメン」のおいしさを残しながらも、これまでにない食べごたえが楽しめます>(同)とある。

 チキンラーメンの歴史を振り返ってみれば、これまでにも消費者ニーズに応えるべく、微に入り細をうがつような改良が加えられてきた。発売当初めんの形状は四角形だったが、その後どんぶりの形に合わせた円形に変更された。2003年からは、めんの塊の表面に、たまごを載せやすくするためのくぼみ 「たまごポケット」が付けられ、それがさらに、2008年から黄身は中央、白身はその周りのポケットに収まるように「"Wたまごポケット」へと進化した。丼を用意しなくとも食べられるようにと開発された、カップめんタイプの「チキンラーメンどんぶり」は1990年の登場だ。

 今回のチキンラーメンの改良は、オリジナルのチキンラーメンではなく派生商品であるとはいえ、極めて大きな変更を加えているのだ。ラーメンの麺とは、味・食感・のどごしなどの要素が絡み合って、その商品「らしさ」を構成している重要な要素である。それに手を加えるとは、極めて大きな決断であったことがうかがい知れる。

 その決断は、日清が昨年から断行している「全麺革命」の延長線上にあると考えられる。

 全麺革命とは、ブランド横断プロジェクトであり、「日清のどん兵衛」の改良などのほか、「日清麺職人」、「太麺堂々」といった新商品を生み出している。
 昨今の食のトレンドとしてつけ麺に始まり、「太麺」ブームが顕著だ。同社はそのニーズに対応することを考えたが、<中華めんはうどんと比べ、中華めん特有のコシを出す為に硬質な小麦粉を使用します。その為、湯戻りできる太いめんを製品化することが技術的に困難でした>とホームページに開発秘話が語られている。そのため、<製造工程のあらゆる条件を進化させ、その工程を組み合わせることで、ラーメンやうどんなど、さまざまなめんにふさわしい、それぞれの特徴を生み出すための技術革新>を行ったというのが、「全麺革命」の全容だ。

 ロングセラー商品は、一見、変わらずに売れ続けている商品であると思われがちだ。しかし、実際には時代や環境、消費者のニーズの変化に対応して変化をし続けることで生き残っているのである。
 例えば、菓子のポッキーは基本の「ポッキーチョコレート」だけでなく、ご当地ポッキーに至るまで、様々なバリエーションを展開している。コカ・コーラもクラッシックは変わらぬ味だが、現在では「ゼロ」の方がむしろ主流となっている。国民的大衆車であるカローラはその名前こそ継承されているが、1966年の登場以来10代のモデルチェンジを行いながら、様々な派生車種を生んでいる。

 時代の変化、消費者のニーズの変化をつかみ、それに応える技術が開発されれば、自社の歴史ある看板ブランドの商品でも、メスを入れるという「聖域なき改革」を日清は断行したのである。
 もちろん、ロングセラー商品として、変わることのない「こだわりポイント」を堅持している点も見逃せない。<めんは太くても3分で調理することができ、「すぐおいしい、すごくおいしい。」が特徴の「チキンラーメン」と同様にお楽しみいただけます>(同)とある。「すぐおいしい、すごくおいしい。」は、1984年にイラストレーターの南伸坊を起用したCMで用いられたキャッチコピー以来の、同商品の商品コンセプトとなっている言葉だ。こだわりのポイント、「らしさ」を失わないことも、ロングセラー商品として支持され続ける条件なのである。

 ちなみに、チキンラーメンの看板ともいうべき要素がもう一つ、先月変更されている。キャラクターの「ひよこちゃん」だ。
 チキンラーメンのキャラクターは、1965年から設定され、初代キャラクターとして、野球帽にそばかす顔の少年「ちびっこ」が描かれた。その後、1991年に2代目の「ひよこちゃん」にバトンタッチした。その「ひよこちゃん」が、つぶらな瞳になって、プロポーションもアタマでっかちな可愛さを増したイラストに改定されたのだ。昨今のキャラクターの流行を取り入れたためであると考えられる。
 ともすると、ロングセラー商品はファン層が商品の歴史とともに歳を取ってしまいがちだ。若いファン層へのアピールなど、細かなところまで神経を遣って行っている点にも、生き残りのヒミツが見て取れる。

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2010.08.06

バーガーキングはサブウェイのTwitter活用を学べ!

