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16 posts from January 2010

2010.01.29

みかんの消費量・「20年で半減」の謎をフレームワークで検証する

 ご自宅のリビングを見廻してみて欲しい。そこに、果物カゴに入ったみかんの山はあるだろうか。みかん市場に異変が起きているというが、もし、見あたらなければ、あなたもその原因の一端になっているのだ。

 <みかん消費20年間で半減 皮剥くのが面倒だから?>(2010年01月27日20時livedoorニュース / 提供:J-CASTニュース)
 http://news.livedoor.com/article/detail/4572604/
 
  上記の報道によれば<みかんの消費量は、二人以上の世帯で1988年には年間約32kg、2008年には約15kgと20年間でほぼ半減>だという。そういえば、筆者は大のみかん好きで手の肌が真っ黄色になってしまうほどだったが、最近はあまり食べなくなったなと思う。
以下、記事を要約する。

 業界関係者が原因を分析している。
 A:生活様式の変化
・「こたつの上にはみかん」であったのが、こたつそのものが無くなった。
・核家族化で「箱買い」から「小袋買い」になり購入量が減った。
 B:果物の多様化
・冬でも輸入果物、バナナやグレープフルーツなどもあり、選択の余地が増えた。
・みかんの最大のライバルがイチゴになり、人気品種も増えた。
・子どもの場合はお菓子の影響も大きい。
 NHKの「ニュースウオッチ9」でも取り上げられた。
 <街の人の声を聞いたところ、「剥くのが面倒くさい」「みかんの皮を剥いたときに白い筋が爪に入るのがいやだ」といった意見があった>という。

 では、何が起こっているのかを環境分析のフレームワークで見てみよう。王道のPEST→5F→3Cの流れだ。

 PEST(Political・Economical・Social・Technological)では、S(社会環境)は業界関係者の指摘の通り、住環境の変化「こたつがない!」は実は重要な視点だ。こたつに入り、ダラダラと惰性でみかんを食べる消費量は馬鹿にならなかったはずだ。さらに、健康志向・ダイエット志向の高まりで果糖のカロリーが忌避される傾向もあるだろう。カロリーを気にする消費者によって消費量が減った例は牛乳で顕著だ。同じ心理が働いている可能性は高い。
 P(政治的影響)は、少し強引だが、プラザ合意以降の円高による輸入果実の多様化が挙げられないだろうか。みかん消費量の基準年とされている88年より3年前だし、87年には先進7カ国財務大臣・中央銀行総裁会議(G7)でドルの下落に歯止めをかけるルーブル合意がなされたが、結局、協調介入が不十分でドルの下落は止まらなかった。さらに日米貿易協議の結果、1991年に牛肉とともにオレンジの輸入が自由化された。輸入果実は確実に増えた。T(技術的影響度)は、輸入物として日本に流入してきた果物が、生産技術の向上によって安価に手に入るようになった。例えばキウイなどは、現在輸入と国産が半々の比率になっている。輸入物の価格も押し下げられ、買いやすくなった。つまり、PとTでは、みかんの競合がゴッソリ増えてことを意味する。

 5F(5Force analysis)では、「果物業界」での戦いと考えれば、上記の通り、「業界内の競争」として輸入果物やその国産化した物、イチゴなどとの激しい戦いが繰り広げられている。それだけでなく、「おかし」という業界関係者のコメントを考えれば「代替品の脅威」も強いことが分る。果物の成分を摂ればいいのであれば、ジュースでも十分だ。この20年間で甘いだけの果物ジュースではなく、野菜と果物の混合で美味しく栄養が摂れる製品は非常に多くなった。さらに、ビタミンなどの栄養分だけでよければサプリでもいい。サプリ市場も20年間で大きく拡大した。

 3C(Customer・Competitor・Company)で考えれば、顧客のみかんに対するKBF(Key Buying Factor:購入要因)は「ナイフを使わなくて、手軽にむけて食べられる」が大きかっただろう。しかし、上記のように代替品はむくことすらせずに食べられる物がたくさんある。顧客を細かく見れば、「むくと爪に…」と言っているのは誰だろうか。購入に関するDMU(Decision Making Unit:購買決定単位・関与者)は、主婦が大きいだろう。昔はなかったが、ネイルブームで女性は爪をきれいにしている。若い主婦もやっているので、強力なDMUに「買わない(買いたくない)理由」が存在して、家庭に導入されないことになる。競合はむかなくていい。顧客のニーズをすくい取れている。

 記事によれば、<福岡県の冷凍食品販売会社「八ちゃん堂」(福岡県みやま市)>が<皮を剥いてある冷凍みかん、その名も「むかん」を年明けに売り出した>という。きちんと顧客のニーズをすくい取る動きをしている。みかんの産地にある同社は<。地元を盛り上げようと開発した>という。
 このまま消費が低迷すれば、将来的には他の作物に転作することも考えなければならないだろう。しかし、そんなにすぐには無理だ。「できることをやる」ことを考えれば。むいて販売するのは的を射ている。

