CMだけではない!「ライトオン」の生き残り戦略はこれだ!
水嶋ヒロが颯爽と歩き、長谷川潤が軽快なステップを刻む「ライトオン」の春の新作ジーンズCM。ユニクロが「ジーンズ帝国」の体制を完成させた市場で何を狙うのか?
日本のジーンズ市場はユニクロを中核としたファーストリテイリングが既に治めたことを以前の記事で伝えた。
「競合をすべて撃沈させるユニクロUJの破壊力」
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2010/02/uj-7387.html
ファーストリテイリングは「ジーユー(g.u.)」で格安990円。「ユニクロ」が1990円~3990円の三段階。さらにレディースのみだが、「キャビン」傘下の ブランド「ザジ」「アランシーネ」から4990円と5段階で価格帯全てをカバーする体制が完成させた。品質と価格のバランスに優れた同社製品を、「バリューライン」として標準化されては誰もそれを上回ることはできない。
競合も座して死を待つことはできない。
「ライトオン」の平成22年8月期月次売上高前年比情報では<上半期の全社売上高前年同期比は87.4%、既存店売上高前年同期比84.4%>と苦戦が見て取れる。自社のオリジナルの「BACKNUMBER」ブランドの「ニューシャイニージーンズ」。水嶋ヒロ、長谷川潤をCMに起用した、新作「LIGHT SHINY DENIM」は生き残りをかけた起死回生の一手なのは間違いない。しかし、ファーストリテイリングの完璧な布陣で蟻の這い出る隙間もない市場のどこに活路を見いだすのか。
ライトオンは「ニッチャー戦略」に大きく舵を切ったと考えられる。
チャレンジャーはリーダーに戦いを挑む。正面攻撃や側面攻撃、時にゲリラ的に。しかし、もはやファーストリテイリングに戦いを挑んで市場のパイを切り取ろうとするのは無理だ。だとすれば、「独自の生存領域」を確保するしかない。
「ニッチ」の原義は“飾り物などを置く壁面のくぼみ”であり、また、“(人・物に)最適の地位(場所・仕事)”を表わす。では、いかにして「最適の地位」を確保するのか。それには、ターゲティングとポジショニングの精緻さが欠かせない。
ジーンズにおけるニッチャーとしては、一つは「プレミアムジーンズ市場」のプレイヤーがいる。1990年代後半に登場し、ハリウッドスターなどが愛用したことから「セレブジーンズ」などともいう。今月、メルマガ登録で「Tシャツ0円販売」というニュースで話題になった、イタリアのブランド「ディーゼル(DIESEL)」もその一つだ。海外ブランドがプレミアムジーンズとして設定している価格帯は2~3万円。高いものでは5万円程度のものもある。さすがに誰でも買える価格ではない。また、カジュアルウェアというより、かなりおしゃれな着こなしを求められるため着る者を選ぶ。つまり、完全なニッチャーなのだ。
もう一方、昔ながらのジーンズブランドにも動きもある。例えば、エドウィン。1960年代に登場した日本のオリジナルブランドである。特に1994年に登場した「503」にはファンが多い。(筆者もその一人である)。
エドウィンは503を軽く履き心地がよく、シルエットも美しい「503プレミアム」に磨き上げ、また、従来本社近くの日暮里駅前に旗艦店を置いていたが、昨年、今年と原宿エリアにプレミアムショップ出店するなどチャネルの魅力も高めている。
では、「ライトオン」の戦略はどうなのか。
「LIGHT SHINY DENIM」の価格は8900円。エドウィンの「503プレミアム」が多くの販売店が8925円で販売していることから、同等価格だといえる。つまり、格安なプライベートブランドではなく、ナショナルブランドとガチンコ勝負をかける価格でもあるわけだ。
しかし、その製品仕様を見ると、ガチンコ競合を狙っているわけではなさそうだ。
同商品の売りは<昨年の秋に発売されたおしゃれが楽しめるシャイニーデニムの春モデル。「ライトウエイト デニム」の上に薄くコーティング加工した素材に、生地の表面に表れる程よい光沢は、これまでになかった新しい表面感となっている>(3月7日 ザテレビジョン)というポイントだ。
海外プレミアムジーンズほど高価ではなく、キメキメのオシャレでもない。かといって、オーセンティックなジーンズブランドよりは程よくオシャレ。エドウィンと価格は同じでも、その程よいポジショニングで選ばれようという戦略である。
成熟市場であるジーンズ市場だが、ファーストリテイリングが圧倒的パワー市場を牽引している。その裾野はさらに拡大するかもしれない。すると、「みんながはいているジーンズと違う」というニッチャーの差別化ポイントが一層活きてくる。
「ユニクロが通った後はペンペン草一本残らない」的な批判が散見されるが、上記の用に考えれば、市場は健全に活性化されていることがわかる。業績的にまだ厳しいライトオン社であるが、ニッチャーのポジションを確たるものとして頑張ってほしいと思う。
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