うふふガールズで大丸さんがほしいトコ、Kaede Sakuraでイオンさんがねらうコト
■本日は弊社スタッフの書き下ろし記事をお届けします。
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西幡 治美 (にしはた・はるみ)
有限会社金森マーケティング事務所
コピーライター・プランナー
大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。広告制作会社、大手アパレルメーカー販売促進担当を経て現職。
スポーツ分野から農業まで、幅広い分野で販売促進提案から商品開発のプランニングまでを行う。
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うふふガールズで大丸さんがほしいトコ、
Kaede Sakuraでイオンさんがねらうコト
うふふガールズで大丸さんがほしいトコ、
Kaede Sakuraでイオンさんがねらうコト
京都は今、盆地だけじゃなくて、「おもてなし」もアツい。
この春オープンした大丸京都の「うふふガールズ」、そして6月オープンのAEON MALL京都。大規模店舗の業績不振が言われて久しいが、時代は変わっても経営者達の試行錯誤は、変わらずおもしろい。
ご存知の通り、ここ数年のデパート商戦は悲しき下降線の一途。
お歳暮、中元、クリスマス。記念日、誕生日、冠婚葬祭。ハレと密接に結びつき、その地位を確立してきたかつての百貨店は、いまや活気があるのはデパ地下あたりと催事場の名物特集。ケの日を必死にアピって食いつなぐという、ヤバい日々を送っている。
けれども顧客の「わざわざ行くのがめんどくさい」不満を解消し駅と同化した店舗や、合併などで巨大化し、より多くの顧客ニーズを満たせるようになった所は、けっこう頑張っていたりする。
その一方で、東京有楽町では西武が、京都河原町では阪急が相次いで閉店を余儀なくされたり(どっちも目先の欲にかられデパ地下を無くし「自滅」した感が否めないが…阪急の地下、スキだったけどな)北海道丸井今井が民事再生法適用になったりと、業界の冷え込みはとっても厳しい。
そんな中、生まれも育ちも京都の私は、4月にオープンした大丸百貨店(京都で言う所の大丸さん)「うふふガールズ」 (以下、UG)と、駅前にできたAEON MALL京都に行ってみた。どちらも大評判と言われる両店、どこらへんがすごいのだろう??
心斎橋大丸に続いて展開されたこの企画。ターゲットはおしゃれ意識が高く、お財布の自由度も高いF1女子。が、彼女達は百貨店離れして久しい。まぁそれは他の百貨店とて同じ事、独り占めできるチャンスでもあるのだ…というわけで。
低価格、イメージチェンジした売り場が全館改装に伴い大々的に設定されたUG。
なんと店の顔ともいうべき1階やら入り口付近やら、床にも壁にもUGのカワイイロゴが。ピンクのキリン、うきうきした心を躍らせるディスプレイに、従来のデパートの重さはない。
裏玄関からいきなり始まるUGエリアは1階、2階にわたっているが、改装に伴ってテナントの入れ替えや配置換えがされ、フロアは全体的にUGの雰囲気に。改装前にはアニエスbがあったり、セレクトショップのトゥモローランドがあったりした所だ。心斎橋の雰囲気とは異なり、落ち着いたナチュカジ系が多い(大規模SPAのコレクトポイントも)。部分的に以前の明るさや雰囲気を残しつつ、デパートらしからぬ「ゆるさ」もいい感じに醸している。3足千円の靴下が、とっても雰囲気のいい壁面にあったり、ガラスケース越しにのぞいていたアクセが、表にさらっと置かれて手に取れたり。海外ファストファッションに見られるような「安いけどそれなり」な物ではなく、百貨店という「お墨付き」がありつつも、価格は有名セレクトショップより親切というポジショニングでの展開は嬉しいかぎりだ。
また、表玄関のかつてシャネルやティファニーが幅を利かせていた「ええ場所」は“日常寄り(UG寄り)”の雑貨やアクセ売り場や、時期のテーマに即したエントランス展示に代わり「デパートなんか、どこ行っても同じやん」的装いが払拭されている。
私が行ったのは平日の昼間だったが、UGはちゃんとにぎわっていた。気楽に手に取りやすいディスプレイを囲むお客さんは実に様々。学生さん、おつとめ女子、ここまではターゲティングビンゴ!さらには恋人同士、母子2世代、母子婆3世代、母子夫の家族までがフツーに滞在していた。なんという嬉しい誤算であろうか…デパートの女性服飾売り場といえば、男子にとっては居心地が悪い、女子好みの売り場はお母さんが気に入らない雰囲気の服ばかり…な気がするが、彼らは特にそんな事もなさそう。心斎橋UGとはちょっと違う客層も囲い込んでいる大丸京都UG。この居心地の良さは何なのか?
