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2010.05.19

勝つことだけが勝利ではない?ロッテリアの戦い方を考える

 ついこの前まで、「ロッテリア」だった店が、「バーガーキング」になっていた、という経験を最近していないだろうか。それは、ロッテリアの資本・経営が変わったことと関係する。

 ロッテリアは2005年11月末日に企業再生会社リヴァンプと資本提携し、経営再建を進めていたが、2010年4月リヴァンプが経営から離脱し、再びロッテホールディングスの100%傘下となった。
一方のバーガーキングは、1996年にJTがバーガーキングジャパン株式会社を設立し日本での展開を開始したが、当時のハンバーガー業界の低価格戦争に巻き込まれて、2001年3月末に撤退。2006年11月にロッテリアとリヴァンプの共同出資によって日本に再上陸したものである。バーガーキングにおける両者の資本関係は残されており、両者の何らかの調整によって、ロッテリアからバーガーキングへの転換が行われたものと思われる。

 少々、前置きが長くなってしまったが、本稿の論点はバーガーキングではない。リヴァンプ離脱後のロッテリアについて考えてみたい。

 企業の業界内のポジションを、いわゆる「戦略ポジション」で考えてみると、今後どのような戦いを展開すべきなのか、競合はどのような戦いを仕掛けてくるのかが、「定石」から予測しやすくなる。
戦略ポジションとは、P.コトラー流に考えれば4類型で考えられる。業界№1のシェアを持つ存在は「リーダー」と呼ばれ、それに挑戦する存在が「チャレンジャー」。挑戦する力がなければ「フォロアー」と呼ばれる存在になる。但し、他企業には浸食できない独自の存在領域を確保できているのなら、「ニッチャー」という存在となる。

 ハンバーガー業界の戦略ポジションは、「マクドナルド」がリーダーであるのは誰しも知るところであろう。以下のポジションは、「モスバーガー」がチャレンジャーであるとよく言われる。または、「ロッテリア」の名を上げる人もいるだろう。ニッチャーは、それこそ米国式直火焼き本格派の「バーガーキング」や、たばこも吸えて大人な雰囲気な「フレッシュネスバーガー」か、ハワイ生まれの高級バーガー「クア・アイナ」あたりだろうと、知っている人は思いつくはずだ。では、フォロアーは?と考えると悩むかもしれない。ダイエーの店舗を中心に展開している「ドムドムバーガー」か?と、マイナーな名前を思い出した人もいるかもしれない。

 日経MJ5月17日に「第36回日本の飲食業調査」の集計結果が載っている。その中の「店舗売上高」を見ると、ハンバーガー業界の力関係がよくわかる。
 業界1位は当然、マクドナルド。以下、モスバーガー、ロッテリアの順だ。しかし、ランキングは全飲食業で付けられているため、各々1位、13位、49位である。マクドナルドは全業態通しても1位と圧倒的な強さだ。
店舗数と売上高を見ると、さらにその差がよくわかる。マクドナルドは3,715店舗、売上高約5,319億円。モスバーガー1,369店舗、950得億円。ロッテリア484店舗、326億。こうしてみてみると、圧倒的な差があることが判るだろう。

 定石はあくまで定石。
 上記を見れば、「リーダーに戦いを挑むのがチャレンジャー」は別の意味合いも見えてくるのではないだろうか。
 モスバーガーは、チャレンジャーではあるが、決して「勝ちに行くこと」はない。圧倒的なリーダーに本気で勝ちに行けば、とんだドンキ・ホーテ伯になってしまう。顧客の裾野を広げる、若年層狙いのパテを小さくして低価格にしたバーガーを出したり、今度はかつてない高価格な「ぜいたくバーガー」を出したりと、一見するとマクドナルドの戦略に挑戦しているようにも見える。しかし、決して勝ちにいっているわけではない。
モスバーガーは、マクドナルドにチャレンジすることによって、マクドナルドと異なる自社の差別化ポイントをアピールしているのだ。リーダーあってのチャレンジャーであり、勝ちに行かないチャレンジで価値を向上させるという、非常に巧妙な戦い方が最近すっかり板についてきているように見える。

 では、ロッテリアはチャレンジャーなのだろうか。
 そもそも、ロッテリアがリヴァンプの再生支援を受けるまでに至った原因は、マクドナルドへのチャレンジにある。1990年代、バーガーキングが巻き込まれた低価格戦争は、1987年にマクドナルドが展開した390円の「サンキューセット」に対抗してロッテリアが380円の「サンパチトリオ」を投入したことで口火を切った格好になった。しかし、結果は惨敗といっていい。
 ロッテリアはもはやマクドナルドに勝ちに行くことはないだろう。では、モスバーガー同様、チャレンジするのだろうか。
 「絶品バーガー」「絶妙バーガー」のシリーズは確かに美味い。「美味しくなければ返金します!」というアピールも、チャレンジャーならではの展開に見える。しかし、それはフランス帰りのシェフ、嶋原氏をロッテリアが商品総合プロデューサーとして採用できたことに依存する。つまり、多分に属人的な要素なのだ。
 むしろ、ロッテリアの真骨頂は、100円、150円の「うまいやすいメニュー」にある。100円のハンバーガー、150円のハムカツバーガーなどのメニューは、マクドナルドの100円・120円メニューに味、ボリュームとも勝るとも決して劣ることはない。そして、マクドナルドは店内装飾や什器をオシャレ化した新世代店舗では、100円メニューを置かない方針を明示している。

 つまり、ロッテリアは「フォロアー」のポジションでしっかりと地位を築くべきなのだ。
 「節約疲れ」などというキーワードがメディアに飛び交うようになった。モスバーガーは、それを狙って「ぜいたくバーガー」を投入したとニュースリリースで明言している。しかし、あくまで節約志向を貫く層もいる。コストパフォーマンスを低価格の中で最大化したいと考える層もいる。そうした層をターゲットとしてしっかりと刈り取ることこそ、同時に独自のポジショニングを明確にできるチャンスであるはずなのだ。
 フォロアーはリーダーにチャレンジしない。市場拡大や需要喚起はリーダーにやらせる。自分たちは、価格やスペックを一段下げ、リーダーが取り込めない、リーダーに流れない層を取り込むのだ。一見、落ち穂拾い的なイメージがあるかもしれないが、効率はいい。

 勝つことだけが勝利ではない。
 マクドナルドの「一人勝ち」といわれるハンバーガー業界で、「再建段階終了」とリヴァンプが離脱して、一人歩きを始めたロッテリア。自社の強みを活かしてしっかりと生き残っていくことを願ってやまない。


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Comments

先ずはUSPをじっくり検討すべきでしょう。
それがなければ戦略もなにもないでしょう。
ロッテリアといえば・・・
思い浮かぶものは・・・
最後の最後行列を作って話題となったウエンディーズ。
あそこも自社のUSPをお客さんに示せなかったですね。
明日ロッテリア行ってみます。

Posted by: nobu | 2010.05.22 12:30 AM

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