岡田監督が結ぶオリックスとサンガリアの点と線
一見関係ないものが、実は結びついているという思わぬ発見をすることがある。それは、実は無関係なのではなく、戦略の方向性が似ているから結びつくのかもしれない。
この春、飲料業界各社は低迷する茶系飲料を再活性化すべく、「ブレンド茶」に注力し、カテゴリーシェア70%を誇る日本コカ・コーラ「爽健美茶」を追撃すべく、アサヒ飲料が「十六茶」で復権を賭け、キリンビバレッジが「生茶」初の派生商品で挑戦する。
激化する戦いはそのままCM戦にもつれ込んでいる。爽健美茶は「宮﨑あおい」。十六茶は「新垣結衣」のCMを大量に投下。している。生茶は4月20日の新発売時に向けて、「綾瀬はるか」が続投するのか気になるところだ。
そんな激戦の中、ネット上で「十六茶より上じゃね?」と話題の商品がある。日本サンガリア ベバレッジカンパニーの「二十一茶」だ。朝鮮人参などの他、ウーロン茶 、グァバ茶 、バナバ茶などの茶葉を多く加えた点が特徴で、カフェインゼロではないようだ。「まるでギャグのようだ!」と多くの書き込みが見られるが、実はこの商品は十六茶が「お茶どうぞ・十六茶」として発売された4年後の1997年に発売されており、その歴史は古い。
そもそも、サンガリアという飲料メーカーは、コンビニやスーパーのPB(プライベートブランド)の供給元であったり、100円低価格自販機の定番であったりするが、意外にに実力派なのだ。緑茶にアスコルビン酸を添加し、容器に窒素を充填して缶詰する製法特許を取得して缶入り緑茶を発売したのは同社が世界初。加温や冷凍できるPETボトルも同社が最初なのである。
意外な実力派なのに、CMなどは極端に少ない。ブレンド茶三つ巴戦線のCM競争などどこ吹く風。「稲川淳二」が登場するCM( http://www.youtube.com/watch?v=Keei0wpuul4 )が地方でごく少数流されているぐらい。露出が少ないのに、ネットなどで定期的に話題に上る。決して忘れられることはない。実力を隠して、「人のふんどしで相撲を取る」、見事なフォロアー戦略であるといえる。
サンガリアが本拠を置く大阪で、やはり見事に人のふんどしで相撲を取っている広告を見つけた。所は梅田。キャッチコピーが秀逸だ。
「無関心でいられますか? 岡田」。
オリックス・バファローズの広告だ。昨年は成績がふるわず、9月27日の時点で2年ぶりに最下位への転落が決定。その責で中村球団本部長と大石監督が解任され、10月13日に後任として元阪神監督・岡田彰布が就任した。オリックスの監督としての初シーズンである。
拠点を大阪/神戸に置いているオリックス、阪神の2チームだが、マジョリティーは圧倒的に「虎好き」だ。しかし、「岡田」である。2005年のリーグ優勝を含め、2003年から2008年までタイガースの監督を務めていただけではない。往年の「真弓掛布バース岡田」世代であれば、岡田に興味が無い訳がない。オリックスの監督になっても、「岡田か…どれ、いっちょ見てみるか」と阪神ファンを巧みに誘う。観客動員数が低下する一方の今日、いかにファンとして取り込むか。足を運ばせるかは重要なテーマだ。ファンの数において劣後するオリックスは、少し前の「阪神の顔」を使って誘い込む、見事なフォロアー戦略を展開しているといえる。
実は前出のサンガリアと岡田は縁がある。
現在の稲川淳二編のように、大阪企業らしいユニークなCMは全国放送のバラエティー番組にしばしば取り上げられ、社名認知向上に貢献している。1980年代に、岡田彰布・川藤幸三・池田親興などの当時の阪神現役選手を起用した、ド素人さ丸出しのCM( http://www.youtube.com/watch?v=sK1qWdEQOKQ )が話題になった。このなつかしCMに比べると、ポスターの岡田監督は随分とシブくてカッコイイ。
常に大量CMを投下しなくとも決して忘れられない、隠れた実力派のサンガリア。昨年最下位だったバファローズは、スタート時点ではフォロアー戦略も止むなしだが、今シーズンは「無関心でいられない」どころか、大注目される存在になってほしい。
※「日本サンガリア ベバレッジカンパニー」「オリックス・バファローズ」「岡田彰布」に関する記述はWikipediaを参考にしました。
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