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20 posts from March 2010

2010.03.30

日本マクドナルドのメニューとキャンペーンに見る「勝ちパターン」

 外食産業苦境のなか、日本マクドナルドは2008年12月期の全店合計売上高は5183億1600万円を達成。外食産業としては日本でははじめて5000億円を突破。さらに翌09年12月期では営業利益は前年同期比24.0%増の242億円、最終利益は3.4%増の128億円となり、上場以来最高益だという。
 好業績の中でも店舗を433店閉鎖するなど効率性を追求しつつ、強大な購買力を発揮するというバリューチェーン、サプライチェーンが好業績を支えるのは確かだ。しかし、コストコントロールだけでは売り上げは上がらない。同社の強さのヒミツの一つは、「売りを支える勝ちパターンの確立」にあることは間違いない。

 商売の基本は、どこまでいっても「売り上げ=単価×客数」である。日本マクドナルドはその基本を愚直なまでに実践していることが強さの源泉であるともいえる。

 業績を押し上げるためには高単価メニューの販売が有効だ。現在展開中の「Big America」キャンペーンでは、「テキサスバーガー」などが数量限定になるまでの話題となり、4月上旬までを目処に再登場という人気メニューになっている。
 大型サイズである「Big America」シリーズのバーガーの原型は2008年11月からスタートした「クォーターパウンダー」である。「日本のハンバーガーよ、もう遊びは終わりだ」と強力なメッセージで米国から上陸。北島康介のビッグマウスが炸裂するCMも話題を呼んだ。その約半年後の09年7月には安室奈美恵をキャラクターにし、Tシャツや缶バッチをプレミアムにした「日本バラ色計画」を展開した。
 実はこの「クォーターパウンダー」と「Big America」は同じ高単価大型バーガーでも、客層が微妙に違う。Web上の書き込みなどを見ていると、後者の方が年齢が高い、中年層が反応しているのがわかる。一説によると、クォーターパウンダーの前の「メガマック」を最も食べたのは30~40歳代の男性であるというが、クォーターパウンダーも同様の傾向があったのかもしれない。しかし、派手な登場キャンペーンや「日本バラ色計画」では、少々手が出しにくかったのは否めない。
 「Big America」キャンペーンにおいては、ターゲット年齢層を意識させることを極力避けているように思える。つまり、高単価メニューで客単価を高めつつ、客層を拡大することによって、客数を増して売り上げを最大化する狙いである。

 しかし、高単価・大型バーガーだけに頼ると「そんなに食べられない」「アメリカ式だけだとちょっと・・・」とついて行けない人が出てくる。1971年に誕生した日本マクドナルドにとっては、中高年も重要な顧客層なのだ。
「クォーターパウンダー」「日本バラ色計画」の次には、チキンタツタやグラコロなどの懐かしの日本オリジナルメニューを復活させた「NIPPON ALL STARS」キャンペーンを展開。今回の「Big America」キャンペーンの次には、4月5日から「マクドナルドの日本(ニッポン)の味」キャンペーンを開始するという。
( http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2010/promotion/promo0329.html :同社ニュースリリース)。
 「NIPPON ALL STARS」キャンペーンでは、「ジェームズ」なる謎の外人を使った、イマイチ狙いのよくわからない販促キャンペーンも展開していたが、今回は「味」で勝負のようだ。大人気の「チキンタツタ」は単純なリバイバルだが、 「NEW てりたま モチモチバンズ」はバンズに米粉を用いて食感を高め、「NEW ゴマえびフィレオ ごまごまバンズ」は黒ごまと白ごまペーストを練りこんだバンズを使用するという。これらのメニューはターゲットを中高年とするだけでなく、価格も中価格帯で展開するなど、高価格メニューへの偏りを是正して客離れを防ぐ狙いも見える。
 価格帯を適切に展開して客数を維持するには100円・120円マックの存在も欠かせない。その人気メニューである「マックチキン」を4月2日から期間限定で復活させるという。( http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2010/promotion/promo0326.html :同社ニュースリリース)低価格メニューファンの吸引による客数増と、もう1品の次いで買いでの客単価増を狙っているのだ。

 客数増と客単価増といえば、ドリンクメニューからも目が離せない。「カフェラテ」「キャラメルラテ」などのコーヒーのバリエーションを展開する「マックカフェ」の取り扱い店舗も徐々に増えつつ、春~夏に向けて「アイスキャラメルラテ」「アイスカフェモカ」などのコールドメニューも増やしている。ターゲットとなるのはマクドナルドの従来顧客もさることながら、昨年繰り返し展開した「無料コーヒー」で吸引した顧客層がベースとなっていることは想像に難くない。景気の低迷で割高なカフェ利用がためらわれるなか、街頭で「無料です」と引き込まれてコーヒーを試してみれば、確かにうまい。120円なら無料でなくともまた来ようということになる。今まで接点のなかった層を取り込んで客数増。次に「マックカフェ」メニューを投入して、「コーヒーより少し高いけど、普通のカフェよりは安いから」と注文を誘って客単価増である。

 商売の基本は、どこまでいっても「売り上げ=単価×客数」。その基本を徹底し、メニューとキャンペーン展開によって、微妙にコントロールする。巨大戦艦をミリ単位で操縦するが如きマクドナルドの戦略には脱帽だ。

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2010.03.29

似て非なるもの・ホンダの「カセットガス式発電機」ヒットへの道

 2009年3月に発売されて以来大ヒット。日経MJのヒット商品番付で2009年上期の前頭に列せられ、2010年2月中旬に発売以来1年弱で累計販売台数が1万台を超えたと報じられたホンダのガスパワー耕うん機「ピアンタ FV200」。コンビニエンスストアでも購入できるカセットボンベを燃料に用いる簡便さがヒットの理由の一つだが、そのコンセプトをホンダは「ガスパワーシリーズ」として、ラインナップする。第二弾はガスパワー発電機「エネポ」。さらに第三弾として、ガスパワー船外機の発売も決定したという。その「エネポ」は3月25日に正式発表され、5月13日に発売される。

 <ホンダのカセットガス式発電機エネポ、耕うん機に次ぐヒットになるか>(日経トレンディネット)
 http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20100326/1031326/?P=1

 筆者は自他共に認める「メカオタク」である。機械モノには理由なく惹かれてしまう。(だってオトコノコだもん!)。
機械モノにもいろいろあるが、とりわけ「発電」に関しては並々ならぬ「萌え」を感じてしまうのだ。何故なら、発電という行為は原子力は言うに及ばず、火力にしろ水力にしろ、巨大なプラントがあって初めてできるものである。それを自分自身の意のままに操って電気を取り出せるとしたら、神の如き力を手に入れたようなものではないか!(おおげさ?)
 現在、個人でできる「発電」といえば、手軽なところでは家庭用小型風力発電ユニット「信州の風( http://tinyurl.com/yj49vfo )」がバッテリー蓄電できて何とか実用に足りる性能を持っている機械だといえる。それ以外は都市ガスを使う東京ガスの燃料電池「エネファーム」か、ガスエンジン発電の「エコウィル」。灯油を使う燃料電池エネオスの「エコボーイ」があるが、装置が巨大だ。とても集合住宅では使えない。集合住宅の弱みとしては、ベランダは共有部なので風力発電ユニットは、いかに小型とはいえ設置できない。むろん、太陽電池パネルも無理。

 さて、そうなると「ガスカセットでいつでも発電!」となれば、新発売されるホンダ「エネポ」には、萌えに萌えてすぐ購入!となるかといえば、イマイチ心が動かないのだ。
 ガスカセットを2本使って実現する発電時間は1.1時間~2.2時間とのことだ。なにやら、エネルギー変換効率がえらく悪い気がするのは気のせいだろうか。筆者が風力発電に萌えたのは、再生可能エネルギーだからだ。設置スペースの問題で断念せざるを得ない「エネファーム」「エコウィル」「エコボーイ」も、普通に電力会社から送電されてくる電気を使うより環境負荷低減に貢献できるというところがポイントなのだ。イマドキのオタクは自らの欲求だけでなく、環境のこともしっかり考えているのである。

 「いやいや、別に発電オタク向けに作った商品じゃないから」といわれれば、正にごもっともなのだが、だとすると、「だれ向け?」と疑問に思ってしまう。
 ホンダはアウトドアで手軽に電子調理器を使ったり、DIYで木工工具を使用したり、洗車などに用途があるとしている。
 バブル崩壊後の1990年代中盤から後半は、オートキャンプ場が新設ラッシュを迎えるなど、空前のアウトドアブームがあった。しかし、現在ではすっかり沈静化している。現在のアウトドアファンは、しっかりとアウトドア専用機器を揃えた玄人ばかりで、アウトドアで「発電」使用とするニーズは乏しいだろう。DIYや洗車での使用もあまりピンとこない。家庭用電源が取れない場所でやるだろうか。

 1万台の大ヒットを記録している耕うん機「ピアンタ」には、「売れる理由」がしっかりとある。マクロ環境的に考えれば、農業ブームであり、その背景には食の安全・安心の高まりから、「自分で作る」という究極のトレーサビリティーが実現できること。そして、団塊の世代のリタイヤなどで、余暇に土いじり・家庭菜園を楽しむ層が増加していることも挙げられる。さらに、競合商品としての、ガソリンを使用する従来の小型耕耘機では、給油による汚れや、長期収納時に油の変質を防ぐため抜き取りをするといった手間がかかっているという明らかなユーザーのニーズギャップが存在した。それをキレイに払拭できているので、確かに売れたのも納得できよう。
 
 発電機も従来のガソリン使用のものには全く同じ問題点が存在する。だとすると、「エネポ」は極めてスジのいい商品ということになるが、「誰が・何のために使うと・どんなメリットがあるのか」が明確になっていないプロダクトアウト型の商品に感じられてしまうのである。

 「ガスパワーシリーズ」の第三弾として準備されているという、ガスパワー船外機は、沼や湖など静かな水面でボートを使って行うバス釣りやトラウト釣りなどでは便利だと思う。ガソリン船外機は大きく扱いが厄介だが、電気式はパワーがない。ユーザーのニーズギャップをしっかり拾えるだろう。
 だとすれば、耕うん機「ピアンタ」を使用する人や、「ガスパワー船外機」を使用する人に向けて、クロスセリング用商品として「使い方提案」をしてみてはどうだろうか。燃料も共用できる。家庭菜園での作業や釣りの前後・合間での使用なら、利用イメージもしやすいだろう。
 「耕うん機に次ぐヒット」に育てるには、「だれが・どう使うと・どんなメリットがあるのか」の提案が欠かせないだろう。

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2010.03.26

ブランド復活を狙う「ヤクルト ミルミル」の「引き算戦略」

 今年1月にリニューアル発売された「ヤクルト ミルミル」が、3月25日・日経新聞にカラー全面広告を掲出するなど、さらに攻勢をかけている。その狙いと戦略は何だろうか?

