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15 posts from July 2010

2010.07.28

牛丼戦争どこ吹く風・神戸らんぷ亭の「牛丼3兄弟」戦略

 果てしないチキンレース。もしくはノーガードの殴り合い。第3次牛丼戦争は、今回は吉野家が仕掛けた牛丼並110円下げの270円に対し、松屋70円下げの250円・すき家も30円下げの250円で応戦するという構図になった。そんな中、小規模牛丼チェーンを展開している「神戸らんぷ亭」は全く独自の展開で生き残りを図っている。

 神戸らんぷ亭は関東エリアで35店舗を運営する牛丼チェーンだ。同社は1993年にダイエーグループの一翼として設立され、95年にチェーン展開を開始した。以後の価格の変遷が実に興味深い。
 当初、牛丼並290円でスタートしたものの、自社としての適正価格を探りながら95年に当時の吉野家と同じ400円の価格に改定。その後、外食産業全体がデフレ景気による低価格競争に突入し、同社も外食デフレ戦争に参戦し、2001年に270円の価格を打ち出している。一方、牛丼業界の転機であるBSE問題勃発に際し、2004年に豪州産牛肉に切り替えながら、価格を350円に値上げ。さらに2008年にメキシコ産を加えて380円に再値上げをしている。(Wikipediaの記述を参考)

 このように見ると、特に近年は牛肉の産地の変更に対応して細かな価格コントロールを行っているように見える。 しかし、実は豪州産牛肉は米国産より一般に仕入れ値が安い。米国産にこだわる吉野家が苦境に立たされている原因としてはそれが大きいのだが、神戸らんぷ亭は米国から豪州に切り替えて値上げしている。つまり、値上げは仕入れ値の問題よりも、独自の価格維持戦略をとる同社のポリシーであると考えた方がいいだろう。
 
 2010年1月時点で松屋は全国776店舗。吉野家1176店舗に対し、現在の牛丼№1であるすき家は1381店舗を展開している。全く次元の違う牛丼3強チェーンと価格的に伍してして戦うには無理がある。圧倒的な規模の経済を活かした調達力、コストリーダーの座をかけた戦いに無理に参戦することは死を意味する。特にダイエーが2004年に産業再生機構の支援を受け、05年に神戸らんぷ亭はIT企業に事業譲渡されるに至り、購買力は極端に低下したことが推測できる。独自の生き残り施策を展開せざるを得ない状況になったわけだ。

 規模が小さいことは購買力には劣るものの、悪いことばかりではない。小回りがきくことは最大のメリットだ。
 同社は今年1月から「塩牛丼」をメニューに加えた。牛丼のバリエーションとしてはすき家の各種トッピングメニューが人気だ。しかし、それは従来の醤油だれベースの牛丼にあくまで具材を載せたに過ぎない。神戸らんぷ亭の塩牛丼はタレ自体が醤油だれではなく、塩だれなのだ。
さらに7月から「味噌牛丼」をメニューに加え、同社は「牛丼3兄弟」という名称でラインナップした。
 <ラーメンにあるのに牛丼はなかった味噌牛丼が日本初登場!! しょうゆ・塩・味噌と「牛丼3兄弟」が出揃う!!>(7月27日PR TIMES)
 http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000041.000000721.html

 味噌牛丼は今年3月に2店舗限定で販売したメニューが原型になっている。500円という価格にもかかわらず、多くの注文が相次いだといい、その好評を背景に同社はニュースリリース開発の背景を以下のように述べている。
<ラーメンにはしょうゆ・塩・味噌などバラエティに富んだ味が楽しめるにもかかわらず日本人にとても愛されてきた国民食である牛丼がしょうゆの1種類しかないというのはあまりに世の中のニーズに応えていないと考え、従来の既成概念を打ち破り商品開発に取り組んだ>とのことだ。

 神戸らんぷ亭のメニューは、牛丼以外にカツ丼があることが大手牛丼チェーンにない特徴だ。しかし、それ以外は、定食が「おろし牛皿定食」「ハンバーグ定食」「さば味噌定食」。カレーがポークと牛とハンバークの3種があるのみだ。
 牛丼戦争における吉野家苦戦の原因の一端はメニュー展開の乏しさにあるといわれている。その意味では神戸らんぷ亭のメニューも魅力的とは言い難い。しかし、調達力に劣後する状況で安易なメニュー拡大は収益の悪化を招くことになる。そこで、同社は牛丼の味付けのバリエーションという大手が手を出しにくい展開を考えたわけだ。

 塩牛丼、味噌牛丼は通常の牛丼とタレ自体が異なるため、全く別鍋で調理・サービスする必要が生じる。ギリギリに設計された厨房・調理器に追加設置するには調整が必要となる。また、厨房のオペレーションも複雑になり、マニュアルを修正し、スタッフへのトレーニングと徹底も欠かすことができない。それを800~1300店舗をかかえる牛丼3強のチェーンが模倣することはほぼ不可能である。

 同じ業界のプレイヤーであっても、次元の違う規模で展開している場合、間違っても同じ土俵で戦おうなどとは思ってはいけない。しかし、消費者からは同様の基準で評価されがちなのは確かだ。調達力において規模の経済が働かない神戸らんぷ亭の、価格とメニューにおける魅力不足を補う、「牛丼3兄弟戦略」は、小規模チェーンならではの小回りの聞く利点を活かした展開だ。
大手同士の戦いの足下で生き残る、大手ができない戦い方に知恵を絞る神戸らんぷ亭の戦略には学ぶところが大きいだろう。

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2010.07.27

「さよならラ王」・フレームワークで考える終焉と復活

 日清食品の生麺タイプのカップ麺「ラ王」が8月に販売を終了するという。その告知を巡ってWeb上では大きな反響を呼んでいる。

 「ありがとう、ラ王。さようなら、生タイプ。」
 日清食品が開設したラ王販売終了を伝える公式サイト( http://twi-tou.rao.jp/ :音が出ます)には「ラ王追湯(ツイートウ)式典 平成22年7月31日、開催。」と告知されている。
 モノクロ写真のバックには、ショパンの「別れの曲が」流れる。告別式などではおなじみの光景を商品写真で再現し、販売終了を悼む「追悼」と「追湯」をかけているのは明らかだ。だが、どのようなイベントなのかは全く明らかにされていない。

 そもそも、「ラ王」が販売終了にいたる背景を考えてみよう。
 ラ王が発売されたのは1992年。従来のカップ麺の概念を塗り替えるレトルトパウチされた生麺を用いた革命的な商品として注目された。本格麺の味わい。しかし、従来のカップ麺同様の手軽さと、日清食品社内基準であるのカップ麺の保存期限5ヶ月をクリアした驚異の商品である。以来18年間ファンの支持を得てきた。

 しかし、ラ王を取りまく環境の変化は昨今特に激しい。まず、マクロ環境をPEST分析で考えてみよう。
 P=Political(政治・規制の影響)は、2008年4月より始まった40歳~74歳までの公的医療保険加入者全員を対象とした保健制度、いわゆる「メタボ検診」が挙げられる。18年前にラ王の味に感激した22歳の新入社員も40歳だ。古くからのファンほどメタボ世代であり、高カロリーのカップ麺などから距離を置く食生活に変化し始める。
 E=Economical(経済環境の影響)はデフレ・不景気が大きいだろう。特にPB(プライベートブランド)全盛の今日、大手流通グループのPBカップ麺はスーパーなら98円。コンビニでも125円程度が相場だ。215円のラ王はどうしても割高感が否めない。
 S=Social(社会的な影響要因)は様々あるが、ひとつには昨今のブームが挙げられる。健康志向やメタボの反動的な動きとして、メガフードは2007年の「メガマック」の登場で一気にブームが加速し、今日ではすっかり社会的に定着した。カップ麺でもエースコックのスーパーカップが2005年以降、「超大盛り2.0倍」を発売するなど、大盛りがすっかり標準となっている。それに比べると、麺重量155グラムと生麺としてはラ王はボリューム不足が否めない。
 T=Technological(技術の進歩による影響)。特に昨今、カップ麺は麺の進化が著しい。インスタントの袋麺同様、健康志向の高まりを受けて、油で揚げない「ノンフライ麺」が開発され、それが生麺のような味とコシを実現した。さらに、各社とも麺に独自の形状の工夫を施して食感を高める競争を強化している。エースコックは「3D麺」。日清は「太麺」で勝負している。そんな中、「生麺タイプ」だというだけでは、もはやラ王が支持され続けることは難しくなっているのである。

 ラ王を巡る競争環境はどうなっているのか。3C分析で考えてみよう。
 PEST分析の結果通り、Customer(市場の環境・顧客のニーズ)は「デフレ不況、及びと健康志向の高まりと反動的なメガフードの定着」という環境の中で、「もう少しボリューム感があって、もう少し安くて、もっと美味しい麺のカップ麺が食べたい」というニーズを抱えた顧客が増えているという状況だ。
 Competitor(競合の動き)としては、生麺ではないものの、ノンフライの乾麺やメーカー独自の工夫をした麺が、従来にない食感を実現し、消費者のニーズにマッチし始めているという状況だ。しかも、本格的な味を追求する縦型カップではない、丼カップ型のタイプでも200円を超える商品はほとんど存在しないという、デフレ対応のプライシングが定着している。競合商品がバッチリと顧客のニーズをすくい取ってしまっている状況である。
 Company(自社)は、「ラ王」だけを考えれば、PEST分析の結果からCustomer、Competitorまでを見ても、既に競争力を失い陳腐化している感が否めないことがわかるだろう。

 日清食品は2009年にカップ麺のブランド横断で「全麺革命」というコンセプトで製品改良を行っている。例えば「麺職人」などは<「もう、インスタントとはいわせない。」生めんのような、豊かな風味と食感が自慢のノンフライどんぶり型カップめん。このたび、具材を充実し、さらにおいしくなりました。>(同社サイトより)というコンセプトを実現した。
 もはや「ラ王」は存在意義を失ったのである。ラ王がそのまま自社の製品ラインナップに存在することはカニバリ(共食い)をひき起こすことにもつながり、ブランドマネジメントの観点からも看過できないはずだ。
 しかし、従来の常識を覆す生麺を用いるという新発想で、カップ麺に革命をもたらし、本格的なラーメンを実現したその偉大な足跡は忘れることはできない。

 「わが生涯に一片の悔いなし」。
 1983年から88年に少年ジャンプに連載された大人気漫画「北斗の拳」。その登場人物である、同音異字の「ラオウ」の最後の言葉だ。ネット上では、ラ王の販売終了に際して「ラオウの最期」を多くの人が連想している。確かに、カップ麺の歴史に偉大な足跡を残した「ラ王」にも悔いはないかもしれない。

 しかし、せっかくここまで育てたブランドを、そう易々と日清食品が手放すとは思えない。よく見れば、「ラ王追湯式典」の告知サイトには、「さようなら、生タイプ」としっかり書いてある。恐らく、ラ王ブランドはそのままに、日清の全麺革命の技術で生み出された乾麺を用いて早々にリニューアルされることが予想される。

 7月31日の「追湯(ツイートウ)」も、明らかにミニブログ・Twitterの「Tweet(ツイート:書き込み)」の連想を狙っている。恐らく追悼しながら乾麺としての復活を告知するイベントになるのではないだろうか。
「新生ラ王」がいかにマクロ環境と競争環境に適応するのか、今から楽しみである。


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2010.07.26

手堅い?!モスの「ラー油バーガー」と「次の一手」を読み解く!