実は大丸京都はとっても変な形をしている。でべそみたいな地形に無理矢理建っていて、「お買い物導線」が多分1本につながらない。大丸さんの悩みの種だったのではないかと思うが、その分断具合が今回ばかりはいい感じに旅館の「離れ」みたいで、女子の牙城に良い意味で「なりきらない」雰囲気作りに一役買っているように思う。「でべそで良かった」とさえ、思う関係者もいるかもしれない。苦悩の連続だった「でべそ」、大逆転。限られた状況下で、今までに無かった客層の居場所を確保する事ができたわけだ!さらに京都女子は日常着?仕事着?遊び着に明確なラインがない(着回し得意)ことも、幅広い世代が集える一因で、それを見越したブランド誘致が功を奏したのだと思う。
不利と言われる上層階に居を移したハイブランドの店も、同じ階層に集める事で上質な空間を作り出している。老舗お茶やさんからの「出前お茶」が呼べたりして、かつて「見世の間」で、贔屓達をもてなした時代のように濃厚なおもてなしを展開されている。きっとお客さん達はUGとは別なので、きっちり住み分ける事でお互いが気分良くお買い物を楽しめるようになったのではないかと思う。
また、今回の改装でUG以外にも大丸は工夫している。
一見売上に直接関係ない空間や設えを大きく増やした。香りや音の演出や、エントランス動画やディスプレイ。売り場の壁面オブジェや間接照明、什器の演出も結構上等。大丸東京で目立っていた靴売り場の大きなソファでの試し履きコーナーは老いも若きも「姫気分」になるし、通路が広くなって歩きやすい。ゆっくり、「買い物」自体を楽しむ(買わなくても、いい気分)工夫がとっても増えたのだ。特に、最近多くのデパートで免税店みたいな表示が幅を利かせて、なんだか「せわしない」気分であんまりいい感じがしなかった案内表示が、すごく少ない! その代わりに可愛い「イラスト」や「ディスプレイ」が至る所に設置され、文字が無くても「目当てを見つけやすい」工夫がされているのだが、私はとってもユニバーサルかつ優雅な工夫を感じていい気分になった。まだ改装されていない部分も、この方向性で統一されたら素敵だな?、と思う。UG世代はこうして店が育て上げ、いつかハイエンド商品を求める世代に成長していくだろうし、上質な空間作りは目の肥えたUG世代の親に直球で響く。UGの成功はひいては百貨店全体の成功につながる、大丸的には「結局財布を握ってはるんは女子ですぇ。皆がメンズ館に躍起になってはる間に、囲っときましょ」というわけで、他百貨店がどんな手を打ってくるか、はたまた三越伊勢丹大阪開店で来年以降おこるであろう関西百貨店戦国時代がお客である私としてはとっても楽しみになってきたのである。
さて、そんな素敵な4月に続き、6月も梅雨だけどとっても素敵だ。
京都駅から徒歩5分という超好立地に巨大複合施設AEON MALL京都(以下イオン)がオープンした。
八条口は一時「京都の表玄関をこっちにしよう」という動きもあったものの、長らく商業施設不毛地帯で微妙な人の流れだったのだが、イオン出店で確実に人の流れが変わった。
明らかに人が増え、活気づいている。かといって表の伊勢丹方面が閑古鳥かというと、そんな感じもしない。いつも通りの人通りで系統もおなじ感じ。しかしイオンはにぎわい、八条通りは活気づいていた。
大規模モール系に不慣れな私ではあるが、お上り気分で出かけてみる。イオン内は未だ着工中の部分があるにも関わらず、そして平日にも関わらず「京都の平日にこんなに人がいたのか!」と思わせるような盛況ぶりがここでも展開されているのである。
京都は景観保護の問題で建物高の制限や外壁に使える色の制限等があり、多少の違いはあるものの、作りは全国にあるイオンモールと同じ。
衣食住全てが揃い、日常も非日常もいっぺんに満足できる施設作りがなされている。ちょっと違うのが、超ターミナル駅前という土地柄。最寄り駅は京都駅、しかも徒歩5分。言ってみれば東京駅から丸ビルに行く位の時間でイオンに到着する!(街の規模は違うが驚き具合は伝わるかしら、皇居の手間にイオンがある感じ)ガイドリーフレットにも「イオンモールKYOTOへは、電車が便利です」とある。各所からのアクセス時間が明記され、「なるほど…大体の標的居住エリアはここらへんか」と思わせる地域は、京都は勿論大阪・滋賀・奈良と、がっちり近隣他府県ベッドタウンまで広範囲。
周知の通りイオンの狙う顧客層はずばり「全部」だ。老若男女、ケの日やちょっとしたハレの日、あれこれかなえてくれる「日常の中心」になるべく、多くのニーズを満たす工夫が至る所になされている…と書くと「あれもこれもで、結局顧客との濃厚な関係が築けないのでは?」と思ってしまいそうな所だが、そこはイオン。モールを練り歩いて気づいたのだが、実に巧妙な各フロア展開が成されている。