 ミルミルは1978年から27年の間、販売されていたが2005年に発売を終了。後継商品「ビフィーネM」に引き継がれていた。そのビフィーネMを2月末で販売終了させ、ミルミルを再投入してきたわけだ。
 ミルミルはヤクルトがビフィズス菌を発酵させた世界初の商品として登場した経緯がある。今日ではポピュラーになったビフィズス菌飲料の元祖なのだ。ビフィズス菌を摂ることは、整腸作用と健康維持に欠かせないといい、さらにそれを生きたまま腸に届けるのがポイントらしい。

 さて、この「生きたまま腸に届く」というフレーズ、最近よく耳にしないだろうか。実は今朝も都内各所でキッコーマンが「YU株」なる乳酸菌を生きたまま腸に届けるというヨーグルトをサンプリングしている。明治も「特別な乳酸菌」としてLG21で攻勢をかけている。小田和正がCMで「希望の光」を切々と歌う。なんだかカラダの調子がよくなる希望が見えてきそうな気がしてくる。ヤクルトはというと、「ヤクルト」もしくは「ヤクルト400」で「シロタ株」なる菌を届けることに注力している。俳優・渡辺謙がCM「腸を鍛える編」で「私は乳酸菌シロタ株で、毎日腸をトレーニングしています」といって飲んでいる。
 しかし、こんな混戦状態では何を摂って、腸に何菌を届ければいいのかわからなくなってくるのが正直なところだ。自分の腸は1本しかないのに。

 そこで、世界初のビフィズス菌飲料「ミルミル」の知名度が効いてくる。販売終了5年経っても、依然高い支持があったとヤクルトのニュースリリースは伝えている。「ヤクルト」は「シロタ株」。「ミルミル」は「ビフィズス菌」。どちらも必須だという。なかでも、ビフィズス菌は<生後間もない乳児期に大腸内のほとんどを占めるまでに一気に増え、有害菌等から赤ちゃんの体を守ってくれますが、その後、加齢やストレス、食生活の変化により大きく減少してしまいます>(同社ニュースリリース)という。

 実はここがリニューアルに際しての、一つ目の「引き算」だ。旧ミルミルは「家族みんなで飲む」という訴求をしていたが、何故かメインは子どもに置かれていたような訴求をしている。1980年のCM( http://www.youtube.com/watch?v=Qwt0VwqdEeA )を見ると、今回のCMも踏襲しているクレイ(粘土)アニメーションだが、明らかに表現が幼児向けだ。その後、1980年代はタレントの故・清水由貴子が肝っ玉母さんを演じるシリーズCM( http://www.youtube.com/watch?v=mXv9V1OLdjY )のなかで、家族が各種ヤクルト製品を飲む姿が描かれているが、ミルミルは大人も子どもも飲んでいる。
 少子化で子どもは減る。競合も大人向けの製品を続々投入している。そうしたマクロ環境、競合環境に応じて、「ミルミル再投入」において、バッサリと子どもをターゲットから削って「大人のための」というポジショニングを明確化したのだ。

 ターゲットとポジショニングが絞れると、製品特性も明確化できる。成分表示を見ると、ビフィーネMに投入されていた「DHA含有魚油」「リン酸Ca」「ラクトフェリン」などが姿を消している。すっかりポピュラーになって、他の商品でも摂れるDHAなどはあえて「引き算」して、ビフィズス菌に特化しているのだ。砂糖も引き算だ。甘味料のパラチノースを使用している。大人が気になるカロリー対策だろう。

 ターゲティング絞りきるのが怖くてつい、幅広にしてどっちつかずになる。製品にもあれこれと投入してしまう。しかし、そんなエッジの立っていない戦い方で生き残れるほど昨今の環境は甘くはない。ヤクルトはミルミルブランドの復活を「大人の腸」に賭け、日経新聞に広告を出したのである。その「引き算」の戦略には学ぶべき所があるだろう。

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2010.03.25

米所の星・「末広製菓」はシナジーのお手本か?

 米所、米菓王国として知られる新潟の菓子メーカー・末広製菓。静かなブームが広がるその製品に隠された、意外なる優良企業の姿を解き明かしてみる。

 お笑いコンビ・くりぃむしちゅーがラジオ番組・オールナイトニッポンで、ハマリっぷりを公言したり、某人気サイトでも反則級に美味しいと激賞されたりと、そろそろ大ブレイクの予感がする商品がある。新潟市に本社と工場を構える末広製菓の「良味100選 揚げおかき」である。くりぃむしちゅーのお気に入りは、そのシリーズの中の「良味100選 両横綱 中辛カレー味」だという。しかし、米菓メーカーの末広製菓の真骨頂は、本業のせんべいやおかき以外の所にあると筆者は見た。

 末広製菓のことを調べてみるとなかなか興味深いことがわかる。「山崎製パン株式会社」の子会社だ。同社ホームページとWikipediaを見ると、1970年代初頭に経緯英危機に陥った際に、山崎製パンの出資を受け再建。1983年に完全子会社になったとある。2007年に「食品リサイクル推進環境大臣賞・奨励賞」を受賞した、「パンの耳スナック」を製造している。「何とうまいことをやったもんだ!」と当思ったのを記憶している。「パンの耳から生まれた・揚げパンスナック・ シナモンシュガー味」という商品で、姉妹商品の「パンの耳から生まれた・スティックラスク・フレンチトースト味」もある。

 環境省の資料によると、パンの耳スナックは従来、飼料工場に送られて家畜飼料にされていた。それを同社が試行錯誤を重ねて、パンの耳のうち17%を再利用可能にして、スナック菓子製造工程に組み入れ製品化したという。菓子原料の輸入コーンスターチを60%削減することに成功し、製品は山崎製パングループのデイリーヤマザキなど6,000店舗で販売されているほか、「無印良品」にもOEM供給されているという。
 環境省はエコロジー活動として評価しているが、この取り組みは経営的にも非常に意義深い。そもそも、何故、米菓メーカーで「パンの耳」がでるのかといえば、同社は事業の柱として「デリカ事業」を行っているからだ。弁当、調理パン(サンドイッチ)、調理麺を製造し、県内外のデイリーヤマザキに出荷している。
 パンの耳から可視を製造する技術は、山崎製パン本体にもフィードバックされている。ひとくちサイズにカットしたパンの耳を、チョコでコーティングしたという「チョコの山」がそれだ。山崎製パンのホームページでも先月のイチオシ商品として掲載され、人気商品になっているという。

 「シナジー」という言葉がよく用いられる。シナジーとは、企業の事業観の関係を表し、事業に相乗効果が働き、100+100=200以上になっていれば、シナジーが働いているということになる。しかし、事業はそんなに甘くはない。実際には100+100=150程度にしかならない例も少なくない。その、シナジーの反対の状態を「アナジー」と呼ぶ。企業合併が破談になるケースの一つは、精査するとシナジーどころかアナジーが働く恐れが出てくることなどが挙げられる。ダイムラーとクライスラーの例が顕著だ。
 シナジーが必要な場合は、「アンゾフのマトリクス」で考えれば、「新規市場」に「新製品」を投入する「多角化」の成長戦略を選択する場合だ。特性がよくわかっていない顧客や市場を相手に、なれていない製品を製造・販売するリスクを軽減するためには、シナジーが必要なのだ。工場などの製造設備や原材料が共有できる「生産シナジー」。流通チャネルや物流網を共有できる「販売シナジー」。特許技術やブランドが共有できる「投資シナジー」。人材や経営ノウハウが共有できる「経営シナジー」などがある。

 末広製菓の場合、デリカ事業への進出は「デイリーヤマザキ」というグループ会社の販売拠点が確保されていることと、物流会社の「ヤマザキ物流」のロジスティック網が活用できる「販売シナジー」の効果は期待できる。しかし、米菓とデリカは製造工程や原材料も異なるため「生産シナジー」は働きにくい。安定稼働するためには並々ならぬ苦労があったと想像できる。それが、デリカ事業での端材を製菓事業に再利用するという発想は、何とかシナジーを発揮させようという努力の現れであり、「パンの耳スナック」はそれが形になった努力の賜なのだ。

 国内市場は縮小し、グローバーク競争はさらに激しさを増す。事業は規模化しなくては生き残れない時代に、経営統合や合併などが加速度的に増えるだろう。その中で、いかにアナジーを避け、シナジーを発揮できるかが生き残りのカギとなるのは間違いない。しかし、言うは易く行うは難しである。しぶとい取り組みが想像できる、米菓王国の小さな製菓会社の取り組みから学ぶものは多いだろう。

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2010.03.24

岡田監督が結ぶオリックスとサンガリアの点と線

 一見関係ないものが、実は結びついているという思わぬ発見をすることがある。それは、実は無関係なのではなく、戦略の方向性が似ているから結びつくのかもしれない。

 この春、飲料業界各社は低迷する茶系飲料を再活性化すべく、「ブレンド茶」に注力し、カテゴリーシェア70%を誇る日本コカ・コーラ「爽健美茶」を追撃すべく、アサヒ飲料が「十六茶」で復権を賭け、キリンビバレッジが「生茶」初の派生商品で挑戦する。
 激化する戦いはそのままCM戦にもつれ込んでいる。爽健美茶は「宮﨑あおい」。十六茶は「新垣結衣」のCMを大量に投下。している。生茶は4月20日の新発売時に向けて、「綾瀬はるか」が続投するのか気になるところだ。

 そんな激戦の中、ネット上で「十六茶より上じゃね?」と話題の商品がある。日本サンガリア ベバレッジカンパニーの「二十一茶」だ。朝鮮人参などの他、ウーロン茶 、グァバ茶 、バナバ茶などの茶葉を多く加えた点が特徴で、カフェインゼロではないようだ。「まるでギャグのようだ!」と多くの書き込みが見られるが、実はこの商品は十六茶が「お茶どうぞ・十六茶」として発売された4年後の1997年に発売されており、その歴史は古い。
 そもそも、サンガリアという飲料メーカーは、コンビニやスーパーのPB(プライベートブランド)の供給元であったり、100円低価格自販機の定番であったりするが、意外にに実力派なのだ。緑茶にアスコルビン酸を添加し、容器に窒素を充填して缶詰する製法特許を取得して缶入り緑茶を発売したのは同社が世界初。加温や冷凍できるPETボトルも同社が最初なのである。
 意外な実力派なのに、CMなどは極端に少ない。ブレンド茶三つ巴戦線のCM競争などどこ吹く風。「稲川淳二」が登場するCM( http://www.youtube.com/watch?v=Keei0wpuul4 )が地方でごく少数流されているぐらい。露出が少ないのに、ネットなどで定期的に話題に上る。決して忘れられることはない。実力を隠して、「人のふんどしで相撲を取る」、見事なフォロアー戦略であるといえる。

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 サンガリアが本拠を置く大阪で、やはり見事に人のふんどしで相撲を取っている広告を見つけた。所は梅田。キャッチコピーが秀逸だ。
 「無関心でいられますか? 岡田」。
 オリックス・バファローズの広告だ。昨年は成績がふるわず、9月27日の時点で2年ぶりに最下位への転落が決定。その責で中村球団本部長と大石監督が解任され、10月13日に後任として元阪神監督・岡田彰布が就任した。オリックスの監督としての初シーズンである。
 拠点を大阪/神戸に置いているオリックス、阪神の2チームだが、マジョリティーは圧倒的に「虎好き」だ。しかし、「岡田」である。2005年のリーグ優勝を含め、2003年から2008年までタイガースの監督を務めていただけではない。往年の「真弓掛布バース岡田」世代であれば、岡田に興味が無い訳がない。オリックスの監督になっても、「岡田か…どれ、いっちょ見てみるか」と阪神ファンを巧みに誘う。観客動員数が低下する一方の今日、いかにファンとして取り込むか。足を運ばせるかは重要なテーマだ。ファンの数において劣後するオリックスは、少し前の「阪神の顔」を使って誘い込む、見事なフォロアー戦略を展開しているといえる。

 実は前出のサンガリアと岡田は縁がある。
 現在の稲川淳二編のように、大阪企業らしいユニークなCMは全国放送のバラエティー番組にしばしば取り上げられ、社名認知向上に貢献している。1980年代に、岡田彰布・川藤幸三・池田親興などの当時の阪神現役選手を起用した、ド素人さ丸出しのCM( http://www.youtube.com/watch?v=sK1qWdEQOKQ )が話題になった。このなつかしCMに比べると、ポスターの岡田監督は随分とシブくてカッコイイ。

 常に大量CMを投下しなくとも決して忘れられない、隠れた実力派のサンガリア。昨年最下位だったバファローズは、スタート時点ではフォロアー戦略も止むなしだが、今シーズンは「無関心でいられない」どころか、大注目される存在になってほしい。


※「日本サンガリア ベバレッジカンパニー」「オリックス・バファローズ」「岡田彰布」に関する記述はWikipediaを参考にしました。

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2010.03.23

気持ち・読んでる。西友の「KY」絶好調!