 業績好調のモスバーガー。ヒット商品に恵まれたことがその主因だが、実はそればかりではない。

 5月発表の株式会社モスフードサービスの決算短信を見ると、その好調さがよくわかる。グループ会社各社の努力もあるが、ともかく売上高こそ前年同期比-1%であるが、営業利益30.6%増、経常利益40.1%と大躍進だ。その業績押し上げに一役買ったのが、前期から好調の「とびきりハンバーグサンド」の第2弾、「トマト&レタス」である。前々期は「ハンバーグサンド」409万食、「チーズハンバーグサンド」329万食であったのに対し、前期「レタス」284万食、「トマト&レタス」482万食と人気にいささかの陰りもない様子がうかがえる。(櫻田社長によるIRプレゼン資料より)

 その「とびきりシリーズ」に勝るとも劣らぬ人気を誇る期間限定商品が今期誕生した。
 「テリー伊藤のざくざくラー油バーガー」だ。日本テレビの人気総合情報番組「スッキリ!!」とのコラボ商品の第2弾。前期は「激辛テリーヤキバーガー」を同じく期間限定で発売したが、販売実績は72万食と大ブレイクというほどのヒットにはならなかった。しかし、今期は折からの「食べるラー油ブーム」、桃屋の通称「桃ラー」、ヱスビーの「エスラー」の入手困難も手伝って<当初の100万食を大幅に上回り、最終的には210万食を売り上げる大ヒット>(同社ニュースリリース)になったという。
 桃屋、ヱスビーともに生産が間に合わない品薄が続く一方、ラー油ブームはコンビニや外食を巻き込んで、食べるラー油を利用したメニュー開発が盛んに行われるステージに移行している。モスもそこに目を付け、「ラー油バーガー」を販売再開するという。それも<今回、なんとか100万食分の食材を確保できましたので、個数限定ではございますが
再発売いたします>(同)とのことなので、断続的に売上げをじりじりと積み上げていくことができる状態であるわけだ。

 ヒット商品の一方で展開するモスの次なる一手は、意外と地味にも思える。地元の味を再現した、5つの“ご当地バーガー”を展開するというのである。
 <大ヒット“ラー油”に続くか!? モス“全国ご当地バーガー”の全ぼうが明らかに>(7月25日 東京ウォーカー)
 http://news.walkerplus.com/2010/0725/5/

 8月24日から発売される各エリアのメニューは、北海道・東北・新潟「ザンギバーガー」、関東・甲信・静岡「ポークソテーバーガー生姜風味」、中京・北陸・関西「イベリコ豚メンチカツバーガー」、中国・四国・九州「明太とり天バーガー」、沖縄「島野菜のピザドック ゴーヤ」「島野菜のピザドックトマト&コーン」である。
 ラー油バーガーではテリー伊藤と番組が製品コンセプトを櫻田社長にプレゼンするなど、派手な開発ステップも注目されたが、ご当地メニューは<各地域のフランチャイズ店舗スタッフと本部がアイデアを出し合い協力して作った>という手作り感たっぷりである。

 ご当地バーガーとラー油バーガーは何が違うのか。
「おなじみの地元メニューはバーガーになり得るのか?」と興味喚起する構造は、「中華食材のラー油がハンバーガーに合うのか?」という意外感を持たせて試したくなるポジショニングの演出と同様だ。
 では、ターゲットは誰なのか。大ブームのラー油とテレビコラボ。それに飛びつくのは、やはり流行に敏感な層であることは間違いない。しかし、販売再開に際しては、いわゆるイノベーターやアーリーアダプターは既に一度お試し済である可能性も高い。だとすれば、今後開拓できるのはマス的な流行を追う傾向が強い属性を持ったアーリーマジョリティー以降の「一般大衆」だ。流行敏感層には新発想の商品が必要だ。それが「ご当地バーガー」なのである。

 両商品において決定的に違うのは、バリューチェーン上の原材料の確保というプロセスだ。ラー油バーガーの販売再開は、ニュースリリースに<なんとか100万食分の食材を確保できました>とあるように、大ヒット商品であるだけに大量仕入れが欠かせない。ご当地メニューは各メニュー、各エリアで分散仕入れができるため食材品切れのリスクは少ない。
 広告・マーケティングというプロセスも全く違う。ラー油バーガーはタイアップ元のテレビというマスメディアを用い、さらにネットでの大規模な口コミを促進する必要があった。ご当地メニューは現地の店舗を核とした地道な告知、小規模な口コミが販売エリア内に広がれば事足りる。地元密着は元々モスバーガーの得意とするところである。

 モスバーガーでは「身近。ワクワク。笑顔。」をスローガンとして、特に地域メニューの開発に力を入れて3年目となっている。上記の通りバリューチェーン上の手堅さもあり、地域密着は同社の得意とするところであるが、リスク対応という意味でも優れた点がある。
 大ヒット商品を狙って満を持して準備をし、一発外したらダメージは大きい。その点、地域分散であればリスクは極小化できる。では、地域でブレイクしたらどうするのか。同社の地域メニュー展開3年目にして今年初めての試みがある。
 <各バーガーとも、それぞれのエリアでの限定発売という“レアもの”だが、8月19日(木)・20日(金)の両日は、モスバーガー「大崎カフェ店」(東京都)と、「四条河原町店」(京都市)にて、全メニューが食べられる先行発売が決定>(東京ウォーカー)だという。
 まずは、都市部で「お披露目」をしておき、地域で大ヒットすれば「地方発全国区」へと展開させる意図も見える。

 ハンバーガー業界の強大なリーダー企業である日本マクドナルドは米国式大型バーガー「クォーターパウンダー」や、そのバリエーションメニューである「ビッグアメリカ」を大ヒットさせ、この夏、業際を超えてケンタッキーフライドチキンにも「チキン戦争」を仕掛けた。
 モスバーガーはハンバーガー業界では第2位とはいえ、マクドナルドとは全く規模が異なる。あえてチャレンジャーするのではなく、ブームに乗りテレビとコラボして期間限定ヒット商品を作り、一方で地域密着の商品を作る。そのあるときは大胆にして、あるときは手堅いニッチな戦略には学ぶべきところが多い。

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書籍を出しました!:広告ビジネス戦略

広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ) (誠文堂新光社)

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 広告会社の営業マンやプランナー、広告主の担当者で、経験5年くらいの方を対象に書きました。
 もちろん、これから広告業界を目指す方や、広告業界の中堅以上の方にも是非ともオススメしたいと考えています。

 というのも、今までの広告関係の書籍というと、いわゆる「広告論」や「広告制作手法」を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思うからです。筆者である私自身、前職は広告の会社で約11年を過ごしましたが、日々の作業や社で受ける教育において「マーケティングの全体像」をともすれば忘れがちであったことが否めません。そこで、広告に関する書籍を執筆する機会を得て、「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめてみることにしました。

 今回の共著者である鈴木準氏(プロフィールはこちら)は前職の同僚であり、生粋の広告人。広告会社を数社。広告関連のほとんどの業務を経験して約30年にならんとするベテランです。その経験を活かして、広告論とプランニングの実際もしっかりとまとめてあります。

 さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。
 ・日本コカ・コーラ「綾鷹」の製品リニューアル戦略と広告表現
 ・エースコック「はるさめヌードル」のターゲット&ポジショニングの変遷と広告表現
 ・ロッテ「フィッツ」が若者に訴えかける”AIDMA”設計
 ・再春館「ドモホルンリンクル」の新規獲得&囲い込みの”AMTUL”設計

 多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

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2010.07.22

舘ひろし「本格<辛口麦>」が奪い取るもの

 「いつかはこの味にたどりつくと思っていた」。キリンの第3のビール「本格<辛口麦>」のキャッチコピーだ。たどりついた先にあるものは何だったのか。

 「本格<辛口麦>」のCMキャラクターは舘ひろしだ。
「キリンラガー」は菅原文太、江口洋介、黒谷友香。「一番搾り」はイチロー。「淡麗生」は佐藤浩市。「淡麗グリーンラベル」は嵐の大野智、相葉雅紀、松本潤。「コクの時間」は松たか子&原田芳雄。「のどごし生」は、「ぐっさん」こと山口智充。キリンビールのCMキャラクターを眺めるときら星の如き個性的なスターの名前が並ぶ。各々のタレントは各製品がターゲットに持ってもらいたいイメージを体現する存在として設定されている。だとすれば、「本格<辛口麦>」は舘ひろしでどのようなターゲットに、そのようなポジショニングを示そうとしているのだろうか。

