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19 posts from May 2010

2010.05.31

エプソンの「インクを交換しないプリンタ」はコロンブスの卵?

 エプソンからインクカートリッジを交換しないことを前提としたプリンタが発売された。それはユーザーの「便利」や「お得」を実現するだけではない。プリンタのビジネスモデルを覆す存在であり、同社ならではの事情やもくろみが、内蔵大容量インクタンクに詰まっている商品なのだ。

 5月20日に発売された、エプソンのインクカートリッジレスA4カラープリンタ『EC-01』。「インクカートリッジを交換しない」仕組みは、次のようなものだ。

・本体内に大容量インクパックを内蔵し、約8000枚が印刷可能。
・インクがなくなれば本体が回収され、再びインクが充填されて配送されてくる。

 極めて単純な仕組みだが、カートリッジ交換に比べてCO2排出量を約96%低減できるというから、エコロジー的にはすばらしい優等生だ。
それだけではない。経済性のすばらしさこそ、この商品の眼目である。A4カラー1枚あたり約8.2円、インク補充後は約6.6円となる。さらに大量の印刷枚数が見込まれる場合は、「インクおかわり2回パック」を利用すればいい。年間2回のインク再補充コミの価格を印刷枚数で割れば、1枚あたりの印刷コストは約5.5円となる。

 インクカートリッジを交換せず、インクの再補充をメーカーから受けることによって、印刷単価がどんどん安くなる。ユーザーのとってはうれしい限りだが、しかし、これはプリンタのビジネスモデルを根幹から覆すものだ。
 よく知られた話ではあるが、プリンタのビジネスモデルは典型的な「アフターマーケティング」型だ。微細なインクを噴出し、鮮麗な印刷を実現するテクノロジーの結晶が普及品であれば2~3万円で購入できる。メーカーとしては本体価格は収益トントンかマイナスだ。その代わり、印刷に欠かせないインクカートリッジはそのプリンタ固有のもので、インクが切れればメーカー指定の型番を購入するしかない。これが高い。画面に「インクが少なくなりました」というアラートが表示されると、少々切なくなる。つまり、ここが収益源だ。「アフターマーケティング」は顧客に商品・サービス利用し続けさせることで収益を上げるモデルである。要点は顧客を囲い込み、離反を防止し初期段階のマイナスを回収し、利益を積み上げていくことにある。

 しかし、『EC-01』は従来の流通構造を根本から覆す、「インクカートリッジ不要」という「中抜き」モデルなのである。
 今まで、交換カートリッジは家電量販店などの店頭で販売されてきた。『EC-01』のインク詰替えはメーカーが直接行う。「インクおかわり2回パック」ならば、通常別途費用がかかる保守料がコミコミになるため、ユーザーは安心でお得。メーカーはユーザーとの関係が密になるのでうれしい。しかし、量販店などのチャネルは中抜きされてしまうのだ。
 流通チャネルの構造を変えることは、かなりの抵抗を伴う。中抜きされればチャネルの利益がそっくり損なわれるのだから当然だ。

 それにもかかわらず、今回の展開を推したのにはワケがある。詰替えインクカートリッジ裁判だ。
 家電量販店のインクカートリッジ売り場には、メーカー純正品以外に詰替えカートリッジが多数販売されている。エプソンと同業のキャノンが再生インク業者のリサイクルアシスト社との係争は、キャノンの特許権が認められ勝訴した。一方、詰替えインクでかなりのシェアを持つエコリカと係争をしていたエプソンは、特許が認められずに敗訴した。最高裁判決が下されたのは、2007年11月のことだ。
利益の根幹を揺るがしかねない事態に、ビジネスモデルの転換を図ろうとするエプソンの動きは無理からぬことなのである。

 同商品の発売を伝えるエキサイトのニュースに注目すべき記述があった。
 <インクカートリッジを交換しなくていいプリンタ登場!?>(Excite Bit5月26日)
 http://www.excite.co.jp/News/bit/E1274274613732.html
 <同プリンタのユーザー層として、文書印刷の頻度の高い個人(持ち帰り仕事の多い人など)、10人未満の部や課の共有プリンタとして使用する法人を狙っているそうだ>とのことだ。プリント需要が多く、インク使用量も多い。故に、コスト低減のために詰替えカートリッジを選択する可能性が高い。しかし、高価な複合機のように営業担当者が訪問するほどの収益は期待できないという、一種の真空地帯を埋めることが期待されているのだ。

 メーカーの切実な事情から登城した新たなプリンタの形態が、どれほどのユーザーの支持を集めるのか。また、1機種ならまだしも、後続機種が投入されるなら、チャネルの抵抗も予想される。
 プリンタのビジネスモデルを変えるかもしれない、この動きが今後どうなっていくのか、エプソンの新たな挑戦に注目したい。

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2010.05.28

ラジオ出演:コメント詳録

5月18日にラジオ・ニッポン放送「上柳昌彦のおはようGood Day!」の特集コーナーに出演した際の様子を掲載します。

ザ・特集
「プラスワンの発想で、生き残りを図れ!マーケティングのプロ、金森努さんに聴く現代の企業努力とは!」


今日は、景気低迷の中で人気を獲得している商品、
そしてその商品を生み出す為に企業がどんな努力をしているのか、
6時半の「630テレフォン」にもご出演して頂いている
金森マーケティング事務所・代表の金森努さんにお話を伺いました。

Q.景気低迷と言われて久しいですが…こんな状況の中でも
「右肩上がり」で人気を集めている商品、
成長をしている企業には共通点があるということですが…?

続きはこちら→ 番組Webサイトへリンク

金森の得意ネタ、ヒット商品の「勝手分析」で、「プラスワンの発想」を解き明かしていきます。
ネタとなる商品は、当Blogでも取り上げたエースコックの「JANJANソースやきそば」、ロッテの「Fit‘s」、「コカ・コーラ ゼロフリー」。
それらを読み解くキーワードは、「プラスワン」というより、「足し算・引き算」です。


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2010.05.27

「鮮魚を焼いて売るスーパー」から学ぶべきもの

 日経MJ5月26日・総合小売り面に「オダキューOX 売り場の魚 焼いて販売 今夏メドに全店で 客の注文受け」との記事が掲載されていた。鮮魚売り場で何が変わろうとしているのか?それにはどのような意味があるのか?

 記事によるとそれは、従来の鮮魚売り場で魚の総菜や、焼き置きした魚を売るのとは異なり、「鮮魚売り場にある魚の切り身やひもの、エビなど50~60が対象」であり、客の注文を受けてから焼くという。そして、スーパーでそうしたサービスを展開するのは珍しいとしている。

 単純に考えればそれは、顧客のニーズギャップに対応したサービスであると解釈できる。
 「焼き魚を食べたい」のだが、同時に「焼く手間をかけたくない・焼いたにおいや煙を部屋に充満させたくない・台所やレンジグリルを汚して掃除の手間をかけたくない」というニーズギャップが存在する。しかし、これまでの焼き置きの売り方では「一定時間にまとめて焼くため味が劣化しやすく、魚の種類も少ない」(日経MJより)という状況で、ニーズを充足させることはできていなかった。それの未充足ニーズを充足するウォンツが、「好きな魚をオーダーにしたがって焼いて提供する」というサービスなのだ。

同様のニーズを持った人は少なくないだろう。何といっても、今日は有職主婦も多く、手間は軽減したい。また、小世帯化していることから、一度に大量に焼いてから覚悟を決めて一気に掃除するという風情ではないだろう。現状は、「総菜の調理器の空き時間に対応していた」のを「今後新店では焼き魚専用の調理場を設ける方針」(同)だという。

 ニーズ対応は、魚の販売機会を高めるだけの効用ではない。「手数料は焼き時間によって異なるが100円~300円程度」(同)と、レベニューアップの効果が期待できる。さらに、焼き時間は「イワシなどの小さな魚なら5分ほど、イサキなどの大型の魚は20分ほどかかる」(同)ということなので、店内の滞留時間が長くなる。買い上げ点数が増加する期待効果もある。

 ここまでで、既に「焼き売り」というサービスの効用は随分あるように思えるが、その意義は実はもっと深い。
 「加工度」というキーワードがある。
 農産物や魚介類などの生鮮食品は、収穫や漁獲高による相場の上下はあるが概ね横並びだ。価格優位に立とうと思ったら、大量仕入れなどによるコスト圧縮などしか収益向上の方策はない。価格勝負は企業体力をすり減らす。それだけではない。少人数世帯の増加、人口縮小の時代に大量仕入れしても売り切れるだけのパイがどんどんなくなっていくのだ。
 消費者に商品がどのような価格が受容されるかは、商品の価値構造と関係する。
例えば、飲料の場合、飲料を手に入れて実現したい「中核的価値」は「喉の渇きをいやせる」ことである。ミネラルウォーターの相場は約100円だ。清涼飲料は「炭酸でスッキリする」「甘くてオイシイ」などの「実体的価値」が加わる。平均価格は150円。トクホ飲料は189円が相場だが、「脂肪を燃焼する」などの効果が「付随機能」が加わっている。単純にのどの渇きを癒せる水の「加工度」が向上するに従って、プレミアム分が加わっていき、最終的には倍近い金額で買われているのである。

 オダキューOXの「オーダー焼き魚」の販売は、もちろん競合が模倣することはできるサービスだ。だが、片手間ではなく、専用調理場を設けるという力の入れようから、先行優位を構築しようという意図が見える。確かに、例えば定食屋で食べる同じ焼き魚でも、どうもパサパサして美味しくないものもある。焼き方の巧拙で味が分かれる。そのスキルを確たるものにし、「オダキューOXの焼き魚はうまい!」というパーセプションを獲得しようとしているのだろう。また、焼きたてを持ち帰っても若干冷めるのは否めない。掃除の手間や時間をかけない再加熱の方法をアドバイスしたり、焼き魚に合う副菜のレシピを提案したりという展開も予想される。

 「鮮魚を焼いて売るスーパー」から学ぶべきもの。それは、競合と同じ土俵で戦わないという戦略と、大量仕入れ・大量販売という旧来のスーパーのビジネスモデルが崩壊しつつある「縮む市場」と化した日本での生き残り策を「加工度の向上」というキーワードで考えさせてくれるものだと解釈できる。


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2010.05.26

ペプシ・バオバブ、アサヒ・グリーンコーラ飲み比べ!見えてきた戦略は?