 「西友がなんで他社の宣伝してるんだ?」とCMが話題だ。それは2008年から継続して現在絶好調の「KY」の一環なのだ。

 「西友にとり、あえ~ずいけあ♪」。陽気な外人新婚夫婦が西友で次々と新居のアパートに家具・雑貨を運び込む映像のバックで、ちょっと舌足らずな男の子の歌声が響く。「だって家具や雑貨も安いんだもの。新生活も西友」と、続けてアナウンス。「西友に、取り敢えず、行けや!」と、生活用品を買い揃える価格・利便性をアピールしているのだが、明らかに「ニトリ」「IKEA」と聞こえるように狙っている。「新生活のうた編」と名付けられたCMだ。
 狙いの一つは「西友でも扱っているけど、高い」と思われている商品カテゴリーに注目させることにある。昨年3月には、「シャンプーと洗剤を買ったっけ?」という夫に、妊婦の妻が「そういうのは西友では買わない!」とピシッと言うCM「夫婦編」を放映した。同7月は、当時話題のギャルの「盛りヘア」をパロディーに使ったCM「盛ってます編」で「KY=暮らしのものも安く」を訴求した。
 今回と全く同じ狙いだったのは、「盛ってます編」の一つ前の「バッタリ編」だ。『「コジマさーん」「ヤマダさーん!」「あ、ビックさん!」「ハーイ!」「タカタさん!」「どうしたの、みんな西友にあつまっちゃって!」だってスーパーのテレビがスーパー安いんだもの。家電も安く。西友。』
 つまり今回は、「家具・寝具・雑貨などの生活用品は西友は高い」という認識を払拭するだけでなく、「専門店のニトリ・IKEAと同等以上に安いのだ」という訴求のため、あえて他社の社名を想起させているのである。
 「どうせ西友は○○は高いでしょ!」という消費者の気持ちを読んで、「そうじゃないよ!」と訴求するのが一連のCMのキモなのだ。

 西友が消費者の気持ち読んでる(KY)の訴求で、筆者が「おっ!」と思ったのが、冷凍食品の価格訴求だ。
 2002年にウォルマートと包括提携し、西友の筆頭株主となり、2008年に完全子会社となった。ウォルマートの基本はチラシに頼らない「EDLP=Every Day Law Price:毎日が最低価格」だ。しかし、毎日チラシで買い物計画を立てる(Every Day Chirashi-de Planning?)な日本の主婦には受け入れられず苦戦した。そのブレイクスルーがKY戦略の一環である、「他社のチラシに掲載された特売価格が西友よりも安い場合に販売価格を引き下げる”他社チラシ価格照合制度“」だ。その中でも西友が絶対の自信を持っていたのが当時一層の値下げをした生鮮品と冷凍食品なのだ。
 その自信の源である冷凍食品の価格について、西友は自らアンチテーゼを行った。店頭にポスターを掲出したのだ。
 『「冷凍食品」の割引表示やめます。 「5割引」と言われると、確かに安いと思ってしまうけど、元になる定価が高かったら、たいしてお得じゃありません。だから私たちは、まぎらわしい割引表示を一切やめます。正々堂々、価格表示で勝負することを宣言します。』

 とても穿った見方をすると、「他社チラシ価格照合制度」を開始した時点では、PB(プライベートブランド)の比率10%程度と、他社よりかなり低かったが、昨今PB比率が高まって同一条件で比較されることが少なくなったという背景があるのかもしれない。しかし、ポスターに書いてあるように、「5割引って、どういう定価設定だよ!」という気持ちは誰しも頭の片隅にあっただろう。その証拠に、企業間取引(B to B)で 出した見積金額をあっさり半値にしたら、喜ばれるより最初の見積もり根拠を疑われ信用をなくす。
 そんな、消費者の「心の底を読んだ」のも、西友の「KY」なのだろう。

 カジュアル衣料はウォルマートの購買力を活かし、安いけど結構カッコイイ「Georgeブランド」を展開している。しかし、「H&M、Forever21などと並ぶファストファッションの一翼である」などと主張はしていない「SEIYU FASHION PROJECT」として、昨年は『あなたが思っているかもしれない「スーパーの服は安いけどダサイ」を、「安いけどカッコイイ!」に変えるプロジェクト』と公表して、庶民の支持を集めることに成功している。あくまで「気持ちを読んでいる」のだろう。
 アパレルでカジュアル以上に目立つのが、昨年後半からさらに注力している「スーツ」だ。従来、7900円で展開していた紳士ビジネススーツを、昨年10月8日からGeorgeブランドに組み込み、業界最安値の5000円でセットアップスーツとして発売した。ここでもウォルマートの購買力を活かして中国で集中生産したり、カラーをブラックのみに集約したりして実現した価格だ。さらに、今年2月から同じくGeorgeブランドで3800円の女性用就活スーツを発売。 “氷河期再来”といわれる就職戦線に挑む学生を低価格スーツで応援するという。
 低価格衣料は「デフレの根源」といわれたり、海外の労働力搾取の犠牲・国内産業にダメージを与えるといわれたりすることも多い。しかし、激安就活スーツは、実家からの仕送りゼロの学生が初めて1割を超え、さらに活動期間が延びるという厳しい環境下で、学生の「気持ちを考え」たら「ありがたい存在」となるだろう。

 ちょっとおとぼけなCMが楽しく、何かとだじゃれでKYに持って行く、西友の「KY戦略」。しかし、日本市場で消費者の気持ち読むことがうまくなってきているように思う。これからも、ますますKYになって消費者の味方になって、厳しいといわれるスーパー業界の生き残りのキーワードとして定着させてほしい。

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2010.03.19

今年もやります!桜ギャラリー2010

桜の開花が待ち遠しくなってくると、このBlogはアクセスがドバッと数百PVも上がるのです。

それは・・・「桜ギャラリー」を見に来る方がたくさんいるから!

http://kmo.air-nifty.com/photos/sakura/index.html


ケータイ片手に桜を求めてあちこちへ。
なんと、今年で5年目に突入です。

まずは、昨日撮影した寒桜から。
ソメイヨシノが咲く頃には、コンスタントにアップする予定です。
なんといっても、今年は自転車通勤用の自転車が導入されています。
取材の機動力が違います!

ギャラリーにあるように、「とっておきの桜の写真」も募集中。
並べてご紹介していきます。

今年もお楽しみに!

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2010.03.18

三つ巴の激突!ブレンド茶戦争2010年春の陣

 カテゴリーシェア7割の圧倒的なリーダー「爽健美茶」。復権をかけて挑む「十六茶」。さらに、まさかの新規参入者も現れて混戦も予想される「ブレンド茶」戦線を見てみよう。

 飲料市場に異変がある。縮小しているのだ。<2009年の飲料市場は前年比1.3%減で、2年連続でマイナス>(富士経済調べ・livedoorニュース・シゴトの計画2010年3月16日)だという。カテゴリー別に見れば<近年、健康志向の高まりに伴って成長したミネラルウォーター類、機能性飲料類などが前年比約94~96%に落ちている>。その中で、<前年比5.4%アップと、3年連続で伸びたのが「炭酸飲料>という状況だ。
 不景気で浄水器の水を飲む。その水にスポーツドリンクの粉末の粉末を用いて割安に済ます。そして、お茶は自分で淹れる。「水筒男子」の台頭である。茶系飲料はカロリーがないことから飲まれていたため、ゼロカロリーで美味しい炭酸に代替され、さらに炭酸は自分で作れない、水筒に入れられない故に一人勝ちなのだ。茶系飲料、直撃である。

 そんな環境下で、飲料各社が力を入れているのが、複数の原料を用いて淹れる「ブレンド茶カテゴリー」である。アサヒ飲料の十六茶が開拓したカテゴリーであるが、現在は日本コカ・コーラ・爽健美茶の鉄壁の牙城である。しかし、その動きにも変化がある。
 爽健美茶は従来、「美」という文字が好まれ女性を中心に支持が高かった。しかし、7割というシェアを取り切っていたことから、昨年、男性にもターゲットを拡大した。CMキャラクターをモデルの杏、シンガーの福原美穂、俳優の竹野内豊と3枚看板にし、メインを竹野内に据えた。広末涼子のCMで人気の高い「からだ巡茶」がすっかり「女性向けブレンド茶」として育ったからこそできる戦略であると推察できる戦略である。
 しかし、この春からのCMは宮﨑あおいが務めることになった。再び女性に戻した形である。その背景には、「爽健美茶・黒冴」という男性ターゲットという属性を明確にした商品を上市することに成功したことが挙げられるだろう。

 宮﨑あおいのCMを見ると、一つ気がつくことがある。パジャマ姿で朝の光の中でストレッチをしている。そう、「朝」なのだ。
 朝をテーマにした訴求は、一足先に十六茶が打ち出している。「結衣は朝、十六茶から~♪」とガッキーこと新垣結衣が懐かしの松本伊代のデビュー曲「センチメンタルジャーニー」の替え歌を歌う。CMの始まりではパジャマ姿だ。商品にも明確に「朝ブレンド・カフェイン0」と表記されている。カフェインゼロは若干カフェインを含有する原料を使用する原料を使用する爽健美茶に対する差別化であることは間違いない。

 さらに、「ブレンド茶」「朝」に、まさかの参入をしてきた存在がある。キリンの「生茶」である。生茶は2000年に伊藤園の「おーいお茶」キラーとして市場に参入した。両者は熾烈な戦いを繰り広げている中、2004年にサントリーに「伊右衛門」で殴り込みをかけられ、現在、緑茶飲料カテゴリーで3位に甘んじ、日本コカ・コーラの「綾鷹」の猛追を受ける厳しい状況にある。
 そんな中、10周年を迎える今年4月20日にリニューアルを行うという。生茶のリニューアル自体は珍しくないが、ポリシーとして抹茶を用いたり、茶葉を変えたりするものの、緑茶以外の派生商品には手を出していなかったことだ。それをついに破って、ブレンド茶カテゴリーに「生茶ブランド」で参入をしてくるのである。
 「キリン 生茶 朝のうるおうブレンド茶」。<失われがちなうるおいを朝からとる>(同社ニュースリリース)という。「朝」である。<大麦など、穀類の香ばしい香り、飲み飽きない米のやさしい甘み>とブレンド茶らしい訴求に加え<500mlペットボトル1本あたりコラーゲンを200mg配合>というところがミソであろうか。

 にわかに勃発した「朝のブレンド茶戦争」は、互いに刺激しあって、市場縮小を止めることはできるのか。そして、その戦いを制するのは誰か。目が離せない展開になってきた。

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2010.03.17

牛丼レッドオーシャンは「定食」へ飛び火する?

