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2010.02.08

ガム市場とロッテのFit's(フィッツ)に何が起きている?

 「噛む~とフニャンフニャン」のロッテのガム・Fit's(フィッツ)。佐々木希と佐藤健のCMも第3弾となって、ダンスはどんどん高度化するも、絶好調だ。しかし、「噛み心地が少し固くなった」との声がちらほら聞こえるようになってきた。何が起こっているのか。ロッテの戦略は?そしてガム業界はどうなっているのか?

■ガム市場は「付随機能」の戦い?

 「チューインガムの発祥は西暦300年ごろ」(日本チューイングガム協会)。日本においても「初めて輸入されたのは大正5年」(同))というから大変な歴史である。故に、完全なコモデティーである。コモデティー、成熟市場ほど製品価値の「中核」とは直接関係ないが、その存在で製品の魅力を高める「付随機能」が勝負のしどころとなる。例えばコモデティーとなった「携帯電話」は、通話やメール、ブラウジングという中核価値とは直接関係のない、カラーバリエーションや、ワンセグ機能などが勝負のしどころとなっている。
 成熟市場であるガムで特徴的な戦い方を始めたのが、「グリコ」だ。製菓大手のグリコであるが、ガム市場においてはわずか数パーセントのシェアを確保できているだけの存在。現状よりシェアが低下すれば「市場存在シェア」、即ち、人からヒントを出されて思い出せる(助成想起)レベルのシェアを確保できなくなるから必死だ。切り札は「パッケージ」。「新スタイルパッケージ・フラットスタイル」という、粒ガムをファスナー付きの袋にダイレクトに入れて「紙をむく手間がかからない」「ポケットに入れてもかさばらない」として、さらに捨て紙の収納ポケットまで付けるという工夫を施した。同社のガム「ポスカ」「スクイーズ」に用いてリニューアル販売を開始した。

■縮むガム市場と、リーダー・ロッテの使命

 そのガム市場を見ると、2003年の生産額1,310億円をピークに右下がりに推移し、2008年時点で1,099億円と16%強の減少を見せている(全日本菓子協会調べ)。推測できることは高齢化による「ガムの忌避」が一つに挙げられるだろう。虫歯の治療跡や義歯の使用などで、高齢者ほどガムには手を出しにくくなる。高齢者比率の増加はガム使用量の減少とリンクするだろう。もう一つは若年層のガム離れである。咀嚼能力の減少と柔らかい食感の嗜好はガムから遠ざかる原因になる。
 市場の縮小はシェアの大きな企業ほどダメージをかぶる。ロッテのガム市場のシェアは6割越えともいわれているため、影響は甚大だ。グリコのように他社と差別化して自社のシェアを維持・拡大するだけではダメなのだ。
 ガム離れの前者、高齢者向けには「歯につきにくいガム・フリーゾーン」を開発した。そして、後者、若年層向けに投入されたのが「噛むとフニャン」というやわらかな噛み心地で昨年大ブレイクした「Fit's(フィッツ)」なのだ。

■「噛み心地」という「中核価値」を支える技術

 ガムは植物性を中心に、各種の樹脂や炭酸カルシウムなどを混合して作る「ガムベース」に砂糖やキシリトールなどの甘味料と軟化剤、香料を混ぜて作る。ロッテは植物性の天然チクルにこだわっているが、歯にくっつきにくいという特徴を出すため「フリーゾーン」ではあえて合成樹脂を使用しているという。つまり、噛み心地はガムベースの配合によって決まるのだ。
 フィッツの「噛むとフニャン」は、これからのガム市場を支えるべき若年層を取り込むべく、中核価値である噛み心地を嗜好に合わせてチューニングした必殺兵器であったのだ。

■確かに固くなった噛み心地

 ここで、冒頭の「フィッツの噛み心地が少し固くなった」に話を戻す。筆者自身も確かめてみた。発売時の3種に追加で2つのフレーバーが出ていたが、どれも以前より確かに固く感じられた。ロッテのお客様相談室に問い合わせてみた。「確かに、少し固めにリニューアルしました」との回答であった。
 リニューアルの意図は聞き出せなかったが推測はできる。それは、噛み心地だけでなく、その噛み心地をどのように楽しめるのかという、ガムの「実体価値」であるフレーバーに注目してみればいい。

■若年層の嗜好の変化とガムのフレーバー

 若年層における食の嗜好の変化で昨今、注目されているのがカラシ、わさび、唐辛子などの「刺激物の忌避」である。 回転ずし「くら寿司」を全国展開するくらコーポレーションでは、若年層を中心に「さび抜き」を注文する客が多いことから、全皿をさび抜きし、わさびをテーブル備え付けにして好みで使用する仕組みに変更したという。
 ガムでも同様の傾向がある。若年層が好むのは「果実系」である。「ミント系」は忌避される傾向が強いという。前出のグリコのスクイーズは「搾り果汁ガム」と銘打ち、あっさりとミント系を切り捨てている。
 リーダー企業たるロッテはグリコのような差別化集中戦略を取ることはできない。必殺兵器・フィッツで若者をガムにしっかり取り込まねばならない。フィッツの発売時、フレーバーは「シトラスミックス」「ミックスベリー」「ペパーミント」の3種だった。中でも「ミックスベリー」は大人気となって、原材料が不足して一時販売中止となった。やはり果実系強しである。

■フィッツのフレーバー戦略と噛み心地の変化

 単に若年層にウケることを狙うのなら、「ペパーミント」はいらない。しかし、やはりガムの王道はミントだ。果実系から入ってガムを噛むことを習慣化させ、やがて製品層の厚いミント系を試させて、フィッツ以外の製品にも拡大させたい。そんな願いが込められたフレーバーの展開であると推測できる。
 さらにその後追加されたのが「エアミント」。ペパーミントにメントールのクールさを追加した、より「オトナの味」である。徐々に「ガムのオトナの階段」を上らせる戦略だ。
 そして、味だけでなく、いよいよ「噛み心地」にまで「オトナの階段戦略」を踏み込んだのが「フィッツの噛み心地が少し固くなった」背景ではないか。
 但し、急いては事をし損じる。果実系の極地ともいうべき、あま~いフレーバーの「ピーチミックス」を追加することも忘れていないのがさすがだ。

■若者にガムは定着するのか?

 コンビニのガムの棚を見てみよう。ロッテ・フィッツの「ピーチミックス」がかなりの勢いで売れている。グリコ・スクイーズの「アップルマンゴー」も他商品と比べて売れ行きに勢いがあって健闘している。
 ロッテの願いである、ミントなオトナの味まではまだ遠そうであるが、フィッツは少し固くなっても売れ続いている。シーダーが市場を拡大し、フォロアーも頑張って自社のシェアを維持・拡大する。業界自体が活性化し、市場も反転拡大するかもしれない。
 ポケットの中の小さな存在である「ガム」の市場変化と、それを支えるメーカーの思いや思惑にまで注目すると、今までより少しだけ、その存在が大きく感じられるだろう。

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