 2001年に日本市場から撤退したバーガーキングが、ロッテリアとリヴァンプの資本で再上陸して丸3年となる。現在の3倍にあたる100店舗に向けた出店を掲げる同社の課題を考えてみたい。

 日経MJ8月6日フードビジネス面に「100店めざし出店加速 バーガーキング 藤河社長に聞く」という記事が掲載された。3年の間は「立地や顧客のターゲティングなどの面でいい学習期間だった」(藤河社長)とし、今後は準備期間から100店攻勢に舵を切ると明言している。
 目標達成のためにはバーガーキングとしてのブランドと差別化ポイントをどう作っていくかが問われる。特に、ハンバーガー業界においてはシェア70%を握るマクドナルドが快進撃を続けている。一方、2009年12月31日にウェンディーズが日本市場から撤退し、全店舗を閉鎖するなど優勝劣敗が明確になっている。

 差別化ポイントでいえば、バーガーキングのハンバーガーの特徴はそのサイズにあった。「とてつもなく大きい」を意味する「ワッパー」という商品がメインだ。ビーフパテの直径は5インチ(約13センチ)・4オンス(約113グラム)。しかし、日本における近年のメガフードブームや、競合であるマクドナルドの「クォーターパウンダー」によってその優位性は失われている。クォーターパウンダー、つまりパテの重量は1/4ポンド=約113グラムと同じになっているのだ。故に、記事中で藤河社長は「それだけでは弱い」としている。
 同社は直火でパテを焼く「フレームグリル」という調理法による、香ばしくもジューシーに焼き上がった味と風味が最大の特徴だろう。筆者も実はその大ファンでもある。一口食べれば違いがわかる。しかし、意外と言葉や文章で使えることが難しい。サイズ以上にその味わいをいかに伝え、体験させるかが勝負となるだろう。

 一方、記事中にある藤河社長が勝負のしどころとして述べているのが、「ハブ イット ユア ウェイ(HAVE IT YOUR WAY)」というサービスだ。レタス、オニオン、ピクルス、ケチャップソースの増減量が無料でオーダーできる。その他、有料でトマトやチーズ、ベーコンやパテの追加・増量もできる。そのサービスが海外ではコアなファンをかかえるキモになっているというが、現在の日本では8%しか利用者がいないという。

 8%という数値が実はバーガーキングの今後の課題を如実に表しているといえるだろう。E.M.ロジャースのイノベーション普及論で考えれば、新しいものにすぐに飛びつくマニアな「イノベーター」層が市場には2.5%存在しているという。ファストフードに関しては筆者はこの層だ。イノベーターの後に、その新たなモノの価値を冷静に判断・評価して採用するのが「アーリーアダプター」という層だ。市場に12.5%存在する。つまり、現在バーガーキングがコアなファンとして囲い込めているのは、アーリーアダプターの半分までであり、その他は「浮動票」であるという状態にあるわけだ。アーリーアダプターをしっかり取り込めば、その後の一般大衆である「アーリーマジョリティー」が動き出す。いわゆる、そのキャズム(谷間)を超えられるかが100店に向けた課題なのだ。

 自分の好みに合わせてバーガーをカスタマイズできる「HAVE IT YOUR WAY」は、実はとても楽しく美味しい。筆者のオススメは「レタス・オニオン・ピクルス全部増量、ケチャップをあふれるほどたっぷり」である。しかし、奥ゆかしい日本人としては、無料の増量や、「ピクルス抜き」などの減量でも店員に手間をかけさせることを躊躇する人は多い。サービスの「認知度を上げるべくプロモーションを強化していく」と記事にあるが、そんなにカンタンなことではないだろう。

 ひとつ手本になると考えられるのか、サンドイッチの「サブウェイ」の展開だ。
 そもそもサブウェイは、基本のサンドイッチのメニューは決まっているものの、パンの種類から、野菜の増減量、トッピング、ドレッシングの種類までを手際よくオーダーしていくことが求められる。それだけでも大変なのに、「○○を増量してください!」とは、思っていてもなかなか言い出せないという声が多かった。

 そこで効果を挙げたのがTwitterだ。
 subwayjpというアカウントで、「野菜のサブウェイ:野菜ラボの中の人」が運営している。約1万4千人のフォロアーと様々なコミュニケーションやメニューの紹介をしつつ、初心者には「オーダーのしかた」を定期的にアップして利用を促しているのだ。具体的には以下の通り。

 <[再掲]サブウェイご利用のコツ♪サブウェイは野菜(オニオン、レタス、トマト、ピーマン、ピクルス、オリーブ)と追加調味料(塩コショウ、マヨネーズ、マスタード、ケチャップ、ハラペーニョ)の増量が無料です。野菜の注文場所まできたら、「野菜増量で(キリッ」とお声掛けを♪>