 競争相手の誰もいない「ブルーオーシャン」は誰しも憧れるところだ。しかし、世の中そんなに甘くない。血みどろの戦いが繰り広げられる「レッドオーシャン」でどう生き残りを図るかが、日々のテーマとなる。そして、出口の見えない血みどろの戦いを繰り広げている業界といえば、まずは「牛丼業界」が思い浮かぶ人も多いだろう。
 かつてのリーダー企業であった「吉野家」を店舗数で抜いた「すき家」が仕掛けた激安戦争。「松屋」も参戦し、現在、吉野家が売り上げ、客数、客単価のどれをとってもマイナスという一人負け状態に突入している。それでも戦いは終わらない。もはや収益ぎりぎりの「牛丼」は値下げができない。戦いの場は「定食」に移行しつつある。

 吉野家が2月22日から始めたメニュー、「牛なべ定食」。<牛肉、タマネギ、お豆腐を、すきやき風味に仕上げ、定食スタイルでお召し上がりいただきます。コクと旨みが際立つ、おすすめの一品です>(同社ニュースリリース)という自信の逸品である。ご飯・玉子・お新香付きで500円。「定食なのに味噌汁が付いてない!」という声もあるが、コストパフォーマンスの良さをアピールしたいワンコイン価格である。
 そんな定食戦線に松屋はまずは期間限定値引きで様子見の参戦だ。3 月11 日から1週間は豚生姜焼定食 580 円が480 円。翌週は豚焼肉定食 550 円が450 円と100円引きでワンコインレイン以下に設定した。ライス・生野菜・味噌汁付き。プラス200円で肉がダブルになるというガッツリ派の取り込みも狙っている。
 ガッツリならすき家も負けてはいない。こちらは新メニューとして3月17日から「豚(とん)しょうが焼き定食」を発売する。<一般的な定食に比べ倍近い肉の量を使っている>(同社ニュースリリース)のが特徴だという。レタスとキャベツ・ポテトサラダの付け合わせ、油揚げの味噌汁が付いて680円。松屋のキャンペーン価格とぴったり同じなので、通常価格なら同等のボリュームで100円安い計算だ。

 定食戦争はどうなっていくのか。肉が牛ではあるが、吉野家はこうなるとコストパフォーマンス的に見劣りするのが否めない。だとすれば、一部では牛丼よりも美味と評価の高い豚丼の豚を使って、豚焼き肉系のボリュームメニューを投入せざるを得ないのではないか。肉の量を増やし、味噌汁を付ける。収益的にそれに耐えきれるかが問題だ。
 すき家は280円、トッピングをしても380円にしかならない牛丼に比べ、高単価メニューである定食の販促に全力を尽くすだろう。だとすれば、松屋は今回のキャンペーン成果を検証した後に、全く同等にしないまでも、牛丼の時と同様に量や価格の追随をせざるを得ないに違いない。

 牛丼から定食に戦場が移ることは、実はさらに恐ろしいことを意味している。牛丼戦争は最後に誰が生き残るかという様相だったが、こと、定食となると競合として巻き込まれる外食企業が数多く出てくるのだ。いわばとばっちりである。
 落としどころはどの当たりになるかといえば、恐らく500円前後で量的にもまずまず満足いくレベルになるのではないか。昨今、ランチの予算では300円派と500円派が2大勢力である。300円だと、牛丼かコンビニでカップ麺とおにぎり。500円だと弁当か格安な定食だ。その500円派を狙って都内を中心に展開しているラーメンチェーンの「天下一」は、通常だと麺類に半チャーハンを付けるところを、麺類、チャーハン共に半々のセットで500円という価格の格安メニューを設定している。
 500円でそこそこ満足。プラス100~200円でガッツリ満足。そんな価格が業界標準になったらどうなるか。調達力に優れ、規模の経済と経験効果で固定費・変動費率の低減が図れる企業以外は生き残れなくなってしまうのだ。

 「さて、生き残るのは誰だ?」という風情で見物していた牛丼戦争は、いよいよ我々のランチの風景を書き換えてしまうほどのデフレの嵐となりつつあるのである。

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2010.03.16

「エキナカ自販機で缶コーヒーがタダ?!」が示す可能性

 ダイヤモンドに眼鏡にカップ麺・・・。無料配布が大流行である。先月はイタリアのファッションブランド・ディーゼルがメルマガ登録でTシャツを無料プレゼントと、少々指向を変えて展開し、話題を呼んだ。今度は駅ナカの自動販売機で本来購入すべき缶コーヒーがタダでもらえるというのだ。
 
<JR池袋駅のエキナカ自販機で缶コーヒーがタダでもらえる?!>
自販機スペース「mediacure」シークレットキャンペーン!「UCC THE CLEAR」をもれなくプレゼント!(毎日新聞・PR TIMES 3月15日 http://tinyurl.com/yfad6t9 )

 上記記事はJR東日本管内に設置された約1万台の自販機を運営するJR東日本ウォータービジネス社(以下、JR東WB)のプレスリリースに従って書かれた記事だ。記事とリリースでは詳細がわからないため、同社広報に取材してみた。

Mediacure


 JR池袋駅(5、6番線)ホーム上デジタルサイネージ(電子看板)機能を持った専用ブースが設置され、3月15日の初日は10時と14時の各1時間、発売前(3月29日発売)の「UCC THE CLEAR (ザ・クリア)無糖Milk 缶190g」の商品サンプルがもらえるというもの。写真のように時間になるとブースの扉が開いて、キャンペーンガールも登場して盛り上げる。安全のため警備員も登場だ。同社によると、ホーム上で実施のため人が集まりすぎる懸念から実施時間を明らかにしない「シークレット」という展開をしているという。

 飲料を自動販売機を使ってサンプリング(無料配布)するという例は、コカ・コーラのおサイフケータイ対応の自販機の一部にはサンプリング機能が搭載されていたり、新宿駅前でカルピスの自販機で行われたりとこれまでにも例がある。しかし、ホーム上という展開では恐らくこれが日本初ではないだろうか。
 街ナカと駅ナカでの配布は何が違うか。それは、客層だ。街ナカでは配布の列に並ばれれば、どんな人でも拒否できない。池袋駅ホーム上ということであれば、ホワイトカラー層と若い女性が多い。配布したい層にその属性が近ければ効果的だ。もう一つ。街ナカの自販機ユーザーは9割が男性であるという。対して、駅ナカのJR東WBの自販機は女性客の利用が4割に上る。女性にもリーチしたいときには有利だ。

 JR東WBが1万台を展開する通常の自販機は「acure(アキュア)」というブランドだ。今回は「mediacure」と、「メディア」という名前が付いている。自販機ビジネスからメディアビジネスに進出ということかとも思ったが、同社の思惑はそれだけではないようだ。
 その名の通り、mediacureはデジタルサイネージも含めて全体として交通広告媒体であることは間違いない。無料配布とサイネージでの広告放映に関してはメーカーから広告料を得て、それで本来の飲料販売機会の消失を補填しているという。しかし、本質的には同社の狙いは「自販機とデジタルサイネージの親和性を検証し、より双方向な新たな自販機のカタチ、可能性を追求すること」(同社広報)にあるという。
 このあたりは同社独特のスタンスが現れていると言っていいだろう。現在、自販機のほとんどは飲料メーカーが自社の製品販路として展開している状態だ。各メーカーの商品が混載されているように見える自販機も、運営会社に飲料メーカーの資本が入っているため、実際には取扱商品にメーカー系列の偏りがある。
 全く飲料メーカーの資本が入っておらず、「消費者が買いたいモノを並べる」というスタンスで展開しているのはJR東WBのみなのだ。それ故、同社はメディアとしての機能を優先して「広告として配布や放映をするのではなく、あくまで小売業として、消費者が購入したいものを優先する」(同)という。そして「我々はメディア事業は副業であり、あくまでも飲料及び飲料自販機を通じ、先進的小売業を目指したいと考えている」(同)ときっぱり言い切った。

 もう一つ、明確なポリシーがあるという。「現在のところ飲料以外の商品サンプリングは考えていない。というのも、『自販機で飲料以外を』というメーカーさんからの要望は結構あるのですが、我々は飲料会社として飲料に拘っているので、ポリシーとして飲料以外の商品には手を出さないことにしている」(同)
 この点はあくまでポリシーということなので仕方ないが、少しだけ残念な気がする。
 例えば、現在ガムの「クロレッツ」が「オフィスサンプリングキャンペーン」を行っているという。(COBS ONLINE http://cobs.jp/tu/clorets/ )
 ガム100個入りのパックが2箱届いて、それをオフィスで配布してくれる人を募集するという。「ちゃんと配布されるのかしら?」とお節介ながら心配になってしまう。
 また、実はオフィスでつまむお菓子としては、実はガムはあまり用いられていないという調べもある。(Business Media誠3月11日 http://tinyurl.com/yldjk54 )チョコレートがダントツ。続いてアメ、せんべい、ビスケットに続いて、ガムはなんと5番目だ。製菓メーカーのガム担当者に以前、取材したところ、「ガムは移動中に用いられることが多い」と聞いた。どうだろう、駅のホームでサンプリングができればバッチリではないだろうか。

 「飲料以外に手を出さない」という同社の明確なポリシーもあるので、上記は蛇足だが、「mediacure」の駅ホームでのサンプリングには、新たな可能性が満ちているといえるだろう。今日、2日目以降の「シークレットタイム」が何時なのかはわからないが、一度、その新たな取り組みを見に行ってみるのもいいだろう。

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2010.03.15

「ペヤング スープやきそば」に込められた思いとは?

 うっかり人前で食べると「あんた、カップ焼きそばの食べ方知らないの?」と奇異な目で見られてしまう、「ペヤング スープやきそば」。湯切りをせずに、ソースのようなスープを入れてそのままいただく。なぜ、こんな不思議な商品が作られたのか・・・。

 コンビニのカップ麺・カップ焼きそばコーナーに多数積み上げられている「ペヤング スープやきそば」がちょっとした話題になっている。大盛りサイズが主流のカップ焼きそばの中ではちょっと小ぶりなパッケージは、商品の仕上がりイメージ写真が印刷されたシュリンクパックに包まれている。パックを破ると、ペヤング伝統の白くて四角いいつもの容器が現れる。湯を注いで3分後。うっかり湯を捨てそうになるが、踏みとどまって液体スープを入れる。焼きそばというよりは、日清のチキンラーメンのような味わいである。
 
 カップ麺というカテゴリ以上にB級グルメっぽい感じがする「スープ焼きそば」だが、調べてみると那須塩原にルーツがあるようだ。ラーメンの麺と豚肉、キャベツをソースで焼き上げ、醤油ベースのスープに入れるという。全国では他にも「焼きそばの街」ともいわれる青森県黒石市に「つゆ焼きそば」を作る店があるという。
 ペヤングがご当地B級グルメをペヤングが再現したとも解釈できるが、コトはそんなに単純ではないようにも思える。

 屋台の焼きそばをイメージしたという四角い容器の「ペヤングソースやきそば」が登場したのは1975年のこと。当初関東以北を販路としていたが、商圏内では抜群の知名度を誇っているロングセラー商品である。しかし、そのメーカー名を知る人はあまり多くないだろう。「まるか食品」という。群馬県伊勢崎市にある、資本金4000万円、従業員100名の企業である。
 「ペヤング」ブランドのほかに社名の「MARUKA」ブランドがあり、両ブランドとも焼きそば以外にカップラーメンやうどんなどを展開している。しかし、ペヤングの焼きそば以外やMARUKAブランドの商品を見る機会はあまりない。スーパーの特売品などとして見かける程度だろう。つまり、チャネルが押さえられていないのだ。コンビニの棚に並ぶ同社の商品は、「ペヤングソースやきそば」の容量サイズバリエーションがほとんどで、まれに「ペヤング のり塩ポテトやきそば」や「MARUKAカレーやきそば」が見られるくらいである。
 コンビニの棚をめぐる戦い。競合(Competitor)としては、カップラーメンであれば、「カップヌードル」の日清や、「スーパーカップ」のエースコック。カップうどんなら「マルちゃん赤いきつね」の東洋水産など強者が居並ぶ。まるか食品のつけいる隙はあまりない。
 顧客(Customer)のニーズを考えれば、メーカーにとっての第一の顧客はチャネルであるが、店舗が狭小なコンビニのニーズは、とにかく商品回転率が高いことだ。つまり、売れ筋しか置きたくないから、カテゴリにおいて上位のシェアを持った商品でなければ置いてもらえないのが実情である。エンドユーザー(消費者)のニーズはどうか。ダウンタウンの浜ちゃんこと、浜田雅功に代表されるようなペヤングファンも、始終焼きそばばかりを食べていたくはない。
 となると、自社(Company)としては、コンビニには焼きそばブランドを活かし、定評あるカップ焼きそばのバリエーションとして、消費者には変わり種B級グルメ商品として訴求できる「ペヤング スープやきそば」が開発されたのだと考えられる。

 製品は作られて、チャネルの棚に並んで、消費者が手にとって購入して、初めて商品となる。そこには、自社の強みを活かして棚を確保して、そこで消費者に魅力をアピールするための工夫が込められているのだ。そんなことを考えてみると、ちょっとした変わり種商品に見えるものも、少し見方が変わってくるのではないだろうか。

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2010.03.11

百貨店はどこへ行く?

