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2010.07.14

ロッテリア「シェーキ専門店」は業界異例の展開?

 ロッテリアが銀座にシェーキ専門店をオープンした。マクドナルドは新型店舗への改装やチキンメニューの強化を開始。ケンタッキーフライドチキン(KFC)は「揚げないチキン」メニューを中心とした新型店の展開を始めた。しかし、ロッテリアは少々趣を異にする。その展開を少し深掘りしてみよう。

 ファストフードにおける注目すべき動きの1つが「チキン戦争勃発」ともいえるマクドナルドとKFCの戦いだ。もとよりチキンメニューの販売量では国内ファストフードの中でも首位だったマクドナルドが、「チキンといえばマクドナルド!」という、消費者の第一想起ブランドの地位を確立せんと仕掛けた戦いだ。迎え撃つKFCはヘルシーな揚げないグリルチキンメニューを開発して差別化を図っている。
 マクドナルドのおしゃれ感たっぷりな新型店舗がもう1つの注目ポイントだ。ゆったりした店内に、斬新でオシャレな什器が並ぶ。但し、100円メニューは存在せず、メニュー単価も既存店より最大50円アップ。デフレ不況下でも徐々に値上げしつつ、成長するというマクドナルドの真骨頂である。

 経済学者のイゴール・アンゾフは、企業の成長戦略を4つにパターン化した。いわゆる「アンゾフのマトリックス」である。既存の顧客を対象にするのか、新規の顧客を狙うのか。既存の製品を用いるのか、新製品を開発するのか。顧客・製品、新規・既存の掛け合わせの4つだ。
 既存の顧客に従来製品の使用頻度を高めるのが「市場浸透」。既存の顧客の満足度を高め、カフェの代替などによって利用頻度の増大を図るマクドナルド新型店の展開がそれにあたる。
 既存の顧客に新商品を提供するのが「新商品開発」。チキン戦争はそれに該当する。
 新たな地域や今まで取り込めていなかった属性の顧客に従来の商品を提供するのが「新市場開拓」。KFCの揚げないチキンは、カロリーを気にして敬遠しがちだった若い女性や中高年を取り込む効果もあるため、一部、この要素が該当するだろう。

 では、ロッテリアの「シェーキ専門店」はどうか。
 <『銀座 SHAKE PARADISE』が7月9日(金)に新規オープン!高品質でヘルシーな「ジェラートシェーキ」を各種発売!>(同社ニュースリリース)
 http://www.lotteria.jp/news_release/2010/news07050001.html

 以下、マーケティングミックスの4Pを見ていこう。製品(Product)は、ニュースリリースには<創業当時から継承されているさっぱりとしたミルク感豊かなシェーキをベースとして、さらにおいしく、高品質なデザートドリンクを開発。新しいデザート「ジェラートシェーキ」として販売いたします>とある。従来のシェーキは果汁シロップを使用しているが、それを果実や野菜のピューレに置き換えトッピングも施している。また、<ヒアルロン酸をトッピングしたサプリシェーキ"+Supple ヒアルロン酸 +α(+サプリメント ヒアルロン酸+α)">などの機能性成分を果汁やハチミツ、ローズヒップなどで飲みやすく調整したものまである。
 価格(Price)は360円~420円。従来のシェーキは210円なので、ざっと倍である。
 販売チャネル(Place)である店舗は単独店1店舗のみだ。銀座数寄屋橋交差点、不二家レストランの入っているビルの角である。元々、地下にロッテリア店舗があったが、入り口部分に看板が掲示されているだけの狭小なデッドスペースを活用している。そのため、テイクアウトのみで席はない。
 プロモーション(Promotion)は現在のところ、単独店舗での展開のためか広告などは特に行われておらず、ニュースリリースを取り上げたメディアの記事がネット上に散見される程度だ。

 では、このシェーキ専門の新業態店は誰をターゲットに、どのようなポジショニングを取っているのか。
「絶品バーガー」やパテ10段重ねで980円の「タワーバーガー」などの高価格帯メニューもあるものの、100円~150円の「やすいうまいメニュー」を積極的に展開するなど、ロッテリアはマクドナルドに対して低価格戦略・フォロアー路線である。また、ファストフードはその名の通り、日常のスキマ時間で手早く食事を取りたい人のニーズに対応するものだ。
 420円の<高品質でヘルシーなプレミアムシェーキ>を提供する新業態。ファストフード的な「日常」というよりは「ハレ」の銀座でのショッピングの合間などに、「美と健康にも貢献するスイーツ」というポジショニングで女性をターゲットとしていると考えられる。つまり、新商品を新たな顧客に提供するという、アンゾフのマトリックスにおける「多角化」の展開である。

 顧客層にも商品的にもとっかかりが少ない「多角化」はリスクの高い成長戦略だといえる。そこで成功するためには何らかの既存事業とシナジーが求められる。ロッテリアはどのような勝算を持っているのだろうか。

 最も単純なところでは、工場設備や原材料の共有である「生産シナジー」が考えられる。ニュースリリースに<創業当時から継承されているさっぱりとしたミルク感豊かなシェーキをベースとして>とあるとおり、従来のシェーキに果実や野菜、サプリ成分の調達というバリーチェーンの伸長をして、新型シェーキを作っている。
 技術特許やブランドの共有する「投資シナジー」も期待できる。「SHAKE PARADISE」という新ブランドではあるが、「ロッテリアの新事業」と認識されれば、従来のシェーキのブランド資産が活用でき、その高級路線であるというポジションが容易に築ける。
 人材や経営ノウハウの共有という「経営シナジー」もある。店舗運営のノウハウが活かせる。また、アルバイトの採用においては、単独採用ではなくロッテリア応募者を同店に回すというような効率化も図れるだろう。
 さらには、流通チャネルや物流網の共有という「販売シナジー」も期待できる。ロッテリアとの食材の共同配送や銀座店のような既存店のデッドスペースの活用なら、店舗費用も極端に軽減できる。

 こうして考えると、ロッテリアのシェーキ専門店の新展開は、既存事業とがっちりシナジーが期待できる手堅い展開であることがわかる。さらに高単価・高利益率の商品をスタンドのみで高回転率で販売するという旨味があるのだ。

 この新事業は、銀座のようなハレの需要を持ったターゲット女性層が存在するエリアで、さらに既存店舗と併存してシナジーが発揮しやすい立地を確保することがキモとなるだろう。その条件からすると、次は神宮前の交差点、ラフォーレ原宿の向かいにある店舗など条件に合致しそうな物件もある。ロッテリアの実は手堅い新事業は、まずは銀座での成功を手にして他エリアへも展開を順次狙っていると考えられる。

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Tracked on 2010.07.14 04:22 PM

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