 でも、このままみかんが無くなったら寂しいので、みんな、みかんをむいて食べようよ。
 記事にはステキなオチが付けられている。<今年のみかんは甘く、当たり年だと言われている。夏から秋にかけて乾燥した日が続いたために糖度が高まったそうだ。そして今の時期、生産地では、12月中旬頃にとれたものを倉庫で寝かせ熟成させた「貯蔵みかん」の出荷がピークを迎えている>。

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2010.01.28

たい焼き戦線・異常あり

 冬の定番スイーツ「たい焼き」にホットな戦いが巻き起こっている。いや、ホットでは生温い。アツアツの激戦だ。

 東京の「三大たい焼き名店」といえば、「水天宮・柳屋」「四ッ谷・わかば」「麻布十番・浪花屋総本店」。筆者は柳屋派であり、店頭で焼き上げる手際に見とれながらわくわくして行列してしまうのである。焼き方は今日一般的になっている複数個の型に生地を流し込んで焼く量産型(養殖物ともいう)ではなく、1匹ずつ個別の型で焼き上げるスタイル(天然物という)で、その手さばきは見ていて飽きない。

 そんなたい焼き業界には新規参入が相次いでいるようだ。背景にあるのは「不況」。売上げが伸びない他業種を経営する店舗の他、元会社員も契約を切られた、早期退職に踏み切らざるを得なかったなどの背景で新規参入をしているという。

 昨年6月、景気の低迷から全く光明が見えなかった時期、北海道毎日新聞が次のような記事を掲載していた。
 <たい焼き専門店:増殖!! 不況だから… 少資金で開業、調理法も簡単>(毎日新聞 2009年6月6日 地方版)
 飲食業は一般に参入障壁が低いのだが、特にたい焼き屋の開業は手軽に始められるようだ。その理由は<たい焼き店は3坪程度の狭い店舗でも開業可能。初期投資もフランチャイズ加盟料や設備費、テナント料など計500万円前後と、他業種に比べ開業資金が安く、調理方法も早ければ1日で習得できる>からだという。

 飲食業は参入障壁が低いが、生き残りは難しい。まして、たい焼きのようなコモデティーは冒頭のような名店でなければ、消費者が目にしても「買う理由」にはならない。そこで、たい焼きも生き残りのための差別化戦争が展開されることになる。
 北海道毎日新聞の記事にあるフランチャイズとして紹介されていたのが、福岡県大牟田市に本部のある「尾長屋」。白いたい焼きの元祖を名乗る。同市には同じく元祖白いたい焼きを名乗る「藤家」もあり、フランチャイズ獲得を競っている。差別化ポイントは、モチモチとした食感が楽しめる白い生地。それが差別化ポイントである。

 白があれば黒もある。代官山「黒鯛」。通常タイプのプレーンや、抹茶を使った暗緑色の皮もあるが、備長炭と黒ゴマを使用した黒い皮のたい焼きがシンボル。店の看板やたい焼きを入れてくれるパッケージも黒で統一されており、かなりデザインにこだわりブランディングを図っていることが伺える。

 デザインやブランディングにはかなりのコストを要する。しかし、そこまでできないものの、差別化を図ろうとすれば通常のあんこを変わり種の具材に変える勝負になる。もともと、たい焼き業界では1990年代後半から2000年頃から変わり種たい焼きが増え始めていた。しかし、安易な変わり種は「ゲテモノ」となって、消費者にすぐに飽きられる。

 そんな中、変わり種たい焼きに本気で取り組む名店もあらわれた。「銀座たいやき・櫻家」。銀座の人気店である。同店はJR東京駅構内地下1階キラピカ通りに2月1日から出店する。そこで、通勤客の朝の「胃袋」を狙う戦略に出た。
 <たい焼き:朝食限定 ホワイトソースやトマトソース味で登場へ>(毎日新聞2010年1月27日)
 <「鯛焼きリゾット」は、ホワイトソース、トマトソース、カレー、デミグラスソースの4種類の味。開発した櫻家では、「海外ではリゾットにパンはつきもの。ならば小麦粉を使った鯛焼きの皮にもあうはず」と試みた>という。試作を数百回繰り返したという労作だ。さらに<黒ゴマなどを加えたオリジナルの牛乳と、安納イモのサラダをつけたセットメニューも販売>するとして、さらなる客単価向上を狙っている。

 参入が容易なほど、生き残りは難しい。人気店でも変わり続けなければ生きていけない。差別化、ブランディング、常識を覆す使用機会の提案、さらなる収益化の工夫。
 アツアツの激戦の中、生き残りを各店が賭けるたい焼き業界から学ぶものは多いはずだ。

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2010.01.27

ディズニーの「シェリーメイ」戦略のキモはなんだ?