 タレントからひもとく前に、同社のニュースリリースで見てみよう。
  <今まで新ジャンル市場になかった“本格辛口”という価値を持った商品><飲みごたえがありながらキレが実感できる、新しい価値を持った新商品>として5月26日に製品発表がされている。
 見逃せないのが開発の背景となる市場環境と顧客ニーズのとらえ方だ。<昨今の景気動向の影響を受けて新ジャンルカテゴリーは拡大を続けており、当社の調査によると、ビールと新ジャンルを併飲する方が増えています>とある。そして、ターゲットは<新ジャンル(第3のビール)ユーザー:特に40代から50代男性のミドル・ヘビーユーザー>であるという。

 昨今の景気低迷のあおりを受けて可処分所得、もしくは小遣いが圧迫されて、「晩酌はいつもビール」というわけにいかずに、安価な第3のビールを取り混ぜてローテーションを組むようになったお父さんたち。そんな彼らの切なるニーズは、「第3のビールでもビールらしい『飲みごたえがありながらキレが実感できる』商品が欲しい!」だ。
 第3のビールといえば、同社のヒット商品である「のどごし生」に代表されるような、苦みを抑えたのどごし重視の強いクセのないスッキリ滑らかな味だ。それは発泡酒の「淡麗生」の系譜でもある。

 では、そもそもの苦みを抑え甘みなどのクセを抑えた味わいのルーツはどこにあるかといえば、1988年にビール業界全体を巻き込んで勃発した「ドライ戦争」の産物である。前年に日本のビールの常識を変えた「キレのある辛口ビール」=「アサヒ スーパードライ」が発売され、市場を席巻。それに追随せんと各メーカーはこぞってキレ=ドライを訴求した商品を上市した。しかし、結局はスーパードライを超えるものはなく、アサヒ一人勝ちの時代へと突入していくことになる。

 一方で、スーパードライによって不動の1位を獲得したアサヒは、発泡酒や第3のビールが登場しても、同等の価値=キレを前面に出した商品を出せないというジレンマを抱え込むことになる。なぜなら、看板商品のスーパードライとカニバリ(共食い)を起こすことになるからだ。そこから、キレで負けたキリンの復讐劇が始まる。ビール首位の座を明け渡したキリンは「淡麗」や「のどごし」などのキーワードで「キレ」に相当する価値を訴求。市場全体におけるビールカテゴリーのシェア低下、第3のビール伸長の流れに乗ってビール系飲料全体におけるシェア巻き返しを図ったのである。

 つまり、今回の「本格<辛口麦>」は、第3のビールによるキリンのスーパードライ切り崩しの最終形であると考えられるのだ。

 一方で、アサヒビールのスーパードライにおける課題意識は、「ユーザーの若返り」にあるように思われる。もちろん、既存顧客の囲い込みも忘れてはいない。各種のスーパードライやビールグッズがもらえる”「うまい!をカタチに!」プロジェクト”を長期間展開しているのはその現れだ。一方で、この夏・銀座で話題のアサヒビールが運営する店、氷点下の温度帯(-2℃~0℃)のスーパードライを体感できる!「アサヒスーパードライ エクストラコールドBAR」は若者狙いである。キンキンに冷やして苦みを消し去り、昨今のビール離れをした若者に飲用習慣を付けようというものだ。

 若者対策はCMのキャラクターにも表れる。福山雅治。1969年生まれの41歳ながら、とても40代には見えない若々しさで若年層にも人気。一方で、大河ドラマ「龍馬伝」の好演で年代を問わない支持を集めている。つまり、従来ターゲットである中高年と、課題ターゲットである若者の両方にリーチすることを狙ったキャスティングなのだ。

 舘ひろしに話を戻そう。
 「スーパードライ」キラーとしての「本格<辛口麦>」だとすると、舘ひろしの果たす役割は何なのか。
 舘ひろしは1950年生まれ。今年還暦・60歳である。そんな彼がエネルギッシュにドラムを叩いて歌う姿は視聴者にどう映るのか。
 若年層にとっての舘ひろしは、2007年にドラマ「パパとムスメの7日間」で、女子高生の娘と心と体が入れ替わってしまったパパとしてオトメなしぐさを怪演。2009年「ダンディ・ダディ?〜恋愛小説家・伊崎龍之介〜」で娘の恋愛にヤキモキするパパを演じるなど、パパキャラのイメージが広がっているかもしれない。だとすれば、今回の姿は意外な感じかもしれない。しかし、若年層はあくまでターゲット外だ。
 ターゲットの40代にとっては、何といっても西部警察に始まり、柴田恭兵とのコンビ、鷹山敏樹巡査長役で定着したカッコイイ刑事のイメージだろう。スマート中年・福山雅治よりも、還暦・舘ひろしのドラマー姿に「アニキ、やるなぁ」と共感する層もあるだろう。
 50代となると少々別のイメージが想起されるようだ。俳優・岩城滉一とともに結成していた、原宿・表参道を拠点にした硬派バイクチームにして「クールス」の総括。矢沢永吉の当時のバンド「キャロル」の親衛隊であった。そのバイクチームから生まれたバンド「クールス」のリーダーとしてとしてデビューした。1975年のことだ。いつの世もやんちゃなキャラクターは強烈なファンとアンチを生む。40代以上に50代では、「相変わらずやるなぁ」と共感する層とそうでない層は分かれそうだ。

 「本格<辛口麦>」は第3のビールという、本来カテゴリー違いながら、「スーパードライ」の顧客を奪取しようというチャレンジャーである。チャレンジャーは力が勝るリーダーに対して正面から戦いを挑むのは得策ではない。リーダーのスキを突き、局地戦で戦うのだ。
 キリンはアサヒがスーパードライの若年層対策に乗り出すスキを突いて、本丸の中高年層を狙いに来た。そして、そこには経済的な理由から、「ビールと第3を併用する」層がいることを見抜いて同質化を図る商品として「本格<辛口麦>」を投入。CMキャラクターは万人受けするようになった福山雅治に対してアクの強い舘ひろしを起用。
 つまり、リーダーであるスーパードライの牙城である中高年ターゲット層の中から、商品の経済性とキャラクターへの共感の両方を評価する層を切り取る狙いで展開しているのだ。

 CMにはもう一つオマケのターゲットを奪取しようという意図が隠されている。舘ひろしが歌う「嵐を呼ぶ男2010」は、1957年に公開された石原裕次郎主演の映画であり、その主題歌だ。舘ひろしは石原プロ所属。現在の社長である渡哲也も1966年のリメイク版で主演していることから、舘ひろしが演じるのに不思議はないが、往年の裕次郎ファンには懐かしいことこの上ないだろう。ビール消費者層としてはメインから外れる年代ではあるものの、60代~70代の一部も取り込もうという意図が見える。

 チャレンジャーが生き残り、成功する条件はセグメント化が巧みであることだ。リーダーのスキを突き、勝てるところを見つけて小さく、細かく勝てるところを切り取っていく。
 果たして「本格<辛口麦>」が、舘ひろしがどこまでターゲットを切り取れるか。一方、スーパードライが、福山雅治がどこまで顧客層を守れるか。目が離せない。

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2010.07.20

キリン「氷結」に学ぶ定番商品生き残りのヒミツ

 日経MJ7月19日の一面記事。『キリン「氷結」10年目 原点回帰 AKB流+高機能勝負 かんきつ果汁にシフト』という記事が掲載された。その記事から定番商品が生き残るためのヒミツをひもといてみよう。

 記事にある「AKB流」とは<顔ぶれ(商品ラインナップ)を増やしつつ消費者の支持に従ってコア商品を入れ替え、ブランド力を蓄積していく手法は、人気グループ「AKB48」になぞらえられる>という、氷結の生き残りのヒミツを表した言葉だ。

 変わらないと思われがちな「定番商品」も次々と商品バリエーションを増やし生き残りを図っている。
 1971年に誕生したカップヌードルは、いわゆる「カップヌードル」といわれる味の他に、様々な味のバリエーションを展開している。1966年誕生のポッキーも基本の「ポッキーチョコレート」をはじめとして、ご当地ポッキーに至るまで、様々なバリエーションがある。食品だけではない。ポッキーと同じく1966年に発売された大衆車の代表格・カローラは、名前こそ継承されているが、登場以来10代のモデルチェンジと様々な派生車種を生み、原形を留めていない。辞書の広辞苑は1955年に初版が発行され、現在は第6版となっているが、版を重ねる毎に新語を取り込み刷新されている。
 つまり、定番商品が長い歴史を生き残ってきたのは、時代や環境の変化、消費者の嗜好の変化や消費者のニーズに応じて、様々な進化をしてきたからであるといえる。程度の差こそあれ、定番商品の生き残りには記事にある「AKB流」は必須であるということなのだ。

  成長戦略をパターン化した「アンゾフのマトリックス」には、既存の顧客を対象にするのか、新規の顧客を狙うのか、既存の製品を用いるのか、新製品を開発するのかという、顧客・製品、新規・既存の掛け合わせ4パターンがある。
 既存の顧客に従来製品の使用頻度を高めるのが「市場浸透」であり、最も手堅いとされている。しかし、実際には顧客の使用頻度を向上させるのは容易ではない。
 既存の顧客に新商品を提供するのが「新商品開発」だ。食品や飲料においては次々と新商品を上市してチャネルの棚を確保し、消費者の手に取らせる「新商品開発」が戦略の基本である。
 他には既存商品を新たな地域や属性の顧客に販売する「新市場開拓」と、商品も顧客も新規に挑戦する「多角化」がある。その2つに比べると新商品開発は格段に成功確率が高い。なぜなら、既存の顧客を相手にするため、ニーズの把握がしやすく勘所を働かせることができるからである。

 「氷結」のすばらしいところは、顧客とそのニーズの変化に徹底して機敏に対応していることだ。記事によれば、顧客層の志向がかんきつフレーバーにシフトしたことを察知して、13種のフレーバーのうち9種をかんきつ系で固めた。また、糖類を含まないゼロ系飲料の人気の高まりに対して「ZERO」を、不況期に入って強い酒が求められることに対応してアルコール度数8%の「ストロング」をすばやく上市した。つまり、フレーバーだけでなく、アルコール度数や糖分などの「機能」の軸を加えたということだ。
 「氷結」の展開の根底にあるものは、定番商品の生き残りパターンとして極めて当たり前なことでもある。しかし、その細部に至るまでの詳細な設計と、実行するスピードにある。そして、その判断基準として「顧客ニーズ」に徹底して沿っているのだ。

 ピーター・ドラッカーはマーケティングを以下のように定義している。
 「マーケティングの役割は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、おのずから売れるようにすることである。」
 ドラッガーの言う「販売」とは、とにかく闇雲にモノを作って売り込んだり、無理な安売りをしたり、無駄な広告を大量に投下したりという状態を表わしている。そんなことをするよりも、まずは顧客を知り、顧客の望むものを提供できるようにすればモノは売れていくのだという論である。

 定番とは、広辞苑には「流行に左右されず安定した需要のある商品」とある。しかし、黙っていても需要があるわけではない。その陰には需要を喚起するためのメーカーの必死の努力が存在するのである。発売以来10年を迎え、定番商品ともいえるポジションを獲得した「氷結」から、生き残りのヒミツを学ぶことができる。

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2010.07.16

チキン戦争勃発!勝つのはマックかケンタか?