 鳥は翼で空を飛ぶ。コウモリも皮膜を使って空を飛ぶ。しかし両者の起源としての類縁関係は遠い。空を飛ぶという環境への適応の過程で似た姿を手に入れたのである。生物の進化の過程で異なった種が似通った方向に進化する現象を「平行進化」という。特に種の系統に関わらず身体的特徴が似通った姿になる場合を「収斂進化」という。鳥とコウモリ以外には、土中で生活する「モグラ」と昆虫の「ケラ」の前足が機能も形状も極めて似ている例が挙げられる。

 各社の苦境が続き、業態自体がなくなるとまでいわれている百貨店業界。各社のルーツを辿れば、呉服関連と鉄道関連という大きく2つの系統がある。前者は顧客の要望に応え、百貨を取りそろえるようになり、後者は沿線開発のために消費者の求めるあらゆるウォンツを取りそろえようと百貨を取りそろえた。戦後の復興から高度成長、オイルショックなどで足踏みはあったもののバブル期までは人々の旺盛な諸費意欲で満たされた環境の中で、異なる起源を持つ存在が収斂進化を続けていたわけだ。

 環境は激変した。日本の実質GDPは1995年から停滞している。少子高齢化による市場縮小はとっくの昔からわかっていた。08年秋の米国発といわれる経済危機は、恐竜にとっての隕石衝突のような追い打ちとして作用している。
 世界最大手債券ファンド・米ピムコのCEOであるモハメド・エラリアン氏が、サブプライム危機を予言した著書の中で「ニューノーマル」という言葉を使った。危機前にはもう戻らず、今の状態がノーマルなのだと。経済が半分に縮小した状態を「ハーフエコノミー」ともいうようになった。その、「ハーフ」が「ノーマル」になった状態がどれくらい続くかといえば、アナリストの水野 和夫氏が著書のタイトルで「100年デフレ」としている。100年だ!

 この環境に適応すべく、百貨店も進化しようとしている。ユニクロやフォエバー21などのファストファッションを誘致するのは百貨店の従来の常識からすれば慚愧に耐えないだろう。平場やその他テナントの商品とのカニバリも心配だ。故に、「百貨店らしさ」を堅持しようという企業もある。しかし、もはや生き残るためには仕方ないと考える企業の方が多い。座して死を待つわけにいかないという判断だ。

 同じくマイナス成長が続き、厳しい環境であるスーパーを見ると百貨店よりは消費者の暮らしの変化に適応しているように思われる。
 PB(プライベートブランド)を強化する大手スーパー。NB(ナショナルブランド)は安くないが生鮮品で勝負している地元密着型スーパー。ディスカウントスーパーはまとめ買い層に規模で勝負し、逆に異業種から参入の生鮮コンビニは老人や少人数世帯に対応し「使い切り」の量やサイズの商品を取りそろえた狭小店舗を数多く出店し、来店しやすさも提供している。

 結局、チャネルの価値は「消費者のニーズにどこまで応えられるか」という点では変わっていない。しかし、そのニーズそのものが大きく変容してしまっているのが今日なのだ。
 高度成長期の子どもであった筆者には、百貨店の落日は見るに堪えずに残念だ。その生き残り策の模索には、海外の動きが参考になるだろう。

 <ユニクロ戦略の一歩先を行く格安デパート「ターゲット」の快進撃>
 (ダイヤモンドオンライン3月10日) http://tinyurl.com/yk4oxhy
 <安価だけを売りにするウォルマートとは、一線を画している。有名な建築家がデザインした家庭製品、一流のファッション・デザイナーが手がけたファッション・ラインなどを独自で開発し、それを驚くような安い値段で売っている>という。その背景として<ここ数年の不景気で、消費者はいわゆる「トレードダウン」と呼ばれる行動に出ていた。「トレードダウン」とは、これまでの購買レベルを落とす行動>があるという。<骨と皮だけにそぎ落としたようなウォルマートよりも、ちょっと身もあり楽しさもあるターゲットのような店に、客が集まる>という狙いだ。

 記事では「ターゲット」が好調と伝えている。進化する方向性としての正解はそれだけではない。平行進化・収斂進化をやめて、それぞれが生き残れる進化を遂げてほしいと願うばかりだ。

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2010.03.10

ラー油戦争・「桃ラー」に対抗参入!ヱスビー食品の戦略は?

 2009年8月に「食べられるラー油」をコンセプトに発売し、ラー油分野のシェア十数%から60%近くまでを制圧したという、「桃屋の辛そうで辛くない少し辛いラー油」。今なお、店頭では品薄が続き人気沸騰中である。そんな商品に対抗してヱスビー食品が参入してきた。「ラー油戦争」はどうなっていくのか?

 2月末あたりからTwitterやSNS、または個人Blogで、「桃屋の辛そうで辛くない少し辛いラー油」の愛称である「桃ラー」というキーワードが激増している。書き込みの内容を見てみると、ようやく生産が追いつき始めているようで、購入して試すことができた人が感想を書いてさらに口コミが拡大しているようだ。依然、というより一層大人気になっている。
 「桃ラー」はフライドオニオンとフライドガーリックを大量に用いて、そのまま食べてもサクサクとした食感で美味しいのが特徴だ。「ご飯にのせて食べた」「パンにも合う」「パスタに合わせると絶妙!」と、書き込みを見ると、様々な使用用途が開発されているのがわかる。
 元来はラー油など餃子のたれを作る時ぐらいしか使わず台所の調味料入れに入っていない家庭も多かったはずだが、折しも、不景気で内食志向が高まっている中、絶妙なネーミングで登場し、「食べてみたら美味しかった!」というギャップ感が受けて大ヒットした格好だ。

 そんな桃屋の成功を見て猛追してきたのが、スパイス分野で長年トップの座を守り続けているヱスビー食品である。3月23日発売予定の「ぶっかけ!おかずラー油チョイ辛」。<年間売上高3億5000万円を目指す>(J-CASTニュース3月9日)と強気である。

 「ぶっかけ!おかずラー油チョイ辛」の戦略を見てみよう。
 まず、Product(製品)は、フライドガーリックやフライドオニオンが用いられているのは「桃ラー」と同様だが、差別化要素として<アーモンドが入っているのが特色>(同)という。
 Price(価格)は一つの勝負所のようだ。<桃屋のラー油が110グラム400円前後で売られているのに対し、エスビーのラー油は同量で希望小売価格330円>(同)だという。
 ここまでで考えると、ヱスビーは桃屋に対して後発なので製品に少し特徴を持たせて価格を2割弱安く設定して対抗するように見えるが、もう少し考えると真の狙いが見えてくる。

 3C分析的にCompetitor(競合)である桃屋と、Company(自社)ヱスビー食品を見比べてみよう。資本金こそ桃屋・約19億円、ヱスビー約17億円だが、ヱスビーは上場会社である。売上高は桃屋約137億円・ヱスビー約1132億円、従業員数・桃屋308名・ヱスビー1179名と規模が大きく違う。
 規模の違いはどこに出るか。例えば、ヱスビーには東京・板橋区に「スパイスセンター」施設があり、研究開発に注力している。「桃ラー」の大ヒットを見てからの開発であったのかは定かではないが、短期間での製品開発力が高いのは確かだろう。また、ラインを調整すれば、大量生産する力もある。

 モノ作りだけではない。幅広い製品ラインナップを持っており、チャネルへ働きかける力も強い。記事にも<流通側からも弊社への期待があったので、今回新たに発売することになりました>と広報担当者のコメントがある。
3CのCustomer(顧客)はヱスビーにとってはPlace(チャネル・販路)と、そこで購入する消費者の両方を意味するが、まずチャネルからの要請もあり、大量に商品を店頭に供給して棚を確保することが可能である。そして、「桃ラー」の品薄で買えない消費者がいることから、商品を手に取らせることも可能であろう。

 Promotion(コミュニケーション)はどうか。「桃ラー」はロックバンド・怒髪天の増子直純を起用したCMで注目を集め、それもヒットの大きな要因になった。しかし、店頭で品薄となって、「CMを見ても買えない!」という状況を回避するために自粛をしている。現在、増産が追いついてきたようだが、まだ、チャネルによってはまだら模様の状況だ。CM全面解禁にも踏み切れないだろう。ヱスビーのラー油は22日発売とのことなので、恐らく発売と同時に広告の大量投下が予想される。

 規模に勝る企業がその体力を活かして「同質化」を仕掛けるのは戦略の定石だ。このままだと「桃ラー」はヱスビーの追い上げでこのままだとピンチに追い込まれることになる。
 但し、FMA(First Movers Advantage:先行者優位)は「桃ラー」にある。ネットを通じてしっかりブランディングができている。比較されても「元祖」を選ぶ消費者も多いはずだ。
 価格面での不利はいずれ値下げか増量で調整するとしても、まずは本当に手に入らない「幻の商品」で終わってしまうのではなく、増産を進めて配荷を順調にするのが勝負の土俵に残る条件だろう。ここ、1~2週間が勝負のしどころであることは間違いない。


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2010.03.09

CMだけではない!「ライトオン」の生き残り戦略はこれだ!

 水嶋ヒロが颯爽と歩き、長谷川潤が軽快なステップを刻む「ライトオン」の春の新作ジーンズCM。ユニクロが「ジーンズ帝国」の体制を完成させた市場で何を狙うのか?