 1月22日に東京ディズニーシーで発売。購入まで最長5時間待ちだったと聞く。大人気のクマのぬいぐるみ「ダッフィー」のお友達という設定がなされた「シェリーメイ」。その存在には、ディズニーの戦略がたっぷり仕込まれている。

 ダッフィーは恐らく近年のディズニー関連グッズの中では類い希な大ヒット商品であろう。昨年10月に放映されていた月9ドラマの「東京DOGS」で、刑事コンビを演じる小栗旬と水嶋ヒロが掛け合いのセリフで「ダッフィーちゃん抱っこしたことあるか?」とギャグを飛ばし、多くの視聴者がそれを理解できてしまうほどの知名度である。
 筆者の自宅でも増殖を続けている。最初に標準というか、こどもが抱いて持ち歩くサイズのものが一体やってきた。続いてその半分ぐらいのサイズ。キーホルダーサイズも。最初の一体は頻繁にお色直しをしている。何やら衣装持ちである。

 ヒット商品には必ずストーリーがある。そのあたり、ディズニーは抜かりない。Wikipediaをひもといてみる。初登場は2004年11月5日であり、当時は「ディズニーベア」という名であったという。
 ストーリーは<ミッキーマウスには、お気に入りのテディベアのぬいぐるみがあった。 ミッキーマウスは、このテディベアといっしょに歩けたらどんなに楽しいだろう、と思った。 そこへティンカーベルが現れ、妖精の粉をテディベアにふりかけた。 すると妖精の粉の魔力でテディベアが動きだした。 ミッキーは嬉しくて、テディベアを抱きしめた。 テディベアの顔がミッキーマークになった。>とある。

 翌年のクリスマスにはあっという間にネーミングと設定変更が行われた。このあたりから、もしかすると今回の「シェリーメイ」登場の絵図が書かれていたのかもしれない。
 東京ディズニーシーの公式ホームページの記述を引用する。
 <ミッキーが長い航海に出る前の夜、ミニーはミッキーがひとりぼっちで寂しくならないようにと、ミッキーのためにテディーベアを作りました。『ありがとうミニー!』ミッキーはミニーが心を込めて作ったプレゼントをとてもよろこびました。(以下略)>

 「ミニーが作った」というところがミソだ。「ディズニーベア」の設定のように、ティンカーベルの「妖精の粉の魔力」のような偶然性に依存するのではなく、ミニーならいつでも、いくつでも作ってくれるだろう。(もしかすると、ミッキーが頼めばティンクもいつでも粉をかけてくれるかもしれないが・・・)

 大ヒットし、多くのファンがダッフィーを抱いて来園するようになった。街でもカバンにキーホルダータイプや小型タイプをぶら下げて歩く人も多くなった。そこで、ミニーの出番である。同じく公式ホームページの記述。
 <ミニーはダッフィーのお友達を作っています。『きっとよろこんでくれるわ!』ダッフィーはミニーからのプレゼントにちょっとはにかみました。目の前にかわいらしい女の子のお友達があらわれたからです。ハートのかたちをしたペンダントがとってもチャーミング!『よろしくね、シェリーメイ!』>

 何が起こるか。当然ファンは買う。いや、買わねばならないのだ。ファンであるほどに。
 シェリーメイの出現は、「リカちゃん人形」にボーイフレンド(初代)として「立花わたるくん」が発売されたのとはわけが違う。
 筆者の知る限り、多くのファンの間で「ダッフィーはぬいぐるみだから性別はない」という暗黙の了解があったようだ。故に、ミニーがもう一体、女の子のクマを作るというディズニーの絵図を知る由もないファンは、ダッフィーちゃんの着替えを手作りする際に、ひらひらしたの女の子っぽい衣装を作ってしまったりしていた。今、考えれば公式の衣装セットはどことなく男の子っぽい。
 ダッフィーは男の子だった。それが明確になった今、女の子の衣装は着させられない。故に、シェリーメイを、買うしかない。(むしろ喜んでだと思うが)。
 恐らく、筆者の自宅にも長時間行列しなくても買えるような安定供給がなされた頃には、シェリーメイがやってくるだろう。そして、バリエーションや衣装が増殖していくのだ。

 同一の商品の買い換え、もしくは買い増しを促進することを「アップセリング」という。かつて、デルコンピューターは4年間で3台PCを買わせるというプログラムを展開していたという。デスクトップを買う。しばらくすると、ノートPCの買い増しのお勧めが来る。その後しばらくすると、デスクトップの買い換えのお勧めが届く。
 とはいえ、そんなに簡単に買い増し・買い換えをしてくれるものではないが、ディズニーは易々とそれをやってのけた。ダッフィーとシェリーメイは別商品であるが、ファンでなければ同じクマのバリエーションだ。デスクトップとノートの違いぐらい。故に、これはアップセリングである。それも、とびきり勝率の高い。