※この記事は15日(木)にニッポン放送 『上柳昌彦・ごごばん!「知ったかファイル」』のコーナーに出演した内容を元に、以下の過去記事を再構成しています。
 6月22日 全くスキなし!チキン覇権を狙うマクドナルドの精緻な展開!
 7月5日 「揚げないチキン」のKFCの深謀遠慮?

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 7月8日、渋谷の公園通りにケンタッキーフライドチキンの次世代店舗がオープン。すぐ隣にはマクドナルドの次世代店舗があり、7月2日からマクドナルドではチキンの新メニューの販売が始まっている。「チキン戦争」の象徴的な光景だ。

 ケンタッキーフライドチキンの意図は明確だ。同社は今年日本上陸40周年。それを機に「オーブンローストチキン」というノンフライのメニューを開始した。特別な調理器を使うため、まだ渋谷公園通りの「次世代店舗第一号店」のみだが年内に100店を展開するという意気込みを見せている。
 もう一方のマクドナルド。パリパリした薄い衣が特徴の「チキンバーガー ソルト&レモン」を発売。こちらは従来のフライ系だが、 ソースに凝ってさっぱりした味わいに仕上げた自信作となっている。サイドメニューも従来のナゲットに加えて肉感を高めたジューシーチキンを発売して充実させた。

 そもそも、チキンメニューはBSE問題以来の牛肉離れや、世の低価格志向、健康志向に後押しされてここ数年、人気の高まりを見せている。低価格でボリュームが得られて、かつ、肉としてはローカロリーだからだ。ファミリーマートの「ファミチキ」に代表されるように、コンビニ各社は店内調理メニューとしてチキンを強化している。牛丼のなか卯もサイドメニューとして鳥の唐揚げを発売している。他にもオリジン弁当から揚げ激安の日を設定したり、ほっかほっか亭が唐揚げ弁当の値引きをしたりという動きが見られる。

 そんな「チキン」をめぐる戦場の中で、実はマクドナルドは日本の「チキン販売量第1位」なのだ。そのシェア16.3%。しかし、日本マクドナルドの原田社長は<チキン市場3950億円のうち、マクドナルドは640億円。すでに16.3%のトップシェアを持っているが、まだマクドナルド=チキンという認知がされていない>(J-CASTニュース6月20日)と製品発表会で述べている。つまり、今回の新製品で「チキンを食べたい」と思ったらまず、「マクドナルド」を思い出すというTop of mind(第一想起)のポジションを獲得するのが狙いなのだ。
 クープマンの目標値で考えればマクドナルドの現在の16%強というシェアは、多数のプレイヤーがひしめき合っていて、いずれも安定的なシェアを占めることができていない状態を示している。そこから頭一つ抜け出した市場ポジションである「市場影響シェア」=26.1%を獲得しようというという意図が伺える。

 記者会見では原田社長が<「チキン市場3950億円のうち、マクドナルドは640億円」>と言っている。そこから10%押し上げるとすれば、メニュー平均単価300円とすれば、チキンメニュー約1億3000万食を販売することになる。そのシナリオの切り札が、「試食キャンペーン」だ。
 同社は発売1ヶ月前の6月4日から、「チキン宣言!おいしさ実感1000万人のお試しキャンペーン」を展開している。各種の新メニューを一口サイズのお試しで手を提供。7月には実施店舗限定ながら商品を丸々配布するTwitterとUSTREAM連動イベントを展開する。大人気になった限定メニュー・ビッグアメリカもTwitterで大きな盛り上がりを見せたが、さらにそれを上回る話題作りを狙っていることがわかる。

 マクドナルドの本気さがよくわかる展開ではあるが、迎え撃つケンタッキーは大丈夫なのだろうか。「ケンタ逃げてー」という感じだが、逃げ切るにはまず、ターゲットの棲み分けが重要だ。
 「オーブンローストチキン」を扱うケンタッキーの次世代店は「主として若い女性をターゲットとしている」と同社はニュースリリースで述べている。では、マクドナルドは誰をターゲットとしているのだろうか。そのヒントはCMにある。
 キャラクターには笑福亭鶴瓶を起用した。CMは3種あるが特に「初恋編」に注目だ。鶴瓶が制服姿の女子高生グループとともに足湯に浸かりながら恋の話をしている。鶴瓶は1951年の59歳。還暦一歩手前だ。その世代から10代までという幅広いターゲット設定をしていると考えられる。

 ケンタッキーは若い女性にターゲットを絞ることによって、全面対決を避けることはできそうだ。そもそも、圧倒的な力を持つリーダー企業に対して同じ土俵で戦うことは絶対に避けるべきなのだ。マクドナルドは昨今合理化のために400店規模の店舗整理を実施しているが、それでも3000店の規模を誇る。対するケンタッキーは1200店に満たない規模だ。
 この戦いは、コスト・リーダーシップ戦略対、差別化戦略が基本となるはずだ。ケンタッキーはメインターゲットである女性層をがっちりつかんで、従来と異なる「揚げない」ヘルシーなチキンメニューでマクドナルドとの差別化を図って、そのポジションを確たるものにすることが重要だ。

 この「チキン戦争」に勝利するためには、攻める側も守る側もチキン(臆病)にならずに、大胆な戦略を展開することが求められるのは間違いない。消費者としては次々と繰り出される打ち手を楽しんで市場の活性化に貢献すればいいと思う。チキンをかじりながら。

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2010.07.14

ロッテリア「シェーキ専門店」は業界異例の展開?

 ロッテリアが銀座にシェーキ専門店をオープンした。マクドナルドは新型店舗への改装やチキンメニューの強化を開始。ケンタッキーフライドチキン(KFC)は「揚げないチキン」メニューを中心とした新型店の展開を始めた。しかし、ロッテリアは少々趣を異にする。その展開を少し深掘りしてみよう。

 ファストフードにおける注目すべき動きの1つが「チキン戦争勃発」ともいえるマクドナルドとKFCの戦いだ。もとよりチキンメニューの販売量では国内ファストフードの中でも首位だったマクドナルドが、「チキンといえばマクドナルド!」という、消費者の第一想起ブランドの地位を確立せんと仕掛けた戦いだ。迎え撃つKFCはヘルシーな揚げないグリルチキンメニューを開発して差別化を図っている。
 マクドナルドのおしゃれ感たっぷりな新型店舗がもう1つの注目ポイントだ。ゆったりした店内に、斬新でオシャレな什器が並ぶ。但し、100円メニューは存在せず、メニュー単価も既存店より最大50円アップ。デフレ不況下でも徐々に値上げしつつ、成長するというマクドナルドの真骨頂である。

 経済学者のイゴール・アンゾフは、企業の成長戦略を4つにパターン化した。いわゆる「アンゾフのマトリックス」である。既存の顧客を対象にするのか、新規の顧客を狙うのか。既存の製品を用いるのか、新製品を開発するのか。顧客・製品、新規・既存の掛け合わせの4つだ。
 既存の顧客に従来製品の使用頻度を高めるのが「市場浸透」。既存の顧客の満足度を高め、カフェの代替などによって利用頻度の増大を図るマクドナルド新型店の展開がそれにあたる。
 既存の顧客に新商品を提供するのが「新商品開発」。チキン戦争はそれに該当する。
 新たな地域や今まで取り込めていなかった属性の顧客に従来の商品を提供するのが「新市場開拓」。KFCの揚げないチキンは、カロリーを気にして敬遠しがちだった若い女性や中高年を取り込む効果もあるため、一部、この要素が該当するだろう。

 では、ロッテリアの「シェーキ専門店」はどうか。
 <『銀座 SHAKE PARADISE』が7月9日(金)に新規オープン!高品質でヘルシーな「ジェラートシェーキ」を各種発売!>(同社ニュースリリース)
 http://www.lotteria.jp/news_release/2010/news07050001.html

 以下、マーケティングミックスの4Pを見ていこう。製品(Product)は、ニュースリリースには<創業当時から継承されているさっぱりとしたミルク感豊かなシェーキをベースとして、さらにおいしく、高品質なデザートドリンクを開発。新しいデザート「ジェラートシェーキ」として販売いたします>とある。従来のシェーキは果汁シロップを使用しているが、それを果実や野菜のピューレに置き換えトッピングも施している。また、<ヒアルロン酸をトッピングしたサプリシェーキ"+Supple ヒアルロン酸 +α(+サプリメント ヒアルロン酸+α)">などの機能性成分を果汁やハチミツ、ローズヒップなどで飲みやすく調整したものまである。
 価格(Price)は360円~420円。従来のシェーキは210円なので、ざっと倍である。
 販売チャネル(Place)である店舗は単独店1店舗のみだ。銀座数寄屋橋交差点、不二家レストランの入っているビルの角である。元々、地下にロッテリア店舗があったが、入り口部分に看板が掲示されているだけの狭小なデッドスペースを活用している。そのため、テイクアウトのみで席はない。
 プロモーション(Promotion)は現在のところ、単独店舗での展開のためか広告などは特に行われておらず、ニュースリリースを取り上げたメディアの記事がネット上に散見される程度だ。