 筆者自身も実はオーダー時の気恥ずかしさから、サブウェイには足が向いていなかったのだが、「野菜増量で(キリッ」に動かされて、今ではすっかりファンになっている。

 現在、バーガーキングはTwitterの公式アカウントはなく、いくつかの店舗が独自で運営しているようだが、同社ユーザーとTwitterの親和性は低くない。2010年4月、ロッテリアの経営からリヴァンプが離れた際、いくつかのロッテリア店舗が居抜きでバーガーキングに変わった。そのひとつ、飯田橋店ではアルバイト店員がリニューアルオープンを事前にTwitterで告知し、開店時に40人が行列したという事例がある。

  <飯田橋に「バーガーキング」-オープン告知はツイッターで>(2010年4月19日市ヶ谷経済新聞)
 http://ichigaya.keizai.biz/headline/833/
 現在も飯田橋店のアカウントは1300人を超えるフォロアーを持って活況だが、公式アカウントの有効活用が望まれるところである。

 バーガーキングのメニューを見れば、ワッパーチーズとポテト、ドリンクのセットは810円。一方、マクドナルドのクォーターパウンダーチーズのセットは790円(地域別東京価格)だ。高価格帯メニューと比較すれば、価格的に劣後するわけではない。
 ハンバーガー業界に強大なコストリーダーの力で君臨するマクドナルド。そこから、少しでもシェアを切り取ろうとするならば、いかに差別化をし、そのポイントを顧客に伝えるかにかかっている。
 藤河社長は「日本マクドナルドを経てロッテリア執行役員を歴任したハンバーガーのプロ」と記事で紹介されている。胸中に秘策を持っているであろうことは間違いないが、まずはTwitterの活用を検討されたらいかがかと、バーガーキングとサブウェイ両方のファンとして考えた次第だ。

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2010.08.04

縮む未来を映す「松坂屋上野店のデパ地下」

 日経MJ8月4日版総合小売り面に、松坂屋上野店の生き残り戦略が紹介されていた。その記事から、これからの日本における商売の姿を少し拡大して考えてみよう。

 コラムのタイトルは「売る技術 光る戦略」。「松坂屋上野店、日常使いの食品売り場」「周辺住民向けに献立提案」というサブタイトルが目に付く。

 「献立提案」をしているのは、野菜ソムリエの資格を取得した同社の社員。「特別な日のごちそう」ではなく、その日に入荷した日常使いできる野菜を、「日々の献立に困る主婦」に対して手書きレシピのPOPや試食コーナー、アドバイスを通じて販売するという。
 その主婦とは店舗近隣在住の中高齢者であり、通常の販売形態では「食べきれない」という要望に対し野菜1本単位で販売する。魚なら切り身一切、総菜も通常の半分・50グラム単位だという。但し、価格は安くはない。百貨店らしい品揃え・品質を、顧客にピッタリな販売単位で、さらにメニュー提案や使い方のアドバイスとともに提供する。
 商品の品質と価値を、少し高めの価格で受容する近隣の中高年層をターゲットとして商売をしているというのが、松坂屋上野店のデパ地下の構図だ。

 記事によれば、同店、同売場の展開は、大丸松坂屋全体の戦略を実現したものであるらしい。<大丸松坂屋は昨年から画一的な店づくりを廃し、顧客や立地など個別の特性に対応することで生き残る先戦略に切り替えた>とある。そして記事は、<縮小の一途を辿る百貨店>のひとつの解であると結んでいる。

 「縮小の一途を辿る」のは、百貨店業界だけではない。日本市場のこれからを考えれば、人口の推移から容易に想像できる。
 日本の総人口は2004年12月の1億2783万8000人をピークに、今後加速度的に減少していく。実に30年毎に3分の2に減少していくのだ。筆者もうっかりするとあと30年くらい生きてしまうかもしれない。その時、人口が8000万人に減少した日本に住んでいるのだ。

 縮小する市場で「市場シェア」を占有する意義は低下する。一定シェアを維持できたとしても、パイ自体が縮小していくのだ。
 「目指すべくは、市場シェアよりも顧客シェア」と言われたのがCRM(Customer Relationship Management=顧客関係性管理)が注目された2000年頃であった。一人一人の顧客をいかに囲い込んで、その顧客のLTV(Life Time Value=生涯価値)を最大化する。反復利用を長期にわたって促して自社に落としてもらう金額をできるだけ多くすることが目標だ。10年が経過して市場縮小が明確になった今、改めてその概念の重要性を高まっているのである。