 関連商品の販売を「クロスセリング」という。例示をパソコンつながりでヒューレットパッカード(HP)で考えれば、同社はプリンタも製造しているので、もれなくパソコンとの併買のお勧めがくる。
 ダッフィーのサイズ違い、キーホルダーなどは、クロスセリングだ。自分のダッフィーに感情移入し、人格(クマ格?)を与えている熱心なファンは、同時に2体自分の周りに存在させようとはしない。故に、関連商品としてバリエーション展開をしてクロスセリングを図っているのである。当然、シェリーメイもバリエーション展開があるはずだ。
 さらには、シェリーメイの登場によって、ダッフィーとペアの絵柄になった食器や各種グッズの発売も加速している。強力なクロスセルである。

 顧客を囲い込み、使い続けさせることで利益を創出することを「アフターマーケティング」という。プリンタつながりで例示すると、プリンタは本体よりも専用インクで利益を出す。「衣装」はダッフィーのアフターマーケティングである。手作り派もいるが、手作りするような熱心なファンは公式の衣装セットもしっかり購入する。季節毎に販売され、売れ続ける。そして、シェリーメイの衣装も。

 企業が顧客化した後に収益を上げられるパターンは、大きくアップセル・クロスセル・アフターマーケティングの3つだ。ディズニーはダッフィーでしっかりこの3パターンを用いている。そして、シェリーメイの投入で一気にそのパイを2倍に拡大したのである。やはり、恐るべしディズニーだ。

 ちなみに蛇足ではあるが、ディズニーシーでしか買えない、ダッフィーとシェリーメイとは別に、「カドリーベア」という女の子のクマも存在している。Wikipediaによると<ミニーは、ミッキーが寂しくないように、ダッフィーという熊のぬいぐるみを作った。 そこで、ミニーは自分用にと、熊のぬいぐるみを作った。 ミニーは、その熊を「カドリーベア」と名づけた>とある。また、<カドリーベアは東京ディズニーリゾートから生まれたキャラクターではないので東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、ボン・ヴォヤージュなどリゾート内ショップでの発売はされない>ともある。実際にはキディランドやAmazonなどで買えるのだが、ディズニーシーにダッフィーとペアにして来園するファンもいた。そのカドリーベアがシェリーメイの出現で今後どのような立場になるのかも興味をひかれるところだ。

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2010.01.26

【おしらせ】 セミナー(勉強会)を開催します!!

たった4時間でマーケティングがわかる!楽しくなる!
【『あれがヒットしたワケ』をフレームワークで読み解く勉強会】

「マーケティングって分っているつもりなんだけど、我流で・・・」「本で読んで勉強したけど、イマイチ具体的に分らない・・・」そんなあなたに朗報です。

様々なヒット商品の実例をもとにしたフレームワーク分析をグループワークで行い、マーケティングの基本が学べるセミナーのお知らせです。昨年1月に実施しご好評を頂きましたグループワーク・セミナーをさらにさらに最新の事例で内容を大幅改訂して実施します。


こんな事例をグループワークやインタラクティブレクチャーで行うことを予定しています。

 ・「爽健美茶」は誰を狙っているのか?
 ・ニンテンドーDsi LLは誰のもの?
 ・「ヘルシアスパークリング」の魅力にせまる!
 ・洗濯洗剤・花王「スタイルフィット」&「アタックNeo」Vs. P&G「さらさ」!
 ・「黒烏龍茶」はなぜ売れるのか?
 ・食器洗剤「ジョイ」「キュキュット」「チャーミーマイルド」の戦い方を読み解く!
 ・ファーストリテイリングの価格戦略のヒミツ?
 ・「長崎ちゃんぽんリンガーハット」のさじ加減!
 ・フェニックスのアンダーウエアの狙いは何だ?
 ・プレミアム緑茶「綾鷹」に何が起こったのか?
 ・永谷園「生姜部」の狙いは何だ?

※テーマや予告無く変更する場合がございます。
 また、進行上、省略するテーマが発生する場合もありますのでご了承ください。


■開催日程
  2月9日(火) 13:00~17:00

■募集人数
  20名(最低開催人数:8名)

■会場
  千代田区半蔵門(詳細ページ参照)

■参加料金
  モニター特別価格※:12,600円(税込)※テキスト・書籍代含む
  【通常価格       :21,000円(税込)】
  ※モニターとして、参加後に「参加者の声」をお聞かせ下さい

■詳細・申し込み
  詳細情報とお申し込みはこちらから!!
  https://www.insightnow.jp/communities/application/55

では、会場でお待ちしています!
  

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ブランド復活にかける「アサヒ・十六茶」の狙いは?

