あらゆるビジネスは「韓国の百貨店」に学べ
あけましておめでとうございます。
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1月1日の日経MJ一面。特集の本論ではないものの、「韓国の百貨店」に関する記述がとても重要だと思った。以下、記事を抜粋する。
<販売不振に苦しむ大手百貨店の首脳が、打開策を求めて訪れる国がある。韓国だ。><韓国の出生率(2008年)は1.19と日本より深刻だ。百貨店が人口減少時代を生き抜くためのヒントも韓国にある。><「日本の百貨店の問題は、社会と共に高齢化したことだ」と現代百貨店の河へい(火へんに丙)鏑社長は指摘する。同社は「stay young(若いままで)」をテーマにした中高年への若返り提案に力を注ぐ。実際の年齢より10歳程若い着こなしや健康管理、趣味などを、商品やイベントを通じて積極的に訴える。>
ハーバード大学大学院の教授セオドア・レビットの格言。「顧客はドリルが欲しいのではない。穴を空けたいのだ」。
もっと正確に引用すると、「昨年度、4分の1インチのドリルが100万個売れた。これは、人が4分の1インチのドリルを欲したからでなくて、4分の1インチの穴を欲したからである」と、レオ・マックギブナという人物の言葉をレビット教授が引用した一節である。(レビットのマーケティング思考法・ダイヤモンド社)
上記の言葉は「ニーズ」と「ウォンツ」の関係をもっとも端的に説明した言葉である。顧客は何か実現したい理想の状態を求めている。それが「ニーズ」だ。そして、実現できていない現状を解決する「対象物」として求められるのが「ウォンツ」。この関係がしばしば混同される。顧客は単なるモノとしての「ドリル」に対価を払うのではない。「穴を空けられる」という「価値」に対して対価を払っているのだ。
さらにニーズは深掘りしなくてはならない。「なぜ、4分の1インチの穴を空けたいのか?」。「日曜大工でボルトを入れる穴を空けたい」なのだとすれば、「電動ドリル」が最適だろう。「子供の工作を手伝うため釘の下穴を空けたい」なら、電動ドリルではなく「錐(キリ)」がちょうどよいはずだ。深掘りすれば顧客が本来求めているものがわかり、適切なものが提供できるのだ。
韓国の百貨店が指摘する、日本の百貨店の問題もまさしくそこにある。日本の市場は人口動態と同じく高齢化が進む。高齢者が求める、高齢者らしい服、化粧品、その他の品々。それらは「ウォンツ」だ。なぜ、年寄りなりの商品を欲するのか。恐らくは「着こなす自信がない」や「若作りしてと、人から言われたくない」などだろう。そして、本来のニーズは「若くありたい」はずなのだ。韓国の百貨店は、高齢化が進む市場、顧客のニーズを的確に捉え、深掘りすることによって繁盛しているのだ。
レビット教授はレビットのマーケティング思考法で、米化粧品会社のレブロンの経営者、チャールズ・レブソンの言葉を引用し、次のようにも書いている。
<「工場では化粧品を作る。店舗では希望を売る」。なるほど、女性は化粧品を使う。だが女性は化粧品を買うのではない。希望を買っているのである。レブソンは人間の衝動を正しく理解して、その上にあの金字塔を立てたのである>。
まさしく、韓国の百貨店が行っているのはそういうことなのだ。
教授が同書を記したのは1974年のことだ。(和訳は翌年)。それ以降も今日に至るまで「提案型営業」や「コンサルティングセールス」が重要といわれるようになって久しい。それはニーズの深掘りができるか否かにかかっているのである。単なるモノではなく、顧客が本来必要としている価値を提供することがマーケティングの本質でもあるのである。韓国の百貨店から学ぶのは、日本の百貨店だけではなく、全てのビジネスが今一度考えるべきポイントである。
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