« 「マーケティング」もニッチに売れ!? | Main | ダイエー「レジ袋辞退率」30%超えは実現するか? »

2010.02.22

顧客を動かす、そのひと言・「サブコピー」の力

 人目を惹くメインコピーではなく、製品やその周囲にそっと添えられたサブコピー。その例から、顧客を動かす「ひと言」を考えてみよう。

 広告において「コピー」とは、人の関心を引きつけ、商品説明の文章を読み進めさせたり、手に取らせたりという重要な役割を担っている。大別すると、最も少ない文字数のヘッドコピー、メインコピーともいう、「キャッチコピー」。そのキャッチコピーを補う「サブコピー」はセカンドコピー、ショルダーコピーともいう。そして、最も長文で商品の説明をし、理解させる「ボディーコピー」に分かれる。
 人の目をひと言で惹きつけるキャッチコピーは、キラリと光る才能に裏打ちされたコピーライターたちのキラ星のごとき名コピーが誰しもいくつか思い浮かぶだろう。それに対し、ボディーコピーはネチっこく長文を読ませ、説得する。目の前にない商品を売る通信販売などは派手なキャッチより、いかに買う気にさせるボディーをしっかり読み切らせるかに成果がかかっている。

 そう考えると、サブコピーは少々位置づけが曖昧だともいえる。しかし、実は大事なのだ。例えば、ベテラン店員が購入を躊躇している来店客の耳元でふとささやくひと言。購入客へのリピート促進の声掛けそんな「人を動かすちょっとしたひと言」となり得るのだ。

 昨今、いくつかのコンビニチェーンで頻繁に目にする、有楽製菓の「ブラックサンダー」をご存じだろうか。以下、Wikipediaの記述を引用する。
 <ブラックサンダーは、有楽製菓が製造しているチョコレート菓子である。標準小売価格は税抜き30円>であり、どのような菓子かというと、<ココア風味のクランチをチョコレートで固めたもの>だ。ザクザクとした食感が特長である。その商品パッケージが何とも特徴的で、黒字に金のイナズマ模様が商品写真のバックに配されている。ネーミングの由来は<見た目のインパクトを表現するために黒い雷神、ブラックサンダーという名前になった>そして、<キャッチコピーは「おいしさイナズマ級!」>である。
 商品名、パッケージ、キャッチコピーのどれをとっても厳つい。ゴツイ。オトコっぽい。しかし、これが女性に売れているという。
 <元々は九州地方限定であり生協などで発売されていた>のだが、<学生や女性層を中心に評価されていた>ため、パッケージにサブコピーとして<「若い女性に大ヒット中!」>を記載したという。有楽製菓のホームページによると、2003年のことで以来、売れない時代が長く続いていたが本当に大ヒットになったという。
確かに売れているのだ。狭小店舗のため、売れる商品には実は目ざといJR東日本のエキナカコンビニ「ニューデイズ」では、レジ周りに常に置かれている。では、誰が買っているのか。東京急行電鉄が展開している、東京・渋谷を中心とした「流行」をテーマとして、ランキング上位商品と新商品だけを扱うというコンセプトのバラエティーショップ、「ランキンランキン(ranKing ranQueen)」が、毎週発表する売上げ上位商品でも常に常連だ。主要顧客は若い女性だ。確かに「若い女性に大ヒット中!」なのである。
 サブコピーの効用だけではないかもしれないが、前述の通り厳ついネーミングやパッケージで購入を躊躇した時、このサブコピーが効果を発揮していると考えても不思議ではない。

 永谷園の新カテゴリー商品「生姜の知恵」シリーズ。主要ブランドである『「冷え知らず」さんの生姜シリーズ』は生姜を用いたカップスープや飲料、菓子までと幅広いラインナップを展開している。今まで同社製品の主要顧客は、ふりかけやチャーハンの素などを買うスーパーで買い物をする主婦であった。同シリーズによって、チャネルを各コンビニチェーンやJR東日本管内に展開されているエキナカ自販機「acure(アキュレ)」などに大きく拡大。接点のなかった若い女性を取り込むことができた。自らが作り上げた「生姜ブーム」は正に収穫期を迎えているところだ。
 しかし、接点のなかった若い女性にとって「永谷園」というブランドは馴染みが薄かったはずだ。「冷え知らずさん」というネーミングと、女性を意識したパッケージは確かに手に取りにくい。食べたり飲んだりしてみると、確かにオイシイ。体も温まる。だからといってリピートしてくれるとは限らない。カップスープ類ならともかく、acure自販機で永谷園製品は「生姜チャイ」のみ。物珍しくて一度は飲んだとしても、自販機内には競合が目白押しだ。しかも、同商品は283gで150円と割高だ。
 そんなボトルのパッケージにはさりげなく、「ポカポカ美人になろう」というサブコピーが添えられている。生姜飲料で美人になれるかはわからない。しかし、飲み続けて、血行がよくなって何となくキレイになれる気はしないだろうか。「また飲んでみよう」と。少なくとも、ほんの数十円の違いなら、リピートさせる気になるコピーの力であるといえよう。

 正確にはサブコピーではなく、展示商品周りに添えられるPOP(Point of purchase :売り場に設置される宣伝材料)のコピーなのだが、秀逸なものを最後にご紹介したい。
 筆者が15年以上前にうかがった、桂文珍師匠のお話だ。いわく、「大阪で980円カメラのワゴンセールをしていた。そこは客の心が良くわかる大阪の商人がすることで、東京だったら『激安!』と書くところを、ズバリ一言書いていた。『写る』だ。980円が安いのは当たり前で『安っすいなぁ』と見ればわかる。手に取って次に『ちゃんと写るんやろか?』という客が不信感を口にすることなくそれを書いておけ。ということだった。人を動かすひと言は、徹底的に顧客の心を洞察し、先回りして目に触れさせねばならないのだ。
 サブコピーの話だけではない。ここから学ぶことは数多くあるといえるだろう。

|
|

« 「マーケティング」もニッチに売れ!? | Main | ダイエー「レジ袋辞退率」30%超えは実現するか? »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/93392/47633246

Listed below are links to weblogs that reference 顧客を動かす、そのひと言・「サブコピー」の力:

» コピーライタ−というお仕事 [コピーライタ−というお仕事]
コピーライティングのノウハウを手に入れたら、どんな風にかわるのでしょうか ? [Read More]

Tracked on 2010.02.22 at 04:10 PM

« 「マーケティング」もニッチに売れ!? | Main | ダイエー「レジ袋辞退率」30%超えは実現するか? »