 茶系飲料の中でも単一の茶葉ではなく、様々な素材から淹れたものは「ブレンド茶カテゴリー」と呼ばれる。その市場を開拓したのは「十六茶」である。Wikipediaによると、1985から年 シャンソン化粧品がティー・バッグタイプの「十六茶」を発売していたものを、93年からアサヒ飲料が発売元となり、缶・ペット容器入り飲料「お茶どうぞ」シリーズのサブブランドとしてとして発売。大ヒットとなり、97年には「十六茶」ブランドとして独立。99年に累計出荷数が1億箱を記録した。(アサヒ飲料ホームページより)
 しかし、栄華は長くは続かなかった。日本コカ・コーラが「爽健美茶」を93年に茶系飲料である「茶流彩彩」のサブブランドとして発売を開始。十六茶の売上げをじわじわと浸食し始める。99年に大ヒットを記録し、茶流彩彩ブランドから独立した。(Wikipediaより)。シェアは完全に逆転し、現在、ブレンド茶カテゴリーの72%を爽健美茶が占めるに至り、一時期はコンビニエンスストアの棚から十六茶は駆逐されていた時期もあった。

 飲料業界第一位の日本コカ・コーラは、紛れもなく業界リーダーだ。爽健美茶のポジションを築いたのはリーダーの戦略の王道、「同質化」である。下位のポジションにある企業のヒット商品の特性に、優れた開発力ですぐに追随。上市後、先行商品の存在をかき消すように、強大な販売力で市場を席巻する。スポーツ飲料カテゴリーにおける、大塚製薬の「ポカリスェット」に同質化戦略をしかけた「アクエリアス」も同社の製品である。
 飲料は広告との相関関係が極めて強いのも特徴だ。リーダー企業は広告投下の資本力がある。また、量だけでなく広告表現も秀逸であった。
 「爽やかに、健やかに、美しく」を意味する商品名を表現する、美しいCMキャラクターを用いたCMを連続投入した。95年の初代キャラクターは「こずえ」というモデル。(意外と知られていないのでサービスのトリビア・オフィシャルページ http://www.incent.jp/idea/model/kozue/index.html & 初代CM http://www.youtube.com/watch?v=50XHQ6wLY2o )以降、96年本上まなみ、97年未希、98年 小雪といずれも透明感のある美しい女性を連続投入して、ブランドイメージを確立に寄与した。

 しかし、カテゴリーシェアを72%も取ってはもはや成長はない。故に、爽健美茶は賭に出た。2009年、初の男性キャラクターとして竹野内豊を起用。男性層への訴求を始めた。さらに、明確な男性向け商品である「爽健美茶・黒冴」をサブブランドとして上市。既顧客である女性層の離反が懸念されるが、それはより女性向けというポジショニングを明確にした「からだ巡茶」ですくい取る戦略だ。

 競合が動いた時にはチャンスであるとアサヒ飲料は判断したのであろう。十六茶の製品リニューアルを決断した。
 しかし、チャレンジャーはリーダーの10倍アタマを使わなくてはならない。同じような「男性向け」などといった、ターゲットセグメントを行わなかったのが特徴である。

 ニュースリリースを見てみよう。 
 http://www.asahiinryo.co.jp/newsrelease/topics/2010/pick_0119-2.html <朝の健康ブレンド茶!!「カフェインゼロ」と「十六素材のミネラル」のおいしさ> <朝ブレンド「アサヒ 十六茶」>
 「カフェインゼロ」という訴求も実は爽健美茶の弱点を突いた差別化ポイントである。爽健美茶にはわずかながら、原材料由来のカフェインが含まれている。リーダーの弱みを突く戦術であるが、大きなポイントはそこではない。

 性別ではなく、「用いられる時間」でセグメントを行い「朝」フォーカスしている。
 <アサヒ飲料の調査によると「朝の健康的な水分補給」ニーズを背景に、お茶飲料の朝(6時~10時)の時間帯に飲まれる機会が他カテゴリーに比べ多いことが分かりました。また、「アサヒ 十六茶」においては、朝の購入比率が競合の茶系飲料に比較して高めという実態があります>とある。見事なチャレンジャーとしての戦略である。
  2月16日の発売日に同時にリニューアルする製品がある。 <特定保健用食品『アサヒ 食事と一緒に十六茶』>である。
 http://www.asahiinryo.co.jp/newsrelease/topics/2010/pick_0119-3.html
 <食事と一緒に飲むことで糖の吸収をおだやかにすることから>という特性を持ち<同時にリニューアルする「アサヒ 十六茶」のパッケージと統一感のあるデザインを採用>したという。

 朝に“朝ブレンド「アサヒ 十六茶」“。食事時、特に昼食に特保の“特定保健用食品『アサヒ 食事と一緒に十六茶』”。「時間軸」に注目したターゲットセグメントの切り取り方が秀逸だ。
 その意志決定は、「昼食以降の、午後をバッサリ切り捨てる」という覚悟を物語っている。
 この意志決定の凄絶さがわかるだろうか。
 自らが切り開いた市場を力で勝るリーダーにもぎ取られた屈辱の日々。耐えること十余年。アサヒは反撃ののろしを上げたのだ。
 「勝てるところを作って戦う」。十六茶の今後からは目が離せない。