 では、このシェーキ専門の新業態店は誰をターゲットに、どのようなポジショニングを取っているのか。
「絶品バーガー」やパテ10段重ねで980円の「タワーバーガー」などの高価格帯メニューもあるものの、100円~150円の「やすいうまいメニュー」を積極的に展開するなど、ロッテリアはマクドナルドに対して低価格戦略・フォロアー路線である。また、ファストフードはその名の通り、日常のスキマ時間で手早く食事を取りたい人のニーズに対応するものだ。
 420円の<高品質でヘルシーなプレミアムシェーキ>を提供する新業態。ファストフード的な「日常」というよりは「ハレ」の銀座でのショッピングの合間などに、「美と健康にも貢献するスイーツ」というポジショニングで女性をターゲットとしていると考えられる。つまり、新商品を新たな顧客に提供するという、アンゾフのマトリックスにおける「多角化」の展開である。

 顧客層にも商品的にもとっかかりが少ない「多角化」はリスクの高い成長戦略だといえる。そこで成功するためには何らかの既存事業とシナジーが求められる。ロッテリアはどのような勝算を持っているのだろうか。

 最も単純なところでは、工場設備や原材料の共有である「生産シナジー」が考えられる。ニュースリリースに<創業当時から継承されているさっぱりとしたミルク感豊かなシェーキをベースとして>とあるとおり、従来のシェーキに果実や野菜、サプリ成分の調達というバリーチェーンの伸長をして、新型シェーキを作っている。
 技術特許やブランドの共有する「投資シナジー」も期待できる。「SHAKE PARADISE」という新ブランドではあるが、「ロッテリアの新事業」と認識されれば、従来のシェーキのブランド資産が活用でき、その高級路線であるというポジションが容易に築ける。
 人材や経営ノウハウの共有という「経営シナジー」もある。店舗運営のノウハウが活かせる。また、アルバイトの採用においては、単独採用ではなくロッテリア応募者を同店に回すというような効率化も図れるだろう。
 さらには、流通チャネルや物流網の共有という「販売シナジー」も期待できる。ロッテリアとの食材の共同配送や銀座店のような既存店のデッドスペースの活用なら、店舗費用も極端に軽減できる。

 こうして考えると、ロッテリアのシェーキ専門店の新展開は、既存事業とがっちりシナジーが期待できる手堅い展開であることがわかる。さらに高単価・高利益率の商品をスタンドのみで高回転率で販売するという旨味があるのだ。

 この新事業は、銀座のようなハレの需要を持ったターゲット女性層が存在するエリアで、さらに既存店舗と併存してシナジーが発揮しやすい立地を確保することがキモとなるだろう。その条件からすると、次は神宮前の交差点、ラフォーレ原宿の向かいにある店舗など条件に合致しそうな物件もある。ロッテリアの実は手堅い新事業は、まずは銀座での成功を手にして他エリアへも展開を順次狙っていると考えられる。

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2010.07.13

世界初!機内生ビール1000円は、安いか・高いか?

 ANAが世界で初めて機内で注ぐ「樽生ビール」の提供を7月20日より開始する。通常のビールディスペンサーは、高圧ガスの炭酸ガスボンベを使用するため機内に持ち込みができないが、今回は電機メーカーとの共同開発で航空機内用が実現できたという。そのエポックメイキングなマシンで客室乗務員が手ずから注いでくれる生ビールの価格は1000円。果たしてそれを安いと見るべきか、高いと見るべきか。

 <ANAが世界初、機内で注ぐ「樽生ビール」の提供を開始します>(7月13日News2u.net)
  http://www.news2u.net/releases/71981

 たかが1000円。されど、1000円だ。デフレ価格に慣れきった感覚では4桁は随分と高額に感じてしまうのが否めない。
 「今日は頑張ったから、エビスにしちゃおうかな!」と家飲み用に買うプレミアムビールは1缶244円。 飲み会でも、「ちょっとリーズナブルな“わたみん家”にしておこうか」ということになれば、スーパードライの中ジョッキが399円だ。・・・やはり、されど1000円?

 価格設定(プライシング)には3Cの視点が欠かせない。Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)である。製造や流通コストがいくらぐらいかかって、それに幾ら利益を乗せようか・・・という自社の事情、「原価志向の価格設定」だけでは当然、売れない。
 競合製品と並べて置かれるコンビニのナショナルブランド(NB)商品。昨今は流通のプライベートブランド(PB)商品との競争もある。居酒屋も200円台の均一価格居酒屋が乱立し、そこでは中ジョッキもつまみと同じく200円台である。(ビールではなく第3のビール等新ジャンルを用いている場合もあり)。そして、それを選ぶ消費者の選別眼もデフレ不況にさらされて厳しくなっているのだ。そうした環境での価格設定を「競合志向の価格設定」という。

 しかし、競合関係が存在しない場合なら、消費者の選別眼の厳しさも軽減される。例えば、ビールではないが、富士山の山頂には自販機がある。そこで販売されている500mlのペットボトル飲料の価格は500円だ。280mlの缶が400円。フツーに考えればえらく高い。しかし、運搬コストもかかっている。いや、そんなことを考える前に、多くの登山客は喉の渇きを癒すために購入する。なぜなら、他に売っていないからだ。
 ビールに話を戻そう。他に買う手段がない場所でのビールの価格。例えば映画館。TOHOシネマズはコンセッション(売店)で係の人がビアサーバーで入れてくれる生ビールが1杯500円。例えば野球場。東京ドームは売り子のお姉さんが背中のタンクからディスペンサーで注いでくれる生ビールが800円。街中の価格からすればどちらも高いが、顧客は惜しげもなく購入する。原則的に場内には持ち込みが禁止で他に買う手段がないという理由もある。しかし、それなら飲まなければいいのだ。富士山の山頂に辿り着いて飲料を求めるほどの肉体的渇望感はないはずだ。だが、映画を観ながら、野球を観戦しながら、ついついビールが飲みたくなる欲求に抗えない。その欲求が充足されるという「価値」があるから買ってもらえるのだ。顧客が幾らまでなら払ってもいいかを考えて設定する価格を「需要志向の価格設定」という。500円、800円は十分需要価格の範囲内なのだ。

 では、機内という環境はどうかというと、実は1000円のビール以外にもビールは存在する。ANAでは国内線の新サービスANA My Choiceの有料メニューとしてスターバックスのコーヒー300円などとともに缶ビールが500円で販売されている。つまり、生ビールの半額。単に「ビールが飲みたい」という欲求を充足させるならそちらでもいい。
 しかし、「ビール」という対象物(ウォンツ)を手に入れたいというニーズの根源を考えるなら、空の上、飛行機の中という非日常的な空間で、さらに気分のいい時間を過ごしたいということになるだろう。そんなときに<この夏、世界初となる航空機内での樽生ビール独特のクリーミーな泡とキーンと冷えたビールの味わいをANA国内線の空の旅でお楽しみください>(同社ニュースリリース)などと誘われたら、つい「一杯ください!」といってしまうだろう。もし、自分が普通の500円の缶ビールで我慢したとして、隣の乗客が生を注文し、うまそうに飲んだら・・・と考えればなおさらだ。それに何しろ<1便20杯限定>なのだ。躊躇していては売り切れる。
 つまり、「需要志向の価格設定」には、顧客がその商品にどれくらい価値を感じてくれるのかという「カスタマーバリュー」を想定することが欠かせないのである。
 他に手に入れる手段がない飛行機の中という空間で、缶ビールは500円。それより、スペシャルな生ビール20杯限定が倍の1000円。それが安いか、高いかは顧客の価値観に依存する。筆者は自らの価値観からすると、この1000円の生ビールは大人気になると予想しているのだが。

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2010.07.12

ロッテの「幼児向けガム」の発売に隠された意図とは?

 圧倒的なシェアを確保している業界のリーダー企業は、その権勢を保つためには何をしなければならないのか。例えば多くの人のポケットやカバンに1つぐらい忍び込んでいる「ガム」を例に考えてみよう。

  <ロッテ、子ども向けボールガム「キシリトールガム ハローキッズ〈グレープソーダ〉〈サワーストロベリー〉」を発売>(7月9日マイライフ手帳ニュース)
 http://www.mylifenote.net/002/lott_14.html

 ロッテは今度は「ガムがかめるか噛めないか」の幼児を狙った新商品を発売した。
 <「すくすく育て!かむ力」「乳歯から大切に」をコンセプトに、キシリトールを50%以上配合(甘味料中)したという。ガムを中空構造にし、噛む力がまだ弱い小さな子どもでも安心して噛んでもらえるようなボールタイプのチューインガムとなっている>という。
 いくら何でもちょっとターゲットが小さすぎないか?と思うかもしれないが、これには重要なワケがあるのだ。

 筆者は大学の講義中に受講生に挙手させてみた。「ガムを良く購入する」は全体の2割弱。「どちらともいえない」が4割、「ほとんど購入しない」が4割強という結果だった。理由を聞くと学生は「あごが疲れるから」と答えた。
 口臭予防、虫歯予防、体臭予防など、様々な機能性を高めたガムであるが、根源的な「噛む」という行為が忌避されるようになって、購入者はどんどん高齢化する。しかし、一定以上の年齢になると歯の治療跡や義歯の使用によってガムの使用がストップするという。

 「ガム市場」におけるリーダー企業、ロッテは6割ほどのシェアを握っているという。クープマンの目標値でいうところの、「安定的トップシェア」の41.7%を軽く上回っている。そうした場合、最も恐ろしいのは市場自体が縮小することである。事実、ガム市場はボトル入りのガムが大ヒットした2004年を境に縮小に転じている。
 リーダー企業に必要なことは、そうした市場の変化を敏感に感じ取って手を打つことだ。ロッテは市場縮小の原因である「若者のガム離れ」に対応すべく、2008年に「柔らかな噛み心地」の「Fit’s」を発売。佐々木希、佐藤健の「フィッツダンス」のCMも当り未曾有の大ヒットを飛ばすことに成功した。そして、さらに市場環境を改善するために展開しているのが今回の「キシリトールガム ハローキッズ」なのだ。