 顧客シェアを高めるためには、囲い込むべき顧客が「自分にピッタリ」と思ってロイヤルティーを高めてくれることが欠かせない。それがデパ地下であれば、自分にピッタリな分量の販売であり、日々の食事にピッタリな品揃えであり、そして、自分に対するアドバイスや提案なのだ。それを、松坂屋上野店のデパ地下は愚直に実行し始めたのだといえる。

 景気が回復しつつあるとはいえ、昨今の環境は「ハレの日」を謳歌するゆとりはなく、必死に日々「ケの日」を生きる暮らしである。その中でもゆとりがある層はといえば、今のところ年金がしっかり出ている現在の高齢者と、世代間格差の勝ち組年代ともいわれる中高年だ。記事では売場責任者が「安さを求めるなら、近隣に別のスーパーがある。うちの顧客は求めているものが違う」と言い切っている。ターゲットを絞り込んで、そのターゲット顧客にピッタリな提供価値とポジショニングを明確化しているのである。

 百貨店は「ハレの日」の象徴であった。特に高度成長期以来、「小売りの王様」の座に君臨し続けてきた。しかし、百貨店売上高は9兆7131億円を記録した91年をピークに減少に転じた。
 もはや「小売りの王様」が君臨する市場という領土は縮小の一途を辿る運命だ。広大な領土を維持する意味はない。必要なのは、小さくとも自らが生きていける、守るべき領土を明確にしてそこでの最適な商売を再構築することが欠かせない。それが、松坂屋上野店のデパ地下の姿なのである。
 もちろん、現在の中高年はしばらくするといなくなる。人の世の定めだ。その前に、次の「小さな領土」とそこでの「最適な商売のしかた」に柔軟に組み替えていくことも欠かせないのである。


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2010.08.03

売上げ2倍増・アセロラドリンクのヒットの裏にあるものは?

 「ニチレイ アセロラ」シリーズが売れている。サントリーのニュースリリースによれば、<年間販売計画を300万ケースから500万ケースに上方修正します>という。前年度の販売実績は237万ケース。実に2倍以上の伸長だ。そのヒミツは何だろうか。

 <「ニチレイ アセロラ」シリーズ販売好調 ― 年間販売計画を300万ケースから500万ケースに上方修正 ―>(8月3日サントリーニュースリリース)
 http://www.suntory.co.jp/news/2010/10835.html

 「♪たたたた太陽 前向きたいよう~ ビタビタしたら ミンミンするよ~♪」
 一度聞いたら耳に残って離れない歌。女優・仲里依紗とタレント・光浦靖子という組み合わせを中心に7人の女性が愉快な「アセロラ体操」を踊る大人気CM。商品のヒットに寄与しているのは間違いない。しかし、CMだけで売れるほど世の中甘くはない。大躍進のカギは何だったのだろうか。

 マーケティング的に見れば、CMはマーケティング・ミックス(4P)のPromotionだ。それ以外の要素を見てみよう。
 まずは4Pの一つ、Product(商品)。アセロラドリンクは「ニチレイ」のブランドが示すとおり、同グループのニチレイフーズが販売をしていた。それを2009年7月にアセロラ飲料事業からの撤退・事業譲渡し、12月よりサントリー食品が販売を開始した。
 サントリーに移管されたことを機に、製品の全面リニューアルと新商品がラインナップに加わることとなった。新商品の「ニチレイ アセロラリフレッシュ」は、低カロリーでゴクゴク飲めるスッキリ系飲料であり、飲料のトレンドに合った商品をサントリーとして上市させたことがわかる。加えて、既存の「ニチレイ アセロラドリンク」「ニチレイ アセロラビタミンC」もパッケージを一新させた。旧パッケージは赤に白抜きで、アルファベット表記の商品ロゴと、デザイン化されたアセロラのシルエットが記載されていた。それをカタカナ表記、アセロラは実物の果実と葉をイラスト表示している。オシャレなパッケージから、ある意味ベタなパッケージに変更したわけだ。

 売上げ伸張に寄与しているのは、サントリーのチャネル支配力にあるのは間違いない。4Pの一つPlace(販路)である。
 飲料はアセロラ以外に持っていなかったニチレイフーズに対して、サントリーはバッチリチャネルをおさえている。いくら商品を作ってCMを流しても、店に商品が並ばなければ消費者が手に取ることはできない。その点、サントリーなら販売店の棚をおさえる力がある。また、サントリーが全国に40万台強保有している自動販売機も強力なチャネルになる。

