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2010.07.20

キリン「氷結」に学ぶ定番商品生き残りのヒミツ

 日経MJ7月19日の一面記事。『キリン「氷結」10年目 原点回帰 AKB流+高機能勝負 かんきつ果汁にシフト』という記事が掲載された。その記事から定番商品が生き残るためのヒミツをひもといてみよう。

 記事にある「AKB流」とは<顔ぶれ(商品ラインナップ)を増やしつつ消費者の支持に従ってコア商品を入れ替え、ブランド力を蓄積していく手法は、人気グループ「AKB48」になぞらえられる>という、氷結の生き残りのヒミツを表した言葉だ。

 変わらないと思われがちな「定番商品」も次々と商品バリエーションを増やし生き残りを図っている。
 1971年に誕生したカップヌードルは、いわゆる「カップヌードル」といわれる味の他に、様々な味のバリエーションを展開している。1966年誕生のポッキーも基本の「ポッキーチョコレート」をはじめとして、ご当地ポッキーに至るまで、様々なバリエーションがある。食品だけではない。ポッキーと同じく1966年に発売された大衆車の代表格・カローラは、名前こそ継承されているが、登場以来10代のモデルチェンジと様々な派生車種を生み、原形を留めていない。辞書の広辞苑は1955年に初版が発行され、現在は第6版となっているが、版を重ねる毎に新語を取り込み刷新されている。
 つまり、定番商品が長い歴史を生き残ってきたのは、時代や環境の変化、消費者の嗜好の変化や消費者のニーズに応じて、様々な進化をしてきたからであるといえる。程度の差こそあれ、定番商品の生き残りには記事にある「AKB流」は必須であるということなのだ。

  成長戦略をパターン化した「アンゾフのマトリックス」には、既存の顧客を対象にするのか、新規の顧客を狙うのか、既存の製品を用いるのか、新製品を開発するのかという、顧客・製品、新規・既存の掛け合わせ4パターンがある。
 既存の顧客に従来製品の使用頻度を高めるのが「市場浸透」であり、最も手堅いとされている。しかし、実際には顧客の使用頻度を向上させるのは容易ではない。
 既存の顧客に新商品を提供するのが「新商品開発」だ。食品や飲料においては次々と新商品を上市してチャネルの棚を確保し、消費者の手に取らせる「新商品開発」が戦略の基本である。
 他には既存商品を新たな地域や属性の顧客に販売する「新市場開拓」と、商品も顧客も新規に挑戦する「多角化」がある。その2つに比べると新商品開発は格段に成功確率が高い。なぜなら、既存の顧客を相手にするため、ニーズの把握がしやすく勘所を働かせることができるからである。

 「氷結」のすばらしいところは、顧客とそのニーズの変化に徹底して機敏に対応していることだ。記事によれば、顧客層の志向がかんきつフレーバーにシフトしたことを察知して、13種のフレーバーのうち9種をかんきつ系で固めた。また、糖類を含まないゼロ系飲料の人気の高まりに対して「ZERO」を、不況期に入って強い酒が求められることに対応してアルコール度数8%の「ストロング」をすばやく上市した。つまり、フレーバーだけでなく、アルコール度数や糖分などの「機能」の軸を加えたということだ。
 「氷結」の展開の根底にあるものは、定番商品の生き残りパターンとして極めて当たり前なことでもある。しかし、その細部に至るまでの詳細な設計と、実行するスピードにある。そして、その判断基準として「顧客ニーズ」に徹底して沿っているのだ。

 ピーター・ドラッカーはマーケティングを以下のように定義している。
 「マーケティングの役割は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、おのずから売れるようにすることである。」
 ドラッガーの言う「販売」とは、とにかく闇雲にモノを作って売り込んだり、無理な安売りをしたり、無駄な広告を大量に投下したりという状態を表わしている。そんなことをするよりも、まずは顧客を知り、顧客の望むものを提供できるようにすればモノは売れていくのだという論である。

 定番とは、広辞苑には「流行に左右されず安定した需要のある商品」とある。しかし、黙っていても需要があるわけではない。その陰には需要を喚起するためのメーカーの必死の努力が存在するのである。発売以来10年を迎え、定番商品ともいえるポジションを獲得した「氷結」から、生き残りのヒミツを学ぶことができる。

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