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2010.06.03

団塊・ファミリーマート上田社長のターゲティング戦略

 コンビニエンスストアの業績不振が止まらない。最新の統計である2010年4月度をみると、天候不順の影響もあって既存店ベースの来店客数は10億4,410万人(前年同月比-1.8%)と10ヶ月連続のマイナス。また既存店ベースの平均客単価は562.9円(前年同月比-1.9%)と17ヶ月連続のマイナス。既存店ベースの売上高は5,877億円(前年同月比-3.7%)と11ヶ月連続のマイナスだという。(日本フランチャイズチェーン協会調べ)

コンビニ逆境の中、日経MJ5月28日のコラム「消費 見所 カン所」にファミリーマート・上田社長のインタビュー記事が掲載された。
 インタビューの1つめのポイントは、「お客様には節約志向へのストレスと、嫌気が出始めている」という発言だ。昨今よく言われるようになった、「消費者の節約疲れ」である。その商機をとらえて、同社は価格が少し高めのチルド飲料やパンを投入し好業績を得ているという。しかし、上田社長は「消費の潮目が変わったわけではない」と明言。そして「低単価と高付加価値のバランス」が重要であるとして、弁当を2つの価格帯で展開しているという。

 事実、「コンビニ弁当」に消費者の節約志向の影響が直撃しているのだ。日経新聞6月2日の消費面に「コンビニ調査 節約志向で手作り、弁当購入減少」という記事が掲載された。同記事によると、リーマンショック以前の2年と比べ、消費者は調査に対し「減った」と「増えた」の差分を見ると、1割以上の大幅マイナスになったという。

 マイナスはどこかで補わなければならない。そのためにはマイナスの影響が軽微なセグメントを探すことが欠かせない。ファミリーマートはそこに手を打っているようだ。
 「スイーツ」が活況を呈している。日経MJ6月2日に掲載された記事「スイーツの予算 半数“1回300円” 民間調査」によると、いつの間に日本人はこんなにスイーツ好きになのか?と思う結果が掲載されている。回答者の約9割(女性91%・男性85%)が甘い物好きで、週1回以上食べる人は全体の約6割にのぼったという。そして、自分のための購入価格帯は首位の53%が300円以内とし、購入場所は専門店、スーパーが59%・58%と2強だが、10~20代ではコンビニが60%以上でトップという結果だ。さらに、商品選択基準は洋菓子派は「見た目」や「ボリューム」を重視するという。

 この記事から、ファミリーマートの「あの話題のスイーツ」を思い出せたスイーツ好きもいるだろう。ファミリーマートのオリジナルスイーツブランド「Sweets+」の「ホイップクリームオニ盛プリン」だ。同商品は、通常のカップスイーツの1.5倍のホイップクリームを載せ、「オニ盛り」と名付けた圧倒的なボリューム感が好評で発売以来、同社のカップスイーツ部門で売り上げ1位だという。価格は先の調査で示された消費者の需要価格である300円をさらに下回る230円であり、買いやすさも強調している。
 節約志向で、昼食、弁当に関わる費用は低減したい。特に所得が低く、しかもその上昇が抑制されている若年層ほどその傾向は強いだろう。しかし、「節約疲れ」と認識しているかはともかく、節約だけでは何とも寂しい。自分にスイーツのごほうびくらいは欲しい。その時、コンビニでボリュームたっぷりで買いやすい価格の商品があれば手が伸びるだろう。その消費者のココロをうまくとらえているのだ。

 一方、別の年齢層をターゲットとした施策もしっかりと展開している。それが、インタビュー記事にある、上田社長の発言の2つめのポイントにつながる。
 3月からファミリーマートの店内ポスターやCMには俳優の小林薫が出演している。小林薫は58才。実際には少し若いが、リタイヤ・団塊世代層を象徴している。「よく見るとコンビニはいろいろなことをやっている」「ファミマって、ありだと思う」という台詞は、同世代の吸引を狙っているのだ。
 インタビュー記事では、全人口の2割を超す60歳以がファミリーマートの来店客に占める割合はわずか2%であるという。上田社長は「手つかずのマーケット」をどう取り組むかも大きな課題であるとしている。
 大きなマイナスに直面している弁当も、この層を狙って手を打っている。
 同社は2007年に50代後半から60代前半をテーマにした「チーム団塊」を発足。3月からは<“コンビニ弁当の定番おかず”である揚げ物を入れず、旬の野菜類をふんだんに用いた団塊世代ターゲットの弁当『春のこだわり和風御膳』を発売するなど、中高年層へアプローチ>を強化している。
 (オリコングルメ3月9日 http://gourmet.oricon.co.jp/74123/full/ )
 団塊世代であれば、若年層ほど就労や所得不足の問題や、給与の減少などの影響は総じて少なく、可処分所得も多い。弁当一つにしても、低予算ギリギリの選択や、節約のための手作りにこだわるのではなく、いわゆる「アクティブシニア」なら、「手間なく、カラダにいいもの」であれば受容する余地は大きいはずだ。
 この団塊ターゲットこそファミリーマートの真骨頂といえるかもしれない。上田社長のインタビュー記事では、<63歳の上田社長はコンビニエンスストア大手の社長でただ一人の団塊世代。「この世代の感性が自分のこととしてわかるのは私だけ。それが当社の強み」>としている。

 環境の大きなトレンドは、それを前提条件として受入れるしかない。昨今のマクロ環境は、高齢化に向かう人口動態、長引く不況と消費者の節約志向という経済環境、有効な打開策を示せず空転する政局。いわゆるPEST分析で見ても明るい要素はない。
 しかし、厳しい厳しいと嘆いていても、何も変わらない。特に自社ではコントロール不能な外部環境はそれを是として受入れて、対策を考えるしかないのだ。そして、その中で「ちょっとした市場の変化」をとらえて施策を立案する。さらに、市場全体を一律に見るのではなく、細かくセグメント化して「少しでも有望なターゲット」を発見して働きかけることが求められるのである。

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