  4P最後のPであるPrice(価格)に変更はない。しかし、重要な変化がProductとプロモーションを見直してみるとわかる。

 
 ニチレイ時代のオシャレな旧パッケージは、裏面に「恋する国から」というコピーが記載されていた。さらに、「恋はしたい。愛はされたい。」「生まれつき美人なんていない。」など、「恋する格言」が全62パターン掲載されているという凝った作りであった。ニチレイ時代のWebサイト(現在はクローズ:flash動画がYoutubeにアップされている)も特徴的だ。「恋する国から」をテーマに、外国人の恋人二人をモノクロで表現するなど、オトナなトーンでまとめられている。ニチレイはターゲットをズバリ、若い女としていたことは間違いない。

 対して、サントリーはわかりやすさを前面に出したベタなパッケージに変更した。そしてCMは「アセロラ体操」だ。それもキャラクターとして起用している仲里依紗は20歳、光浦靖子は39歳。幅広い年代を狙っていることがわかる。 
 この手のCMは「まねされてナンボ」の側面が大きい。大ヒットしたガム、ロッテ・Fit’sの「フィッツダンス」の例でも明らかだ。同商品がYoutubeでダンスコンテストを展開し、大きな口コミ効果を挙げた例が有名だが、アセロラも自社サイトでユーザーの体操動画を募集。子どもから若者、職場の仲間と幅広い年代が参加している。メインターゲットの女性だけでなく、その子どもや友人・知人にまで飲用者が広がることを示唆しているといえるだろう。

 マーケティングはCMなどのPromotionの目立った部分だけがどうしても目に付く。そして、販売好調などのニュースと結びつけて考えてしまうことになる。しかし、CMだけでは商品は売れない。
 今回のアセロラドリンクは、サントリーに移管されたことを機に、ターゲットを拡大した。それに伴い、パッケージやCMを改定し、さらにサントリーならではの営業力販売店の棚をおさえ、自販機に商品を投入した。さらに、飲料事業者ならではの開発力で、トレンドにあった商品も開発し、追加発売した。その結果が、「対前年2倍以上」の成果となって現れているのである。

 「マーケティングとは何か」をひと言うと、「売れ続ける仕組み作り」という表現がよく用いられる。「売る」という行為ではなく、市場のトレンドなどの環境変化を捉え、適切なターゲットを設定し、4Pを最適に組み合わせて「仕組み」を作ることがマーケティングなのだ。
 サントリーによる「ニチレイ アセロラ」のヒットは、そのひとつの好例であるといえるだろう。

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2010.08.02

茨城-上海4000円は実現するか?春秋航空のビジネスモデル

 7月28日に茨城空港に就航した中国・上海の「春秋航空」が就航した。「茨城-上海間の運賃4000円」という航空運賃を発表し話題を呼んだが、来日した社長が発表を撤回しメディア各紙誌で取り上げられ、さらに話題を呼んでいる。現在の運賃は大手航空会社より1万円以上安いとはいえ、3万円台。今後、破格の価格が実現されることはあるのだろうか。そして、同社は日本市場で成功することができるのだろうか。

 春秋航空(しゅんじゅうこうくう)は2004年に発足した中華人民共和国で初めての民間資本系航空会社だ。格安航空会社(Law Cost Carrier=LCC)であり、中国国内の各都市を低廉な運賃で結ぶことを特徴としている。2009年7月、上海万博の開催を契機に中国政府民航局から国際線の運航免許を取得。今年7月に同社として発の国際路線である、上海(浦東)から茨城空港の間を9月末までの約2ヶ月の間、週3便程度のチャーター便の形態で運航。利用状況などを見極めて10月以降の定期便就航化を目指しているという。(Wikipediaの記述等を参考)

 同社の格安航空会社(以下、LCC)としてのビジネスモデルの特徴は、バリューチェーン(VC)分析を行うとよくわかる。
 航空会社の業務を分解すると、[調達]→[販売]→[運行]→[サービス]というになる。

 まず、調達は、使用機体はエアバスA320に統一されている。同社は同機を現在17機保有している。機体の統一は調達条件交渉において有利になることは容易に想像できる。また、路線によって機種を使い分けずに全路線での使い回しが可能となるため運行上の効率も高くなる。さらに、パイロットの採用・訓練も単一機を前提とすれば容易になる。同様に、機体のメンテナンスも単一機種ならではの効率化が図れるというメリットがある。