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2010.01.25

日清食品・コンビニ棚の大量占拠のその裏側

 1月も残り少なくなった今週、コンビニエンスストアに立ち寄ることがあったらカップ麺のコーナーに注目して欲しい。凄まじい勢いで日清食品の製品が棚を占有していることが分るだろう。同社のカップ麺市場シェアは41%に上る。その数字がどのような意味を持つのかといえば「クープマンの目標値」では、41.7%を超えると2位以下が逆転することはかなり困難な「相対的安定シェア」ということになる。圧倒的なリーダー企業であることは間違いない。しかし、棚の占有率で見れば、恐らく50%を軽く超えているだろう。

White_trio
 その商品群の中でひときわ目を惹くのは、爽やかな白と青のパッケージの「どん兵衛白チャンポン」「焼きそばUFOホワイトカレー」「カップヌードル ホワイトクリームシチュー・ヌードル」の3商品だ。“バンクーバーオリンピック日本代表応援”というPOPが添えられている。冬季オリンピックの“冬”をイメージしたカラーなのだろう。青は食欲増進効果に反するためあまり用いられない色だが、3ブランド共通パッケージで統一した世界観を演出していることによって、抜群な存在感を示している。

 WHITEトリオほど目を惹くわけではないが、しっかりと棚を占有している他の商品もある。「麺職人」「どん兵衛」には“人気商品”、「太麺堂々」には“新商品”というPOPが添えられている。同3商品は日清食品が“全麺革命”と銘打ち、麺のうまみにこだわって製品改良を徹底した商品である。「麺職人」は生麺のような喉ごしを。「どん兵衛」はその喉ごしを麺の太さでさらに実感できるようにした。そして、全麺革命の総仕上げと位置づけられた「太麺堂々」はどん兵衛で完成させた太麺化の技術をさらに中華麺に昇華させた力作である。

 WHITEトリオと全麺革命の特徴は、“ブランド横断”であることだ。日清食品は<1976年のマーケティング部設立と同時に「プロダクトマネージャー制」を導入し、製品ジャンルごとに置かれたプロダクトマネージャーの下で、開発、生産、販売、宣伝までを独立したプロジェクト単位で推進していた。1990年にを「ブランドマネージャー制」に発展させ、製品ジャンルからブランドごとに管理する形態へと切り替えた(同社ホームページより)>
 一般にブランドマネージャー制度においては、ブランドマネージャーは、商品開発から営業まで一つのブランドにかかわるすべての権限を統括する大きな権限が与えられる。その代わり、損益の責任も負うため強力に自ブランドの価値を高めようとする。社内の複数ブランドのマネージャーが競い合うことは全社的にはメリットが大きい。その反面、他ブランドに対して社内競争が激化し営業・製造・広告・R&Dに対し、ブランド間の資源の奪い合いがおきるなどのデメリットが発生することも珍しくない。

 日清食品のブランドマネージャー制度ユニークなところは<2001年には、ブランドマネージャーがブランドを独占できないよう、ブランドを貸し借りできる「ブランドファイトシステム」を導入。厳しい社内競争を課し、これを勝ち抜く強さこそが、社外の競合ブランドとの市場競争にも活きるという考え方(同)>を徹底したという。つまり、社内でロイヤルティーを払えば他ブランドを他のマネージャーが使うことができるのである。
 普通に考えれば、自ブランドを他のマネージャーに使われるということは、自分がそのブランドを生かし切れていないということを意味する。常に新しい価値を生みだそうと必死になるはずだ。通常では自ブランドのことだけを考える「タコツボ化」がおきがちであるが、他ブランドと連携して価値を高めようという意識も生まれるだろう。

 カップ麺市場には年間600種類もの商品が上市されるが、1年後に残っている商品はわずか数%だという。2位以下に逆転されることのない相対的安定シェアを持つ、リーダー企業である日清食品。しかし、その王座に安住することなく、社内では強烈な競い合いと連携を日々繰り返しているのだ。今年は同社創業者の故・安藤百福氏の生誕100周年記念でもある。“次の100年”を目指してさらにアクセルを踏むことだろう。 

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2010.01.21

あま~いけど、実はちょっとほろ苦い「チョコレートスパークリング」の意味

 1月19日の発売のサントリー「チョコレートスパークリング」が話題だ。実は話題に乗っかるのは嫌いじゃないので遅ればせながら書いてみる。
 まずは月並みに試用レポートから始める。封を開け、グラスに注いだ瞬間から強烈なチョコレートの香りが広がるのに驚かされる。飲んでみると甘い味わいと香りで本当にチョコレートを食べている(飲んでいる)ような感覚に陥る。それでいて、成分表記の注意書きを見ると「チョコレートは使用してしておりません」とある。スゲー、サントリー。
 ・・・と、以上、これまた月並みに様々な人がBlogやSNS、Twitterで書いているようにな感想を持った筆者である。