 日本のジーンズ市場はユニクロを中核としたファーストリテイリングが既に治めたことを以前の記事で伝えた。
 
 「競合をすべて撃沈させるユニクロUJの破壊力」
 http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2010/02/uj-7387.html


 ファーストリテイリングは「ジーユー(g.u.)」で格安990円。「ユニクロ」が1990円~3990円の三段階。さらにレディースのみだが、「キャビン」傘下の ブランド「ザジ」「アランシーネ」から4990円と5段階で価格帯全てをカバーする体制が完成させた。品質と価格のバランスに優れた同社製品を、「バリューライン」として標準化されては誰もそれを上回ることはできない。

 競合も座して死を待つことはできない。
 「ライトオン」の平成22年8月期月次売上高前年比情報では<上半期の全社売上高前年同期比は87.4%、既存店売上高前年同期比84.4%>と苦戦が見て取れる。自社のオリジナルの「BACKNUMBER」ブランドの「ニューシャイニージーンズ」。水嶋ヒロ、長谷川潤をCMに起用した、新作「LIGHT SHINY DENIM」は生き残りをかけた起死回生の一手なのは間違いない。しかし、ファーストリテイリングの完璧な布陣で蟻の這い出る隙間もない市場のどこに活路を見いだすのか。

 ライトオンは「ニッチャー戦略」に大きく舵を切ったと考えられる。
チャレンジャーはリーダーに戦いを挑む。正面攻撃や側面攻撃、時にゲリラ的に。しかし、もはやファーストリテイリングに戦いを挑んで市場のパイを切り取ろうとするのは無理だ。だとすれば、「独自の生存領域」を確保するしかない。
 「ニッチ」の原義は“飾り物などを置く壁面のくぼみ”であり、また、“(人・物に)最適の地位(場所・仕事)”を表わす。では、いかにして「最適の地位」を確保するのか。それには、ターゲティングとポジショニングの精緻さが欠かせない。

 ジーンズにおけるニッチャーとしては、一つは「プレミアムジーンズ市場」のプレイヤーがいる。1990年代後半に登場し、ハリウッドスターなどが愛用したことから「セレブジーンズ」などともいう。今月、メルマガ登録で「Tシャツ0円販売」というニュースで話題になった、イタリアのブランド「ディーゼル(DIESEL)」もその一つだ。海外ブランドがプレミアムジーンズとして設定している価格帯は2~3万円。高いものでは5万円程度のものもある。さすがに誰でも買える価格ではない。また、カジュアルウェアというより、かなりおしゃれな着こなしを求められるため着る者を選ぶ。つまり、完全なニッチャーなのだ。

 もう一方、昔ながらのジーンズブランドにも動きもある。例えば、エドウィン。1960年代に登場した日本のオリジナルブランドである。特に1994年に登場した「503」にはファンが多い。(筆者もその一人である)。
エドウィンは503を軽く履き心地がよく、シルエットも美しい「503プレミアム」に磨き上げ、また、従来本社近くの日暮里駅前に旗艦店を置いていたが、昨年、今年と原宿エリアにプレミアムショップ出店するなどチャネルの魅力も高めている。

 では、「ライトオン」の戦略はどうなのか。
 「LIGHT SHINY DENIM」の価格は8900円。エドウィンの「503プレミアム」が多くの販売店が8925円で販売していることから、同等価格だといえる。つまり、格安なプライベートブランドではなく、ナショナルブランドとガチンコ勝負をかける価格でもあるわけだ。
 しかし、その製品仕様を見ると、ガチンコ競合を狙っているわけではなさそうだ。
同商品の売りは<昨年の秋に発売されたおしゃれが楽しめるシャイニーデニムの春モデル。「ライトウエイト デニム」の上に薄くコーティング加工した素材に、生地の表面に表れる程よい光沢は、これまでになかった新しい表面感となっている>(3月7日 ザテレビジョン)というポイントだ。
 海外プレミアムジーンズほど高価ではなく、キメキメのオシャレでもない。かといって、オーセンティックなジーンズブランドよりは程よくオシャレ。エドウィンと価格は同じでも、その程よいポジショニングで選ばれようという戦略である。

 成熟市場であるジーンズ市場だが、ファーストリテイリングが圧倒的パワー市場を牽引している。その裾野はさらに拡大するかもしれない。すると、「みんながはいているジーンズと違う」というニッチャーの差別化ポイントが一層活きてくる。
 「ユニクロが通った後はペンペン草一本残らない」的な批判が散見されるが、上記の用に考えれば、市場は健全に活性化されていることがわかる。業績的にまだ厳しいライトオン社であるが、ニッチャーのポジションを確たるものとして頑張ってほしいと思う。

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2010.03.08

3度目の挑戦・「お~いお茶 ふっておいしいお抹茶」の今度の狙いは?

 伊藤園からボトル内の「天然水」と「抹茶入りキャップ」に入った抹茶を振って混ぜ合わせることで、新鮮な抹茶飲料を作って楽しみ、味わう「お~いお茶 ふっておいしいお抹茶」が発売される。しかし、実はこの商品の市場投入は今回で3度目だ。その狙いはいったい何なのだろうか?

 3月8日(月)・つまり本日より全国で販売開始というこの商品、「 お〜いお茶 お抹茶 」という商品名で2008年6月30日に1都9県(東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、茨城、群馬、山梨、長野、静岡)でテスト販売としてスタートした。同年11月17日から「お~いお茶 ふっておいしい抹茶」と名を変え全国販売が始まった。前2回の発売時は275mlで希望小売価格198円(税込)というプレミアム価格での展開であった。今回は「お~いお茶 と、またビミョーにネーミングを変え、同量で希望小売価格150円(税別)と値下げしてのチャレンジだ。
 この商品は自販機での展開はなく、主たる販路はコンビニエンスストアであるが、恐らく店頭価格では税込み147円で販売されるのではないかと筆者は予想する。経済環境の低調が続く昨今、プレミアム系の緑茶飲料は販売不振となって続々撤退した。唯一、生き残った日本コカ・コーラの「綾鷹」も昨年158円から147円へと値下げに踏み切った。消費者の需要価格として150円という金額は一定ラインとして存在するのである。

 「ふっておいしいお抹茶」は容量が275mlと少ないため、150円ラインに付けても、まだプレミアム系の飲料ということになるが、一つの商機がある。前述の日本コカ・コーラの「綾鷹」が値下げと製品リニューアルに昨年から踏み切った際に、広告コミュニケーションも切り口を明確にしている。
 「本物にはにごりがある」。抹茶を配合して本格的なお茶のおいしさを強化した同商品は、PETボトルの中に明確に視認できる抹茶の「にごり」が特徴だ。それを「振って飲む」ことを推奨する。「振って飲む・本格的な抹茶ならこちらが本家」と、販売現場でうまくアピールできれば、伊藤園としては同商品単体で広告コミュニケーションコストをかけることなく、綾鷹が創った市場にうまく便乗することができるのだ。

 しかし、伊藤園の真の狙いはもっと大きな所にある。同社ニュースリリースによると、この商品で<本格的な抹茶の味わいを「ふって・つくって・飲んで」楽しめる本製品を提案することで、緑茶飲料市場の活性化を図ってまいります>とある。
 そうなのだ。緑茶市場は現在危機に瀕している。
 1990年以来順調に成長を続けていた緑茶飲料市場は、2006年に一度、成長の足踏みをしたが、再び翌年には回復した。しかし、2008年秋の経済危機が市場を直撃した。緑茶飲料市場だけでなく、飲料業界の勢力図を書き換える変化があったのだ。ミネラルウォーター、茶系飲料、コーヒー類の伸びが軒並みダウン、もしくは足踏みになり、飲料の中で唯一、炭酸系だけが成長を続けるという構図になったのである。理由は難しくない。ミネラルウォーターは浄水器を使えば代替できる。茶やコーヒーは自分で淹れられる。炭酸だけは自分で作れない。故に買う。
 現在の状況でいうと、缶コーヒー飲料だけは各社が糖分や脂肪をゼロにするという「ゼロ飲料」化で巻き返しを図っているが、茶系飲料は出遅れている格好が否めない。

 伊藤園には野菜ジュースもあり、コーヒー飲料では2006年に資本投下して傘下に収めた「タリーズ」のブランドを用いた商品を展開するなど強化を続けている。しかし、 なんといっても茶系飲料が生命線であることは間違いない。故に<緑茶飲料市場の活性化>という同社の狙いは正に死活問題であるわけだ。

 飲料の新商品は「千に三つ」ともいわれる多産多死である。なぜなら、差別化が極めて難しいからだ。飲料の中核価値は「のどの渇きを癒す(止渇効果)」である。では、どのように渇きを癒せるのかという実体価値は「美味しい・スッキリする(嗜好性)」だ。ほぼ、このあたりまでで、勝負は決まる。中核価値と直接関係はないは、商品の魅力を高める要素である付随機能を付加するとしたら、特保飲料のように「やせられる・健康になれる」というような要素ぐらいだ。
 その中で、今回の「ふっておいしい抹茶」は<「ふって・つくって・飲んで」楽しめる>という付随機能を付加して、「自分で急須で淹れるお茶」とも異なる価値を高める狙いだと解釈できる。

 恐らく、同商品はコンビニの棚で1フェイスをかろうじて確保するぐらいの存在ではないだろうか。しかし、そこにはマーケターの狙いや、メーカーとしての願いがいっぱいに詰め込まれているのだ。
 そんなことを考えながら、是非一度購入して「ふって・つくって・飲んで」みてはどうだろうか。

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2010.03.05

「○○でやろう。」でやってみてほしいこと。

 今日は地下鉄・東京メトロの「マナーポスター」の話。首都圏の利用者でなければなじみは薄いだろうが、その歴史は意外にも古いのだ。

 車内のマナー啓蒙のため1974年に始まったポスター。初代担当者は、グラフィックデザイン界の重鎮・河北秀也(かわきた・ひでや)氏だ。焼酎「いいちこ」の商品企画、パッケージ、ポスター、CMを一手に担ってブランド作りをしてきた方といえばわかりやすいだろうか。同氏は地下鉄路線図の制作の依頼を受け、続いてマナーポスターの制作に取り組んで1982年まで、マリリン・モンローの「帰らざる傘」、チャップリンの「独占者」など、次々に傑作を送り出して一躍名を馳せた。

 そんな歴史のあるマナーポスターの現在の担い手は、マナーポスターが始まった1年前の1973年生まれの寄藤文平(よりふじ・ぶんぺい)氏。JTの「大人たばこ養成講座」やリクルートのフリーペーパー「R25」の表紙なども手がけている売れっ子アートディレクターだ。
 マナーポスターに見覚えのない方、時々目にしている方も↓のリンク先を見てほしい。
 http://www.tokyometro.jp/anshin/kaiteki/poster/index.html
 (東京メトロWebサイト・ポスターのバックナンバーもあり)

 「○○でやろう」シリーズで寄藤氏も独特の世界観を作り出していて、「今月は何だろう?」と月替わりを楽しみにして、感想をネットにアップしている人も少なくない。
 シリーズは2008年4月に始まり、当初1年間の予定とされていたが、人気のためか現在も継続中だ。
 ポスターには車内で目にするマナー違反の乗客が取り上げられており、「あーこんなヤツいるいる」的な関心を引きつける。デフォルメされたその姿の中に、「そこまで極端ではないが、多少自分もやっているかも・・・」と思わせる秀逸なクリエーティブだ。

 その世界観の演出に一役買っているのは、毎回登場するキャラクター「メガネのおじさん」である。第1回の4月のポスターでは何となくそれらしい人がいるものの、明確にその姿は確認できない。
 翌5月より、「マナー違反の乗客を遠くからじっと見つめる」という、独特のポジションで登場するようになった。やがて、単なる「傍観者」ではなく、時に荷物を押しつけられたり、傘の水滴でびしょびしょにされたりという「被害者」にポジションを変えるようにもなる。立場は違えど、表情一つ変えないというキャラクターとして一貫性があり、それが世界観を作っているともいえる。

