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2010.04.05

「大人のキリンレモン」と「キリン プラス-アイ」:ヒットの可能性と課題

 夏場に向けてこれから激しさを増す清涼飲料市場。その主戦場は「炭酸」「ゼロカロリー」となることは、昨今のトレンドから想像に難くない。その激戦地に明日・4月6日に参戦するのはサイダーの老舗ブランド「キリンレモン」の派生ブランドだ。大ヒットとなるか?その課題は何だろうか?

 飲料事情の昨今のトレンドは、長引く不景気の影響が顕著だ。「水筒男子」が茶葉で淹れて茶系飲料が落ち込み、「水道男子」が浄水器を使ってミネラルウォーターが代替されて落ち込んでいる。「○○男子」は冗談のようなネーミングだが、飲料に関しては消費者の実態を反映しているといえるだろう。その中で、自分で作ることができない「炭酸飲料カテゴリ」は落ち込みを免れ、伸長している。さらにすっかり定着した健康志向は、清涼飲料だけでなくアルコール類にまで「0(ゼロ)」ブームを拡大している。「炭酸」×「ゼロ」がヒットのキーワードである。

 そのトレンドにうまく乗ったのが、アサヒ飲料の「三ツ矢サイダー オールゼロ」だ。同商品は09年5月末上市され、「糖質ゼロ」「カロリーゼロ」「保存料ゼロ」という「3つのゼロ」を実現。それでいて「三ツ矢サイダーならでは味」であるとして、同年約540万ケースの販売実績を記録して「三ツ矢サイダーブランド」全体の業績を大きく底上げした。

 透明炭酸飲料カテゴリの、もう一方の雄といえばキリンビバレッジの「キリンレモン」である。ところが、キリンレモンのラインナップには「ゼロ」がない。ブランドのターゲティングとポジショニングが「ゼロ」を上市するにはあまり整合性がとれない状態にあることにも起因しているのだろう。
 「家族品質だもん」。キリンレモンの現在のブランドスローガンだ。
 それを体現するかのように、現在のCMは小池徹平が小学生の男の子と一緒に冷蔵の前で「キリンレモンダンス」を楽しく踊っている。どう見ても大人向けではない。

 その「大人向け」で「ゼロ」商品として、いよいよ投入されたのが、名前もそのまんまの「大人のキリンレモン」である。

 キリンホールディングス横断の健康プロジェクト「キリン プラス-アイ」の傘の下での展開となる。同プロジェクトは第一弾として、「大人の毎日の健康生活を応援する」として、ノンアルコールビール、ウコン飲料、ヨーグルトなどに「回復系アミノ酸・オルニチン」を投入した商品群を展開した。「大人のキリンレモン」もその一翼を担う。

 グループとしての展開であるが、キリンビバレッジとして「キリンレモン」への投入を決定したのは、単純に「キリンレモンブランド」の傘下で「大人の」を展開すれば、ブランドのポジショニングと不整合を起こしてしまうため、グループの展開は実にタイミングがよかったからだと考えられる。

 では、無事に「大人の」という訴求が無理なく展開できるようになったわけだが、「大人のキリンレモン」がヒット商品になるためにはどのような課題があるのだろうか。

 Product(製品)としては、カロリーがゼロかは定かではないが、糖類はゼロのようだ。しかし、ゼロというより眼目は<大人にうれしい健康成分「回復系アミノ酸オルニチン」「クエン酸」「ビタミンB6」を配合>(同社ニュースリリース)というところだろう。「ゼロで太らない」よりも「健康になれる炭酸」というのはUSP(Unique Selling Proposition:独自の売りのポイント)なのだ。「大人の」と「健康」がうまく結びつけば、ターゲットには魅力的になるかもしれない。その認知・理解が得られるかがキモだ。
少し気になるのが、<パッケージは、従来の炭酸飲料とは対照的に、落ち着いた大人向けのデザインに仕上げ、白ラベルと明朝体ロゴを使用することで、品質感を表現>(同)というところだ。「三ツ矢サイダーオールゼロ」は「三ツ矢サイダー」と極めて近いパッケージデザインで、両商品が店頭で並ぶと面展開が広がるメリットがある。キリンレモンブランドの商品と認知されにくいと思われるため、独自に複数フェイスを確保することが欠かせなくなる。

 ヒットのための一つの課題はPlace(販売チャネル)であることは間違いない。キリンビバレッジの自販機保有台数は20万台と23万台のアサヒ飲料に大きく劣後するものではない。しかし、自販機のリーダー企業である日本コカ・コーラの98万台などと比べれば、コンビニチャネルの重要性は極めて高い。コンビニチェーンのMD(マーチャンダイザー)に、取り扱いを決めてもらえることは間違いないだろう。次に、コンビニオーナーが自店のために発注し、多数フェイス棚を確保してくれるかが一つのキモだ。

 そのためにはPromotion(コミュニケーション・販促)をどのように展開するかが最大のポイントとなってくる。コンビニオーナーへの働きかけは、一つにはマージン施策がある。通常、飲料はファーストロットはぐっと仕切り値を下げて提供されるので、その時点ではある程度棚確保が可能だ。継続が難しい。ヒット前の商品に棚を割くには、「売れそう」とオーナーに思わせることが欠かせない。CMを大量に投下することは、消費者に対するアピールと同時に、チャネル関係者にもアピールしているのが通常だ。しかし、「大人のキリンレモン」は「家族品質だもん」のブランド本体との整合性を考えると、あまりCMを大量に投下するとは考えにくい。
 
 では、どのようなコミュニケーション戦略が展開されるのだろうか。それはキリンホールディングス「キリン プラス-アイ」プロジェクトの傘下商品ラインアップを見てみると、何となく想像ができる。キリンビバレッジ「大人のキリンレモン」以外には、キリンビール「休む日のAlc.0.00%」 、キリンビバレッジ「ウコン[ダブル]」、小岩井乳業「大人のヨーグルト」、キリン協和フーズ「Cayu~na(かゆ-菜)」だ。正直なところ、カテゴリトップブランドにはなれていない商品が多い。また、ノンアルコールビールの「休む日のAlc.0.00%」は普通にプロモートすれば、自社のトップブランド「キリンフリー」とのカニバリ(食い合い)は免れない。そうした「訳あり商品」ともいえる存在が、「回復系アミノ酸オルニチン」で連携を図ったとも見て取れる。
 つまり、コミュニケーションは販促は、「大人のキリンレモン」だけでなく、ここの商品ではなく、あくまで「キリン プラス-アイ」連合として展開されることになるだろう。つまり、「大人のキリンレモン」の正否は、プロジェクトの成否そのものに左右されることになると予想される。

 、「回復系アミノ酸オルニチン」は同じくグループ会社の「協和発酵バイオ株式会社」の開発によるものだという。グループ大団結のプロジェクトと、キリンレモンの大人戦略の行く末から、目が離せなくなってきた。

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