 2010年5月25日、コカ・コーラがシェア№1を誇る日本のコーラ市場に、野心的な戦略を秘めた2つの商品が店頭に並んだ。Web上でも事前のニュースリリースで大きな話題を呼んでいたアサヒ飲料の「グリーンコーラ」と、毎年恒例の変わり種ペプシ「ペプシ・バオバブ」である。

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 何はともあれ、買い求めて飲んでみることにする。一般のコンビニでは、店舗によって発売日と店頭配荷にタイムラグがある場合もあるので、比較的早いJRの駅ナカコンビニを見てみる。さすがに新商品と期間限定商品。狭小な店舗にもかかわらず、2フェイスずつしっかり確保している。

 ペプシ・バオバブ。蓋を開けた瞬間に炭酸ガスの強烈な音。今年、ペプシネックス用に開発された炭酸の抜けを抑制する「ガスバリア性」を向上させた、新設計多層ペットボトルを使用していることがわかる。その効果もあってか、炭酸の刺激は舌に強く、「爽やかなコーラ」という売り文句の由来がわかる。いや、それよりも刺激が強いかもしれない。しかし、味には癖がなく印象が希薄だ。変わり種ペプシ独特の「ケミカルさ」は全くなく、甘味料を使ったゼロ系コーラに慣れていると、素直な甘味が実に美味しく感じる。

 アサヒ飲料は、「グリーンコーラ」を皮切りに「大人炭酸シリーズ」を展開していくとしており、そのフラッグシップともなる大型商品と位置づけての上市と見える。テレビは氷室京介がシブくキメているCMがガンガン流れている。
 心を落ち着けてふたを開け、グラスに注いで飲む。
 コーラとしての味は少し薄味。「強い刺激」を売りにしているが、炭酸の発泡は舌にビリビリくるほどではなく、素直な感じだ。自然に喉に流れ込む爽やかさが何とも心地いい。さすがアサヒ、「のど越しコーラ」という風情で好印象だ。

 さて、両商品の味から戦略を読み解いてみたい。

 まずは、 「ペプシ・バオバブ」は、その意外な味から戦略が読み解ける。
 そもそも、キュウリ味の「ペプシ・キューカンバー」や、昨年の「ペプシ・しそ」など、衝撃の「ケミカルっぽい味わい」で市場に激震を走らせてきた「変わり種ペプシ」は、究極のチャレンジャー戦略の結晶ともいうべき商品だ。ペプシブランドを持つサントリー食品の担当課長が日経産業新聞のインタビューに昨年10月、「ペプシ・あずき」の上市後応えていた。曰く「2本目を買ってもらうことは期待していない」と。チャレンジャーはリーダーとの差別化が命である。通常1年間で企画~上市する商品を、米本国とのやりとりなどを重ね、2年を要するという変わり種ペプシの最大のミッションは、ブランド認知と話題性喚起なのである。
 変わり種ペプシは06年にスパイシーな「レッド」、トロピカルフルーツ味の「カーニバル」、ジンジャー味の「ゴールド」の3商品が展開された。07年に「キューカンバー」、08年は、「ブルーハワイ」「ホワイト」、そして昨年の「しそ」「あずき」へと続く。
 今回の「バオバブ」は、アフリカに自生する巨木バオバブの実をイメージしたとある。バオバブは「星の王子様」に出てくる木でもあるが、イメージできる人は多くはないだろう。ましてや、「実がなるんだ!」という感じであり、さらにその味など想像の範囲には全くない。
 味の想像がつかないという意味では、05年のシリーズをさらに強化した感じであるが、実際の味はネット上の評価は概ね「オイシイ」である。謎な巨木の実からインスパイアされたという触れ込みで、どんな衝撃の味かと思えば「あれ?オイシイ」となる。前回の「あずき」は、少々甘過ぎな感じはするものの、結構オイシイという評価であった。その意味からも、今回は「思い切りすごい味に違いない!」という前評判をサクッと裏切った形だ。
 この「いい意味での裏切り」がチャレンジャー魂健在の証だろう。「この味なら、定番化できるんじゃないの?」と思ってしまうが、そんなことはしないはずだ。そして、衝撃の味の商品は、今年の秋~冬に再びやってくるだろう。

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 もう一方のグリーンコーラ。
 競合製品は4月26日に発売された、金色ラベルのコカ・コーラ、「コカ・コーラ ゼロフリー」だ。製品の基本特性としては、「保存料ゼロ、合成香料ゼロ、カフェインもゼロ」という点は全く同じ。しかし、圧倒的なリーダーに「同質化」を仕掛けるのは全く持って無謀だ。アサヒはそこに別の特性を加えている。広告コピーに「果実とモルトの素材派コーラ」とある。グリーンコーラのグリーンという名前の由来は、自然成分にあるという。同社のニュースリリースでは「アサヒビールの黒ビール製造の技術を活用し、黒麦芽を使用することで、コーラ飲料の特徴である力強い味わいを実現しました」ともある。氷室京介が「コーラが素材にこだわって何が悪い?」と挑戦的に語りかける言葉こそが、アサヒ飲料の切り札というわけだ。
 だがしかし、実際には筆者はそれほどの味の特異性も「力強さ」も感じなかった。むしろ、前述の通り「さわやか」だ。もしかすると、コカ・コーラ ゼロフリーは「オトナが夜のリラックスしたひとときを楽しむための飲み物」というポジショニングを打ち出している。その逆張りで、グリーンコーラは「大人が昼間のふとした休息時に飲みたくなるさわやかなコーラ」として飲ませたいのかもしれない。事実、よく晴れた日の昼下がりに飲んでみたい味なのだ。「大人のための、日中のリフレッシュ飲料」というポジショニングで勝負する意図なのだろう。

 変わり種ペプシ「バオバブ」は、ファンの予想さえもさらっと裏切った驚きの味わいで、チャレンジャーのブランド戦略を見せてくれている。
 もう一方の「グリーンコーラ」は、同じターゲティングをしているリーダーのポジショニングの隙を突いて、全力で展開している。どちらも、強大なリーダーに挑む戦略の事例として極めて興味深い。さわやかな味わいを楽しみながら、その動向をしばらく見守ってみたい。


 

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2010.05.25

日本市場のこれから:「あなたの顧客は何歳ですか?」

 喜多方ラーメン「坂内」「小坊師」を全国で56店展開する株式会社麺食が、若者向けラーメン店を開くという。そこからは、ラーメン店や飲食業界だけでない、今日の日本市場全体の課題が見えてくる。

 日経MJ5月24日フードビジネス欄に「喜多方ラーメン 若者客開拓へ新型店 麺食 量重視、メニュー拡充」の見出しで記事が掲載されていた。その理由は、「来店客が中高年や高齢者に偏っているため」であり、「メニュー、量、内装の見直しで若者の来店を促し、客層を広げる」狙いであるという。

 麺食が展開する2ブランドの喜多方ラーメンチェーンに行ったことがあるだろうか。
 同店は、喜多方地方の蔵をイメージしたナマコ壁の外装と民芸調の内装が特徴だ。肝心の味は、はもちもちシコシコの「平打ち熟成多加水麺」。 豚骨の旨味がしみる透明スープ。 余分な脂を落とした、とろけるような特製焼豚。それらが一体となって醸し出す、あっさりとコが同居した深い味わいのラーメンなのである。

 名物である焼豚ラーメン850円也は、丼からあふれんばかりに焼豚が麺を覆い尽くしている迫力メニューなのだが、何と、客層は「他のラーメン店より高齢者が多く、30~40代が4分の3を占め、10~20代は2割にとどまる」(日経MJ)という。
 若い客層がいないのは、同店は主に「ボリューム不足」に起因するとして、セットメニューの拡充と量の多いメニューを新規開発するという対応を中心に据えた。客単価は現状より20円アップの750円とするようだが、ボリュームアップを考えると、実質値下げに近いかもしれない。

 新戦略の正否はまだわからないが、同社の戦略転換のきっかけとなった危機感は、多くの企業が学ぶものがあるだろう。
 顧客は歳を取る。しかし、馴染み客・固定客が多いほど、その変化には気づきにくい。従来の常識で考えれば、「高齢者にラーメン」はあまり親和性がないように思い、通ってきているのは元気な顧客ばかりだと思い込んでしまう。ところがどっこい、ラーメンが国民食となった高度成長期あたりでその味を占めて、ラーメン大好きになった人々ももはや老人だ。同様な例では、ファストフード店に結構な勢いで高齢者がいるのも同様だ。しかし、「老い」は人に不連続で訪れる。
 例えば喜多方ラーメンであれば、元気いっぱいに、肉があふれんばかりの焼豚ラーメンを平らげていた客が、「最近ちょっとキツイかも…」とぱったり来なくなってしまうこともあり得るのだ。同社の危機感はまさにそこにあったのだ。
 ラーメン店ばかりではなく、多くの高齢客は嗜好の変化だけでなく健康上の理由などから、離反ではなく来店できなくなるリスクが常に存在するのである。

 人は永遠の存在ではない。故に、それは常に考慮すべき要素なのだが、検討し、対応策を考えられている企業は少ない。例えば、百貨店が苦境に立っている一因もそこにある。
 日本と比べて好調さが伝えられる韓国の百貨店の強さのヒミツもそこにある。
 日本より国民人口が少なく、より少子高齢化が進んでいる韓国においては、「待ち」のビジネスは通用しない。ニーズを掘り起こして需要を喚起することが欠かせないのだ。
 日本においては、若者の需要は各種専門店に奪われている。しかし、韓国では若者需要を百貨店がしっかりと取り込んでいる。それは、積極的に若者のニーズを探って、それに対応した品揃えや売り場作り、また、出店計画などを実行してきた成果である。

 但し、ターゲット層を大胆に変更すると、今まで自社の売上げを支えてくれていた子損顧客層の離反を招くことになる。その点、喜多方ラーメン坂内・小坊師の戦略には若干不安が残る。
新型店は、既存の「坂内」ブランドで展開し、現在の56店から13年までに100店を目指す新規出店計画は、いずれも内外装・メニュー共に若者向けに転換し、既存店も順次新型店に改装していくという。(日経MJより)

 韓国の百貨店は、実は若者客の取り込みだけでなく、高齢者へのライフスタイル提案が真骨頂なのだ。例えば、現代百貨店では、「中高年への若返り提案に力を注ぐ。実際の年齢より10歳程若い着こなしや健康管理、趣味などを、商品やイベントを通じて積極的に訴える」(日経MJ10年1月1日号より)という。つまり、新規顧客への転換だけでなく、既存顧客への提案による囲い込みを同時に行っていて、それらが車軸の両輪となっているのだ。

 もちろん、ラーメン店と百貨店では環境が違い、戦略が異なるのは当たり前で、どちらが正解というわけではない。しかし、この2つの事例から学ぶべくは、「自社の顧客層はどのような年齢なのか」を正確に把握し、それに対して、今後どのように対処すべきなのかを考えて、明確な手を打っていることである。

 少子高齢化によって、日本市場が縮小することはもはや避けられない。
 その環境下では、もはや今までの方法論は通用しない。検討すべき切り口として「年齢層」が大きな要素となっていることを認識して、戦略を練ることが欠かせないのである。

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2010.05.24

B to B営業担当者にとって欠かせないこと!

 「カナモリさんはコンシューマー向け(B to C=Business to consumer)のマーケティングが専門なんですか?」とよく聞かれる。実はそうではない。対企業向け(B to B=Business to Business)の生産財やITソリューションに関連するクライアント業務も結構手がけている。当Blogで記事として取り上げないのは、当然のことながらクライアント関連のことは書けないだけでなく、事例として解説しやすいB to Bの情報があまり流通していないことに起因する。

 その意味からすると、貴重な記事がネット上に掲載されていた。
マッキンゼーのサイトにある<The basics of business-to-business sales success>という記事だ。
 http://tinyurl.com/2fmjeez (記事全文閲覧には登録が必要)
 
 さらに、上記記事を翻訳・解説してくれているBlogがある。
 Web戦略コンサルタント・Takeshi ADACHI氏のBlog「Think CREATIVE」である。
 http://www.thinkcreative.jp/blog/web/1180/

 同氏が「成功するB2B営業のための原点回帰」と翻訳している上記記事の要点を引用させていただく。
 <営業マンがお客様との関係作りを行う際に押さえておくべき「基本」>に関して注目のポイントはまず、<お客様は製品やサービス(の仕様よりも)が自社のビジネスにどういう効果をもたらすかを知りたがっている>という点。
 当たり前といえば当たり前なのだが、この一文がB to BとB to Cの違いを端的に表している。つまり、消費者が購入の意思決定をする際には、まず、購入者自身が満足することが重要だ。また、購買行動は、ある時は衝動的に、もしくは日々の暮らしの中で習慣的に購入が行われることが多い。対してBtoBの場合は、その商品・サービスによって、何らか、収益の向上や生産性の向上、経費削減効果があるなど、企業の利益を目的として購入される。その前提で、<自社のビジネスにどういう効果をもたらすか>が明らかにされるのは、企業の購買担当者に取っては至極当然の要求なのである。なぜなら、その取引の内容によって、自身の業務評価にかかわる場合もあるため常に真剣であるからだ。購買は計画的かつ合理的な判断の下に購買が決定されるのが常である。それに応えることが基本だ。

 さらに「関係作り」に必要な要素<営業マンは取り扱う製品やサービスだけでなく、競合他社との訴求点の違いまで熟知している必要がある>と、<購買決定を左右する「被営業体験」>とされている要件である、<サプライヤーをどう評価しているかをマッキンゼーが調査したところ、最も重要な要素は(価格ではなく)製品・サービス自体の特徴と、そして営業活動を通した印象であることを発見できた>という点に注目だ。その発見は、マッキンゼーが1,252社を対象にした調査から抽出されたファインディングスであるという。

