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2010.06.30

好転する景況感?デフレ不況の果ての「価値観の変化」を見逃すな!

 スーパーのPB(プライベートブランド)商品、ユニクロ、そしてカルティエ・フェラガモ・ディオールなどの高級ブランド商品。一見何の関係もないようなこれらの商品から、消費者の新たな価値観を探ってみたい。

■低価格志向から転じる小売業

 日経MJ6月30日に2009年度小売業調査の結果が掲載された。その中で、第3面に気になる動きが掲載された。「低価格戦略 変化の兆し」との見出しがある。<景況感の回復を受け、低価格一辺倒を見直そうとしている>と、流通各社の動きを報じている。特に、消費者の価格意識の変化に対する各社の読みは、<「低価格志向が強まっている」と見る企業は66.3%で、前回(80.6%)より大幅に少なくなった>という。それを反映して、<09年度は47.3%が積極的に価格を引き下げたのに対し、10年度に同じ方針を掲げる割合は30.6%にとどまった>という。
 デフレ時代の寵児、PB商品にも今後変化が現れることになる。価格が下げ止まるとはいえ、NB(ナショナルブランド)の価格低下によって優位性が揺らぐPB商品。各社は今後の開発方針として、機能は<「不要な機能を省く」が12.1%だったのに対し、「新しい価値を付加」は32.7%>、品質は<「過剰な品質は見直す」4.7%を原材料を吟味45.5%が上回った>(※紙面図表)としている。明らかに「価格据え置き・価格を上回る価値を創出」という方向性を示している。

■ユニクロの基本戦略と消費者の要望

 消費者の購買意識の変化はユニクロに対する要望にも現れている。
 株式会社ORIMOによる「~ユニクロとWEB キャンペーンについての調査~」の結果(6月25日ニュースリリース)
 http://www.orimo-r.com//admin/upload_2/1277508850.pdf

  ユニクロを知っている20-59 歳の男女各500名の同社モニターに対するモバイルリサーチにおいて、「今後ユニクロに期待すること」を複数回答で聞いたところ、<トップは
「品質向上(74.4%)」で圧倒的となった。次いで、「低価格化(57.3%)」、「インターネット販売(22.3%)」の順となった>という。つまり、17%以上の差を付けて、「価格より品質」が求められる結果となったわけだ。

 ユニクロといえば、際だった安さで注目を集めたのは確かだが、同時に「品質」へのこだわりは徹底している。汗の吸収に優れたドライ感が売り物の「ドライカノコポロ」はユニクロの夏の定番だが、クローゼットに購入年の異なるユニクロのポロシャツがあれば、是非並べてみるといい。着心地の向上とシルエットの変遷に合わせるために、デザインは細部にわたり改良が加えられている。「機能性」へのこだわりも凄まじい。冬のヒートテック、夏のブラトップも機能性高めるため、毎年進化を繰り返している。
 それらは、消費者に対して「価格を上回る価値を創出」するための飽くなき挑戦なのである。ユニクロに対する要望が、「価格よりも品質」であることは、その戦略がまさに消費者の価値観にミートしていることを表しているのだ。

■熾烈さを増すバリューラインをめぐる戦い

 通常、価格の高いものは価値も高い。価格が安いものは価値も低い。価格と価値が正比例する関係を「バリューライン」よぶ。
 価格に対して価値が低いものは当然消費者の支持を得ることはできず、売れない。そのため、バリューライン上に「低級品」「中級品」「高級品」というような価格帯が並んで相場が形成される。しかし、価格競争を制するためにはバリューラインを上回るポジションを取る必要がある。スーパーのPBが支持されたのは、「低価格だが、中級品(普及品)と同等の価値」であるからだ。ユニクロも、低価格にもかかわらず、「品質だけならもはや対抗できない」と大手アパレル幹部が漏らすように、大きくバリューラインを超えたポジションを取っていることが好調の原動力となっているのである。

