« 顧客を動かす、そのひと言・「サブコピー」の力 | Main | 競合をすべて撃沈させるユニクロUJの破壊力 »

2010.02.23

ダイエー「レジ袋辞退率」30%超えは実現するか?

 ダイエーグループが「2010年度までにレジ袋辞退率30%達成」を目指した取り組みを展開している。2008年度で約26%だという。前倒しで2009年度に達成なるか?

 同社ホームページによると、06年度実績は約16%、07年は約21%だったという。数字手的には順調だといえるだろう。初年度の16%という数字が実に面白い意味を持っている。そこから考えると、数字はさらに伸びていくと考えられるのだが、まずはそこから検証してみよう。

 E.M.ロジャースのイノベーション普及論によると、イノベーションが市場に登場したときに、第一に飛びついてくる新しい物好き、「革新的採用者」または「イノベーター」といわれる層が存在する。ロジャースは市場に2.5%存在するとしている。別名「冒険家」とも名付けられているイノベーターは、何よりも自ら新しいものを取り入れる行為自体に価値を見いだす人々であり、情報感度が高い。
 イノベーションの成功の第一段階次のターゲットにかかっている。「初期少数採用者」または「アーリーアダプター」という層は、市場に13.5%存在する。別名「尊敬される人々」とも呼ばれ、とにかく飛びつくのではなく新しいものをきちんと評価して採用するという傾向がある。ここまでの合計が16%であり、この普及率を超えると、次の「前期多数採用者」または「アーリーマジョリティー」という市場の34%というボリュームを占める層が動き出すといわれている。そのため、「普及率16%の論理」ともいわれるのだが、ダイエーのレジ袋辞退率は初年度で既にこの数値を超えている。

 但し、地域や店舗によってバラツキがあるのも否めないようだ。Twitterである店舗の達成率を掲示したポスターをアップしていた。( http://twitpic.com/14b9xf )
その店舗では2009年12月度20.9%で、前月比±0%の足踏みのようだ。

 レジ袋辞退が進まないとしたら、どのような問題があるのだろうか。
 ジェフリー・A・ムーアは1991年に「キャズム理論」を提唱し、特にハイテク製品などにおいては、アーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間には「深く大きな溝(chasm:キャズム)」があるとしている。しかし、レジ袋辞退はそれほど理解できないような複雑なメカニズムではない。

 ロジャースは「普及論」で、イノベーションの普及がある程度の速度をもって進捗していくための要因を記している。それに従って考えてみよう。
(1)相対優位性…今まで使っていたものと比較し、優れているかが分かりやすいこと。
 辞退するとレジ袋の代わりに「マイバッグ」を使うことになるが、ダイエー部場合は2円分のポイントがつくようだ。2円を優位と考えるか否かは人の経済観念によるところが大きい。むしろ、「環境への貢献」という要素で考えるべきかもしれない。
(2)両立性…当面は今まで使っていたものを捨てることなく、両立できること。
 辞退しなければレジ袋は支給されるので、マイバッグと両立はするだろう。だとすれば、あえて辞退するだけの前項の優位性をどう考えるかが重要そうだ。
(3)複雑性…理解できないほどの複雑ではなく、適度にありがたみのある仕組みになっていること。
 レジ袋辞退ではこの項目は当てはめにくいが、ダイエーの場合で考えると、少々面倒さが漂う気もする。スーパーの西友などは、辞退によってその場で会計から2円現金キャッシュバックがされる。ダイエーは買い物200円で1ptが付いて、500pt集めると500円分の買い物券代わりに使用できる「ハートポイント」が2pt分つくという仕組みのようだ。
(4)試行可能性…本格的な購入・導入の前に自ら効果を認識できること。デモンストレーション、プロトタイプの提供、試供品のサンプリングなど。
 マイバッグを提供されなくとも、以前もらったレジ袋を持ち込めばいいだけのことだが、自ら持ち込むというのは手間かもしれない。なぜなら、ほぼ手ぶらや小さな鞄だけで買い物に来ていた客はそこに一手間かかるのだから。
(5)察可能性…目に見えない効果ではなく、明らかに効率が上がるもしくは質が向上するなどの効果が観察・実感できること。
 この点に腐心しているのは、店舗ごとにレジに月別の辞退率を掲示している点にも現れている。いわゆる「可視化」「見える化」である。しかし、30%に向けた企業の目標が、自分にとってどんな意味のある数字なのか理解できる人は少ないだろう。

 以上から考えると、総じて個々人には比較的小さなメリットに対して、意外と仕組みが複雑で、取り組み全体としての効果がわかりにくいといえるのではないだろうか。
 しかし、それはダイエーグループの問題ではない。この「レジ袋削減」という運動の全体の問題点がここにある。
 レジ袋削減は、名古屋市は緑区で2007年10月からレジ袋有料化促進モデル事業を実施しており、2010年度までに名古屋市内全域でレジ袋有料化を実施することを目指しているという。しかし、その環境への効果・効用はまだまだ認知が低く、「マイバッグが増えて環境負荷はむしろ高まっている」というも論一部にある。
 
 たとえば、こんな説明がある。<年間使用枚数は、300億枚(1人1日約1枚)とも言われる。しかし、レジ袋の原料は原油であり、国内の使用枚数は原油換算で約56万リットル(大型タンカー2艘分)に相当する。また、レジ袋は最終的にはほとんどがゴミとして廃棄されており、容器包装全体の量では、容積で家庭ゴミの6割を超える>(環境gooより http://eco.goo.ne.jp/word/life/S00251_kaisetsu.html )
 一方で、工学者の武田邦彦氏のように「レジ袋は石油の余り物からできているので削減は意味がない」とする論者も少なくない。
 
 議論百出は結構だと思う。しかし、「レジ袋辞退」の効用が明示されず、「環境負荷軽減」の手段自体が目的化した状態で、さらに異論も放置されたままであれば普及にブレーキは自ずとかかるだろう。
 30%は達成されるかもしれない。しかし、普及の後半は、周囲の大半の人が採用する様子を見てようやく自らも動く懐疑的な人である、「後期多数採用者」または「レイトマジョリティー」という層が残っている。
 ダイエーのCSRとしての努力には敬意を表したい。しかし、名古屋市のような「全市有料化」というような取り組みに動くのであれば、一企業の努力や個人の善意に支えられるのではなく、もっと根本的な説明・普及を行政が行うべきではないかと考える。

|

« 顧客を動かす、そのひと言・「サブコピー」の力 | Main | 競合をすべて撃沈させるユニクロUJの破壊力 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ダイエー「レジ袋辞退率」30%超えは実現するか?:

« 顧客を動かす、そのひと言・「サブコピー」の力 | Main | 競合をすべて撃沈させるユニクロUJの破壊力 »