 つまり、B to B においては、営業担当者も「商品の一部」であるということなのだ。
 コトラーの「製品特性分析」では、製品の価値を3層に分解してとらえる。顧客が製品を手に入れて実現したい価値を「中核」という。そして、それを実現するために欠かせない要素が「実体」。中核の実現に直接関係ないが、その魅力を高める要素が「付随価値」という。
 製品の複雑さが高まったり、消費者の欲求の高度化したりという変化が顕著な今日、消費財でも「付随機能」のレベルが重要になってきているのは事実だが、B to Bにおいては、それ以上に付随機能が重要なのだ。なぜなら、新規のITソリューションや生産ラインの機器を導入したら、安定稼働するまでのサポートが欠かせない。つまり、サポートは「付随機能」であり、商品の一部である。
 さらに、導入に際して、その製品は自社にとって最適か。問題が起きないかといった情報を得るのは、購買担当者の死活問題だ。前述の通り、導入の正否は担当者の評価にも関わる。信頼できる営業担当者とそれがもたらす情報は、購買担当者にとって「対価を払うべき商品の一部」であることは間違いない。故に、商品の本体価格だけでの比較ではなく、営業担当者の価値までが「カスタマー・バリュー」として評価あれるのである。

 B to Bにおける最も重要な要素は、自社の優位性やポジショニングが「QCD」でほぼ表されるという点だ。QCDとは「Quality(品質)」「Cost(価格)」「Delivery(納期)」である。B to C においては自社の優位性を示す「ポジショニング」を、顧客の「KBF(Key Buying Factor=購買決定要因)」を基本として手を変え品を変えてアピールする方法を考える。しかし、前述の通り、企業の購買意志決定は極めて経済合理性に基づいているため、「QCD」でほとんどが決まってしまう。
 例えば、有名な日本電産の永守会長のスローガンは「確かな技術、値段は高め、しかし納期は半分」である。つまり、Quality=最高・Cost=高め・Delivery=半分というわけだ。

 営業担当者は価格や納期に関して、各部署や上司などと調整に最善を尽くしてクライアントに最もフィットする提案を行おうと努力するだろう。しかし、品質に関しては、営業担当者の範疇でない場合も少なくない。
もちろん、いわゆるソリューションなら、営業担当者がクライアント企業の問題を正確かつ、詳細に聞き出すことが適切なソリューション(問題解決)を提案するのに欠かせない。 
 しかし、いわゆる仕様が決まっている製品でも、営業担当者のアプローチの仕方次第では、それが製品の「付随機能」として、製品の一部として評価され、本体価格だけの価格勝負を回避できるということをマッキンゼーの記事は示唆しているのだ。

 今回のマッキンゼーの記事は極めて基本的なことを述べているが、1,252社もの企業を対象としたて行った実証調査の結果である。「基本」と思われるようなことも、その意味を十分理解して励行することが重要なのだ。

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2010.05.22

アサヒビールの挑戦:若者は「氷点下のビール」に振り向くのか?

 氷点下の温度帯(-2℃から0℃)の『アサヒスーパードライ』を飲めるバーが銀座にオープンした。それは「ビール離れ」といわれる若者向けの取り組みだという。

 氷点下の『スーパードライ』を体感できる!『アサヒスーパードライ エクストラコールドBAR』(同社ニュースリリース)
 http://www.asahibeer.co.jp/news/2010/0520_2.html

 「氷点下」という温度に行き着いたのも、同社が若者対策を模索しての結果である。
 通常、スーパードライの飲用推奨温度は4℃~8℃程度。しかし、<0℃で『アサヒスーパードライ』をお飲みいただいた場合、特に20代の若い層を中心に、ブランドの特長である「味のキレ」「シャープさ」「のどごし」などを強くお感じになる方が多くいらっしゃることが明らかになりました。(アサヒビール調べ)>(同)とのことである。
 これからの暑い季節、キンキンに冷えたスーパードライがノドを駆け抜けていく感触を想像しただけで、思わずノドがゴクリと鳴ってしまいそうだ。いや、本来の筆者なら想像している暇があるなら、5月21日のオープン日に駆けつけていたはずだ。禁酒中の身が恨めしい…。

■若者好みの味は0℃?

 未知の領域・0℃にキンキンに冷えた味わいに興味は湧くが、考えてみれば、そんなに冷たかったら味わいもないのでは?と思が、そこは「若者対策」。オジサンの好みに構ってはいられないのだろう。
だが、若者はなぜに、0℃のスーパードライの味を好むのか。
恐らく、それを好むのではない。普通の温度の味が「嫌い」なのではないか。なぜって、それは「苦いから」。
 飲み会の乾杯準備で「みんな、生でいいよね?」はもはや禁句だ。刺身を食べながら、「カシスグレープ」を飲んでいるからといって、「それって…」などというなど言語道断。若者と飲みに行く際の最低限のマナーである。それほどまでに若者はビールを飲まない。もう10年もすれば、ビール派の方がマイノリティーになっているかもいしれないという勢いだ。
 そここそが、アサヒビールの危機感なのだ。正直なところ、「味わってくれなくていい!のど越しさえ楽しんでくれて、それがクセになるなら!」という思いなのだろう。0℃でクセになり、家飲みで通常の4℃〜8℃を飲んでも気にならなくなるような成長過程を期待しているのだろう。

■毒が効かない村雨兄弟

 懐かしの横山光輝の漫画「伊賀の影丸」に、「村雨兄弟」というキャラクターがいる。毒の使い手となるために、幼少の頃から毒を少ずつ飲まされて育ち、毒に対する耐性を身につけているのだ。
 さて、初めてビールを飲んだときのことを覚えているだろうか。「その時、何歳でしたか?」とは聞かない。「お酒は二十歳から」だから当然だ。そして、その時の感触を覚えているだろうか。「うっぇ~苦っが~い!!」と、結構、衝撃的ではなかっただろうか。
それがしばらくすると、あら不思議。平気で飲めるようになって、オイシイと思うようになる。それを仕込むのは親だったり、先輩だったり、上司だったりと様々であるが、ともかく村雨兄弟の如く、少しずつ耐性を付けて立派な毒使いならぬ、ビール飲みになるのが人の成長でもある。

■ビール修行と憧れの崩壊

 斯様に、いっぱしのビール飲みになるには「修行」がいる。
 しかし、昨今、ムリに勧めれば「アルハラ(アルコールハラスメント)」と指弾される。(確かにムリはよくない!)かつて自分が受けたような「指導」などはできない。また、めっきり世代を超えた飲みの機会も減少している。
 指導や修行だけではない。ビールを飲むということは、ある種の「あこがれ」に背中を押されて、自主的に手を伸ばす(自習?自主練習?)ことも少なくない。しかし、昨今の若者に、ビールを「飲んでみたい!」と手を伸ばす動機は起きているだろうか。飲んでちょっと苦いように感じても「みんな、あんなに美味しそうに飲んでいるんだから、きっと自分が間違いなんだ!」と自己催眠にかけてさらに手を伸ばしてみたくなるだろうか。
そう。「苦い」と思っても、「これがオトナの味なんだ」と「修行」する動機が起きないのではないだろうか。ムリに苦さを我慢して「オトナ」になろうと思うほど、昨今の若者には「オトナ」の姿は憧れるほど魅力的に映っていないだろうから。そうして、「ビール修行」の伝統文化は崩壊していったのだ。

■アサヒビールが開けていた「パンドラの箱」

 0℃のスーパードライは、味よりものど越しが強調される温度。その「味わい」にフォーカスしてみれば、そのスッキリ加減は「新ジャンル」を想起させないだろうか。
 長引くデフレ不況は、居酒屋の景色をすっかり一変してしまった。280円や380円の低価格均一価格居酒屋の隆盛である。それらの店で出されるのは、仕入れ値の安い「第3のビール」などの「新ジャンル」が多い。
 アサヒビールは、新ジャンルが主力のスーパードライを侵食しないように、長く飲食店向けの「樽生」はスーパードライだけに特化し、新ジャンルを封印していた。しかし、大勢には逆らえず、新ジャンルの「クリアアサヒ」を苦渋の果てに解禁している。
 0℃のスーパードライを体験した若者のみならず、オジサンが、そののど越しを楽しんだ後に、通常温度のスーパードライに移行したり、戻ったりするだろうかという不安がよぎる。確かに0℃のスーパードライは美味いだろう。しかし、その後、「やっぱり、安い第3のビールで十分じゃないか?」と思われないかと考えるのは穿ちすぎだろうか?

■「モノ」ではなく「コト」としてのビール

 では、『アサヒスーパードライ エクストラコールドBAR』は成果を期待できないのかといえば、全くそんなことはないだろう。
 ビールを飲むということは、単に「アルコールを摂取する」「酔っ払う」ためではない。まして、外食で飲用するということは、単に「モノ」としてビールを求めるのではなく、楽しい「コト」として対価を払っているのだ。
 ビールは単に「のどの渇きを癒す」ための「モノ」ではない。「楽しいコト」の「触媒」である場合が多い。0℃のスーパードライにびっくりすることは、楽しいコトに他ならない。
 ビールの飲用は「文化」である。若者に「文化」を伝え、さらにはオジサンにも、価格に変えがたい「楽しいコト」を思い出させるために、『アサヒスーパードライ エクストラコールドBAR』には大いに期待したいところだ。(禁酒をいつ破ろうかとソワソワしながら…)

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2010.05.21

企画書作成セミナーを開催します!【好評終了】

競合に勝ち確実に業務を受注するには
論理的に相手を説得する事がポイント!
【競合に勝てる・受注率アップの企画書作成講座】

どんなにすばらしい企画やアイディアでも、それが相手に正しく、魅力的(戦略的)に伝わらなければ実現にいたりません。
ましてや競合相手とのコンペともなると、企画書作成にも一工夫が必要となります。
本講座では、受注率を高める企画書作成のポイントを、ダイジェスト版で3時間でお伝えします。


<受講対象者>

・広告会社のプランナーで経験3~5年くらいの方。

・各企業のマーケティングセクションなど企画書作成の機会が多い方。

・各企業の営業職の方で企画書作成のノウハウを身につけたい方。

・社内企画書作成の機会が多い方。

・その他企画書作成のノウハウを身につけたい方。


<特にこんな方にお奨め>

・企画書は書けるがもっと魅力的に作成し表現したい。

・自分の考えやアイデアを論理的に整理出来るようになりたい。

・分かり易い企画書作成が出来るようになりたい。

・企画書となるとどうしても文字ばかりを羅列してしまう。

・企画書作成のノウハウを再度おさらいしたい。


■受け手に受け入れられる企画立案のポイント

・提案先の要望を遵守し、受けての立場を考える
・提案内容は共感を呼ぶタイトルと、内容がひと言で分かるコンセプトワードを
・企画立案内容の提案効果を示す    

■企画立案の「手順」と企画書作成の「構成」は同じ

・背景整理→戦略立案→戦術立案→目標設定・予算提示

■いきなり企画書作成に入らない!

・まずは企画のタイトル、目次(構成と階層)作成づくり。これができれば、8割できたも同然

■「聖域なき構造改革」

・タイトルコンセプトワードは端的に内容がわかり、アテンションを引くワードにする


<講師>

金森マーケティング事務所・提携コンサルタント

鈴木 準(すずき・じゅん)
マーケティングコミュニケーション・コンサルタント
株式会社ジェイ・ビーム」代表取締役

プロフィール
http://tinyurl.com/yytmska


<主催>

金森マーケティング事務所

<開催日・会場>

2010年5月26日(水)・千代田区半蔵門

<定員・参加費用>

定員20名・7,350円(税込み)

<詳細・お申し込み>

http://bit.ly/jun_planning

お申し込みをお待ちしてます!!