 シリーズには一つの傾向がある。「○○でやろう。」は、通常「家でやろう。」なのだが、時々別の言葉が入る。2008年8月の「海でやろう。」に続いて「山でやろう。」「庭でやろう。」11月の「店でやろう。」。2009年5月から「社でやろう。」「外でやろう。」「後でやろう。」8月の「渚でやろう。」まで。個人的には「家」以外のパターンが絶品であると思う。春~夏が寄藤氏の絶好調シーズンなのだろうか。

 シリーズに最近もう一つの変化がある。2009年4月に登場した、「おばさん」がいる。「おじさん」同様、時に傍観者、時に被害者となりながらも、社内のマナー違反者を無表情に見つめるポジションなのだが、2010年1月におじさんと寄り添うように登場している。そして、心なしかお腹をかばうようにしている。2月、お腹は大きくなり、おじさんとの子供を宿しているのが明らかになる。3月、おじさんとおばさんは、子供を抱きかかえて登場した。

 さて、少し気が早いが、来月からは4月。年度も改まってシリーズもどうなるのかが楽しみだ。温かくなると寄藤氏の調子もさらにアップするだろう。

 ファンとして一つ提案をしたい。
 せっかく、おじさんとおばさんが「親キャラ」になったのだ。彼らを暴れさせてはどうだろうか?
 ポスターに描かれている、「車内の迷惑者」は主に若年層の姿で描かれている。しかし、現実には車内の多くの若者はおとなしく、マナーもよい。パパママや中高年が周囲を顧みない迷惑行為をしている姿も散見される。
 子供ができたおじさんとおばさんたが「子供」という武器を振りかざして、今度はマナー違反をしでかす。例えばベビーカーを畳まずに満員電車に突っ込んでくるとか。若者目線でみた、大人のマナー違反も結構あると思うのだ。
 片方の視点だけで見ずに多面的に見る。立場を変えてみる。そうして、お互いの心地よい関係を創っていく。それこそがマナーというものだろう。

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2010.03.04

地元の牛丼戦争局地戦から見え隠れするもの

 筆者の自宅駅前で牛丼戦争のちょっとした局地戦が展開されている。JRの快速も止まる駅なのだが、裏口ともいうべき栄えていない方の改札を出たあたりが戦場だ。
元々は大通りを隔てた所に吉野家の狭小店舗があっただけだったが、改札からも真っ直ぐに見渡せる好立地の空き店舗に突如、松屋が進出してきた。今回の牛丼戦争が始まる少し前のことだ。好立地と入りやすくゆったりした店舗が奏功し、女性客も含めて多くの客を吸引した。
 そこに今年、すき家が参戦してきた。松屋の裏、大通りを隔てて吉野家の向かいという立地だ。

 現在の各社の価格は、牛丼並で松屋は320円、吉野家380円、すき家280円である。
地元で三つ巴が始まった牛丼戦争局地戦で、先に仕掛けたのは松屋だった。「店舗限定価格280円」というキャンペーンを始めたのだ。明らかに新規進出してきたすき家への顧客流出防止策として、同じ280円に揃えたわけだ。
 しかし、ついにその店舗限定価格も終了することになった。3月10日までだという。そして、店舗前の期間終了告知のポスターの横に掲出されたのが、「松屋は全品味噌汁付き」というPOPである。吉野家は50円、すき家は70円で味噌汁は別売りだ。松屋は元の320円という価格に戻っても味噌汁がついていて、「セットなら結局お得です」という訴求なのだ。
 「たかが味噌汁」とあなどることはできない。先月吉野家が始めた新メニュー「牛なべ定食・500円」をめぐってネットでは「定食という割には味噌汁が付いていない!」と多くの書き込みがあった。牛丼系のメニューには味噌汁が欠かせないと考える人は少なくないということだ。

 しかし、松屋は自ら仕掛けた値引きをなぜ、終了させることになったのか。それは、同社の業績を見ると納得がいく。
運営会社・松屋フーズのWebサイトで 2010年3月期 (2009年4月~2010年3月)業績の2月速報が発表されている。 http://www.matsuyafoods.co.jp/ir/monthly.html
 そこで、同時に前年、前々年の業績も比較することができる。
それを見ると、今期前半までの客数減少に歯止めをかけることができたものの、売り上げ99.5%、客単価92%と、牛丼戦争激化以降の今期下期が特にひどい状況だ。もはや、値引きは継続できない。

 各社にとって「牛丼」、もしくは「牛丼・並」という価格の標準であるメニューはどのような意味を持つのか考え直してみる必要がありそうだ。
牛丼店にとって最も標準的であり象徴的なメニューであることは間違いない。それだけに、その価格が各社の看板となる。
 しかし、メニュー開発の遅れた吉野家以外は、もっと高額で稼げるメニューを松屋もすき家も持っている。松屋の各種定食メニューの豊富さは定評がある。ざっと価格は500円台後半から600円台。すき家の得意技は、おろしポン酢牛丼、キムチ牛丼、3種のチーズ牛丼、わさび山かけ牛丼、ねぎ玉牛丼といったトッピング牛丼メニューだ。価格は360円~380円とただの牛丼より約100円高くなる。

 そう考えると、「牛丼・並」というメニューは、「ロスリーダー」なのではないかと考えられるのだ。いわゆる「目玉商品」。スーパーでいうところの特売品の牛乳や卵だ。それを目当てに買いに来る客に利益率の高い他の商品を併売させてマージンミックスを図るのである。
 本当のロスリーダー商品は赤字覚悟の場合が多いので、さすがに牛丼チェーンではそれはできない。しかし、利益カスカスでも、客数を増やすために設定している価格であることは間違いない。
 商売はまずは売り上げを作ることだ。売り上げ=客数×客単価×リピート率。まずは客を吸引し、来店頻度を上げる。毎日「牛丼・並」では飽きるので、高単価メニューやトッピングを注文してくれるようにさせる。それが、牛丼低価格戦争で生き残る唯一の方法なのだ。

 売り上げと客単価の減少で耐えきれなくなった松屋。しかし、「全品味噌汁付き」で割安さをアピールして、顧客流出を阻止しようと懸命だ。離反せずにリピートしてくれれば、高単価な定食利用も望めるだろう。
 一方のすき家は牛丼・並280円をロスリーダーにして集客し、リピーターにはトッピングを注文させる明解な戦略だ。その戦略を掲げて、さらに新規出店ラッシュをかけるすき家の月次の業績を見てみよう。
http://www.zensho.co.jp/jp/ir/results/monthly.html 
 客数の増加は昨年末から、15~18%とかなりの伸びを示している。新規出店が既存店を補って全店売上高は伸びている。客単価減は87%と松屋フーズよりひどい状況だ。このままだと売り上げは上がるが利益が出ない構図だ。高単価メニュー、トッピング強化を図りたい背景が明確に見える。

 吉野家は新メニューの「牛なべ定食」や、牛丼・豚丼とお新香やサラダ、キムチをセットにしたメニューを展開し始めているが、集客するためのロスリーダー的価格設定商品がないことや、収益化を図る高単価メニューがないことで非常に厳しい状況であることがわかる。月次の業績を見てみよう。
http://www.yoshinoya-holdings.com/ir/report/yoshinoya.html
 客単価は維持できていたのが急速に悪化し、競合のキャンペーン時に客数もがくっと減っている様が伺える。やはり、一人負けのトレンドに入っていく恐れが否めない。

 地元の松屋のキャンペーンポスターから、3社の業績まで拡大して考えてみたが、やはりこの業界は商売の基本である売り上げ=客数×客単価×リピート率に忠実な戦い方をしているのがわかる。
しかし、競合は同業ばかりではない。長引く不景気は消費者の外食抑制、ランチ価格圧縮傾向が強まっている。 地元では競合となり得る立ち食いそば店も参戦し、格安セットメニューを繰り出してきている。
 生き残りをかけた戦いにまだ出口は見えない。

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2010.03.03

フォグバー追撃!ギャッツビー・ミストの期待と不安

 日経MJヒット商品番付2009の西前頭4枚目にも列せられた資生堂の「UNO FOG BAR(フォグバー)」。その大ヒットで男性整髪料シェアトップであったマンダムの座を追い落としたのは記憶に新しい。その雪辱のため、2月22日にマンダムの「ギャッツビー クイックムービングミスト」を市場に投入した。しかし、その思惑は実は微妙な感じもするのである。

 まずはディフェンディング・チャンピオンである「FOG BAR」の「ヒットしたワケ」を整理してみよう。
 なんといっても最大の特徴は従来のヘアワックスと異なった、スプレー式のミストで、独特の「ベタつき感」を解消したことだ。整髪がしやすい。整髪したあとの手洗いが楽。日中、髪がベタベタしか感じがしない。何度でもサラリとスタイルを簡単に直すことができる。入浴時の洗髪の際に簡単に洗い流せる。・・・つまり、ヘアワックスが抱えていた問題点、ユーザーの不満点を全てきれいに解消する「ニーズギャップ対応型商品」であったのだ。
 実はFOG BARにはその特性から抱え込んでいる弱点が内在する。それは、「実は、整髪力が少し弱いんですよね・・・」ユーザーのK氏(44歳・マーケティングコンサルタント)は語った。そう、実はサラリとした使い心地の反面、赤ボトルの「がっちりアクティブ」でもヘアワックスに比べると遙かに弱い。
 しかし、そこは実に見事なかわし方、いやもっとポジティブな「提案」によって解消しているのだ。大人気となった妻夫木聡・瑛太・三浦春馬・小栗旬のイケメン四天王勢揃いのCMを見るとよくわかる。彼らのヘアスタイルこそが「提案」なのだ。「時代はナチュラル。作り込むヘアは古いよ」というワケだ。

 さて、次に新登場の「ギャッツビー クイックムービングミスト」を見てみよう。
 実は、筆者にとってはマンダムがこの商品を投入してきたのは非常に意外であった。マンダムは主力のヘアワックス「ムービングラバー」を改良してベタつきを抑えた。さらに、FOG BARと同様に「何度でも直せる」というセールスポイントを掲げ、各ヘアサロンのアーティストをWebサイトに登場させ使い方指南をさせるという、FOG BARと全く同じ方法論を採っていたからだ。「ワックスで十分」と訴求しつつ、その他の要素は同質化を仕掛けるという高等戦術である。しかし、ついにミスト製品で全く同じ土俵にたっての戦いに舵を切ったのだ。

 まず、ボトルの形状をかなり工夫したことが伺える。BARというネーミングの形状にこだわって、キャップ式のボトルを採用したFOG BARに対して、クイックムービングミストはボトルをひねると「カチッ」とプッシュノズルが頭を出す。この「カチッ」というところも訴求点なのだ。あくまで製品の付随機能であるが、後発となった故、差別化ポイントは細かい部分でもほしいところだ。
 クイックムービングミストのWebサイトのスタイル提案を見ると、「おや?」と思う。
 FOG BARのスタイル提案と比べると、かなり髪に「動き」のあるスタイルをしている。FOG BARのスタイルはあくまでナチュラルなので、対比してみるとよくわかる。
 同社ニュースリリース(http://www.mandom.co.jp/release/2009/src/2009121101_01.pdf )を見ると、「ヘアスタイルは多様化を続けるが、“動き”“遊び心”が重要視される傾向が続く」という主旨で、同社の提唱する「ムービングスタイル」という動きのあるヘアスタイルを継続して訴求しているのがわかる。

