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2010.02.25

世界のキッチンから VS カルピスのガチンコ勝負・その裏側

 商品は工場から出荷されてから、様々な段階で試練と戦いを経て消費者が手にとって購入に至る。そこに携わる人々の様々な知恵と工夫が込められている。商品が並ぶ棚から、その断面が覗けることがある。

 コンビニエンスストアの飲料棚。ヒット商品として生き残れるのは「1,000に3つ」といわれるほど厳しい競争の舞台である。そこで今、巧妙な戦いが繰り広げられている。

 「大人に甘いごほうびを。」のカルピスの高級ライン「ザ・プレミアム カルピス」がいちごの王様といわれる「あまおう」をブレンドした季節限定商品「『ザ・プレミアム カルピス』シーズンブレンド あまおう」。カルピス社が「こだわり乳酸菌と「あまおう」が織り成す季節限定の華やかなおいしさ春の季節にふさわしいコク深く華やかなおいしさに仕上げました。 」という自信作である。
 棚に3フェイス確保されているが、そのスリムPETボトルのショルダーにPOPのシールが貼られている。そして、1フェイスごとに「今だけの、贅沢。」「特別なカルピス」「絶妙。」とシールが違う。商品は同じなのに。

 棚の隣にはキリンビバレッジ「世界のキッチンから とろとろ桃のフルーニュ」が並んでいる。実は、今回「ザ・プレミアム カルピス」が展開した、“1商品3種POP”は前回「とろとろ桃」が展開していた作戦だ。今回はカルピスにきれいにお株を奪われた格好である。

 しかし、「とろとろ桃」も負けてはいない。店舗によって異なるが、多くの店で5フェイスぐらい確保している。秘密は同じくボトルのショルダーに貼られたPOPシールだ。こちらは「世界のキッチングッズ当たる。」とある。こちらは購入インセンティブ付きである。しかも、その場でシールを開けば当たりがわかる。はずれても3口で抽選応募ができるという「インスタントウィン・ダブルチャンス方式」だ。さらに、賞品は家庭でヘルシーな蒸し料理ができると大人気・モロッコ生まれの「タジン鍋」である。実は筆者もタジン鍋を最近購入したのであるが、店頭に常に在庫がなく予約して手に入れたぐらいの人気なのだ。モロッコ生まれとの鍋だと、「フルーニュ」はハンガリー生まれの料理をヒントにしたので、ちょっと地方が違うが「世界のキッチンから」のコンセプトにはあっている。実にうまいインセンティブの設定である。

 PETボトルに貼られたPOPシールは誰に訴えかけているのだろうか。もちろん、購入してもらうべく消費者に向けてであることは間違いない。しかし、その前にメーカーと消費者の間の流通チャネルがある。コンビニエンスストアチェーンの本部のマーチャンダイザー(MD)に取り扱いを決めてもらう。さらにフランチャイズであるコンビニの店主が本部に発注してくれなくてはならない。さらに、商品棚になるべく多く並べてほしい。そうした思惑があるのだ。
 カルピスの3種POPはとろとろ桃の2番煎じではあるが、何とか3フェイス確保しようという必死の戦法だ。とろとろ桃の時に、異なるPOPを見て多くの店主が3本並べて売り場を作りたくなった成功事例をそっくりいただこうという思惑なのだろう。
 一方、とろとろ桃は、昨年のキャンペーンで3フェイスどころか多くの店で6フェイス以上を確保した実績がある。今回はその場で当たるという「実弾戦」だ。しかも、ダブルチャンスだと確実にはずれた人のリピート買いが期待できる。とろとろ桃は美味しいので多くの人がはまって、黙っていてもリピート買いする。しかし、確実にリピートするような期待を抱かせることがコンビニ店主へのアピールには欠かせないのである。

 商品を購入してくれるターゲットに対して魅力をアピールするのは欠かせない。しかし、その購買に至る過程に絡む人のケアを忘れると、購入確率は低下してしまう。
 購買意志決定に至る関与者をDMU(Decision Making Unit=購買決定単位)という。企業の場合、DMUは購入の窓口となって稟議を挙げてくれる担当者に対して、決済をする上司がであったり、システム製品であれば、社内サポートを担当するITセクションの担当者だったりする。家庭内ではご主人に対する奥方が強力なDMUである場合も少なくないだろう。しかし、企業内や家庭内、BtoB、BtoCに関わらず同一組織内にDMUが存在するとは限らない。この場合、コンビニ本部のMD、フランチャイズの店主がDMUなのだ。

 商品は棚に並ばねば、消費者の購入意思決定の俎上にも上がらない。そして、棚をたくさん確保できれば、圧倒的に自社商品が並んだ棚の場の魅力度が増す。そして、最後の最後に、商品自体から消費者に魅力をアピールするのである。
 たまたま隣り合わせに並んだかに見える、よく似た乳酸飲料の両商品。見えないところで壮絶な花火が飛び散っているのである。そんな背景にも思いをはせて、飲み比べてみてはいかがだろうか。


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