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2010.05.19

勝つことだけが勝利ではない?ロッテリアの戦い方を考える

 ついこの前まで、「ロッテリア」だった店が、「バーガーキング」になっていた、という経験を最近していないだろうか。それは、ロッテリアの資本・経営が変わったことと関係する。

 ロッテリアは2005年11月末日に企業再生会社リヴァンプと資本提携し、経営再建を進めていたが、2010年4月リヴァンプが経営から離脱し、再びロッテホールディングスの100%傘下となった。
一方のバーガーキングは、1996年にJTがバーガーキングジャパン株式会社を設立し日本での展開を開始したが、当時のハンバーガー業界の低価格戦争に巻き込まれて、2001年3月末に撤退。2006年11月にロッテリアとリヴァンプの共同出資によって日本に再上陸したものである。バーガーキングにおける両者の資本関係は残されており、両者の何らかの調整によって、ロッテリアからバーガーキングへの転換が行われたものと思われる。

 少々、前置きが長くなってしまったが、本稿の論点はバーガーキングではない。リヴァンプ離脱後のロッテリアについて考えてみたい。

 企業の業界内のポジションを、いわゆる「戦略ポジション」で考えてみると、今後どのような戦いを展開すべきなのか、競合はどのような戦いを仕掛けてくるのかが、「定石」から予測しやすくなる。
戦略ポジションとは、P.コトラー流に考えれば4類型で考えられる。業界№1のシェアを持つ存在は「リーダー」と呼ばれ、それに挑戦する存在が「チャレンジャー」。挑戦する力がなければ「フォロアー」と呼ばれる存在になる。但し、他企業には浸食できない独自の存在領域を確保できているのなら、「ニッチャー」という存在となる。

 ハンバーガー業界の戦略ポジションは、「マクドナルド」がリーダーであるのは誰しも知るところであろう。以下のポジションは、「モスバーガー」がチャレンジャーであるとよく言われる。または、「ロッテリア」の名を上げる人もいるだろう。ニッチャーは、それこそ米国式直火焼き本格派の「バーガーキング」や、たばこも吸えて大人な雰囲気な「フレッシュネスバーガー」か、ハワイ生まれの高級バーガー「クア・アイナ」あたりだろうと、知っている人は思いつくはずだ。では、フォロアーは?と考えると悩むかもしれない。ダイエーの店舗を中心に展開している「ドムドムバーガー」か?と、マイナーな名前を思い出した人もいるかもしれない。

 日経MJ5月17日に「第36回日本の飲食業調査」の集計結果が載っている。その中の「店舗売上高」を見ると、ハンバーガー業界の力関係がよくわかる。
 業界1位は当然、マクドナルド。以下、モスバーガー、ロッテリアの順だ。しかし、ランキングは全飲食業で付けられているため、各々1位、13位、49位である。マクドナルドは全業態通しても1位と圧倒的な強さだ。
店舗数と売上高を見ると、さらにその差がよくわかる。マクドナルドは3,715店舗、売上高約5,319億円。モスバーガー1,369店舗、950得億円。ロッテリア484店舗、326億。こうしてみてみると、圧倒的な差があることが判るだろう。

 定石はあくまで定石。
 上記を見れば、「リーダーに戦いを挑むのがチャレンジャー」は別の意味合いも見えてくるのではないだろうか。
 モスバーガーは、チャレンジャーではあるが、決して「勝ちに行くこと」はない。圧倒的なリーダーに本気で勝ちに行けば、とんだドンキ・ホーテ伯になってしまう。顧客の裾野を広げる、若年層狙いのパテを小さくして低価格にしたバーガーを出したり、今度はかつてない高価格な「ぜいたくバーガー」を出したりと、一見するとマクドナルドの戦略に挑戦しているようにも見える。しかし、決して勝ちにいっているわけではない。
モスバーガーは、マクドナルドにチャレンジすることによって、マクドナルドと異なる自社の差別化ポイントをアピールしているのだ。リーダーあってのチャレンジャーであり、勝ちに行かないチャレンジで価値を向上させるという、非常に巧妙な戦い方が最近すっかり板についてきているように見える。

 では、ロッテリアはチャレンジャーなのだろうか。
 そもそも、ロッテリアがリヴァンプの再生支援を受けるまでに至った原因は、マクドナルドへのチャレンジにある。1990年代、バーガーキングが巻き込まれた低価格戦争は、1987年にマクドナルドが展開した390円の「サンキューセット」に対抗してロッテリアが380円の「サンパチトリオ」を投入したことで口火を切った格好になった。しかし、結果は惨敗といっていい。
 ロッテリアはもはやマクドナルドに勝ちに行くことはないだろう。では、モスバーガー同様、チャレンジするのだろうか。
 「絶品バーガー」「絶妙バーガー」のシリーズは確かに美味い。「美味しくなければ返金します!」というアピールも、チャレンジャーならではの展開に見える。しかし、それはフランス帰りのシェフ、嶋原氏をロッテリアが商品総合プロデューサーとして採用できたことに依存する。つまり、多分に属人的な要素なのだ。
 むしろ、ロッテリアの真骨頂は、100円、150円の「うまいやすいメニュー」にある。100円のハンバーガー、150円のハムカツバーガーなどのメニューは、マクドナルドの100円・120円メニューに味、ボリュームとも勝るとも決して劣ることはない。そして、マクドナルドは店内装飾や什器をオシャレ化した新世代店舗では、100円メニューを置かない方針を明示している。

 つまり、ロッテリアは「フォロアー」のポジションでしっかりと地位を築くべきなのだ。
 「節約疲れ」などというキーワードがメディアに飛び交うようになった。モスバーガーは、それを狙って「ぜいたくバーガー」を投入したとニュースリリースで明言している。しかし、あくまで節約志向を貫く層もいる。コストパフォーマンスを低価格の中で最大化したいと考える層もいる。そうした層をターゲットとしてしっかりと刈り取ることこそ、同時に独自のポジショニングを明確にできるチャンスであるはずなのだ。
 フォロアーはリーダーにチャレンジしない。市場拡大や需要喚起はリーダーにやらせる。自分たちは、価格やスペックを一段下げ、リーダーが取り込めない、リーダーに流れない層を取り込むのだ。一見、落ち穂拾い的なイメージがあるかもしれないが、効率はいい。

 勝つことだけが勝利ではない。
 マクドナルドの「一人勝ち」といわれるハンバーガー業界で、「再建段階終了」とリヴァンプが離脱して、一人歩きを始めたロッテリア。自社の強みを活かしてしっかりと生き残っていくことを願ってやまない。


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2010.05.18

伸びるミツカン「納豆事業」のヒミツとは?

 納豆が伸びるといっても、糸を引いているわけでも、粘ついているのでもない。ミツカンの納豆事業のシェアが伸びているというのだ。そのヒミツを探ってみよう。

 <納豆販売戦線に異状あり ミツカンがタカノ追い上げ>(5月18日livedoorニュース/J-CASTニュース)
 http://news.livedoor.com/article/detail/4775354/

 納豆市場の業界内シェアはここ5年で様変わりしている。2005年時点では、タカノフーズ25.6%、ミツカングループ10.8%という状況であった(富士経済グループ調べ)。但し、この業界は、業界第3位以下は全てシェアが1桁台であり、10位以下の合計が31.4%を占めていることだ。
 業界内の動きでは、同05年に7%のシェアを持っていた「くめ・クオリティ・プロダクツ」が前出の記事にもあるように、09年9月に倒産。ミツカンに吸収される。現在では<ミツカンはくめ納豆の事業を吸収後、業界シェアを5%ほど上げ、現在は約20%。最大手、タカノフーズの約30%を急激に追い上げている>(同)という状態だ。
 05年に比べ、くめの吸収前のミツカンも、タカノフーズもシェアが向上しているのは、記事にある<原料の大豆価格が比較的高止まりしており、地方に乱立している小規模業者の廃業も続いている>という記述と符合する。つまり、中小・零細がひしめき合っていた業界に寡占化の波が訪れたのだ。

 業界2強の各々のシェアとポジションはどのような意味を持つのだろうか。
 業界トップが約30%というシェアの場合、「クープマンの目標値」にある「市場影響シェア(26.1%)」に近い。市場に影響をもたらすシェアを獲得しており、一歩抜け出した状態を示している。しかし、2位以下がこのシェアであれば、トップを狙えるポジションにあると解釈できるが、トップがこのシェアであると逆転される可能性あるという意味になる。ミツカンの猛追は、一気にトップを奪う狙いがあると解釈できる。

 納豆市場でトップのポジションを虎視眈々と狙うミツカンの強さのヒミツは、同社の事業の歴史を振り返るとよくわかる。
 ミツカンのメイン事業は当然ながら納豆ではない。「酢」だ。その事業のもう一つの柱とすべく、納豆事業に1997年に参入している。実は、その前に「豆腐事業」に参入を検討した時期があると、筆者は業界関係者から聞いたことがある。しかし、酢における醸造、発酵を管理する技術と、豆腐作りの技術にはシナジーが働かず断念したと聞いた。そこから、発酵技術を用いる納豆事業に進出したとのことである。
 タカノフーズは1932年(昭和7年)に豆腐作りで創業し、1942年に納豆の生産・販売を始めたと社史にあるが、それは大豆という「原料」を用いた「生産シナジー」を活かしたと解釈できる。一方のミツカンは、豆腐を断念し、「発酵」という技術を用いた「生産シナジー」を発揮する道を選んだ。同じ納豆にたどり着いた両社の原点は大きく異なるのである。

 両社の原点の違いは戦略にも現れる。
 タカノフーズは納豆の大規模生産のパイオニアでもある。高度成長期、チェーンストアの出店ラッシュに対応して生産体制を増強してきた同社であるが、まだ需要に追いつかないという状況を解消するため、昭和47年1972年に日産20万食体制、1975年に50万食体制段階的に強化を図ってきた。
 一方のミツカンは、酢の醸造という大規模生産のもう一方の柱として、その規模も活かせるという理由から納豆を選んだ経緯からすれば、はじめから「規模」を追うことは事業計画に組み込まれたことであると解釈できる。そのため、アグレッシブにシェア獲得に向けた動きを見せるのである。

 ミツカンの納豆事業における大きなエポックとなったのが2000年の「におわなっとう」の発売である。事業参入から2年、さらなる成長を目指して競合と差別化ができる要素を模索していたという。その時、消費者の立場で考えたところ「納豆は好きだけれど、においが気になる」というニーズギャップがあるのではと思い至ったという(同社ホームページより)。酢の醸造発酵で培った「菌」の技術で試行錯誤し、1年間かけ、2万個の納豆菌の中から「においの元を作らない菌」を発見した。(同)そして現在、同社は「納豆菌」の保有数では、日本一(Wikipediaの記述)を誇るに至っているという。

 「経営戦略」と「マーケティング」の違いは何か?と尋ねられることがよくある。様々な解釈があるが、一つは「視点の違い」だと筆者は説明することがある。
 ミツカンの例で考えれば、企業としてのさらなる発展のため、もう一つの柱となる事業を構築しようと納豆事業を立ち上げた。それには、成長戦略として「生産シナジー」が図れるという内部要素があったからだ。いってみれば、それらは全て「自社の視点」である。
 それが、「競合との差別化を図る」という、これも自社の視点であるが、「顧客のニーズギャップ」に注目して解を得ている。つまり、この時点で「顧客視点」への転換が図られているのである。

 マーケティング視点、顧客視点を中心とした開発は、同社にさらなるエポックメーキングな商品を誕生させることとなった。2008年発売の『金のつぶ「あらっ便利!」』がそれだ。

 ミツカンは顧客の声を調査して、「納豆のパックのフィルムやカラシなどの小袋が開けづらかったり、開ける際に手が汚れたり、開けた後の始末に困るなどでイライラした経験がある」という人が9割に上ることを明らかにした。そこで、同社は調味料メーカーとしての技術を応用し、タレにとろみをつけ、つまんで混ぜられるようにするという、「コロンブスの卵」的な解決策を見いだしたのである。
 パッケージを開ける時のイライラなど、普通に考えれば「しかたがないこと」と思ってしまうことだが、「便利になりました」と提案されれば、試してみよと購入の手を伸ばす理由になる。顧客のニーズギャップに注目して、「購入棄却理由」を払拭し、「購入理由(KBF=Key Buying Factor)」に転換していくことは、まさにマーケティングの真骨頂だといえるだろう。

 納豆市場のトップシェアを狙うミツカンの強さのヒミツ。それは、一つは、自社の技術や生産体制という「生産シナジー」を活かし、「規模化」を前提とした「経営戦略」。もう一つが、「顧客視点」に徹底して踏み込んだ「マーケティング戦略」。その二つがシームレスで絶妙なバランスを構築していることにあるといえるだろう。

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2010.05.17

シブい進化だ! auの夏モデル!

