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2010.04.19

思考実験:クラシエフーズの「ソーダの素」をどう売るか?

 ドラッグストアで面白い商品を見つけた。その商品が売れるか否か。売れそうにないのであれば、どうすれば売れるのかを思考実験として考えてみた。

 その商品はクラシエフーズの『メロンソーダの素』 『オレンヂソーダの素』。ひと言で言えば、いわゆる「粉末ソーダ」である。同社のニュースリリースを探してみると、2月25日に発表があり、<昭和30年代から40年代にかけて一世を風靡した粉末飲料「渡辺ジュースの素※」。クラシエフーズは当時の時代をしのばせるレトロなパッケージデザインと味わいで再現しました>とある。3月1日より発売されていたようだ。
 注意書きのある「渡辺ジュースの素」をWikipediaで調べてみると、1958年(昭和33年)に1袋5円、無果汁の「渡辺のジュースの素」の発売を開始し、テレビCFには榎本健一を起用するなど、粉末ジュースで一世を風靡したようだ。しかし、1969年(昭和44年)に日本国内で人工甘味料「チクロ」の使用が禁止されたことが経営に大きな影響を与え、その後1972年(昭和47年)、カネボウハリス株式会社(現クラシエフーズ)に吸収合併され今日に至っている。

 要するに、この商品は同社のリリースにもあるように、その商品の存在自体に昭和30年~40年代の歴史が凝縮された、なつかし製品なのだ。その懐かしさを更に高めるべく、商品パッケージの裏面には「昭和33年、東京タワー完成」や「昭和44年、アポロ11号月面着陸」などの昭和の出来事がイラストと共に記されている。

 さて、この商品が「売れるか?」と聞かれると、正直、このままでは難しいように思う。
 昭和40年生まれの筆者でも、「渡辺ジュースの素」はギリギリ記憶の圏内にあるかないかで、ターゲットのど真ん中ではないように思う。では、50代の人々がこの商品を回続けるかといえば、「なつかし商品」として手を1回は出しても継続購入は難しいだろう。同社のリリースによると、<家族で、また、子供や孫との団欒におすすめです>とあるが、やはりそれでは、「話のネタ」としての単発需要しか取り込めそうにない。

 では、一発屋のネタ商品ではなく「売れ続ける商品」となることはできるのだろうか。

 思考実験なので、マーケティングマネジメントに流れに従って、一つ一つ検証してみよう。
 まず、外部環境だ。長引く景気の低迷は飲料業界を直撃している。特に小型PETボトル飲料では、自分で淹れられる茶系、浄水器で代替できるミネラルウォーターのへこみが激しい。「水筒男子」やら、その中に浄水した水道水を入れる「水道男子」やらのネーミングまで登場している。一方、微増ではあるが伸長しているのが炭酸飲料だ。なぜなら、自分で作ることができないから。
 そのことから考えると、「粉末ソーダ」は、「浄水水道水派」が「たまには水だけじゃなくて、何かおいしいものが飲みたいなぁ」と思った時に用いる「自分で作れる炭酸飲料」としてのポジションを獲得できるのではないだろうか。それが、ターゲティングとポジショニングだ。

 節約のための水道水なので、何より「価格(Price)」が重要だ。同商品の価格は3袋入りで126円(税込み)。1回42円なら、割安感はある。が、実は1袋を120mlの水で溶くことを推奨されているので、350mlPETボトルに換算すると、同等の価格になってしまう。500mlPETだと、「飲みきれない」という人も多いことから、炭酸飲料としては1回350mlぐらいが適量かもしれない。だとすると、「商品(Product)」としては、1袋の容量をもっと増量することが価格とのバランスで求められる。

 そのほか、商品的には合成着色料、保存料不使用とあって非常によいことなのだが、カロリーを見ると1袋当たり59kcalある。上記のように容量3倍にするなら、単純に177kcalだ。これはちょっと躊躇する。炭酸飲料人気の秘密はゼロカロリーや低カロリーであることにもあるのだ。甘味料には砂糖が使われているとのことだが、昨今では無害で味がよく、低カロリーな甘味料もある。例えば、ステビアなどを用いて低カロリー化を図ることが求められる。

 「販売チャネル(Place)」はどうだろうか。同商品は現在、ドラッグストアやスーパーで販売されている。ここまで、容量3倍増や、甘味料の変更など、かなりの変更を考えてきたが、それらは全て自社内の努力でできることで実現可能性がないわけではない。しかし、例えば、チャネルをコンビニに拡大するというようなことが、実は一番難しい。なぜなら、チャネルは自社ではなく他社であり、コントロールしきれないからだ。
 クラシエフーズはコンビニチャネルに昨年もチャレンジした経緯がある。同じく粉末飲料の「香り発散スポーツウォーター・アロマアクティブ」という商品だ。バラ由来の香り成分を配合した男性向けのガム、「オトコ、香る。」の技術を応用し、ランニングブームで増加している女性ランナーをターゲットにした商品だ。狙いは良かったものの、実はあまり「香らなかった」という話もあってか、あえなく店頭から撤退した。
 そもそも、クラシエフーズが「粉末」で展開しているのは、店頭の「飲料棚」が確保できないからに他ならない。飲料メーカーでない同社が、そこに」入り込むのは極めて困難なのだ。過去の飲料の歴史を振り返れば、ハウス食品株が1983年に「六甲のおいしい水」を発売した際に大変な苦労をしている。ハウスは飲料メーカーではなく、食品メーカーだ。それ故、棚を確保することが困難で、主力商品のカレー売り場の横で「カレーと一緒に」とアピールしたり、ご飯を炊くための水として米売り場の横に置いたりと、徹底したクロスマーチャンダイジング策で普及を図ったのである。
 クラシエフーズの食品でもっとも知名度の高い商品は「フリスク」だろう。同商品はコンビニの商品棚の島の中でも注目度の高い「エンド」といわれる部分に置かれていることが多い。そこで、多少強引だが「清涼嗜好品」という括りで、複合什器を開発して、一緒に置いてもらえるような営業をかけてはどうだろうか。
 
 「プロモーション」はコストをかけられる大型商品ではないため、マス広告を大々的にうつことはあり得ない。まず、買わせる。継続的に買わせるということを考えるなら、やはりベタだが、プレミアムの設定だ。購入したら、オンパックシールのピンナンバー(商品貼り付けのシールにあるID番号)で、ネットで抽選できる。外れてもIDが蓄積されて数回ごとにダブルチャンスの抽選に参加できるなどの仕掛けが考えられる。

 ここまでのプランを見直すと、かなりの大手術で、元の商品、マーケティングプランが原形をとどめていないようにも思える。が、これは「思考実験」なのだ。
 「おくりびと」の脚本で有名な小山薫堂氏が著著の「考えないヒント」(幻冬舎新書)の中で次のように記している。<日々目に入るあらゆるものに勝手にテコ入れする。レストランでメニューを見たとき自分だったらこんなメニューは出さないのに、とかこんな書き方はしないのに、とか考える。その店にぴったりのメニューを考えてお客さんへの紹介の仕方や雑誌への売り込みの仕方まで考える>。

 「勝手にテコ入れ」の思考トレーニングとしては、マーケティングのフレームワークは最適だ。是非お試しいただきたい。
 

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