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2010.04.15

ブレてない!「世界のキッチンから」はポジショニングを貫く!

 「世界の母さんがつくる料理からインスピレーションをうけたレシピ」をコンセプトに、オリジナリティーあふれる飲料を期間限定で市場に投入し続けている「世界のキッチンから」。シリーズの中でも「とろとろ桃のフルーニュ」などは、何度も改良・再発売を繰り返し、もはや定番化している。
 そんな、「世界のキッチンから」に期待の新商品が加わった。4月13日発売の「世界のKitchenから ソルティ・ライム」だ。「メキシコのお母さんが塩とライムを料理に使用する知恵から作った」というのが今回のストーリーであるという。キリンビバレッジの商品概要ページにも<太陽の国メキシコのお母さんから学んだ、塩とライムの組み合わせ。まろやかで深い味わいの岩塩に、ライム果汁を加え、天然水ですっきりと割りました。汗ばむ季節に、体がよろこぶ爽やかなおいしさです>とある。

 パッケージには「乾いた体に」「岩塩をひとつまみ」とある。これから暑くなる季節に汗と一緒に失われる水分・塩分を補給するというのが今回のコンセプト。そこに「塩とライムの酸味は相性がいい!」ということで、「世界のキッチンらしさ」として「岩塩×ライム×天然水」という構図になったのだ。

 だがしかし、ちょっと待った。
 「乾いた体に」「汗と一緒に失われる水分・塩分を補給する」って、飲料のカテゴリーの中では「スポーツ飲料」ではないか?
 確かにこれまでも、同じ「世界のキッチンから」ブランドで、コーヒー系あり、乳酸飲料系や果実系ありと、既存のカテゴリーにとらわれない展開をしてきたので不自然ではないのだが、「なぜ、今、この時期に?」という疑問符は灯る。

 現在の飲料市場のトレンドは、強固な支持層を抱える缶コーヒー飲料にあまり大きな動きはないが、不景気の影響で自分で淹れられる茶系飲料や、浄水器で済むミネラルウォーターがへこんでいる。代わりに自分で作れない炭酸飲料が伸長している。さらに、昨今の炭酸飲料は「ゼロカロリー」という属性を手に入れたため、消費者の飲料でのカロリー摂取忌避の傾向が強まった。あおりを食ったのが、スポーツ飲料だ。
 スポーツ飲料は、スポーツ時などに身体から失われている水分を高効率で吸収させることに主眼を置いている。浸透圧を上げるために電解質(イオン)を加えているためカロリーもそれなりに増す。機能には優れるが、そのカロリーと甘みのある味が昨今の消費者にはウケていないのだ。

 「世界Kitchenから ソルティ・ライム」の味わいは、塩というよりは、薄い甘みの中から酸味が感じられる、スポーツ飲料的雰囲気なのだ。「乾いた体に」には確かに効きそうだ。だが、カロリーは100ml当たり30kcal。今回は「世界のキッチンから」お得意のスリムボトルではないので容量は500ml。1本で150kcalと、スポーツ飲料の代名詞・大塚製薬「ポカリスェット」の135kcalを1割上回る。

 では、今回の「世界のKitchenから ソルティ・ライム」は飲料のトレンドからはずれていて売れないのかといえば、全くそんなことはないだろう。

 スポーツ飲料のユーザーはスポーツ中やその後に飲用しているわけではない。むしろ、全体の8割近くがスポーツ時以外に飲んでいるのがわかったというのが、サントリー「DAKARA」の開発秘話として有名だ。(イノベーションの本質:野中 郁次郎・ 勝見 明 (著)日経BP社)
 さらに、もともと、「世界のキッチンから」のユーザーは「カロリーよりも味!」という嗜好を持っている。「とろとろ桃のフルーニュ」などは、何と、100mlあたり54kcalもあるのだ。コカ・コーラクラッシックでさえ45kcalなのに!
 つまり、「世界のKitchenから ソルティ・ライム」は、夏の暑い日にスポーツするわけでなく汗をかいた時に、さわやかにライムの酸味の味わいの中、水分・塩分をおいしく補給しようという人のためのものなのだ。まさに「岩塩×ライム×天然水」。

 飲料業界のトレンドなどどこ吹く風で、我が道を行く「世界のキッチンから」。それは、自ら築き上げてきた強固なファン層を抱えているからこそできることだ。しかし、逆にいえば、トレンドを気にしてカロリー低減のために独特の味わいを少しでも犠牲にしたら、顧客離れを引き起こす。故に、ブレないポジショニングを展開しているのである。

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Comments

あくまでも世界各国の家庭の伝わる伝統的な渋味をもった味を、(日本人向けにアレンジして)伝えるというコンセプトを貫く。これが、しっかりとしたポジショニングを可能にしている、と思いました。
市場のトレンドに迎合したら、それが崩れてしまいますね!

Posted by: Nicky | 2011.02.05 07:29 PM

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