 スマートフォンには目もくれず、ひたすら「ガラパゴス携帯」、略して「ガラケー」と揶揄される従来型の携帯電話端末を愛して止まない筆者にとって、例え通信キャリア違いでも新機種の発表は見逃せない。
 そして、本日17日、KDDIが携帯電話ブランド「au」の夏モデル13機種を発表したのだが、その進化は実にシブくすばらしいものであった。

 KDDIには、auのサブブランドとして、かつての「デザインプロジェクト」の流れをくむ「iida」ブランドがシンプルにして独特の世界観を構築している。そのため、au本体ブランドは、携帯電話の本来の機能とは関係のない各種機能が満載されるという、実に見事な「ガラパゴスっぷり」を見せてくれる。
 今回も、カメラ系携帯はその機能をさらに向上させ、一昔前のコンパクトデジカメを軽く凌駕している。

 カメラ機能の向上について、「携帯電話の本来の機能とは関係のない」と前段でさらっと書いたが、では、携帯電話の「本来の機能」とは何なのかを考えてみよう。

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 フィリップ・コトラーの「製品特性3層モデル」のフレームワークだ。
  携帯電話の「中核価値」は必要な時にいつでも通話やメールなどでコミュニケーションが取れることだ。中核価値を実現するために欠かせない「実体」は、どこでもつながることや、電池の持ちがいいこと。メールなどの入力がしやすいことなどである。カラーバリエーションや、デザイン、そしてカメラの性能などは、中核の実現には影響しない付加価値である「付随機能」である。

 今回の夏モデルの眼目は、筆者は「全機種防水機能付き」である(スマートフォンを覗く)ことだと考える。
 「防水機能」はどのレベルの価値に位置づけられるのかといえば、本来、中核である「必要な時にいつでも通話やメールなどでコミュニケーションが取れること」を実現するために欠かせない要素であるため、「実体」である。しかし、今まで技術的に全機種に適応することができなかったため、「付随機能」的に扱われてきたのだ。
 実際の生活の中ではどうだろうか。これから雨の季節になる。雨中での通話やメール確認はついやってしまう。風呂に入っているとき電話が鳴って、濡れた手で携帯をつかんでしまったこともあるだろう。そんな心配が無用になるのだ。その機種を買っても。

 特定の機種ではあるが、他の「実体」を強化したものも目立つ。
 スマートフォンに採用されているクアルコム社の1GHzCPU「Snapdragon」を搭載し、E-mailの起動などが2.3倍速くなるという。携帯の微妙な反応の遅さに「イラッ」とした経験がある人も多いだろう。そうした問題を解消している点も実に渋い。
 さらに、日立製の「beskey」という機種は、メール入力時などのキーボード入力のクセに応じて、最適なキーボードの形状を3種類から選べるという。実は、筆者を含めガラケー偏愛者はスマートフォンのタッチパネルがダメで、キー入力にこだわる人が多い。ある意味、ガラケー愛好者のニーズに応えた製品作りといえるだろう。

 では、今回の夏モデルでは「付随機能」の進化はなかったのかといえば、これまた驚きの機能を搭載している。
 携帯電話で無線LAN対応にできる「au Wi-Fi WINカード」を、本体のmicroSDカードスロットに挿入して使用できるというのである。つまり、KDDIが提供している、下り最大54Mbpsの無線LAN機能が携帯電話端末で利用できるのである。
 もはや、「どんな大容量コンテンツのダウンロードも怖くない!」という状態だ。だが、よく考えれば、それって、もはや携帯電話ではないのでは?とも思えてしまう。それぐらい「付随機能」としては飛び抜けているともいえる。
確かに携帯電話にI-modeが搭載された時に、「それって、電話じゃないじゃん!」と思った覚えがあるが、同様といえば言い過ぎだが、インパクトのある進化ではある。

 スマートフォンやi-Pad、電子書籍などの話題が華やかだが、まだまだ、マジョリティーは動かない。レイトマジョリティー(後期大衆)やラガード(遅延採用者)相手でも、十分ビジネスにはなる。auの「ガラケー強化策」には、愛好家としても拍手を送りたい。


参考・ニュースリリース:au携帯電話の新ラインナップ発売について
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2010/0517/index.html

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2010.05.14

話題のMOSDO! に行って来た。

■本日は弊社スタッフの書き下ろし記事をお届けします。

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西幡 治美 (にしはた・はるみ)

有限会社金森マーケティング事務所
コピーライター・プランナー

大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。広告制作会社、大手アパレルメーカー販売促進担当を経て現職。
スポーツ分野から農業まで、幅広い分野で販売促進提案から商品開発のプランニングまでを行う。

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話題のMOSDO! に行って来た。

 広島の人気お買い物スポット、イオンモール府中ソレイユに記念すべき第一号店として開店したMOSDO! (以下、モスド)は、ミスドとモス、企業側の思惑とイオン陣営の思惑、そして私達消費者の思いがあれこれ垣間見える興味深い所だった。

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 モスドは、ミスタードーナツ(以下、ミスド)を経営するダスキンと、モスバーガー(同、モス)を経営するモスフードサービスが資本業務提携する事により生まれた新しいブランド。
 1号店オープンに伴う両社連盟の発表に「新商品開発や、共同販売をはじめとするさまざまな側面において、両者の強みを生かした施策を展開していきます。」(2010年3月4日付)とあるように、今までも様々な取り組みが実現されてきた。同じ食材を使ったコラボメニュー、共通テーマでのCMや、互いへのオマージュ的メニューなど、ハンバーガーも食べたいドーナツ好きや、ドーナツも食べたいハンバーガー好きに対して、両方が一度に楽しめるアピール提案を消費者に対して行ってきた。
 企業側としては、同食材の一括仕入や、近隣店舗への配送一本化、顧客の共有といった良い事が共同運営の難しさよりも勝るし、投資家さん達にも資本増大、業務拡大、輸送時のCO2排出減少などエコへの取り組みもアピールもできるしで「素晴らしい!」となり、現在に至るというわけだ。

Mosdo1


 さてさて、巨大モールの中、若干迷子ぎみにたどり着いたモスドは、森の中に突如現れたお菓子の家のように、魅惑のたたずまい。
 子供の頃に体験した食堂車でのドキワク感や、往年のミスド&モスを彷彿させるかのようなボックス席のしつらえは、女子はもちろん、親子連れにとっても魅力的。隣はマクドナルド、向かいはサーティワン、というファスト&スイート激戦地ではあるものの、その期待に応えて店内は行列をつくるほどの混雑ぶり。店内をのぞいて驚いたのは店員さんの多さ。客席も混んでいたが、それよりもごった返し感が目立ったのはカウンター(とキッチン)。ユニフォームのハンチングがひしめく、うごめく!

 「平日だというのにすごい入りだ…」といよいよ中に突入…と思いきや、入り口にはこんな看板が。
 「モスバーガーの注文はこちら ミスタードーナツの注文はこちら」
Mosdo3_2
 え?何これ?モスドじゃないの?と若干の不安を抱きつつ、とりあえずゴー。L型のカウンターには、レジがずらり。「片方のメニューだけご希望のお客様の為に分けた」という「モスレジ」「ミスドレジ」の2種類が角を隔てて並ぶ。このレジがちょっと不思議。ミールメニューはどちらも頼めるが、ドリンクはそれぞれのレジからしか頼めない仕組み。つまりコーヒーをモスで頼んだ人と、ミスドで頼んだ人がいたら、ミスドの人にだけ「おかわり」が貰えるのだ。
 ほんとに「お客様の為に分けた」のかな? 「同一商品一括仕入れ」のメリットはお客に還元無し?あれれ?
 というわけで、バーガーメインのお客、とドーナツメインのお客は、並ぶレジが限定されるのであった。
 セットメニューは、頼みやすいように(?)シンプル。売り上げ主軸とみられる「モスドセット」で買える相手方のメニューは限定され、モスからサラダ等の新商品を含めた5種、ミスドからは3種。ドリンクはそれぞれのレジこと。Tea Time Setは新製品ドーナツパフェと、ドリンクを選ぶ。セットメニューでない物を選ぶには追加注文する。

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 百聞は一見にしかずということで、私も頼んでみる。
 モスド店舗限定ドーナツ「もみド(広島銘菓もみじまんじゅう風ドーナツ)は売り切れたようで、いやはや残念。ということでフツーにモスドセットの注文をし、追加でドーナツを頼む(並んだのがたまたま「ミスドカウンター」だったので、モスの他メニューは分からなかった)
 席について、美味しくいただきながら、あたりを眺める。
 平日夕方の利用時のお客さんは実に様々。放課後の学生さん、親子連れ、カップルさん、スーツの皆さん。隣のマクドが狙う客層と同じく、バリエーション豊か!食べているものも、主食におやつ、飲み物だけと、取りこぼしがないように見える。

 けど、なんか物足りない…。インパクトが、ガーンと来るものがないのだ。
 店にいる間中、そして帰途についてからもなんだか満足を覚えない私の気持ち…なぜだ…?
 そんな私に一緒に行った連れ合いが帰りの車中で一言。
 「あれやったらマクドでもええよね」
 うん、そうだよね……そうなのだ。
 モスでも、ミスドでもない、モスドはマクドみたいなのである。

Mosdo4 私達消費者が外食する時に大事なものは、TPOに合わせ変化する。しかし根底にあるのは「美味しくて満足できる時間」。それが地域限定だったり、さらに特別だったりすると素敵さは倍増する。
 企業側のオペレーションや出荷物流の効率化とかいった、バリュー・チェーンなんて関係ない。匂いやプロセスの増大回避の為のメニュー簡素化や、きっと最後まで調整できなかった飲み物のこだわりやしがらみだとかは「何それ?」なのである。
 もし私が今後、混雑日に立ち寄ったフードコートでモスドとマクドの前に立ったならきっと「混んでなさそうな方」に入る事だろう。
 理由は「どっちの店にも主食もお菓子もコーヒーもあるし、どっちの店でも同じような時間を過ごせる」からだ。しかもスピードという軸で各店を切ったなら、マクドはかなり優位になる。ファストフードでの「時間軸」はかなりの強烈カードだろう。

Mosdo7


 折角合体したミスドとモス。2つの会社がタッグを組む所まで行ったのだから、ここはもう一段思い切って「日本ではじめて」に踏み込んだら良かったのにと思う。企業としての「競合に対抗する手段」まずありきではなく、「大好きなお店が一つになった!」という顧客のハッピーサプライズ欲求を満たす事をまず、考えてみて欲しい。それをふまえなくしての合理化や効率化は、顧客側の立場で言わせてもらえば「面白くない」のである。

 そうは言っても「仕方ない」部分は多々あっただろう中で、新たに提案されている「もみド」などの限定メニューは、それ目当てで行きたくなるし、カワイイ店内やPOPは、どちらの既存店舗にもない新しさが感じられつつも「ボックス席」の設置などは、なんだか懐かしかったりもした。
 匂いやスペースの問題で複雑な調理が出来ないのであれば、サンドしたり暖めるだけのベーグル系とか「菜摘」シリーズの復活もいいなと思う。
 スイートポテト等の「焼き目入れ」系やアンドナンドのような「ひと手間かけ」系も、そんなに多くのスペースは必要ではない気がするから、モスドはこれからどんどん進化していくのだろう。という気がする。
 別に既存メニューが1つ2つ、でもいいじゃないか。
 やっぱり「モスバーガー」がイチバン!
 それでも「オールドファッション」フォーエバー!
 というファンが多い大御所を押さえつつの「モスドでしか食べられないスペシャル」が満載のお店は、なんと魅力的な事か。(それができりゃ苦労しないか…)
 両社名を伏せる事無く、「みんなのために、タッグを組んだよ!」と堂々と正面切って言える両社の思い切りは、互いのブランド力を信じるが故。きっと各地に進出が予想されるだけに、行方を楽しみに見守りたい。全国各地に「地域限定メニューがあるモスド」が増えて「MOSDO!巡礼の旅」などをファン達が楽しんでくれたりすると面白いなと思う。