 資生堂とマンダムのスタイル提案の違いは、あくまで両者のポジションの違いによるものかもしれないが、マンダムがワックス主体の従来路線を変更し、ミスト製品を上市したのは商機を見いだしたからなのは間違いない。
恐らくそれは、FOG BARユーザーの中にもニーズギャップを持った層が存在することを見越してのことだろう。「ナチュラルもいいけど、やっぱりもう少し、髪をしっかりホールドしたい」というニーズだ。
 クイックムービングミストの3種の中でも整髪力が強い「クラッシュムーブ」を試してみた。FOG BARの一番強い「がっちりアクティブ」よりも明らかに整髪力が強く、髪をしっかり立ち上げて動きを出すことができた。

 さて、そう考えると、「ギャッツビー クイックムービングミスト」は、「UNO FOG BAR」ユーザーのうち、「整髪力」「動き」に不満のある層をごっそり奪って、シェアもだいぶ奪還することができることになる。ヘアワックスのニーズギャップ対応で成功したFOG BARに対して、そのFOG BARに対するニーズギャップ対応で巻き返しを図るという、なかなか痛快な展開である。

 だが、一つだけ不安がある。
 「クイックムービングミスト」は使い心地がいいのだ。非常によい。整髪力がしっかりあるのに、サラサラとしていて、使用後や洗髪の面倒さもない。その点、全くFOG BARと比肩する。
 実は、筆者はFOG BARはスーツスタイルなどナチュラルな髪型が合うときに使い、ギャッツビーのヘアワックス「ムービングラバー」をカジュアルなスタイルで少し遊びたいときに使い分けている。つまり、ギャッツビーにとっては、FOG BARのユーザーを奪取するのではなく、自社のワックスユーザーをミスト乗り換えさせてしまうカニバリゼーション(共食い)が起きているのだ。
 筆者のようなパターンがどの程度いるかわからない。しかし、新製品を出すと、少なからず自社商品に対する影響も免れない。自社商品をさらに買い増してくれるのであれば問題ないが、カニバリがどの程度起きるかは留意したいところである。

 今後、「FOG BAR」対「クイックムービングミスト」対「ムービングラバー」の三つ巴も予想される。しばらくは要チェックである。

 

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2010.03.02

CoCo壱番屋に学ぶ・制約条件の中での生き残り!

 日本の国民食である「カレーライス」。そのNo.1チェーンといえば誰もが知る「ココイチ」こと、CoCo壱番屋である。この10年間で、店舗数は約600店から1200店と倍増。売り上げは約400億円から700億円と1.75倍の成長を遂げている。そんなココイチの成長にも黄色信号が灯りはじめた。その生き残りの秘策は成功するのか?

 上場会社である経営母体の株式会社 壱番屋(コード番号7630)が、今年1月7日に平成22年5月期 第2四半期決算短信(非連結)を発表した。(http://www.ichibanya.co.jp/comp/ir/financial/pdf/ca220107.pdf)それによると、<外食業界におきましては、雇用不安や所得の減少等を背景に消費者の生活防衛意識が高まり、外食を控える傾向が強まりました。><当第2四半期累計期間における店舗売上高は、全店ベースで前年同期比2.8%減、既存店ベースで前年同期比4.6%減の結果となりました>
と、外食業界における厳しい環境下で、同社も例外ではなかったと伝えている。

 特に消費者の生活防衛意識の高まりは、メニュー単価の高い同社には強い逆風となる。平均的なメニューは700円~800円。豊富なカレーのトッピングが売りであるが、楽しくトッピングして、うっかりサラダでも頼もうものなら、その日のランチは軽く1000円を超えることになる。昨今のランチ事情は300円~500円に抑えようとする人が多いのだ。
 (参考:お弁当もデフレ化の波(Biz誠・記事) http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1002/18/news036.html

 そんな中、ココイチの生き残りの一手は当事業年度より新たな営業施策として開始した「ストアレベルマーケティング」だという。<「ストアレベルマーケティング」とは、これまでの全国均一のサービスに加えて、それぞれの店舗の特性に応じた独自のサービスやメニューを、店舗で考え、提供する新たな取り組みです。地元の食材をトッピングに加えたり、週末にお子様向けのイベントを開催したりするなど、店舗の活性化を図ってまいりました。>(同社短信)
 メニューは東海ウォーカーの記事が伝えている。
 <カレーだけじゃない! 朝粥にパンもそろうココイチの“店限定メニュー”>(2月28日 東海ウォーカー)   
 http://news.walkerplus.com/2010/0228/4/

 ところで、店限定メニューといえば、青息吐息の外食産業において、不景気を追い風に気を吐いている「餃子の王将」が思い出される。セントラルキッチンを持ちながら、看板メニューの餃子は全店で手作りするほか、各店舗がその地域の客層に合わせて工夫を重ねて展開するオリジナルメニューの数々が餃子の王将の売りだ。確かに不景気の中、割安なメニューが並ぶ同店に多くの人が行列するのは確かだが、人を惹きつけている魅力は安さだけではない。

 オリジナルメニューで魅力を演出。これは言うは易く行うは難しである。特に、カレー店のココイチにとってはだ。中華なら豊富な食材や調理方法がある。しかし、ココイチにはカレーしかないのである。しかも、ココイチのカレーは極めてスタンダード。当たり前なメニューを温かく提供することが同社のポリシーであり、注文を受けてから小鍋で暖めることにそれが表れている。しかし、特別な技は持っていない。厨房の調理器具や食材も限られている。その中で「ストアレベルマーケティング」を実現することは、いかに知恵を絞らねばならないか想像に難くない。

 <朝粥や白玉ぜんざいパンも売る「名駅サンロード店」>(同)の「粥」は「おや?」と思うかもしれない。実は壱番屋には08年に1店舗だけオープンさせた新業態店「粥茶寮 kassai」(かゆさりょう かっさい)」が同じ名古屋ある。そのノウハウを転用しているのだろう。同店ではカレーパンをはじめテイクアウトメニューを揃えているが、店舗外の地下街通路側に面して設置されるレジを配置するなど、人通りの多い地下街という地の利もしっかり活かしている。
 他店も負けてはいない。<岐阜県限定! アツアツの鉄板にルーをかける「鶏(けい)ちゃんカレー」>(東海ウォーカー)が人気だというが、新たに導入しているのは食器の鉄板だけで、あとは工夫の産物だ。
同じカレーパンもバリエーションに変化を持たせている店舗もある。<ココイチ矢場町店限定「ココ矢バーガー」、人気沸騰で販売期間延長へ>(サカエ経済新聞) http://sakae.keizai.biz/headline/1195/
 元々は従業員用の「賄い」として開発したものだというが、<「トンテキハンバーグ」のタレに付けたトッピング用のハンバーグとレタス、マヨネーズを、ほどよく焼いた「焼きカレーパン」を半分に切ったものに挟み提供している>という。これもまた、創意工夫の賜だ。

 ビジネスに制約条件はつきものだ。また、苦しいときほど他との差別化をして成長を図るチャンスでもある。CoCo壱番屋の「ストアレベルマーケティング」の涙ぐましい努力から学ぶものは多いはずだ。


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2010.03.01

「地産エキ消」を仕掛けるJR駅ナカ自販機の狙い

 JR東日本のエキナカで自販機事業を展開するJR 東日本ウォータービジネスが、「地産エキ消」ともいうべき商品ラインナップを展開しようとしている。地味で見過ごしてしまいそうな動きだが、よく考えれば意義深いチャネルの動きなのだ。

 同社ニュースリリースによると、2月23日に<エキナカ専用”地産飲料”第1弾「もぎたて”んまいもも”」発売!>とある。
 商品の特徴は国産果汁で<既存の桃飲料と差別化を図るために「高果汁(果汁50%)」としましたが、さらっとお飲みいただけます。白桃の上品な甘みと香りが特長で、桃本来の味をお楽しみいただけます。>ということらしい。
この商品の製造元は「山形食品(株)」とある。Webサイト(http://www.ym-foods.co.jp/)を見てみると、山形県南陽市にある従業員90名の会社だ。JR 東日本ウォータービジネス(以下JR東WB)は今までにも、朝の茶事(伊藤園)、朝にすっきり野菜と果実(カゴメ)ジョージアキックオフ(日本コカ・コーラ)など、自社がJR東日本管内で展開するエキナカ自販機「acure」専用、またはエキナカコンビニ「ニューデイズ」との共用の商品を各飲料メーカーと共同開発している。しかし、今回のような地場の中小メーカーとのタイアップは初めてだ。

 筆者は個人的には「桃のジュース」というと、「不二家のネクター」なのだが、同商品は白桃ピューレ30%(ネクター濃いめ果実は40%)なので、それより高果汁なのだ。なのに、さらりとした味わいを実現している。
 山形食品のWebサイトを見てみると、昨年開始された通信販売ページがあり、「SUN&LIV 山形もも」という果汁100%ジュースが確認できる。野菜ジュースや野菜&果汁飲料でも、昨今はドロリとした口当たりの商品から軒並みさらり系へと売れ筋が移行している。消費者の好みの変化を捉えてJR東WB一緒に商品作りをしたのだと考えられる。

 とはいえ、このような商品は街中の自販機で目にすることはなく、「売れるのかなぁ~」と心配になるかもしれない。しかし、同社の自販機は他社と違う事情が数多くある。その一つが顧客層である。街中の自販機のユーザーは実に90%が男性であるという。仕事中に缶コーヒーをグビッと飲むイメージそのものだ。対して、エキナカ自販機は4割を女性が占める。永谷園の飲料「冷え知らずさんの生姜チャイ」などは、正にエキナカ自販機ならではの売れ筋商品なのだ。

 もう一つの違いは、資本関係だ。JR東WBビジネスが独自商品の展開ができるのは、国内唯一の飲料メーカー資本が入っていない自販機ビジネス事業者であるからだ。商品ラインナップは各メーカーの売れ筋や、同社こだわりの商品を混載して構成している。飲料がメインではない永谷園の飲料や、街中ではほとんど目にすることのなくなった、缶入りの「汁粉」飲料などが自販機に入っているのはエキナカぐらいだ。同社は自販機の商品構成は全て「顧客視点」でラインアップすることに腐心しているという。とかく飲料メーカーの販路として「売りたいもの」が並べられる自販機を、コンビニエンスストアの「棚」に見立てて、消費者が買いたくなるモノを揃えるという。つまり、街中自販機ではあり得ない商品を、独自に盛り上げていくことも可能なのである。

 自販機は現在全国に約240万台が展開されているが、清涼飲料販売におけるシェアは1990年代の50%弱から約35%にまで低下しているという。景気低迷のあおりを受け、道路や建設工事が減少し、現場に設置されていた自販機が大幅減。企業内の事業所に設置されていた自販機の撤去も進んでいる。街中の自販機も立地の悪いものは統廃合が進んでいるというような背景がある。競合はコンビニであり、豊富な品揃えと弁当などのついで買いの利便性で確実に自販機の販売シェアを浸食してきている。

 JR東WBは自販機事業として、縮小する他事業者と一線を画して独自展開を加速する必要がある。その中で、大手飲料メーカー以外の、地場メーカーを発掘しての「地産エキ消」も、顧客に選ばれる生き残り策の一手なのだといえる。同社は3月初旬に第2弾として「青森のりんご飲料」を発売予定だという。
地方の地場メーカーとしては、JR東日管内に1万台の自販機チャネルが販路として拡大し、suica対応であるため決済情報を利用した時間帯別売れ筋情報なども把握することができる。市場カバレッジと情報収集という、チャネルに求められる機能を得ることができるのだ。
今後、このWin-winの関係がどのように発展するのか。また、消費者にどのような利便性を提供してくれるのかに、継続して注目してみたいと思う。

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