 サントリーの狙いは何か。
 昨年12月22日に発表された、サントリーのニュースリリースを見ると、<バレンタインシーズンにぴったりの、新しい味わいの炭酸飲料です>とある。間違いなく、季節限定商品。
 季節限定の炭酸飲料といえば、サントリーがペプシブランドで年1~2回展開する「変わり種ペプシ」はすっかり市場に定着したといえるだろう。昨年は「和」テイストにこだわって、「しそ」と「あずき」であった。その味には賛否両論(筆者は結構好きだ)あるものの、サントリーの担当者はメディアの取材に対して「(話題づくりのためなので)2本目を買ってもらおうと思ってはいない」と言い切っている。しかし、ペプシブランドを使用するため、米国ペプシコとの調整は繁雑を極め、通常商品以上に時間をかけ、1年以上を要するという。

 話題づくりを手っ取り早くやるには、サントリー独自ブランドで展開することだ。今回の「チョコレートスパークリング」に先行すること約2ヶ月。11月2日にニュースリリースが配信され、24日から期間限定された「ラブモードジンジャー」という商品があった。リリースには<、“クリスマスムードが高まる季節に、恋愛気分を盛り上げる大人の炭酸飲料”をコンセプトに開発した、カロリーゼロのジンジャーエールです>とあった。派手なボトルのパッケージと、ピンク色のジンジャーエールらしからぬ色合いが多少話題になったものの、今回のチョコレートスパークリングほど大きな話題にはならなかった。恐らく、2ヶ月のタイムラグであれば、ほぼ同時に商品開発が行われていたはずなので、今回の成功は「リベンジ」ではなく「一勝一敗」という結果だったのだろう。

 では、両者の成否を分けたものは何だったのか。それは、話題への乗りやすさではないだろうか。
  「チョコレートスパークリング」でのGoogleの検索結果 約 1,710,000 件中。「ブログから、話題を知る、きざしを見つける」というkizasi.jpで1月22日のBlog上の話題は「チョコレートスパークリング」が第2位。(第1位は「オトコノカラダ(嵐・櫻井翔)」)。「ラブモードジンジャー」発売後のGoogleの検索結果は約100,000件kizasi.jpのトップ10ランキングはなかったと記憶している。

 クリスマスは消費の一大イベントであるが、シャンパンなどの「スパークリング飲料」を購入するというイメージに直結するほどの認識は高くないだろう。その点、バレンタインは「チョコレート」という一点に集中する。

 さらに面白い記事を見つけた。
 <バレンタインデーに“告る”のは過去の風潮!?勝率は25.4%>(東京ウォーカー1月19日) http://news.walkerplus.com/2010/0119/27/ 
 記事には<バレンタインデーの日を“意中の人への告白の手段”と考えるのは、すでに過去の風潮であるということが明らかに…。逆の現象として、同性の友だちに贈る“友チョコ”が年々存在感を増しており、バレンタインデーを「イベントとして楽しめる日」と、ライトに考える女性が多くなっていることが浮き彫りとなった>とある。
 要するに、単なる「お祭り」なのである。お祭りに面白い商品があれば、ついつい話題にしてみたくなる。たった147円であれば試しもしたくなるだろう。そんな背景が、話題づくりをしたいサントリーの意図とピッタリマッチしたのだろう。

 消費が低迷し、消費者の財布の紐はいまだ固く引き締められている。飲料の需要も、ミネラルウォーターは水道水の浄水で、茶系飲料は茶葉から淹れるという用いられ方で代替され売上げが落ちている。炭酸飲料カテゴリーは唯一、自分では作ることができないからかろうじて売上げが落ちず、微増を保っている状況だ。炭酸は茶系ほどの常用性はない。「スッキリしたい時」や「ちょっと甘い物が飲みたい時」などのスポット需要がほとんどだ。

 1年前のサントリーの発表では2008年の日本の炭酸飲料市場は2億1800万ケースだと試算されたようだ。季節限定商品や変わり種ペプシがそこに占める割合は極めて小さい。しかし、市場を支えるためには消費者への刺激が欠かせない。
 あま~いチョコレートフレーバーの飲料の影には、そんなメーカーのちょっとほろ苦い思いが詰まっているように感じた。
 

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2010.01.20

バリューって何だ? 生き残れる条件って何なんだ!!