 ところで、このMOSDO!が出店した広島のイオンモール広島府中ソレイユ。テイクアウトカフェが1階だけでも3店舗、全部合わせるとなんと5軒にもなる。フードモールを見回してみると、カフェだけでなくタピオカスイーツや、ハンバーグ、丼、アイスクリームなど、競合他社店舗が軒を連ねているジャンルがある。なんとスーパーも2つ(これはターゲットが明確に分かれているので競合とは言えないかもしれないが)競合が無くて多くの店が揃う方が、集客率が上がりそう…なんて思ってしまうけれど、そこはアミューズメントな巨大ショッピングモール。多くの人が訪れる場所でお客を分け合う方が顧客のゆとりにつながる、目につく・気になる・流される…のね、きっと。
 各店に対してもお互いが差別化を図り、しのぎを削って切磋琢磨する状況をあえて作り出すことでモール自体が活性化し、さらなる集客を生む…こんなイオン側の計算もちらっと見えたりして、大きなプロジェクトっていうのは、本当にたくさんの脳みそが集まって動いているんだなぁと感心することしきりの一日だった。

 そしてやっぱりもみドが気になるのであった…。


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2010.05.13

不景気下で最高益・亀田製菓の強さのヒミツを読み解く

 社名を聞けば「亀田のあられ、おせんべい♪」のサウンドロゴが思い浮かぶ人も多いだろう。「柿の種」や「ハッピーターン」で有名な亀田製菓が11日、2010年3月期連結決算を過去最高と発表したという。その強さのヒミツを読み解いてみよう。

 <「ハッピーターン」で史上最高益の亀田製菓が増配 >(5月12日YUCASEE MEDIA/ゆかしメディア)
 http://media.yucasee.jp/posts/index/3422

 不景気に各社があえいでいる中、売上高は6期連続で最高を更新。経常利益・純利益共に過去最高と何ともうらやましい業績だ。「柿の種」や「ハッピーターン」などの主力商品を中心に戦略を展開し、同記事によると、<価格競争に参加するのではなく総量の調整で乗り切ったり、またTVCMなどで積極的に販売促進を行っていったこと>が勝因であるようだ。また、すでに米国など海外展開をしている柿の種も好調で、今後も海外展開を積極的に行っていく>という動きも見逃せない。

 成長戦略を考えるフレームワーク、「アンゾフのマトリックス」で同社の展開を分析してみよう。
 マトリクスは、縦軸に既存市場で勝負するのか、新市場に展開するのかという市場の軸をとり、横軸に既存製品で勝負するのか、新製品を開発するのかという製品の軸をとる。次にその掛け合わせで、既存市場を既存の製品で深掘りする「市場深耕」、新市場に既存製品を展開する「新市場開拓」、既存市場に新製品を投入する「新製品開発」、新製品を新市場に展開する「(狭義の)多角化」の4象限を作る。

 同社商品の一つ、「ハッピーターン」は徹底した「市場深耕」型の商品である。市場深耕とは、製品の使用用途や使用機会向上などによって、既存顧客の購買・利用を向上させる戦略だ。製品そのものを大きくかえることはない。
 ハッピーターンはうるち米・もち米由来のサクサクとした細長い楕円形のせんべいに、ハッピーパウダーと呼ばれる甘辛の旨味成分の粉が振りかけてあるのが特徴だ。そのパウダーに惹きつけられるファンが後を絶たず、1977年以来のヒットを続けている。ファンは粉に惹かれていることを同社はよく理解しており、せんべいの表面に、粉が付着しやすいようにパウダーポケットと呼ばれる凹凸を付けているのも特徴だ。
 商品ラインナップはユーザーやチャネルのニーズに合わせて、包装容量を変えている他はハッピーパウダーの付着量を変化させている。パウダー2倍や、今春ついに「パウダー250%ハッピーターン」という最強の商品を投入し、中毒状態に近いディープなファンを狂喜させた。

 もう一方の主力商品である「柿の種」は、既存顧客に新商品を次々と提供する「新製品開発」と、新市場に既存製品を投入する「新市場開発」を展開している。柿の種は同社オリジナル商品ではない。元祖は1923年(大正12年)に新潟県長岡市の浪花屋製菓が作った。浪速屋製菓の商品は今日でも新潟土産として県内観光地や駅構内で数多く売られている。他にも「でん六豆」で有名なでん六なども柿の種を製造しており、競合として存在する。
 柿の種は、昨今「フレーバー勝負」が続いている。浪速屋製菓の土産として、チョコやホワイトチョコ、きなこなどをコーティングしたものが人気を呼んでいる。でん六はわさび味を展開。亀田製菓はわさびの他、「スパイシーカレー」味まで投入している。食品業界では、商品が陳腐化しないように、味のバリエーションを新商品として投入するサイクルが早いのが特徴であるが、長い歴史を持つ柿の種がどこまで進化するか見物ではある。

 「新市場開拓」はゆかしメディアの記事に<米国など海外展開をしている柿の種も好調>ともある。
 <2008年4月にアメリカのカリフォルニア州で柿の種を「kakinotane」の名称で試験的に販売、その後販路を拡大した>とWikipediaに記述がある。また、市場特性に合わせて商品を最適化している点も見逃せない。<[アメリカ版の柿の種はアメリカ人の嗜好に合わせ、イリノイ州産の大き目のピーナッツを使用しており、ピーナッツ自体も塩味で味付けされている>(同)という。そして、商品ポジショニングも<アメリカでの健康ブームに合わせ、ノンフライであることを売り文句にしている>(同)と明確化しているのである。

 マーケティングミックス(4P)でも検証すると、(商品)は、ハッピーターン、柿の種、「おばあちゃんのぽたぽた焼」などのスター商品(Product)を、各種販売チャネル(Place)にパッケージ容量などを最適化して投入。さらに海外チャネルも開拓した。
 そして、同社の眼目は価格(Price)と広告展開(Promotion)にある。
 冒頭のゆかしメディアの記事に、<価格競争に参加するのではなく総量の調整で乗り切った>とある。長引く不景気の中で、多くの食品メーカーを原材料の高騰が襲った。価格転嫁ができずに利益を減らしたり、値上げによって客離れを起こしたりした例も少なくない。「適量化」とは、「量目(りょうめ)調整」ともいわれる、価格を据え置くか下げ、内容量を減らす実質値上げである。やり過ぎれば、同じく客離れを起こすことになるが、うまい落としどころを探れば、売上げダウンを回避できる。パック売りのソーセージなどが成功例としてある。亀田製菓もその微妙なさじ加減を成功させたのである。
 さらに、不景気での売上げダウンに対応して、広告投資を抑制し、利益を確保して黒字化を狙う企業が相次ぐ中、積極的な広告投資という逆張りも奏功したのだ。

 同社の戦略は、市場深耕のために商品改良をどんどん繰り返し、新商品開発を急ピッチで行って競合に後れを取らないようにし、新市場へも果敢にアタックする。それらの活動をしっかりと市場に告知しなければ、売上げにはつながらない。広告投資も戦略全体を見渡せば、整合性がきちんととれているのである。

 とかく縮小均衡に陥りがちな不景気化の戦略。まして、日本市場は確実に縮小を始めている。そんな中で、果敢に拡大路線で成功を勝ち取っている亀田製菓の展開に注目し、学んでみてもいいだろう。

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【終了】 講師/社員育成セミナーを開催します!

5月14日の回も大好評、終了となりました。ありがとうございました。


もう外注の必要なし!
“自社でできる“業務に直結した実践型マーケティング教育法を3日で学ぶ
社内講師養成&内製化勉強会(プレ勉強会)

「外部のセミナー・研修に社員を送り出しても、実際には実務に生かせる力が向上しなかった」そんな声を多くの企業で聞かされます。マーケティングの講師の立場としてはこんな悲しいことはありません。
個々の担当者が習得したスキルが組織に定着していない。ナレッジマネジメントのコンサルタントの立場としてはそんなもったいないことはないと考えます。
最適なマーケティング戦略を立案しても、顧客接点となる営業現場のスキル不足で結果が出ない。そんな残念なことはないとマーケティングコンサルタントの立場としては思います。
そんな問題を一気に解決しようと、この勉強会を企画しました。


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「営業担当者教育を行いたいが、外部セミナーや研修を散発的に受講させても担当者の身につかない」

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・・・などのお悩みを抱えた方にお勧めします。


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営業担当者にマーケティングスキルを習得するためには、

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今回の「プレ勉強会」では、営業担当者教育の切り口と、教育コンテンツのサンプルを2時間でレクチャーします。


第1回 : 4月23日(金) 19:00~21:00【満員御礼】

第2回 : 5月14日(金) 19:00~21:00【残席わずか】

詳細とお申し込み↓

第1回 https://www.insightnow.jp/communities/application/62

第2回 http://www.insightnow.jp/communities/id/63


ご参加をお待ちしています!!

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2010.05.12

「節約疲れ」な消費者の財布を、どうしたらつかめるのか?

 「節約疲れ」。そんなキーワードが各メディアで目につくようになってきた。節約志向が高まっていた消費者が、あまりに長引く不景気で、ついに我慢に疲れて今年に入ってから消費を始めたという説だ。デフレ不況下の勝ち組とされるユニクロの3月の売上高が7年ぶりの大幅なマイナスに転落したのもその影響であるともいわれている。
 「節約疲れ」は英語では「pent-up demand(抑圧需要)」というようだが、その需要を取り込もうと各社が動き始めた。そのいくつかに注目してみたい。

  <節約疲れの女性に「ちょい高め」パン コンビニ各社>(4月4日asahi.com)
 http://www.asahi.com/business/update/0403/TKY201004030001.html
 <従来より数十円から100円高いパンやデザートの販売に力を入れ始めた。「少し高くても、おいしいものを食べたい」という若い女性がターゲットだ>(同)という。また、中堅コンビニ、スリーエフの中居勝利社長は<「消費者の低価格志向を先取りして小売り各社は値下げしてきたが、今年度上期でその競争も止まるだろう」>との予想で、高価格帯の充実を検討中と記事中でコメントしている。

 ポイントは、「従来より数十円から100円高い」というところだろう。抑圧された需要の向かう先は「贅沢」ではないのだ。ほんのちょっと。プラスアルファの消費。そこに商機があるのだろう。だとすると、そこは各社のプライシングの腕の見せ所だ。

 消費者が「どれくらいまでなら払ってもいい」と考える価格を元にプライシングする「カスタマーバリュー(需要)志向価格設定」のなかでも「知覚価値価格設定」というものがある。市場調査などによって、消費者が受け入れやすい「売れる価格」を探り出すのである。米国ブランドの「コーチ」が、1990年代半ばに日本市場での巻き返しを行った例が有名だ。「手の届く高級品」というコンセプトに従って絵遺品使用を改訂。従来の価格帯から30~40%ダウンさせて、消費者を取り込んだのである。

 「節約疲れ」「pent-up demand」を取り込むには、前述の例とは逆に、今度は少し高めの価格設定で、商品の質をちょっとアップさせるのがポイントだ。その例として、モスバーガーの展開を見てみよう。

  <“ひとときの贅沢”需要にお応えして「ぜいたくモスバーガー」「ぜいたくモスチーズバーガー」580円と640円で期間限定発売!!>(同社ニュースリリース)
 http://www.mos.co.jp/company/pr_pdf/pr_100426_1.pdf
 同社はリリースでも<まだまだ厳しい日本の経済環境ですが、一方で“節約疲れ”ともいわれるようになり、我慢し続けるだけでなく本当にいいものは購買したい、というニーズも高まりつつあります>と、「pent-up demand」の取り込みを明言している。外食産業でもいきなり高級レストランに需要が向かうことはない。「ちょっとした贅沢」というレベルでは一部でもブーム化している高級バーガー程度がちょうどいいところだ。
 そして、<ご注文いただいてから手作りするモスならではの、ハンバーガーひとつでちょっとした贅沢気分が味わえる「ぜいたくモスバーガー」をお届けします>としている。これは、自社のバリュープロポジション(Value Proposition=競合に真似できない自社ならではの提供価値)を活かした非常にうまい手だといえる。マクドナルドも内装を豪華にした新型店舗で100円メニューを廃止して、メニューも最大50円アップするなどの客単価アップに向けて舵を切っているが、チャレンジャーのモスバーガーは、<ハンバーガー類の定番商品を軸として商品ボリュームごとに、「ボリュームゾーン(上位価格帯)」、「レギュラーゾーン(中位価格帯)」、「ライトゾーン(下位価格帯)」の3つの価格帯で幅広く商品群を設ける>という戦略をとっており、「既存の最高価格品と比べても80円~140円高い」とより大胆な展開をしている。

