「マーケティング」もニッチに売れ!?
「ターゲットをそんなに絞り込んだら売れる数が減るじゃないか!」・・・そんな意見がしばしば会議で出される。高度成長期を経験している高齢の役員、バブル期を経験している幹部社員などがよくそんな話をする。作れば売れる、イケイケで買ってもらえる。そんな時代ではないのに・・・。
地元のエキナカに小さな無印良品のショップがある。何やら改装をしていたのは知っていたが、久々に店内に足を踏み入れてみた。驚いた。「親父は入ってくんな」ぐらいの勢いで、思い切り女性向け商品にシフトしているのだ。食品や文具などは以前通りだが、男性向けのシャツや靴下、下着などは影も形もない。女性ものばかり。アロマポットなどまで置いてある。
世の中の「男性・女性」というセグメントの一方をバッサリ切り捨てたのだ。元もと、店内には女性客が多かった。いや、ほとんど女性。であれば、メインターゲット向けの商材に絞って展開した方が絶対に売上げは上がるのは間違いないのだから。普通はわかってはいるが、なかなか思い切れない。一つの英断である。
老舗のマーケティング関連セミナー会社の「マーケティング研究協会」の担当者に話を聞いた。最近集客が抜群なセミナー。一つが「販売戦略を推進する担当者のための リベート制度の総点検 ~コンプライアンスとリベート政策の適正化~」。もう一つが「駅消費の実態と活用法~なぜ駅で買ってしまうのか~」。どちらも、どえらくピンポイントでニッチだ。世の中にリベート政策立案の担当者がどれくらいいるのか。エキナカビジネスを検討している企業がどれくらいいるのか。しかし、集客をかけるとすぐに満席だという。
逆に、集客に苦戦するのは「ブランド強化セミナー」など、ごく一般的なテーマだという。
学術書やビジネス書を発行している老舗中堅出版社の「同文舘出版」。マーケティング関連の書籍も多数発行されているが、一昨年からマーケティングの領域を細分化したシリーズの刊行を始めた。入門的な位置づけの「マーケティング・ベーシック・セレクション・シリーズ」というシリーズは、マーケティングを12の領域に分割したのだ。戦略的マーケティング、プロダクト・マーケティング、プライス・マーケティング、プロモーション・マーケティング、流通マーケティング、ダイレクト・マーケティング、ブランド・マーケティング、ロイヤリティー・マーケティング、ターゲット・マーケティング、インターネット・マーケティング、マーケティング・リサーチ。以上の12冊だ。
「マーケティングのお薦めの本は何ですか?」とよく聞かれる。迷わずコトラーの「マーケティング原理」か「マーケティングマネジメント」を読めと答えている。その両方、もしくは片方でも読めばほとんど他のマーケティング関連の書籍を読む必要はない。しかし、どちらも電話帳の1.5倍はあろうかというボリュームだ。それを一から読み進める勇気を持てる人は少ない。・・・枕には最適な厚さなのだけど。それに、自分の関心のある領域から読みたいののも無理からぬ欲求だ。同文舘出版の12のシリーズは、そのカテゴリー分けがMESEであるかは少々疑問ではあるが、手っ取り早く関心領域の知識を得たいマーケティング初学者のニーズを捉えているといえるだろう。
消費者のニーズが細分化している今日、「空前の大ヒット」を飛ばすことはなかなか難しい。極端な話をすれば、日本の総人口約1億2千700万人を狙っても誰も振り向いてくらなければ全く意味はないのと同じだ。「ターゲットを設定すること」と「顧客化できること」は全く別。その違いが理解できない人は実は多い。ターゲットセグメントをニッチに設定して、例えば2万人しかボリュームがなかったとしよう。しかし、その2万人の半分がが「これを待ってた!」と飛びついてくれるなら、ビジネス書としてはまぁまぁのヒット作となる。1%がセミナーに参加してくれれば大盛況だ。
マーケティングを生業とするセミナー業者や出版社も、紺屋の白袴にならないよう、セグメントを細分化し、ニッチを狙うようになっている。こんな動きが参考になれば幸いである。
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