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2010.07.13

世界初!機内生ビール1000円は、安いか・高いか?

 ANAが世界で初めて機内で注ぐ「樽生ビール」の提供を7月20日より開始する。通常のビールディスペンサーは、高圧ガスの炭酸ガスボンベを使用するため機内に持ち込みができないが、今回は電機メーカーとの共同開発で航空機内用が実現できたという。そのエポックメイキングなマシンで客室乗務員が手ずから注いでくれる生ビールの価格は1000円。果たしてそれを安いと見るべきか、高いと見るべきか。

 <ANAが世界初、機内で注ぐ「樽生ビール」の提供を開始します>(7月13日News2u.net)
  http://www.news2u.net/releases/71981

 たかが1000円。されど、1000円だ。デフレ価格に慣れきった感覚では4桁は随分と高額に感じてしまうのが否めない。
 「今日は頑張ったから、エビスにしちゃおうかな!」と家飲み用に買うプレミアムビールは1缶244円。 飲み会でも、「ちょっとリーズナブルな“わたみん家”にしておこうか」ということになれば、スーパードライの中ジョッキが399円だ。・・・やはり、されど1000円?

 価格設定(プライシング)には3Cの視点が欠かせない。Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)である。製造や流通コストがいくらぐらいかかって、それに幾ら利益を乗せようか・・・という自社の事情、「原価志向の価格設定」だけでは当然、売れない。
 競合製品と並べて置かれるコンビニのナショナルブランド(NB)商品。昨今は流通のプライベートブランド(PB)商品との競争もある。居酒屋も200円台の均一価格居酒屋が乱立し、そこでは中ジョッキもつまみと同じく200円台である。(ビールではなく第3のビール等新ジャンルを用いている場合もあり)。そして、それを選ぶ消費者の選別眼もデフレ不況にさらされて厳しくなっているのだ。そうした環境での価格設定を「競合志向の価格設定」という。

 しかし、競合関係が存在しない場合なら、消費者の選別眼の厳しさも軽減される。例えば、ビールではないが、富士山の山頂には自販機がある。そこで販売されている500mlのペットボトル飲料の価格は500円だ。280mlの缶が400円。フツーに考えればえらく高い。しかし、運搬コストもかかっている。いや、そんなことを考える前に、多くの登山客は喉の渇きを癒すために購入する。なぜなら、他に売っていないからだ。
 ビールに話を戻そう。他に買う手段がない場所でのビールの価格。例えば映画館。TOHOシネマズはコンセッション(売店)で係の人がビアサーバーで入れてくれる生ビールが1杯500円。例えば野球場。東京ドームは売り子のお姉さんが背中のタンクからディスペンサーで注いでくれる生ビールが800円。街中の価格からすればどちらも高いが、顧客は惜しげもなく購入する。原則的に場内には持ち込みが禁止で他に買う手段がないという理由もある。しかし、それなら飲まなければいいのだ。富士山の山頂に辿り着いて飲料を求めるほどの肉体的渇望感はないはずだ。だが、映画を観ながら、野球を観戦しながら、ついついビールが飲みたくなる欲求に抗えない。その欲求が充足されるという「価値」があるから買ってもらえるのだ。顧客が幾らまでなら払ってもいいかを考えて設定する価格を「需要志向の価格設定」という。500円、800円は十分需要価格の範囲内なのだ。

 では、機内という環境はどうかというと、実は1000円のビール以外にもビールは存在する。ANAでは国内線の新サービスANA My Choiceの有料メニューとしてスターバックスのコーヒー300円などとともに缶ビールが500円で販売されている。つまり、生ビールの半額。単に「ビールが飲みたい」という欲求を充足させるならそちらでもいい。
 しかし、「ビール」という対象物(ウォンツ)を手に入れたいというニーズの根源を考えるなら、空の上、飛行機の中という非日常的な空間で、さらに気分のいい時間を過ごしたいということになるだろう。そんなときに<この夏、世界初となる航空機内での樽生ビール独特のクリーミーな泡とキーンと冷えたビールの味わいをANA国内線の空の旅でお楽しみください>(同社ニュースリリース)などと誘われたら、つい「一杯ください!」といってしまうだろう。もし、自分が普通の500円の缶ビールで我慢したとして、隣の乗客が生を注文し、うまそうに飲んだら・・・と考えればなおさらだ。それに何しろ<1便20杯限定>なのだ。躊躇していては売り切れる。
 つまり、「需要志向の価格設定」には、顧客がその商品にどれくらい価値を感じてくれるのかという「カスタマーバリュー」を想定することが欠かせないのである。
 他に手に入れる手段がない飛行機の中という空間で、缶ビールは500円。それより、スペシャルな生ビール20杯限定が倍の1000円。それが安いか、高いかは顧客の価値観に依存する。筆者は自らの価値観からすると、この1000円の生ビールは大人気になると予想しているのだが。

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Comments

需要の有無を考える時、お客様思考が最も重要です。

飛行機でビール?野球場、映画館のように「今の楽しみ」を増幅させる役割なら800円は払うが、飛行機はあくまで移動手段、少し我慢すれば現地でおいしいビールが飲める状態。

ちょっと1杯飲みたい人は、缶ビールを500円で飲むと思われ・・・
機内生ビールは苦戦するのでは????

こんなことも考えています!と言うANAとアサヒビールの広告戦略でしかないような気がする。すぐにこのサービスは終わるのでは?
そう考えると・・・希少価値あり?

Posted by: 白戸次郎 | 2010.07.19 07:24 PM

白戸次郎さん、コメントありがとうございます。

ご指摘の件、飛行機に乗ることを「あくまで移動手段」と考えるか否かがポイントだと思います。
確かに旅慣れた人、特に飛行機を多用する出張族などには飛行機に乗ることは「ケの日」、ごく日常的な行動に過ぎません。そんな人は500円の缶ビールで十分かもしれません。
しかし、旅行客やたまの出張、特に飛行機での出張は久しぶりというビジネスパーソンに取っては「ハレの日」です。
そんな中で、1000円の生ビールを飲むのはご指摘の『「今の楽しみ」を増幅させる役割』を担えると思います。

Posted by: 金森 | 2010.07.20 10:21 AM

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これがサービスの差別化、目玉になるんか [?/]わざわざ共同開発までするくらいだから ANAとしても力入れてるんだろうけど、そんなに需要あんのか疑問 [疑/]少なくとも俺は飲まん。だって機内泊するほど...... [Read More]

Tracked on 2010.07.20 10:57 PM

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