 チケットの販売はウェブサイトでの予約を中心として中間マージンの低減を図っている。さらに中国国内では、中国民航ネットワーク販売システムでのチケットを販売しておらず、自社系列上海春秋国際旅行社のネットワークの利用が前提となっている。また、基本的に変更、返金、欠航保障には応じていない。つまり、自社の収益を最大化し、機会損失を極小化する仕組みを構築していることがわかる。

 運行におけるカギは搭乗率だ。中国国内での平均は94~95%にものぼるといい、「茨城着が85%、上海着が80%と満足していない」と同社社長が第一便の状況に関してコメントを発表している。(日経MJ8月2日掲載)。
 つまり、機体にできるだけ多くの客席を作って、低廉な価格で客を集めて搭乗率を高め、高回転で機体を回していくという運行が基本となっているのだ。調達の項で述べた17機のA320を徹底して高回転で就航させる。キリギリの機体繰りによる遅延は日常的になっており、茨城から上海に向けた出発も1時間20分遅れたというが、「中国においては平均的レベル」と同社社長も問題視していないコメントを述べている。
 空港に支払うコストも徹底して削減を図っている。茨城空港への第一便到着時に、客がタラップを使っておりてくる映像がメディアで流されていた。同空港は出発ロビーと到着ロビーが同じ1階に設置されており、ボーディング・ブリッジは設置せず、タラップを使って搭乗する構造になっている。そのため、航空会社が空港に支払う空港使用料も低廉なものになる。茨城空港が選ばれた理由の一端はそこにもある。もっとも地方空港はそもそも利用料金は安く、特に就航会社獲得に必死だった茨城空港は料金交渉上有利だという同社の判断基準が最大の理由であることは間違いない。
 
 サービスは春秋空港の一番特徴的な部分であるといえるだろう。機内は全てエコノミーでファーストやビジネスといったクラスは設定されていない。また、エコノミーといっても、通常の航空会社よりシートピッチが狭く機内に180席を確保している。シートのリクライニングもないという。また、機内サービスは全て有料。それだけではなく、キャビンアテンダント(CA)は上空では「売り子」に早変わりする。食べ物や菓子、玩具、電化製品やファッション用品を市価より高額で延々と販売するという。それが中国国内ではいい勢いで売れているらしい。メディアでは、同社の乗務員1人あたりの人件費が日系航空会社の10分の1(操縦士は3分の1)であると報じられていたが、CAの給与は機内販売の歩合給が設定されているのだと推測できる。

 ひとことで言えば、春秋航空の成功はLCCの先輩である米国・サウスウェスト航空や、アイルランドのライアンエアーのバリューチェーンを自社に取り入れ、実現してきたことがカギである。では、同社が日本でも営業成績を伸ばし、さらなる高効率モデルを実現して「定期便就航」「4000円チケット」を実現するためには何が必要なのだろうか。

 格安航空会社・LCCは別名、「No Frills Airline」ともいう。つまり、frill=飾り、余分なもの、装飾的なものを排除した航空会社であるということだ。同社はバリューチェーン上で高効率化や機内販売などで収益を上げ、低価格による収益不足を補う仕組みを持っている。しかし、それは顧客から明示的に見える部分ではない。顧客からは「簡素化」だけが際立って見える。さらに、遅延リスクやキャンセルや予約変更不可の条件を飲み込む必要がある。
 正直なところ、ビジネス使用にはかなり厳しいのではないだろうか。だとすれば、同社の成功にはビジネス客ではない旅行客、しかも、旅という「ハレの日」においても、飛行機の使用は「単なる移動手段」と割り切る客層を確保することが欠かせない。

 同社の不利な点は、日本において本格的なLCCがまだ馴染みがないことだ。国内の進行航空会社もサービスの簡素化を図っているところもあるが、LCCのNo Frillsぶりは比ではない。故に、同社の課題は日本のユーザーにLCCとはなんたるかと、その収益構造の合理性を啓蒙し、顧客層を開拓することが欠かせないのである。
 メディアによれば、同社社長が4000円撤回について、定期便が認可後に座席の10%を片道4000円、それ以外に8000円、1万6000円、2万円と需要と時期で変動させるとコメントしている。前述の合理性が実現された成果として、明示的に4000円チケットは販売されるであろう。さらに、その料金の透明性もアピールする必要がある。
 春秋航空は4000円チケットをどのように用いるのか。そして、LCC市場を日本に根付かせることができるのか。その意味からしても、同社の動向と価格設定からは目が離せないといえるだろう。

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