 もう一つ注目したいのが、牛丼業界の「ニッチャー」である「神戸らんぷ亭」だ。
 同社は業界内でも珍しい、醤油だれベースではない「塩だれ牛丼」を展開するなどの独自性が光っている。そして、変わり種味として「味噌味」も店舗限定で展開し始めた。
 
  <神戸らんぷ亭が「戦国牛丼・信長」を2店舗で販売>(ナリナリドットコム3月30日)
 http://www.narinari.com/Nd/20100313318.html
 <織田信長が好み、当時は贅沢品として重宝された味噌を使用>とのことだ。並盛り500円。
 さらに新メニューも全店で展開する。
 <5/10より『ねぎとろ丼』を発売開始しました!!>(PRタイムズ5月11日)
 http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000000721.html
 こちらも同じく並盛り500円。
 そう。両メニューの価格に注目である。牛丼業界は300円を切るか切らないかという、熾烈な低価格戦争を展開中だ。その中で500円、ワンコインは「ちょっとした贅沢」を狙った展開ではないかと考えられる。

 昨今のランチは300円~500円に抑えたいとする人が非常に多い。500円ならいざ知らず、本当に300円に抑えるのは、実は結構厳しい。280円のすき家の牛丼か、コンビニでおにぎり+カップ麺という、カラダとココロに少々よろしくない昼食が続くこととなる。
 そのランチ予算の上限500円を「知覚価値価格設定」でキッチリ狙っている野だと考えられる。

 一方に振れた振り子は、必ず反対側に振れる。健康志向、メタボ抑制の動きの反動で、「メガフード」はすっかり市民権を得た。消費者が「節約疲れ」しているかは定かではないが、消費を抑制していることは間違いない。その振り子が反対に振れるときが来たのかもしれない。しかし、まだ景気は本格的には回復していない。反対側への振れ幅は小さいだろう。
 その、小さな振れ幅をどう取り込むのか。各社の知恵の使い方が試されている。

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2010.05.10

「ニッチ戦略」で生き残りをかけるエン・ジャパン

 ある業界でシェアナンバー1を誇る「リーダー」ではない。さりとて、リーダーに挑戦する「チャレンジャー」となる力もない。現実的にはそんな企業は数多い。残された道はリーダーの落ち穂拾いをする「フォロアー」に甘んじるか、「独自の生存領域」を確保して「ニッチャー」の地位を確立するかだ。就職サイトの「エン・ジャパン」はニッチャーとなる大きな賭に出た。

 「ニッチ」という言葉。昨今はよく使われるようになっているが、原義は「飾り物などを置く壁面のくぼみ」であり、また、「(人・物に)最適の地位(場所・仕事)」だ。
 「最適の地位を確保する」方法はただ一つ。のか。「顧客が求める競合には真似のできないその企業独自の提供価値」である「バリュープロポジション(Value Proposition)」を明確にすることに他ならない。

 その意味からすると、エン・ジャパンのこの度の戦略転換は極めて正しい判断だといえるだろう。
 <就職情報サイト『[en]学生の就職情報2012』は中堅・中小・ベンチャー企業に特化!>(5月10日同社ニュースリリース)
 http://corp.en-japan.com/newsrelease/detail.php?id=589

 同日の日本経済新聞13面にも「学生向け就職サイト 中小掲載に特化 競合とすみ分け」との記事が掲載されている。
 いわゆる就職氷河期といわれた時代以上に厳しい環境にある今日、2010年3月大学卒業予定者の就職内定率は80%に過ぎないという。一方、<学生の大手企業志向により、採用意欲の高い中小企業が採用予定人数を確保できていない状況にあります>(同)という状況も顕著であり、<中小企業の2010年度4月入社の採用活動状況は、「当初の予定より質・人数ともに下回っている」が21.5%、「当初の予定どおりの質を確保できたが、人数は予定を下回っている」が12.2%となっており、合わせて約34%の企業が新卒採用に不足を感じている>(同)と、大きなアンマッチが発生している。エン・ジャパンはそこに目を付けたのだ。

 同社がその戦略実行に動いたわけは、日経の記事に詳しい。「企業は新卒採用コストを抑制するため求人情報サイトを選別しており、後発組であるエン・ジャパンの新卒向け就職情報サイトの年間売上げはピーク時の3分の1以下の10億円程度に落ち込んでいる」とある。
 同社の昨年末の全社売上高は約102億円なので、1割未満の貢献しかできていないことになる。このままでは事業としてのうまみはない。そこで、<力のある中堅・中小・ベンチャー企業(資本金10億円未満、又は社員数3000名未満)のみの求人情報を掲載します>(同)というニッチ戦略に出たわけだ。

 とはいえ、老婆心ながら少々心配な面もある。
 ニッチ戦略が成立するのは、リーダー企業が狙うには、その特定市場が規模や収益性から見て効率的ではないという前提条件がある。
 「中堅企業」とは、概ね「資本金 1億円以上10億円未満」という規模感で語られるが、実は「中小企業基本法」に明確な定義はない。「中小企業」とは、業種によって異なるが、中小企業基本法第二条には「中小企業者の範囲」として「 資本金3億円以下ならびに常時使用従業員数300人以下」とある。そして、日本企業421万社のうち99.7%を占める(中小企業庁資料)。
 つまり、規模的に魅力がないとは言い難い。むしろ、エン・ジャパン社の634人の社員数でどこまで対応が可能かということだ。
 もう一つはニッチ戦略が崩れるパターンは、との特定市場の魅力が増してリーダー企業が進出してくることだ。販売力に勝るリーダー企業が一気に市場を席巻してしまうのだ。

 ニッチャーを目指すエン・ジャパンの成功のカギは、サイト利用者である学生にどこまで魅力を提供するかである。つまり、冒頭の「バリュープロポジション(Value Proposition)」である。
 昨今の学生の大手・知名度志向は根強い。まず、そうした学生に対して、中堅・中小・ベンチャー企業で働くということの魅力をきちんと伝えることだろう。
 余談だが、筆者は大学で「ベンチャービジネスとマーケティング」という講義を担当するようになって5年になる。この講義、実は景気の変動の影響が大きく、比較的好景気で就職が売り手市場傾向の時には履修者が少なく、不景気で就職難になると多くなる。今年は久々に100人近い履修登録者数となった。その意味からすると、同社には明らかにフォローの風が吹いている。いかにうまく、説明・説得ができるかだろう。

 同社の一番の秘策は、独自の評価基準を設けたことにあるようだ。<企業を5つの力(「人材育成力」、「独自力」、「収益力」、「社会貢献力」、「正直力」)の観点から、最大三ツ星で表示し、企業の強みを可視化します>(ニュースリリース)とある。学生にとってなじみのない会社ばかりが並ぶサイトになるのは間違いない。そこで、どれだけこの評価システムが効果を発揮することができるかがキモなのだ。そこで信用を獲得し、口コミ的に次の年の就活生へと伝わるようになれば、それが「バリュープロポジション」が確立したことになる。つまり、FMA(First Mover’s Advantage=先行者利益)が獲得でき、ニッチャー戦略が成功したことになる。
 サービス開始は10月とのことであるが、同社の検討に期待したい。


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2010.05.07

「Fit’s」に見る、ロッテのブレないリーダー戦略

 ロッテのガム「Fit’s」にまた、ニューフレーバーが登場した。しかし、今回は単なるフレーバーの追加ではない。それは、ガム市場のシェア6割ともいわれる圧倒的なリーダーであるロッテが「Fit’s」で切り開く戦略の第3章を意味しているのだ。

 2009年3月24日の発売直後からバカ売れし、4ヶ月で3,000万個という未曾有の記録を樹立。3種のフレーバーのうち1種は生産が間に合わず、4ヶ月も販売休止。日経MJのヒット商品番付にも載るなど、その話題は佐々木希と佐藤健の大人気CMだけに止まらない。

 「Fit’s」はそもそもロッテが、<ガムのトップメーカーとして、特にガム離れが目立つ若年層をターゲットに、今までにない新しいガムでチューインガム市場を活性化させなければと、強い危機感を持って>開発したガムである。<若い人の食生活を調査した結果、「ガムを噛むと口やアゴが疲れる」など、硬い食感を好まない人が多いことから、20代前半の男女をコアターゲットにした、ソフトな食感のガムの開発>をしたという。(同社ニュースリリースより)
 柔らかな噛み心地は「かむとフニャン」というコピーにも代表されているが、CMのダンスも全て「フニャン」で整合を図っている。

 その「フニャン」に微妙な変化が起きたのが、今年に入ってからのことだ。噛み心地を少し堅めにリニューアルしたというのだ。

 さらに今回新発売されたのが新ブランドの「Fit's LINK」。「オリジナルミント」と「ノーリミットミント」の2種のフレーバーである。
 商品の特徴としては、<これまでと一線を画すスタイリッシュなデザイン>という黒をベースとしたパッケージデザインと<噛むたびに砕けるメントールチップの新食感&清涼感>であるという。(同社ニュースリリースより)。食べてみれば、確かにミントが強く、「ノーリミットミント」はなかなかの刺激感である。そして、ニュースリリースによれば「メインターゲットは30代男性層」だという。

 「Fit’s」は前述の通り、「20代前半の男女をコアターゲットにした」という明確なターゲティングが成功の大きな要素であったので、さすがに今回は戦略にブレを感じる…かというと、実は裏には別の狙いが感じられるのである。

 「Fit’s」発売当初のフレーバーは、大人気で売り切れとなった「ミックスベリー」と「シトラスミックス」「ペパーミント」の1種だ。若者好みの果実系2種にミント1種。その後、発売されたのが少しミントの刺激を強めた「エアーミント」。続いて、再び果実系の「ピーチミックス」を加えた。そして、今回が派生ブランドで今までになく刺激の強い2種のミントを展開したわけだ。
 フレーバーの変化で見れば、本来のターゲットの好む果実系を中心に、それでもしつこくミント系を展開している。フレーバー以外では、噛み心地を堅めにするという調整をしている。これが何を表すのか。

 筆者は、若者への「ガムのトレーニング」であると見た。
 ガム市場のリーダーであるロッテにとって、ガム人口の減少は大きなダメージとなる。それに対応した「Fit’s」だ。楽しいダンスでAttentionを獲得して、ダンスコンテストで口コミで流行らせ、ガム離れに歯止めをかけることに成功した。次は、使用回数を向上させることだ。
 ガム市場のピークは2004年であり、その牽引役となったのは「ボトルガム」だ。今もデスクにガムのボトルが乗っている人も多いだろう。ガムで最も習慣的に食べられるのは、刺激のある「ミント系」なのだ。果実系ではない。
つまり、ロッテは「Fit’s」でミントの刺激に徐々に慣れさせ、さらに噛み心地も堅くしていき、他商品も含めて使用頻度を高めるという狙いに移行していると考えられるのである。

 では、なぜ、ターゲットを30代男性としたのか。それは恐らく2つの狙いがある。
 1つは、すっかり有名になった「Fit’s」ブランドを使って、コアユーザー層をさらに獲得する意図だ。コアユーザー層は、過半を抑えたリーダー企業とはいえ、まだ競合との獲得競争が続いている。
 もう1つは、「保険」だろう。あまり大きなポジショニングチェンジをすると、既存ユーザー層の離反を招く。あくまで、「Fit’s」は「フニャン」であり、優しい果実系の味わいが中心なのだ。それを、ガムの王道である刺激ミント系をガッツリ出しては、整合性がとれなくなる。あくまで派生ブランドとし、ターゲットも違うという打ち出し方をして、従来のユーザーには「興味があれば、どうぞ…」的な展開を装っているのだ。

 以上のような読みが当たったとしたら、「Fit’s LINK」はしばらくしたら「Fit’s」ブランドに統合されるかもしれない。もしくは、そのまま存続だとすれば、もっと刺激を強めたフレーバーが「Fit’s」に加わるかもしれない。
 いかに需要を確保し、それを高めていくかという、業界リーダーの戦略がどうなっていくのか、またしばらくは目が離せない。

 

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2010.05.06

Twitterの企業アカウントの運用には「ペルソナ」の設定を!

