CoCo壱番屋に学ぶ・制約条件の中での生き残り!
日本の国民食である「カレーライス」。そのNo.1チェーンといえば誰もが知る「ココイチ」こと、CoCo壱番屋である。この10年間で、店舗数は約600店から1200店と倍増。売り上げは約400億円から700億円と1.75倍の成長を遂げている。そんなココイチの成長にも黄色信号が灯りはじめた。その生き残りの秘策は成功するのか?
上場会社である経営母体の株式会社 壱番屋(コード番号7630)が、今年1月7日に平成22年5月期 第2四半期決算短信(非連結)を発表した。(http://www.ichibanya.co.jp/comp/ir/financial/pdf/ca220107.pdf)それによると、<外食業界におきましては、雇用不安や所得の減少等を背景に消費者の生活防衛意識が高まり、外食を控える傾向が強まりました。><当第2四半期累計期間における店舗売上高は、全店ベースで前年同期比2.8%減、既存店ベースで前年同期比4.6%減の結果となりました>
と、外食業界における厳しい環境下で、同社も例外ではなかったと伝えている。
特に消費者の生活防衛意識の高まりは、メニュー単価の高い同社には強い逆風となる。平均的なメニューは700円~800円。豊富なカレーのトッピングが売りであるが、楽しくトッピングして、うっかりサラダでも頼もうものなら、その日のランチは軽く1000円を超えることになる。昨今のランチ事情は300円~500円に抑えようとする人が多いのだ。
(参考:お弁当もデフレ化の波(Biz誠・記事) http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1002/18/news036.html
そんな中、ココイチの生き残りの一手は当事業年度より新たな営業施策として開始した「ストアレベルマーケティング」だという。<「ストアレベルマーケティング」とは、これまでの全国均一のサービスに加えて、それぞれの店舗の特性に応じた独自のサービスやメニューを、店舗で考え、提供する新たな取り組みです。地元の食材をトッピングに加えたり、週末にお子様向けのイベントを開催したりするなど、店舗の活性化を図ってまいりました。>(同社短信)
メニューは東海ウォーカーの記事が伝えている。
<カレーだけじゃない! 朝粥にパンもそろうココイチの“店限定メニュー”>(2月28日 東海ウォーカー)
http://news.walkerplus.com/2010/0228/4/
ところで、店限定メニューといえば、青息吐息の外食産業において、不景気を追い風に気を吐いている「餃子の王将」が思い出される。セントラルキッチンを持ちながら、看板メニューの餃子は全店で手作りするほか、各店舗がその地域の客層に合わせて工夫を重ねて展開するオリジナルメニューの数々が餃子の王将の売りだ。確かに不景気の中、割安なメニューが並ぶ同店に多くの人が行列するのは確かだが、人を惹きつけている魅力は安さだけではない。
オリジナルメニューで魅力を演出。これは言うは易く行うは難しである。特に、カレー店のココイチにとってはだ。中華なら豊富な食材や調理方法がある。しかし、ココイチにはカレーしかないのである。しかも、ココイチのカレーは極めてスタンダード。当たり前なメニューを温かく提供することが同社のポリシーであり、注文を受けてから小鍋で暖めることにそれが表れている。しかし、特別な技は持っていない。厨房の調理器具や食材も限られている。その中で「ストアレベルマーケティング」を実現することは、いかに知恵を絞らねばならないか想像に難くない。
<朝粥や白玉ぜんざいパンも売る「名駅サンロード店」>(同)の「粥」は「おや?」と思うかもしれない。実は壱番屋には08年に1店舗だけオープンさせた新業態店「粥茶寮 kassai」(かゆさりょう かっさい)」が同じ名古屋ある。そのノウハウを転用しているのだろう。同店ではカレーパンをはじめテイクアウトメニューを揃えているが、店舗外の地下街通路側に面して設置されるレジを配置するなど、人通りの多い地下街という地の利もしっかり活かしている。
他店も負けてはいない。<岐阜県限定! アツアツの鉄板にルーをかける「鶏(けい)ちゃんカレー」>(東海ウォーカー)が人気だというが、新たに導入しているのは食器の鉄板だけで、あとは工夫の産物だ。
同じカレーパンもバリエーションに変化を持たせている店舗もある。<ココイチ矢場町店限定「ココ矢バーガー」、人気沸騰で販売期間延長へ>(サカエ経済新聞) http://sakae.keizai.biz/headline/1195/
元々は従業員用の「賄い」として開発したものだというが、<「トンテキハンバーグ」のタレに付けたトッピング用のハンバーグとレタス、マヨネーズを、ほどよく焼いた「焼きカレーパン」を半分に切ったものに挟み提供している>という。これもまた、創意工夫の賜だ。
ビジネスに制約条件はつきものだ。また、苦しいときほど他との差別化をして成長を図るチャンスでもある。CoCo壱番屋の「ストアレベルマーケティング」の涙ぐましい努力から学ぶものは多いはずだ。
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