 ガムのヘビーユーザー層である中高年にとって、ガムの想い出、子どもの頃良く買った商品は何だろうか。「マルカワ」ブランドの丸川製菓の「オレンジマーブルガム」を思い出さないだろうか。四角い小箱に丸いガムが4粒入って5円。さらに当りが出ればもう1箱もらえる。オレンジマーブルガムは1959年に発売開始され、1974年に10円に値上げされ、現在は6粒20円という価格になっている。同じマルカワ製の「フィリックスガム」も74年に登場して同じく駄菓子屋の定番商品であった。
 小遣い銭が少ない幼少時代、口寂しさを比較的長時間紛らわすことができる10円ガムは貴重だった。しかし、今日、その主たる販路である駄菓子屋が滅亡の危機に瀕している。マルカワのガムは一部のコンビニエンスストアでも販売されているが、圧倒的に主要顧客層である子どもたちとの接点が減少しているのだ。

 幼少期からの「ガム経験」の減少がガム離れの原因になっているのか、その因果関係は証明できない。しかし、ロッテが幼児用のガムを発売した意図は、幼児期からの「刷り込み」にあるのは間違いないだろう。
 子どもが主体的に購入する機会が減少しているため、商品の使用者ではなく購買決定の関与者(DMU=Decision Making Unit)ではなく、母親に購入させて子どもに食べさせるという戦略だ。何よりロッテは「歯に良いガム」である「キシリトール」で絶対的な信頼のポジショニングを築いている。1997年に当時の厚生省が食品添加物に指定時に、それを遡ること20年前から砂糖の代替甘味料としてキシリトールを研究していたロッテは事前に商標登録を済ませて抜群の認知度を獲得しているのである。

 市場縮小という変化を読み取り、ターゲットのニーズに合わせた商品作りを行う。流通チャネルや顧客の購買行動の変化にも対応すべく、DMUを巻き込んだ将来的な布石も打つ。ロッテの「幼児向けガム」の展開から、リーダー企業の動き方のお手本が見て取れる。


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2010.07.09

アサヒ Vs. キリン・オトナの炭酸戦略比較!

 景気低迷によって伸び悩む飲料業界唯一の光明、炭酸飲料カテゴリー。さらなる市場活性化のためにアサヒ飲料は「オトナ」を狙って、アサヒ飲料が仕掛けた「大人炭酸シリーズ」。まさかの氷室京介TV-CM出演、まさかのコーラカテゴリー参入という驚異の2段重ねで世間をあっと言わせた「グリーンコーラ」。それに続く第2弾が投入される。迎え撃つのは・・・

 「素材派コーラ」というキャッチフレーズで「アサヒ グリーンコーラ」が新発売されたのは4月のこと。植物由来原材料使用、着色料・カフェイン・保存料ゼロがウリだが、カロリーはゼロではない。自然な甘みの果糖を使用した味が好評だ。
 同社Webサイトでグリーンコーラの横で長らく謎のベールに包まれていた「大人炭酸」の第2弾は辛口ジンジャーの「アサヒ ドライスパークリング」。13日の発売だという。今回も「大人、はじける。」のキャッチコピーでライブばりに氷室京介が派手なアクションをキメるというから必見だ。しかし、注目はCMばかりではない。今度は<甘さを控えめにし、辛口ジンジャーの味わいと強めの炭酸で刺激を高めた炭酸飲料で、カロリーゼロ、糖類ゼロです>とよりオトナな味わいに仕上げているようだ。
 それを迎え撃つのはキリンビバレッジである。同じオトナ狙いで「大人のキリンレモン」を4月に発売。そして今月、「キリン メッツ ワイルドチャージ」が発売された。

グリーンコーラ&ドライスパークリング Vs. 大人のキリンレモン&メッツ ワイルドチャージというこのタッグマッチ、双方の必殺技にはそれぞれ特徴があるようだ。
 まず、グリーンコーラ&ドライスパークリングのアサヒ飲料組は、<黒ビール製造の技術を活用し、黒麦芽を使用することで、コーラ飲料の特徴である力強い味わいを実現>と<プロのバーテンダーを中心に飲食業界において高い認知度と支持を得ている炭酸飲料『ウィルキンソン ジンジャエール』で得たノウハウによって、辛口ジンジャーの刺激のある味わいを実現>と、アルコール飲料メーカーグループらしい「味」での一本勝負だ。
 対する大人のキリンレモン&メッツ ワイルドチャージのキリンビバレッジ組みは<健康成分「回復系アミノ酸オルニチン、クエン酸、ビタミンB6」配合の元気炭酸>と<元気系アミノ酸アルギニン・ビタミンB6配合>という元気回復成分配合で勝負する。
 双方の戦い方はブランドの用い方も特徴的だ。アサヒ飲料は全くの新ブランドで挑戦。キリンビバレッジは80年以上の歴史を持つ「キリンレモン」ブランドと、アメリカンテイストを演出して1979年に登場した「メッツ」ブランドを投入している。

 ターゲットは「オトナ」といっても実際には幅広い。双方の差異はターゲット設定にも現れているようだ。
 アサヒ飲料のニュースリリースによると<ここ数年で20-30代の炭酸飲料の飲用比率が上昇し、嗜好品として炭酸飲料を楽しむ方が増えてきていることが分かりました。この傾向から、大人が満足できるような新しい価値を提案する炭酸飲料商品を“大人炭酸シリーズ”として発売することにしました>とシリーズ展開の意図を発表している。
 一方のキリンビバレッジはメッツ ワイルドチャージのニュースリリースにおいて、<炭酸飲料市場は近年伸長を続けており、ここ3年間では特に「ゼロ」タイプが拡大し、30~40代の大人層の飲用が大幅に増加しています。また、30~40代男性の健康に対する意識において、「カロリー」「疲労回復」に関心が高いことが分かりました>としている。

 つまり、アサヒよりキリンの方がターゲット年齢が10歳ほど上。30~40代といえば「中年」と言われるのに抵抗を覚え始めることから、言われても抵抗がなくなる頃までのお年頃。少々疲れも隠せなくなる年代だ。そこで、単なるゼロカロリーではなく、アミノ酸配合なのだろう。
 また、ブランドの使い方も定番ブランドで安心感、新ブランドで新規性というアプローチは他の市場でも事例がある。ガム市場におけるロッテとキャドバリーの戦い方だ。「柔らかな噛み心地」で若年層に圧倒的な支持を得ることに成功したロッテがフィッツで、「ミントの味が長持ちする」というガムらしい価値観を、従来の顧客層の上の年代である30代男性に向けて投入したのが「Fit’s LINK(フィッツリンク)」だ。全く同様のコンセプトの製品をキャドバリー・ジャパンは新ブランド「ストライド」で18~34歳の男女と若年層を含むロッテより若いターゲットに投入した。どうしても年代が上がるとブランド的な冒険はしなくなる。また、若年層の流行の後追いになる。そんな消費者の特性を考慮した戦略意図がガム市場、飲料市場で取られているのだと考えられる。

 ただ、一つだけ「ねじれ現象」的に見えるのが、CMのキャラクターだ。20~30代狙いのアサヒ飲料の氷室京介に対して、30~40代狙いのキリンビバレッジはEXILEだ。

 1981年、布袋寅泰等とBOØWYを結成、1988年からソロ活動以来、日本ロック界の帝王として君臨し続ける氷室京介。そのファン層は広く20代もカバーするが圧倒的に30~40代の支持が高い。(※2)これは20~30代をメインターゲットとしつつ、御年50歳になる帝王・氷室の年齢を感じさせないカッコよさで、その上の40歳代までを取り込もうという意図を感じさせる。
 一方のEXILEは、筆者を含むターゲット層である40代の認識ではリーダーのHIROは「ZOOの人」であり、CM・「JR東日本 SKI SKI(1991年)の人」ではないだろうか。(←古いか?)。キリンレモンのMAKIDAI、TAKAHIROは、残念ながら、ちょっと馴染みが薄くなるのが否めない。とはいえ、疲労回復アミノ酸配合飲料を本当に中年が飲んでいたら様にならない。EXILEに引っ張られて若年層も飲用することから(事実、筆者が教鞭を執る青学では学生の飲用率が高い!)、それにつられるメインターゲット層も抵抗なく手を伸ばすことを期待してのことだろうか。

 様々な点で似て非なる両社の「オトナ狙いの炭酸飲料」だが、ここはひとつ、スカッとオトナの味わいを感じたいときはアサヒ飲料、ちょっと疲労回復を兼ねたい時にはキリンビバレッジの製品を飲んで、暑い夏を乗り切るとしようか。両者のマーケティング戦略の違いがどのように雌雄を決することにつながるのか楽しみにしながら・・・。

※< >内の記述は各企業のニュースリリースより
※2 2006年時点でのソース:ORICON http://www.oricon.co.jp/news/rankmusic/39892/
 

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2010.07.08

「ラー油ブーム」で最後に笑うのは誰か?

 相変わらずの品薄で全く手に入らない「食べるラー油」。空前のブームの果てに、最後に笑うものは誰なのか?

■まだまだ手に入らない「食べるラー油」

 「桃屋の辛そうで辛くない少し辛いラー油」、通称「桃ラー」。昨年8月の発売から1年弱が経過しようという今日、店頭では相変わらずの品薄が続き、メーカーである桃屋のWebサイトでは<「辛そうで辛くない少し辛いラー油」品薄状態についてのお詫び>という謹告が更新を重ねるという状態が続いている。
 大ブームを猛追する構えで参入したのが香辛料の雄、ヱスビー食品だ。年間売上高3億5000万円の目標を掲げ、「ぶっかけ!おかずラー油チョイ辛」を3月に発売。早々に市場では「エスラー」という愛称もついて売れに売れ、これまた店頭から商品は姿を消し、同社Webサイトに品薄のお詫び謹告が掲載されるという事態に至っている。ついでにヱスビーが輸入販売している「李錦記具入り辣油」まで品切れで謹告が掲載される自体になっている。
 「食べるラー油ブーム」の加熱を煽った間があるのがTwitterだ。どこで売っているらしい。どこで手に入ったという情報とともに、購買者が食べた感想や食べ方のバリエーションをツイートし、さらに未体験者が渇望感を増して探し求めるというループが起きている。現在でもTwitterのキーワード検索で「桃ラー」「エスラー」を入力するとリアルタイムで多数のツイートがピックアップされる。

■ドンキは漁夫の利を手にするのか?

