ペプシ・バオバブ、アサヒ・グリーンコーラ飲み比べ!見えてきた戦略は?
2010年5月25日、コカ・コーラがシェア№1を誇る日本のコーラ市場に、野心的な戦略を秘めた2つの商品が店頭に並んだ。Web上でも事前のニュースリリースで大きな話題を呼んでいたアサヒ飲料の「グリーンコーラ」と、毎年恒例の変わり種ペプシ「ペプシ・バオバブ」である。
何はともあれ、買い求めて飲んでみることにする。一般のコンビニでは、店舗によって発売日と店頭配荷にタイムラグがある場合もあるので、比較的早いJRの駅ナカコンビニを見てみる。さすがに新商品と期間限定商品。狭小な店舗にもかかわらず、2フェイスずつしっかり確保している。
ペプシ・バオバブ。蓋を開けた瞬間に炭酸ガスの強烈な音。今年、ペプシネックス用に開発された炭酸の抜けを抑制する「ガスバリア性」を向上させた、新設計多層ペットボトルを使用していることがわかる。その効果もあってか、炭酸の刺激は舌に強く、「爽やかなコーラ」という売り文句の由来がわかる。いや、それよりも刺激が強いかもしれない。しかし、味には癖がなく印象が希薄だ。変わり種ペプシ独特の「ケミカルさ」は全くなく、甘味料を使ったゼロ系コーラに慣れていると、素直な甘味が実に美味しく感じる。
アサヒ飲料は、「グリーンコーラ」を皮切りに「大人炭酸シリーズ」を展開していくとしており、そのフラッグシップともなる大型商品と位置づけての上市と見える。テレビは氷室京介がシブくキメているCMがガンガン流れている。
心を落ち着けてふたを開け、グラスに注いで飲む。
コーラとしての味は少し薄味。「強い刺激」を売りにしているが、炭酸の発泡は舌にビリビリくるほどではなく、素直な感じだ。自然に喉に流れ込む爽やかさが何とも心地いい。さすがアサヒ、「のど越しコーラ」という風情で好印象だ。
さて、両商品の味から戦略を読み解いてみたい。
まずは、 「ペプシ・バオバブ」は、その意外な味から戦略が読み解ける。
そもそも、キュウリ味の「ペプシ・キューカンバー」や、昨年の「ペプシ・しそ」など、衝撃の「ケミカルっぽい味わい」で市場に激震を走らせてきた「変わり種ペプシ」は、究極のチャレンジャー戦略の結晶ともいうべき商品だ。ペプシブランドを持つサントリー食品の担当課長が日経産業新聞のインタビューに昨年10月、「ペプシ・あずき」の上市後応えていた。曰く「2本目を買ってもらうことは期待していない」と。チャレンジャーはリーダーとの差別化が命である。通常1年間で企画~上市する商品を、米本国とのやりとりなどを重ね、2年を要するという変わり種ペプシの最大のミッションは、ブランド認知と話題性喚起なのである。
変わり種ペプシは06年にスパイシーな「レッド」、トロピカルフルーツ味の「カーニバル」、ジンジャー味の「ゴールド」の3商品が展開された。07年に「キューカンバー」、08年は、「ブルーハワイ」「ホワイト」、そして昨年の「しそ」「あずき」へと続く。
今回の「バオバブ」は、アフリカに自生する巨木バオバブの実をイメージしたとある。バオバブは「星の王子様」に出てくる木でもあるが、イメージできる人は多くはないだろう。ましてや、「実がなるんだ!」という感じであり、さらにその味など想像の範囲には全くない。
味の想像がつかないという意味では、05年のシリーズをさらに強化した感じであるが、実際の味はネット上の評価は概ね「オイシイ」である。謎な巨木の実からインスパイアされたという触れ込みで、どんな衝撃の味かと思えば「あれ?オイシイ」となる。前回の「あずき」は、少々甘過ぎな感じはするものの、結構オイシイという評価であった。その意味からも、今回は「思い切りすごい味に違いない!」という前評判をサクッと裏切った形だ。
この「いい意味での裏切り」がチャレンジャー魂健在の証だろう。「この味なら、定番化できるんじゃないの?」と思ってしまうが、そんなことはしないはずだ。そして、衝撃の味の商品は、今年の秋~冬に再びやってくるだろう。
もう一方のグリーンコーラ。
競合製品は4月26日に発売された、金色ラベルのコカ・コーラ、「コカ・コーラ ゼロフリー」だ。製品の基本特性としては、「保存料ゼロ、合成香料ゼロ、カフェインもゼロ」という点は全く同じ。しかし、圧倒的なリーダーに「同質化」を仕掛けるのは全く持って無謀だ。アサヒはそこに別の特性を加えている。広告コピーに「果実とモルトの素材派コーラ」とある。グリーンコーラのグリーンという名前の由来は、自然成分にあるという。同社のニュースリリースでは「アサヒビールの黒ビール製造の技術を活用し、黒麦芽を使用することで、コーラ飲料の特徴である力強い味わいを実現しました」ともある。氷室京介が「コーラが素材にこだわって何が悪い?」と挑戦的に語りかける言葉こそが、アサヒ飲料の切り札というわけだ。
だがしかし、実際には筆者はそれほどの味の特異性も「力強さ」も感じなかった。むしろ、前述の通り「さわやか」だ。もしかすると、コカ・コーラ ゼロフリーは「オトナが夜のリラックスしたひとときを楽しむための飲み物」というポジショニングを打ち出している。その逆張りで、グリーンコーラは「大人が昼間のふとした休息時に飲みたくなるさわやかなコーラ」として飲ませたいのかもしれない。事実、よく晴れた日の昼下がりに飲んでみたい味なのだ。「大人のための、日中のリフレッシュ飲料」というポジショニングで勝負する意図なのだろう。
変わり種ペプシ「バオバブ」は、ファンの予想さえもさらっと裏切った驚きの味わいで、チャレンジャーのブランド戦略を見せてくれている。
もう一方の「グリーンコーラ」は、同じターゲティングをしているリーダーのポジショニングの隙を突いて、全力で展開している。どちらも、強大なリーダーに挑む戦略の事例として極めて興味深い。さわやかな味わいを楽しみながら、その動向をしばらく見守ってみたい。
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