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2010.04.20

「低価格で高品質」だけではない?・ちふれ化粧品成長のヒミツ

 ちふれ化粧品の成長が著しい。「2003年度の売上高は78億円でしたが、08年度は約1.5倍の120億円、09年度は130億円規模まで伸びそうです」と社長の松本氏がインタビューに応えている。

 <【トップ直撃】時代が必要とするものを作り続けていく 松井弘之氏>(フジサンケイZakZak:4月19日)
 http://tinyurl.com/y37urz9 

 「化粧品が高いのは、化粧品会社が努力していないからだと思います」代表取締役社長・松井弘之がひとこと言い放つ、「ちふれ化粧品」のCM。「その企業が努力しているかどうかは、価格に出ると思います」とも別バージョンでいう。CMで紹介されている同社の美白化粧水は1,155円だ。
 「SAVE WOMAN」キャンペーンで、女優・「りょう」をCMのタレントとして起用しコンセプトを伝える。さらに全国47都道府県のリアルなユーザーの生の声でCMを続々と作り続けている。

 同社の前身は低価格高品質の「100円化粧品」にチャレンジしていた企業であった。1962年のことである。67年に広告を一切掲載しない中立的な製品テストを行うことで有名な雑誌「暮しの手帖」に、大手メーカーの高額商品との比較記事を掲載。品質に大差がない結果出たことをきっかけに、日本最大の婦人団体「全国地域婦人団体連絡協議会」との組織的な販売斡旋を前提とした提携が決まり、同会の名称にちなんだ「ちふれ化粧品」としてスタートした。
 その際、製品の全成分の構成内容や比率を表示し、品質の透明性を保つことと、低価格販売のために広告宣伝費を極力抑制することを大方針としたという。(Wikipedia参照)

 同社設立の経緯からすれば、2003年のCM解禁は大きな方針転換であったことは間違いない。しかし、それは「やらねばならなかった改革」であったようだ。
 前掲(Zakzak)のインタビューで<「8年前、弊社の商品のイメージについて調査をしたことが大きな転機になりました。調査で分かった商品イメージは、『知っているけど使いたくない』『安かろう悪かろうの商品なのでは』とかなりネガティブな内容ばかりで…」>とそのきっかけが明かされている。
 イメージ改善はCMだけに止まらない。さらに、新たなイメージを浸透させるチャンスにおいて、ブランドのロゴを『ちふれ化粧品』から『CHIFURE』に変更したという。

 化粧品の口コミサイトを見ると、「低価格高品質」である点を評価する書き込みがほとんどだ。イメージ改革戦略が確かに成功をおさめ、同社の成長の原動力となっていることがわかる。

 同社は顧客支持を集める「低価格高品質」をどのように実現しているのか。広告宣伝費は上昇しているはずだ。それをどこで吸収しているのか。
 6年間で1.7倍に成長していることから考えれば、規模の経済と経験効果が働いているであろうことが推定できる。工場設備、研究開発、広告宣伝などの固定費は生産・販売数量が多くなれば、単価当たりの比率は低下する。工場や販売に関わる人件費は生産・販売数が多くなれば効率化され、経験効果としてコスト低減をもたらす。他にも原材料の調達や、配送コストなどもいずれも規模化することで高効率になる。
 バリューチェーンで考えれば、キーワードは「規模化」ということになるが、その実現がどれだけすごいことか、もう一歩踏み込んで考えてみればよくわかる。

 日本市場は少子高齢化が顕著だ。数年前から始まった、男性人口の減少に続いて、今年、女性人口も減少に転じたとニュースで報じられた。市場のパイが縮小するということは、当然のことながら、競合との顧客の取り合いになることを意味している。その市場環境においては、いかに市場と顧客の動向、ニーズに敏感に対応できるかが生死を分かつのだ。

 同社が方針転換をした2003年とはどのような時代であったのか。
 1991年のバブル公開以降、93年から2003年までは、いわゆる「失われた10年」と呼ばれる時代だ。景気が循環し、2002年2月から2007年10月までの69ヵ月は過去最大の景気拡大期間にあったが、実質GDP成長率は過去の好景気に比べ低調で「実感なき好景気」といわれていた。
 消費者はどう変化したのか。消費スタイルが「賢い消費」「堅実な消費」に向かったのだ。同社にとってはまさにフォローの風が吹いている時代だといっていい。

 顧客層の人口動態の変化も重要だ。
 40代半ばの筆者と同世代、もしくはもう少し上のもっともバブルを謳歌した世代の女性に聞くと、確かに同社の印象は「安い化粧品」とひとことで語られる。「学生時代にお金のなかった頃に使った。」「オトナの女の使う化粧品ではない。」などなど。
 高額なものが尊ばれ、価格の安さはともすれば購買を忌避する要因にもなった時代ならではの意見だ。しかし、その世代は年齢が上がり、もはや興味の対象は「アンチエイジング化粧品」に移行している。「うるさい世代」がターゲット年齢からいなくなったからこそ、本来の「低価格高品質」を訴求する最大のチャンスであったのは間違いない。

 市場環境・顧客の変化を捉え、従来自ら「禁じ手」としてきた方針を一気に転換して規模化を図る。その、舵を切ってアクセルを一気に踏み込む決断を下すのは、言うは易く行うは難しである。
 「化粧品が高いのは、化粧品会社が努力していないからだと思います」「その企業が努力しているかどうかは、価格に出ると思います」「努力」という言葉が繰り返し語られているが、その「努力」が実を結ぶのは、適切な経営判断に基づいて「低価格高品質化粧品市場」という独自のドメイン・戦いの土俵を築くことができたからである。
うち手をいくつもダラダラと積み重ねるのではなく、「決断」するタイミングで一気呵成に市場に攻め込むことの重要性を「ちふれ化粧品」の成功から学びたい。

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