イオン京都はシネコンやホールを有する大きめ施設。Kaede、Sakuraとされた2つの棟はMiyakoという橋でつながって展開されている。私はこれまた平日に1階から4階までを見て回ったのだが、見ているうちに何階にいるのか分からなくなってくる事がしばしばあった。(平日なのでイベント系が無い、事もあるかもしれないが)そう、階ごとの特色が無い。百貨店では「○階、■■のフロア」などとして明確に階での棲み分けを計っている事が多いが、イオンはその真逆、色んなショップが各階に存在する。例えば1階では、靴下屋さんの横がお菓子屋さんだったり、子供服の向かいが電気屋だったりと、多彩。なぜだろう?と回遊するうち、実はこれこそがミソで、各階とも実に便利にできている事がわかってきた。イオンのターゲットである全世代を狙うなら、「各階に全部」が無いと駄目なのだ。老若男女の好みに分かれたショップ展開が、イオンをイオンたらしめている。
例えば、お母さんが幼い子供の写真を撮りに撮影スタジオに行きたいと言う。折角なのでおニューの子供服を物色してから撮影、という流れの間、お父さんは隣の家電ショップで新製品チェック。子供服を買ってくれた両親は孫の写真を楽しみに、オシャレな老眼をあつらえに移動。撮影をぐずる子供は「終わったらおもちゃ買ってあげるから」の甘い誘惑に妥協し泣き止んで笑顔。
集合場所は吹き抜けにあるモニュメントが見える休憩コーナー。
「では1時間後に!」
…というわけだ。広い店内、各階で別行動をしても上下移動をしなければ探しやすいし、全世代、性別を問わず興味が持てる店の豊富さで誰かがふてくされる事も少ないだろう。だから皆で出かけやすい、皆が好きな場所になりうる。
百貨店のような「住み分け」はイオンでは不適当、あえての「バラバラ」が実は家族を「がっちり」まとめる秘訣なのだった…。そうか、だから京都駅ナカも駅チカも、いつも通りだったというわけか。全ての層をターゲット、としながらもしっかり独自のポジショニングを取る事で新たな顧客を呼び込んだイオンに心で拍手を送る。すごいぞイオン。あんたなら新参者は100年位は村八分、な、京都でもやって行ける…。
長い時代を生き抜いて来た老舗のおもてなしは、デパート、ショッピングモールと姿を変えてもやっぱり健在。
その土地土地や、狙う顧客に合わせた「お客様を思う心遣い」が隅々まで届く事が、スピード化や合理化といった味気ない事ばかり要求される現代にあってもやっぱり大切なのだ。
万人に使えるステレオタイプの挨拶や、押し付けがましい接客をこれでもか、とぶつけ続ける一昔前の「お客様志向」から脱却し、それぞれが狙うターゲットの抱える心理を読み解き、展開する商戦はとても興味深い。
あれこれ考えず、休日になったら純粋に両店を満喫したくなる、そんな思いがつのる突撃調査だった。
余談だが、私が幼少時の至福を感じてやまなかった屋上遊園、ファミリー食堂(これが本気で美味しいのですよ!近い方は試してみて!)、エレベーターガール、そして「アンモナイトの化石階段(今はモニュメントとして存続)を含めた六芒星のしつらい」が大丸さんには今もちゃんとある。パンダの募金箱も、ペットボトルキャップ収集箱に姿を変え、サクラパンダと名前を変え、玄関で待っていた。改装に伴い、どんどん合理化する百貨店業界にあって、これらを維持して行く事はとっても大変な事だと思われるが、私はとても嬉しかったし、同じように考えている人は多いだろうと思うので、追記しておきます。(新店舗にも往年のモチーフは受け継がれている)ありがとう大丸さん。
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» イオンについて書かれた記事 [イオン]
何気なくネット見ていたらイオンの関連する記事を見つけました。私もコレ見て参考にしています。うふふガールズで大丸さんがほしいトコ、Kaede Sakuraでイオンさんが ...言ってみれば東京駅から丸ビルに行く位の時間でイオンに到着する!(街の規模は違うが驚き具合は伝わるかしら、皇居の手間にイオンがある感じ)ガイドリーフレットにも「イオンモールKYOTOへは、電車が便利です」とある。各所からのアクセス時間が明記...... 【売れすぎて緊急入荷amp;随時出荷】【送料無料amp;... [Read More]
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Posted by: 課長007 | 2010.06.21 01:14 PM
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