 しかし、消費者の要望は一層厳しくなっている。日経MJは、景況感が好転しつつあるため、値下げ圧力が弱回ってきたという論調だが、だからといって、値段を上げれば売れなくなる。あくまで「据え置き」で、「質の向上」が求められているのである。つまり、バリューラインの標準ラインが引き上げられたことを意味しているのである。もはや今まで通りでは、バリューラインの水面下に沈んで消費者の支持が得られなくなる。売れなくなるのである。
 ユニクロは既に手を打っている。2009年、デザイナーのジル・サンダーとの契約によって、ユニクロの新ブランド「+J」を秋に発売。他商品も同氏の監修によってデザイン性を高めている。つまり、従来の「品質」「機能」に「ファッション性」という価値を加えたのである。
 同様に、小売り各社はその消費者の要望に対応するため、PB品でも「価値向上」を図ろうとしているのだ。

■「高級ブランド」復活に見る「価値」の基準

 「価値向上」が生き残りの必須条件であるのが時代の流れだが、「価値」とは漠然とした基準であることは確かだ。人によって「価値」のとらえ方が異なる。何を、どこまで実現するべきか、迷う。

 一つ、面白い現象が報じられている。「高級ブランド」の復活である。それは、単なる「景況感の回復」によるものではなく、よく見れば消費者の意識変化を表しているといえる。

  <高級ブランドに回復の兆し 「カルティエ」2ケタ増、「ディオール」も>(6月27日・J-CASTニュース)
 http://www.j-cast.com/2010/06/27069347.html

 <「カルティエ」は日本での売上高が2ケタ増となり、「フェラガモ」や「ディオール」も好調>と報じられている。また、<百貨店でも高級ブランドに回復の兆し>という。一方で、<「ルイ・ヴィトン」や伊「フェンディ」などを展開するモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン(LVMH)の場合、2010年1~3月の国内売上高が前年同期比7%減>と回復はまだら模様である。
 その差はどこから来ているのか。
 <若者の取り込みに成功したブランドは回復し、そうでないブランドは厳しい><「若者が重視するのはブランド名よりもデザインです。若者好みのキラキラした素材を使い、若者が『かわいい』と思うブランドは売れているし、逆に『かわいい』という言葉が出てこないブランドはダメだと思います」>と 電通総研消費者研究センターの四元正弘・消費の未来研究部長が解説している。

 従来、ブランド品の価値は、「そのブランドであること」だった。少なくともバブル経済華やかなりし頃を最盛期として、ごく最近までその傾向が大きく変わることはなかったはずだ。それが、『「ブランド名」ではなく、「デザイン」であり、“自分が”「かわいい」と思うことが価値』となっているのだ。これは大きな価値観の変化だといえるだろう。

■ターゲットの価値観にミートさせる!

 消費者が「自分の価値観」を重要視する。それはブランド品などの高関与度商品だけの話ではないだろう。「購買」という行為全般に対する意識変化だと考えた方がいい。
 インターネットの普及による「情報の非対称性」、つまり「売り手と買い手の情報格差」がなくなって、我々は「賢い消費者」になった。闇雲にモノを買う、売り手のいいなりに買うというようなことをしないよう、「賢い消費」を心がけるようになった。それは価値観の変化だ。
 デフレ不況、世界的な経済危機を経験し、今度は我々は「自らの価値観に合った購買」を心がけるという、価値観の変化が起きているのだろう。
 そこで重要なのが「自らの」というところだ。
 顧客がどのような人で、どのような価値観を持っているのか。つまり、「ターゲットを明確にして、そのニーズに愚直に応える」ことが求められているのだ。
 ユニクロやスーパーなどのように幅広い顧客を持った企業に、ターゲットを明確にするのは難しいという論もあるかもしれない。しかし、オンワードや、レナウンなどのメーカー、またはZARAやフォエバー21のような海外ファストファッションではなく、ユニクロを選ぶ。例えば、ザ・プライスのようなディスカウントスーパーでも、成城石井のような高級スーパーでもなく、西友に来る。その品揃えの中でPBを利用する。それらは、立派にターゲットセグメント化されている顧客である。その来店客の姿にどのような顧客像を見出すか。どのようなニーズを汲み取るかが求められるのである。

 景気の変動ととともに、消費環境は大きく変化している。それに伴い、消費者の意識も変化する。景気が本当に好転するかは定かではないが、一足先に消費者の価値観の変化が現れているのは確かなようだ。
 激動する環境下で生き残れる者は、最も良く変化に対応できる者であるという。この変化の兆しを見逃すことなく、自らを進化させていくことが企業に求められているのである。

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