 企業におけるTwitterの導入が模索される中、いくつもの企業でうまい運用方法が見つからず、頭を抱える担当者が続出しているという。その「運用の難所」を乗り切る手法として「ペルソナ」の設定をお勧めしたい。

 連休の中日、5月3日の日経MJ・総合欄にコラム「日経ネットマーケティング 渡辺博則編集長のIT新事情」が掲載された。「企業のツイッター導入 社長命令に現場困惑」とのタイトルが目に飛び込んできた。ソフトバンクの孫社長、楽天の三木谷社長に触発されて、社内の広報担当者に自社でのTwitterの活用を指示する経営者を例示している。
 記事では、メルマガやBlogと異なる難しさの1つとして、社内でのチェック体制が追いつかない「即時性」を挙げている。更にもう一つ、担当者の個性にどこまで頼るのか、コントロールするのかという難しい問題に触れている。結論としては「個性に頼らず、属人性を廃して複数人で担当を」ということのようだ。

 日経関連では、同様のテーマを「日本経済新聞電子版」が取り上げている。
 <なぜ挫折する? 導入企業の心得 ビジネスツイッター総点検!(4) 2010/5/6 9:00>
 ※リンクポリシーが厳しいので、記事タイトルで検索してください。

 記事には、かつてTwitterでのキャンペーン告知がSPAMと認識され炎上し、素早いお詫びとリカバリーで名をあげた上島珈琲(UCC)の事例で、組織体制と承認プロセスが解説されている。日経MJの指摘する「即時性に対応した承認プロセス」に対する一つの解として必見だ。

 もう一つ、企業アカウントを運営する担当者とその個性、属人性をどうするかという問題には、いくつかの選択肢が示されている。
 大前提として、<「属人性」を減らすために、目標を明確化させる>と、1ページ目に指摘がある。<目的が曖昧(あいまい)なままアカウントの運用を始めると、「つぶやく内容がない」「運用の負荷が大きすぎる」「フォロワーが増えない」「コミュニケーションの取り方が分からない」「最適な担当部署が分からない」「効果が見えない」などの悩みにさいなまれる>とある。それはまさしくその通りだ。
 その上で、<責任者を決め、複数人で運営したほうがいい>として、その目的に応じて<(1)キャラクター設定をして複数の担当者でそれを演じる、(2)キャラクター設定をせずに各担当者の個性を出す、(3)個性を出さずに淡々と情報を伝える>という選択肢を示している。

 筆者としては、「ユニクロ」のようなセール情報だけを淡々とリリースするTwitterの利用法なら(3)の無個性で構わないと思うが、さりとて(2)の担当者の個性に依存するのも、誰もが「加ト吉」の名物部長ではないのでムリだと思う。故に、(1)のキャラクター設定がキモとなるのだ。

 「ペルソナ(persona)」とは本来、「仮面」とか「登場人物」という意味を持つ言葉だ。ポスト・モダンマーケティングの手法で、商品のユーザー像を仮想の人格を詳細に作り上げリアルなターゲット増を構築することに用いられる。また、ネットマーケティングにおいても、自社サイトのユーザー像を明確化して、ユーザビリティーの向上や、コンテンツやサイト全体のあるべき姿を検討する際に用いられる。
 本来のペルソナ構築手法は、市場調査などの定量データにユーザーインタビューなどの定性データを加え最後には仮説と想定を重ねて、一つの人物像を作り上げていく気の長い作業である。(構築手法は各種書籍やサイトで紹介されているため、今回は割愛する)
  ペルソナを作り上げると、ターゲット像が極めてリアルになることによって、ターゲットのニーズや課題、購入動機などが理解できるようになり、今まで漠然としていたターゲット像とのギャップを埋めることができるようになる。また、従来「ファミリー層」「シルバー層」などというひと言で括ってしまっていたターゲット像を具体的な個人として意識できるようになり、その行動もよりリアルに想定できるようになるという大きなメリットがある。そして、関係者一同がターゲット像を共有しやすくなることから、マーケティングプランの全体の策定などや、より詳細な販促プランへ落とし込みをする時でもブレがなくなる。ターゲット像が明確でないと、各々が過去の経験に縛られたり、自分にとって都合のよいタイプをターゲットとして設定したりしがちになる。それを防止する効果があるのだ。

 さて、Twitterの企業アカウントを複数担当者で運営する場合、ペルソナがどのような効用をもたらすかは、上記の「ターゲット像明確化のためのペルソナ構築」で概ね理解できるだろう。つまり、「商品開発に有用な、消費者・顧客の声を収集する」というような目的を達成するために、広報部に新規配属された人物・ペルソナを構築して運用するわけだ。
 「入社7年目で、営業部3年、マーケティング部3年の勤続の後、広報部へ異動になった川口恵子29歳・独身。趣味は…」というようなプロフィール像を詳細に造り、さらに川口恵子がTwitterのアカウントを担当する勤務時間や、社内情報で知っている範囲、回答権限なども設定しておく。そうすることによって、ありがちなTwitter担当者が休日深夜まで対応したり、どこまでユーザーからの質問に回答していいのかなどに悩んだりするという問題も回避できる。

 こうしたペルソナの設定と運用は、拡大して活用範囲を考えれば、企業のお客様相談窓口におけるE-mailや電話対応にも応用できなくもない。しかし、今までほとんどそうした活用例が見受けられなかったのは、問い合わせ側が企業の窓口にそこまでのフレンドリーさを求めていなかったからだといえるだろう。良きにつけ、悪しきにつけ、Twitterのアカウントにはそれなりの「個性」をユーザー側は期待する「文化」が形成されつつある。その対応に、「ペルソナ」を一度、検討することをお勧めしたい。

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2010.05.01

新生「ナルミヤ」の愚直なSTP・4Pと「ファストリ」の凄み

 業績不振にあえいでいた、ジュニア服メーカーのナルミヤ(ナルミヤ・インターナショナル)の新ブランドが好調だという。その復活のヒミツを見れば、愚直なまでにマーケティングの基本を踏襲し、それを精緻に実行していることが判る。一方、ユニクロの生産手法を導入した、ファーストリテイリング傘下、キャビンのブランドでは、ありがちなマーケティングの間違いを、間違いでなくしてしまうという驚異の展開が行われている。

 「中村君」「中村君」と、街ゆくローティーンの女の子たちが口々にいうその名前は、どこの人気者男子かアイドルかといぶかったが、ナルミヤのブランド「エンジェルブルー」のキャラクターの名前であったと知ったのが2000年代半ばのことだった。
 2009年に入ってから業績予想の下方修正を繰り返し、大幅な赤字を記録した同社は、当時「不況による生活者の生活防衛」を主たる原因としていた。しかし、真の原因は他にあったようだ。

 日経MJ4月30日、「新生ナルミヤのブランド改革」と題された記事にある。90年代~2000年前半のナルミヤ全盛期に「中村君」などを愛用していたティーンのユーザー。そのDMU(Decision Making Unit=購買決定関与者)である親は「DCブランド」で育ったバブル世代。現在の親世代は、バブル以降に厳しい選択眼を磨いて、様々なブランドや価格帯をうまく組み合わせて着こなす世代。つまり、不振のワケは、経済環境の変化だけでなく、顧客層と顧客のKBF(Key Buying Factor=購買決定要因)の変化にあったのだ。

 記事にある「ブランド改革」の実態は、極めてマーケティングの基本である「ターゲティング」「ポジショニング」の明確化と、その上での最適な「マーケティングミックス(4P)」の実行である。

 新生3ブランドは「アナスイ・ミニ」「ラブトキシック」「リンジィ」。
 アナスイ・ミニは従来通り百貨店で販売するが、万人受けするキャラクターものなどとは全く異なる。ブランドカラーの紫は着る者を選ぶ。つまり、Place(販売チャネル)とPrice(価格)は従来と大きな変化はないが、ポジショニングを明確にして、ターゲットを絞り込んだのである。
 「ラブトキシック」のPlaceは従来と異なるショッピングセンター(SC)向けで、従来の百貨店向け商品の1/3にPriceを抑えたという。販売チャネルの違いは新たなターゲットへのアプローチを意味している。そのターゲットへ示すポジショニングは、「SCで手ごろな価格で買える、オシャレなナルミヤの服」というものだ。
 「リンジィ」のPlaceは百貨店だが、Priceは低価格に抑えたという。「アナスイ」の服は伊勢丹独占契約なので、恐らく他社の店舗への展開で、百貨店ルートの中でも棲み分けをしているのだろう。ターゲットも異なる。あえて衣料品不振の百貨店を販路としたのは、「百貨店なのに手頃に買える」というポジショニングで展開するためだ。

 08年から再建と改革を推進する同社岩本社長のコメントが意義深い。
 「ブランドビジネスは(店舗などの販路を)広げるだけ寿命が縮まる」。
 つまり、大きなカタマリでターゲットを狙うのではなく、「細かく狙って確実に勝つ」という。ニッチターゲティングの神髄を展開しているのである。事実、各ブランドの店舗数は10~30店舗に抑えているという。
 しかし、Promotionは大胆にPlaceの展開の狭さを補う展開している。書店で販売される「ムック本」にブランドの付録を付け、そこからインターネット店舗へと誘導しているのだ。専門雑誌やムック本は「ニッチ媒体」である。これもまた、従来の「絞らない幅広のターゲティング」と真逆な展開を行っていることが判るだろう。

 一方、同日同紙のコラム「着眼着想」に掲載された、ファーストリテイリング傘下、婦人服・キャビンのブランドである「ザジ」の「100%美脚パンツ」という商品は、マーケティングの常識を大きく覆すものだ。

 記事によると、脚を長く見せるための素材の選択、立体パターン(型紙)、縫製など、「現時点で可能な美脚効果の工夫は100%盛り込んだ」という。それをストレートに伝える商品名なのだ。その狙いは「従来の、“○○歳代向け”といった顧客の年齢別の美脚パンツではなく、“万人に対応できるパンツ”」であるという。

 「ターゲットを狭めず、幅広い年代の女性向けとすることが開発の大前提だった」と記事にあるが、この凄まじい狙いの意味が理解できるだろうか。「脚をキレイに見せたい」という願いは年齢に関わるものではない。しかし、個人差も大きいが、年代別の体型の変化は否めない。それを「万人」としているのだ。
 キャビンがファーストリテイリングの完全子会社になって3年。記事では「ユニクロ流の開発手法の浸透ぶりを示す商品」とある。つまり、ユニクロを支えているので有名な「匠の技」なくしては実現できなかったのだ。

 「ターゲットを狭くしたら、十分な市場のパイが獲得できなくなってしまう」。そんな議論に未だに遭遇することがある。しかし、ナルミヤの「中村君」のように、全ての人に受け入れられる商品はもはや成立しにくくなっているのだ。同社がブランド再生で展開しているような、細かく、緻密なターゲティングとそれに従うマーケティング設計が欠かせないのが昨今なのである。
 「市場のどこを狙おうか、パイを切り取ろうか」と考えることは、誰でも自由にできる。しかし、狙うことと、実際にターゲット顧客を取り込むこと、顧客に振り向いて購入してもらえることの間には大きな溝があるのが現実なのだ。
 ターゲットを大きく取ろう。できれば、万人を取り込もう。
 そんなことを考えたときには、自社には果たしてユニクロのような「匠の技」があるのかをもう一度見直してみるのもいいかもしれない。

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