似て非なるもの・ホンダの「カセットガス式発電機」ヒットへの道
2009年3月に発売されて以来大ヒット。日経MJのヒット商品番付で2009年上期の前頭に列せられ、2010年2月中旬に発売以来1年弱で累計販売台数が1万台を超えたと報じられたホンダのガスパワー耕うん機「ピアンタ FV200」。コンビニエンスストアでも購入できるカセットボンベを燃料に用いる簡便さがヒットの理由の一つだが、そのコンセプトをホンダは「ガスパワーシリーズ」として、ラインナップする。第二弾はガスパワー発電機「エネポ」。さらに第三弾として、ガスパワー船外機の発売も決定したという。その「エネポ」は3月25日に正式発表され、5月13日に発売される。
<ホンダのカセットガス式発電機エネポ、耕うん機に次ぐヒットになるか>(日経トレンディネット)
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20100326/1031326/?P=1
筆者は自他共に認める「メカオタク」である。機械モノには理由なく惹かれてしまう。(だってオトコノコだもん!)。
機械モノにもいろいろあるが、とりわけ「発電」に関しては並々ならぬ「萌え」を感じてしまうのだ。何故なら、発電という行為は原子力は言うに及ばず、火力にしろ水力にしろ、巨大なプラントがあって初めてできるものである。それを自分自身の意のままに操って電気を取り出せるとしたら、神の如き力を手に入れたようなものではないか!(おおげさ?)
現在、個人でできる「発電」といえば、手軽なところでは家庭用小型風力発電ユニット「信州の風( http://tinyurl.com/yj49vfo )」がバッテリー蓄電できて何とか実用に足りる性能を持っている機械だといえる。それ以外は都市ガスを使う東京ガスの燃料電池「エネファーム」か、ガスエンジン発電の「エコウィル」。灯油を使う燃料電池エネオスの「エコボーイ」があるが、装置が巨大だ。とても集合住宅では使えない。集合住宅の弱みとしては、ベランダは共有部なので風力発電ユニットは、いかに小型とはいえ設置できない。むろん、太陽電池パネルも無理。
さて、そうなると「ガスカセットでいつでも発電!」となれば、新発売されるホンダ「エネポ」には、萌えに萌えてすぐ購入!となるかといえば、イマイチ心が動かないのだ。
ガスカセットを2本使って実現する発電時間は1.1時間~2.2時間とのことだ。なにやら、エネルギー変換効率がえらく悪い気がするのは気のせいだろうか。筆者が風力発電に萌えたのは、再生可能エネルギーだからだ。設置スペースの問題で断念せざるを得ない「エネファーム」「エコウィル」「エコボーイ」も、普通に電力会社から送電されてくる電気を使うより環境負荷低減に貢献できるというところがポイントなのだ。イマドキのオタクは自らの欲求だけでなく、環境のこともしっかり考えているのである。
「いやいや、別に発電オタク向けに作った商品じゃないから」といわれれば、正にごもっともなのだが、だとすると、「だれ向け?」と疑問に思ってしまう。
ホンダはアウトドアで手軽に電子調理器を使ったり、DIYで木工工具を使用したり、洗車などに用途があるとしている。
バブル崩壊後の1990年代中盤から後半は、オートキャンプ場が新設ラッシュを迎えるなど、空前のアウトドアブームがあった。しかし、現在ではすっかり沈静化している。現在のアウトドアファンは、しっかりとアウトドア専用機器を揃えた玄人ばかりで、アウトドアで「発電」使用とするニーズは乏しいだろう。DIYや洗車での使用もあまりピンとこない。家庭用電源が取れない場所でやるだろうか。
1万台の大ヒットを記録している耕うん機「ピアンタ」には、「売れる理由」がしっかりとある。マクロ環境的に考えれば、農業ブームであり、その背景には食の安全・安心の高まりから、「自分で作る」という究極のトレーサビリティーが実現できること。そして、団塊の世代のリタイヤなどで、余暇に土いじり・家庭菜園を楽しむ層が増加していることも挙げられる。さらに、競合商品としての、ガソリンを使用する従来の小型耕耘機では、給油による汚れや、長期収納時に油の変質を防ぐため抜き取りをするといった手間がかかっているという明らかなユーザーのニーズギャップが存在した。それをキレイに払拭できているので、確かに売れたのも納得できよう。
発電機も従来のガソリン使用のものには全く同じ問題点が存在する。だとすると、「エネポ」は極めてスジのいい商品ということになるが、「誰が・何のために使うと・どんなメリットがあるのか」が明確になっていないプロダクトアウト型の商品に感じられてしまうのである。
「ガスパワーシリーズ」の第三弾として準備されているという、ガスパワー船外機は、沼や湖など静かな水面でボートを使って行うバス釣りやトラウト釣りなどでは便利だと思う。ガソリン船外機は大きく扱いが厄介だが、電気式はパワーがない。ユーザーのニーズギャップをしっかり拾えるだろう。
だとすれば、耕うん機「ピアンタ」を使用する人や、「ガスパワー船外機」を使用する人に向けて、クロスセリング用商品として「使い方提案」をしてみてはどうだろうか。燃料も共用できる。家庭菜園での作業や釣りの前後・合間での使用なら、利用イメージもしやすいだろう。
「耕うん機に次ぐヒット」に育てるには、「だれが・どう使うと・どんなメリットがあるのか」の提案が欠かせないだろう。
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