 生産が追いつかない桃屋とヱスビーに対し、ドン・キホーテも6月末にPBブランド・情熱価格の「具だくさん ちょい辛ラー油」で参入。「ドンキラー」というニックネームを付け、買い求めるファンが店舗に集まっているようで、Blogを中心に試食レポートが多数アップされている。
 国内メーカーに生産委託をしているという同商品は、入荷の度に完売となるとのことだが、その数は桃ラー、エスラーが店舗に数個単位しか並ばないのに対し、30~40個入荷しているようだ。
 激安ジーンズ戦争や、激安ボジョレヌーボー戦線にも後発ながら最安値を付けて参入した実績のあるドン・キホーテ。さすが機を見るに敏、今回のラー油ブームにも目を付けたわけだが、今回は最安値ではなく、桃屋の400円、ヱスビーの330円という価格に対し、598円という価格設定である。もう少し安定的に供給できれば、ドンキにとってオイシイ商品になるのではないだろうか。

■外食・中食に飛び火したラー油ブーム

 現在、ラー油ブームは外食にも飛び火している。例えば、焼き肉の牛角の期間限定メニュー。『“食べるラー油”焼肉「ぶっかけラー油deネギカルビ」』は4月の発売から2週間で4万5000皿を突破し、早々に人気メニューランキングTOP10だという。6月にはモスバーガーと日本テレビ「スッキリ!!」のコラボ商品「テリー伊藤のざくざくラー油バーガー」が発売され、秋葉原店には発売日に100人以上が行列。月末までの限定期間で目標の100万個の売上げをクリアした模様だ。
 コンビニメニューにも飛び火している。セブン-イレブン・ジャパンが今月6日から「自家製ラー油で食べよう シリーズ」の4アイテム、「ピリ辛豚骨塩焼ラーメン」「ピリ辛鶏つけ蕎麦」「おつまみキャベツ」「炒飯」を全国のセブン-イレブンで発売している。外食だけでなく中食市場もラー油一色である。

■ブームの果てにあるもの

 日本の食品市場においてはこのようなブームが繰り返し勃発している。スイーツのティラミス、パンナ・コッタ、ナタデココなどのブームを覚えているだろうか。特に93年のナタデココブームはひどかった。フィリピン原産のココナツ果汁を発酵させたこのスイーツ。日本での大ブームに特需がわき起こり、フィリピンのココナツ生産者は設備投資・増産を行った。しかし、ブームはあっさり終息。日本での生産技術も確立し、現地では負債だけが残されるという事態に陥る業者が続出した。

■結局、最後に笑うのは誰なのか?

 外食・中食で各企業がメニュー開発をしてくれることは、品薄の商品を探し求めて様々なメニューで体験する戦端的なユーザー層以外にも幅広く裾野を広げてくれる効果が期待できる。そうなれば、ブームが終息しても「食べるラー油」と用いる、またはそれを使ったメニューを作るという食文化が根付くことになる。
 桃屋、ヱスビーはそもそも調味料を中心とした品揃えを持つメーカーだ。大ヒットを狙って矢継ぎ早に新商品を上市し、それを売り抜くバリューチェーンを社内に持っているわけではない。息の長い商品を開発・製造・販売することを得意としているはずだ。たまたまといっては語弊があるが、食べるラー油が大ヒットとなった。市場の需要に応えようと必死の増産をしているが、ブームを追いかけて大増産を組む体制を作るつもりはないだろう。
 もし、ブームが終息すれば、ドン・キホーテは高価格帯PBラー油をいつまで販売し続けるのかわからない。しかし、桃屋とヱスビーの2社ぐらいであれば、ブーム後の安定的シェアを分け合うことができるはずだ。「ラー油ブーム」で最後に笑うのは誰か?結局は桃屋、そしてヱスビーの2社ということになるのだろう。

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2010.07.06

キャズム越えへ!掃除ロボット「ルンバ」の挑戦!

 掃除ロボットの「ルンバ」が売れている。そして、さらに売れ行きは加速度を増していく気配がする。そのワケは・・・

 日経MJ6月30日の家電&eビジネス欄に<掃除ロボ「ルンバ」 日本での販売まだ伸びる>との記事が掲載された。メーカーである家庭用ロボット開発のアイロボット社CEOのインタビュー記事である。世界中で激売れしているアップルのiPadを掲げるスティーブ・ジョブズの記事となりというのが、また何とも暗示的だ。
 インタビュー記事によると、「売れる理由」は、同社がモデルチェンジ毎に改良を重ねているほか、その改良点が日本からの意見を取り入れたものであることも指摘している。その「お客様の声」の収集は、同社の日本における総代理店で宣伝から顧客サポートまでも担当しているセールス・オンデマンド社の功績が大きいようだ。海外製のハイテク製品は故障対応や修理などの不安がつきまとう。その窓口を一元的に運営し、フィードバック情報をアイロボット社に提供して、より日本市場に適合した製品に仕上げているのだ。

 インタビュー記事では日本市場での拡大の理由の一つをCEOは<「ほかの国ではロボットに抵抗を示す消費者も多いが、日本はアニメなどで慣れ親しんでいるためか、ロボットが生活に入り込むことを受入れている」>と指摘している。しかし、それでは一部のメカオタク層のおもちゃで終わってしまう。例えば、ソニーの犬型愛玩ロボット「AIBO(アイボ)」。AIBOは1999年6月1日、価格250,000円のERS-110型が発売され、あっという間に完売した。購入者の多くは画期的な動作をするロボットとしての魅力に惹かれたメカマニアであったという。

 ルンバは誰が、どんな理由で買っているのだろうか。そして、現在本当に売れているのだろうか。セールス・オンデマンド社に聞いてみた。

 「“ロボット”という言い方を封印したところからヒットが加速し始めたんですよ」と同社の役員は意外な話を明かしてくれた。
 「掃除をしてくれるロボット」という今まで見たことも聞いたこともない概念を、人はにわかには受入れられない。また、ロボットは日本人にとって古くは「鉄腕アトム」であり、「ドラえもん」であり、「ガンダム」だ。まだ、世に出ていないもの。空想の産物。そして、それらが形になっているとしたら、それは「おもちゃ」だ。確かに上記「アイボ」はおもちゃだ。実用化されている二足歩行ロボットのホンダ「アシモ」もあるが、とても一般家庭に導入できる価格ではない。
 故に、一般家庭では「使える道具」というポジショニングにリセットする必要があった。ルンバは洗濯機や食器洗い機などの「家電の仲間」なのだと。掃除機も食洗機も全自動。掃除も全自動でやってくれる家電があってもいいじゃないか。そんなアプローチだ。
 「おもちゃ」ではなく、「使える家電」であるという認識さえ形成できれば、結果としてそれがロボットの機能を搭載して家の中を動き回っても、日本人的には嫌悪するような感情を持つものではない。それが、アイロボット社CEOの解説の真意のようだ。

 そんな背景をもって、ルンバは「自動掃除機」というキャッチフレーズに変更された。そして、2004年から明らかにユーザー層が変わっていったという。それまで同様のマニアな層は一定数存在するものの、家庭において主に家事を担っている女性層が購入意思決定をするようになった。最近では70代の高齢者や30代共働き世帯に裾野が広がっている。まさに、単なる興味ではなく、実利を重んじる層が動き出しているのだ。70代は掃除機の上げ下ろしやコードのセットなど、肉体的負担からの解放を。30代共働き世帯は家事の時間短縮という効用を求めての購入だ。
 「掃除は汚れや散らかりというマイナスの状態をゼロに戻す作業でしかない。それを自動化することによって、空いた時間をもっと創造的な仕事をしてもらえるようにする」ということが、ルンバのある生活としての提案であると、同社役員は言う。

 パナソニック電工のシャワートイレ「アラウーノ」。同製品は便器の素材に汚れがつきにくい有機ガラス系の新素材を使用。家庭用の市販の中性洗剤を本体にセットしておけば、「トイレがトイレをアラウーノ」というキャッチフレーズどおり「自動洗浄」してくれて、煩わしい日々のトイレ掃除から解放してくれる。新築やリフォームの際には指名買いされるというトイレの便器としては未曾有の大ヒットを記録した商品だ。
 花王の液体洗剤「アタックNEO」。液体洗剤を従来の2.5倍という高濃度に圧縮し、少量でも、抜群の洗浄力を発揮。さらに繊維に残りにくく、すばやく泡切れするという新洗浄成分の特徴を活かし、従来すすぎを2回していた洗濯のしかたを、すすぎ1回ですむようにした。キャッチフレーズは「節水・節電・節時間」。すすぎ1回、10分間という時間短縮で家事の負荷軽減を実現したのである。

 マニア=イノベーターなユーザーから、「使える家電」としての効用・実利を評価して購入するアーリーアダプターである、先進的な主婦層に購入層を広げた「ルンバ」。
 大ヒット商品である「アラウーノ」と「アタックNEO」が、掃除や洗濯というマイナスをゼロに戻す家事の負担軽減、節時間に対するニーズを証明している。その効用をもう一歩認知させることができれば、「キャズム」を超えてさらなる大ヒットにつながるだろう。

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2010.07.05

「揚げないチキン」のKFCの深謀遠慮?

 ケンタッキーフライドチキン(KFC)の次世代店舗・第1号店「KFC渋谷公園通り店」が7月8日にオープンする。その狙いはどこにあるのだろう。

  <“揚げないチキン”の衝撃! 世界初ケンタッキーの次世代店が誕生>(7月4日 東京ウォーカー)
 http://news.walkerplus.com/2010/0704/7/

 同店の売り物は<オーブンで焼くノンフライのチキンや、野菜をたっぷり使ったサンドイッチなど>というヘルシーメニューを中心としたラインナップだ。すでに「フライドチキン」という社名との論理的整合性すら放棄したワケは、世の「健康志向」への対応が大きいのだろう。2008年4月から法制化された特定健診・特定保健指導、通称「メタボ検診」はカロリーたっぷりなファストフードを気軽に食べることを躊躇させるには十分なハードルとして機能する。何と言っても年に一度の健康診断で、毎回「メタボ」のレッテルを貼られる恥辱は耐え難い。

 メタボを気にするオジサンへの福音と思うと、実はKFCの狙いはそこにはないようだ。同社の4月28日発表のニュースリリースを見直してみる。
 http://japan.kfc.co.jp/news/news100428kfc.html

 それによれば、<主として、若い女性層をターゲットに、お食事に、カフェタイムに、ちょっとしたブレイクにと、お気軽にご利用いただける店舗として、個食需要の獲得を狙います>とある。さらに、今後の予定も<主要なターゲットとなる若者層、女性層の集まる首都圏を中心に展開し、今期中に3店、3年間で100店の出店を目指します>としている。
 確かに白とシルバーを基調として赤を差し色にしたオシャレな店舗デザインは女性好みを意識したようにも見える。さらに、<店舗デザインとあわせたシャープなイメージのユニフォームは、店舗スタッフの意見を取り入れてデザインした>と、細部まで抜かりはない。また、リリースを見ると同店は女性店長を起用しているようだ。

 女性ターゲットでKFCが期待しているのは「お一人様需要」だ。前掲の一文にも「個食需要の獲得を狙います」と明言されている。さらに<飲む冷たいデザート「Krushers」をはじめとしたカフェタイムにおすすめのデザートやドリンクなど、さまざまな機会にご利用いただける商品をご提供します>とカフェ需要の獲得への意欲も明確にしている。

 昨今の日本のフード業界においては、「カフェ市場」をめぐって乱戦状態が続いている。旧来の「喫茶店」という、ちょっと苦いブレンドと紫煙渦巻く薄暗い空間を、低価格・高回転率のビジネスモデルを持つセルフカフェが駆逐した。一方、1996年にスターバックスが日本市場に進出して「シアトルスタイル」の店舗も現在は定着している。そんな日本市場の特殊性は女性のお一人様ディナーではカフェの利用が顕著であり、フードの充実が求められている点だ。

 カフェ専業のドトールグループはフードの充実に余念がない。スターバックスにおいても、フードは日本独自展開を行っている。さらに、マクドナルドが今年4月25日に都内12カ所で新型店をスタートさせた。100円メニューの廃止、価格の最大50円引き上げる反面、ゆったりとしてオシャレな店舗空間を実現したことは、明らかに「フードの充実したカフェ」の代替としての店舗を展開することで、カフェ業界に殴り込みをかけたことを意味している。
 つまり、今回のKFCの「揚げないチキンの店」は、新メニューの提案だけではなく、女性のお一人様需要を狙った、カフェ市場への参戦なのだ。

 ファストフード業界の強大なるコストリーダーであるマクドナルドまでが存在する市場に、KFCが「揚げないチキン」で参戦したには女性を狙うだけでない、もっと大きな理由があるようにも思える。

 日本のファストフード市場の黎明期は1970年代初頭にある。1970年にケンタッキーフライドチキン・ドムドムハンバーガー、1971年にマクドナルド・ミスタードーナツ、1972年にロッテリア・モスバーガーが出店を開始した。(Wikipediaより)今年、40周年である。米国生まれの新しい食べ物に目を輝かせ、高度成長期に多感な時代を過ごした世代ももはや中高年だ。ファストフードというと、ターゲット層は「若者」と思いがちだが現在の中高年は抵抗なくファストフード店に入って利用する。事実、マクドナルドの店内を見てみれば、実に多くのサラリーマン諸氏が昼食に、仕事の合間のコーヒーにと利用している。

 KFCのメニューは社名にもなっているように「揚げ物」だ。ファストフードの中でもとりわけカロリーヘビーだ。そのヘビーさは、ファストフードに抵抗のない中高年といえども、少々年なりにしんどくなってくる。チキンに年甲斐もなくかぶりつくのは、とてつもない幸せと満足感が得られるのであるが、その後、胃もたれで後悔することになる。
 「揚げないチキン」のメニュー・新業態店は、初期段階では若者の街・ファストフードの聖地である渋谷で、若者と女性を狙って展開する。しかし、その後は通常店にも「揚げないメニュー」の導入と、オフィス街近隣などへも出店してくるのではないかと考えられるのだ。

 自社のターゲットを考えるときに忘れてはいけない視点は、「顧客も歳を取る」ということだ。従来からの顧客層と自社の商品・サービスのラインナップが適合しなくなったとき、顧客は離反していく。顧客を積極的に入れ替えて若返りを図るという戦略であればそれは問題ない。しかし、少子高齢化が進み、市場の縮小にもはや歯止めがかからなくなった日本市場において、中高年顧客層の離反を看過するのは得策ではない。

  女性向けの「揚げないチキン」。そのサブターゲット、第二の戦略目標としてKFCは中高年顧客層対策を意識していると見た。早速、8日の開店を待って、試してみようと思う。

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2010.07.01

iPadに喰われる市場?と、SONYとASUSの抵抗?

 日経新聞7月1日の・新製品面。今週の「新製品バトル」のコーナーは、小型ノートパソコン対決だった。通勤途中でいやでも目に入る大量の交通広告展開をしている「バイオP」。「立ったまま操作しやすく」との見出しで紹介されている。一方は「ASUS EeePC 1008KR」。「大胆な色、デザインを重視」とある。この戦いが示しているのは何だろうか。

 モノにも寿命がある。商品が市場に登場して認知され、先進的な顧客を獲得する。顧客の裾野を広げ、シェアを増大させる。幅広い顧客層をめぐって競合製品が激しいシェア争いを繰り広げるようになり、やがて代替的な製品カテゴリが登場し、顧客が乗り換えてゆき消滅にいたる。「プロダクトライフサイクル」における「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」である。

 そのプロダクトライフサイクルを足早に駆け抜け、早くも「衰退期」にさしかかろうとしている製品カテゴリがある。「ネットブック」だ。
 2007年に「199ドルパソコン」と呼ばれ登場した「ASUS Eee PC」が開拓した、低価格でメールやブラウジングを主たる用途としたパソコンの市場だ。インターネット回線環境の整備を背景に、インターネット上で各種のサービスを利用できるWebサービスとともに一気に普及。上位のフルスペックのノートパソコン市場とカニバリ(共食い)をしながらも勢いが止まらず、ほとんどのメーカーが低収益性を気にしながら嫌々参入したという経緯もある。また、日本市場においてはイー・モバイルが移動体通信の端末と加入権、2年間の利用をセットにして、ネットブックを100円で販売するというプロモーションを展開したことでも普及をさらに加速させた。

 そのネットブックの強力な代替品となるのが、iPhoneをはじめとしたスマートフォンと、さらに強力なライバルとして登場したiPadである。
 iPadの登場に際して、米Apple社のSteve Jobs最高経営責任者は「Windowsパソコン――宇宙が消滅するまで技術世界の中心になるだろう、と米Microsoft社が主張してきた製品――について、すでに終わっているも同然で、iPadのような製品が取って代わっていると述べた※」という。
  ※2010年6月1日Wall Street Journal主催した『D Conference』にて
   http://wiredvision.jp/news/201006/2010060320.html

 筆者は個人的には「宇宙が消滅するまで」かどうかはともかく、仕事で使うときの効率を考えればフルスペックのノートパソコンを手放す気は全くない。しかし、2台ほど所有しているネットブックはほとんど使わなくなってしまったのも事実。そして、iPadの購入は見送ったものの、何らか、しっくりくるスマートフォンがないか常に物色している状態だ。

 そんな環境下で、日経に取り上げられた2機種のネットブックの売りは、「立ったまま操作」と「大胆な色、デザイン」である。「立ったまま操作」のバイオPは2008年冬の登場以来のフルモデルチェンジで、前型は「軽い・小さい・美しい」というキャッチコピーで登場した。その流れを汲んで、ポップなカラーバリエーション展開は非常に目を惹く。それ以上にASUS EeePC 1008KRが華美なのだ。評者が「液晶を閉じて小脇に抱えるとパソコンには見えないデザイン」とコメントしている。
 デザインやカラーバリエーションは、ノートパソコンの中核的な価値である「ネットの使用・ドキュメントの作成」を支えるものでは全くない。中核を実現する実体価値である「スペック=サイズ・重さ、バッテリーの持ち、丈夫さ」などとも関係ない。明らかな付随機能だ。
 その意味ではバイオPの「立って使える」を支える、「加速度センサー」による「縦横画面自動切り替え」「Web画面の自動送り」などの機能も中核を支えるものではない付随機能である。

 プロダクトライフサイクルが成熟期に達すると、競争が激しくなり中核や実体では差別化が困難になり、付随機能での勝負が繰り広げられるようになる。昨今のパソコンの「カラーバリエーション化」がまさにそれだ。バリエーションを増やすほど、生産効率は低下し、在庫リスクは増す。しかし、そこでしか差別化できないため、各メーカーがこぞって展開する。
 ネットブックはさらにライフサイクルが進んで、既に衰退期だ。通常、衰退期においては「生産性の向上」が課題で、バリエーションをそぎ落とす。そして、遅延採用者(ラガード)を落ち穂拾い的に獲得していくのが定石だ。
あえてそこでソニーとASUSは勝負をかけたのだろう。ASUS EeePC 1008KRは明らかに女性限定でターゲティングをしている。だが、全ての女性に受入れられるよりは、さらにエッジを効かせたデザインに仕上げている。バイオPの「立ったまま」は、ソニーファンに向けてiPadではなく、あえてバイオを選択するための機能だ。

 スマートフォンやiPadが市場の多くの人に普及するキャズム(溝)を超えたのか否かは議論が分かれるところだ。まだ、超えていないのだとしたら、ソニーとASUSの賭けは奏功するだろう。もし、超えていたとしても漫然とネットブック市場の消滅に付き合うのではなく、獲得できる層をかき集めるという意味があるだろう。
自社ではコントロールできない市場カテゴリのライフサイクルの中で、どのように戦うのかという事例として継続して注目したい。

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