 2010年1月18日日経MJのコラム「底流を読む」は、安売り悪者論は「負け犬の遠吠え」とバッサリで痛快だった。
 ユニクロを例として出しているが、ユニクロの武器は低価格で高品質と指摘している。実際にはそれだけではない。ヒートテックやブラトップをヒットさせた「機能性」も見逃せない。さらにデザイナー、ジル・サンダー氏との契約で「デザイン性」まで追加した。ユニクロ傘下のサブブランドとして展開した「+J」には、季節毎の新商品購入のために発売日にはファンの数百人が行列を作る。
 つまり、低価格戦争時代の生き残り策は、「低価格(だけ)で戦わないこと」なのだ。「ユニクロ=低価格」という図式を思い描く人は多いのだが、その思い込みは、あまりに古くて現状にあたわない。

 「価値」と「価格」が正比例した関係を「バリューライン」という。「価格」は定量的絶対値だ。故に、工夫のしどころは「価値」を何と定義して市場に、顧客に訴えかけるかがキモになる。

 他の例をみてみよう。
 「長崎ちゃんぽん」の「リンガーハット」は昨年、具材の野菜を100%国産化し、さらに増量した。結果として商品価格上昇した。値上げをしたのである。結果は大成功。さっさと外食産業、特に「おひとり様向けカウンター外食」の低価格戦争から離脱している。
 象徴的な商品がある。650円という同社メニューとしては前例がない高価格の「野菜たっぷりちゃんぽん」だ。450グラムという圧倒的に「たっぷり」な野菜の量で顧客の支持を獲得し、今では2割の客が注文するという。
 さらに、二の矢も用意している。麺の小麦粉も国産化し「食の安心」を磐石にする。驚くべきことに、同時に麺の増量も無料化するという。
 ちゃんぽんのサイドメニューであるライスとそのバリエーションと完全にカニバるため、その注文は激減するだろう。ライスを犠牲にしても、「割安感」を創出し、新規顧客のさらなる呼び込み、既存顧客の定着化が欠かせないとの判断に違いない。つまりは「選択と集中」である。

 血で血を洗う激戦が繰り広げられ、まさに「レッドオーシャン」の牛丼業界を見てみよう。
 関東地区だけに展開する「神戸らんぷ亭」。明らかに「フォロアー」のポジションである。だとすれば、消耗戦に参戦することは規模に劣り調達力が弱いため、圧倒的な不利が否めない。しかし、参戦しなければ顧客流出は止められない。同社は最低価格戦争に生き残りをかけて参戦した。大手と同じ最低レベルの「牛丼1杯280円」である。
 そんな同社の生き残り一手は、「常識にとらわれない味」だった。
 塩だれで味付けしたという「塩牛丼」。牛丼業界では従来も様々な味の工夫を各社がしてきたが、それは「あくまで、醤油ベースのタレの上でのトッピングのバリエーションに過ぎない」と神戸らんぷ亭は言い切る。従来商品は最低価格で提供し、注目を集める新商品はしっかり値下げ前の水準である380円を稼ぐ。客数と客単価のバランスを図る「マージンミックス戦略」である。

 低価格戦争の外食産業において、リンガーハットも神戸らんぷ亭も「弱者」である。その分、生き残りには強者の何倍も知恵を使っているのだ。一方は「低価格戦争」からさっさと一線を画した。もう一方は、参戦の構えを見せて存在感を示しつつも、独自の差別化メニューを用意し顧客吸引を図っているのである。

 「遠吠え」はいつでもできる。それより先に、少しでも知恵を使うべきなのだ。
 マジックワードを提示しよう。「バリューフォーマネー」。いかに価格に見合った、もしくは、価格以上の「価値」を顧客に提供できるかが勝負なのだ。
 現代(Modern)マーケティングの大家フィリップ・コトラーは「マーケティングとは“価値の交換活動”である」と定義した。その「価値」という要素が、いかに顧客のニーズに適合しているかの勝負になってきているのだ。そこには難しいマーケティング理論も、コトラー流を離れた「ポストモダン」も必要ない。今一度、「顧客ニーズ」を深掘りして、それを実現することが大切なのである。


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2010.01.19

この島で起きていること

※この原稿は、株式会社デルフィスの社内報『買う気研究所レポート vol.4』に寄稿したものを転載しています。

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「この島で起きていること」


金森マーケティング事務所  金森 努

■意外と快適・昔の携帯電話

 携帯電話が壊れた。修理するにもとりあえず手元に無いと困るので、5年ほど前に使っていた端末にフォーマカードを差替えてみた。驚くほど快適に使えた。液晶は小さいが、小さい画面に合せて設計されているため掌に収まるコンパクトサイズだ。カメラの画素数は低く、顔認識どころか手ぶれ防止機能も付いていないが、その分シャッターの反応がいい。搭載ソフトが少なく機能が少ないためか、フリーズすることもない。ひと言でいえば、「小さくてサクサク動く可愛いヤツ」という感じだ。
 20世紀のモダニズム建築を代表するドイツ の建築家、ミース・ファン・デル・ローエ(Mies van der Rohe、1886~1969)は古典的な建築様式を脱し、鉄・コンクリート・ガラスを用いた新しく合理的な様式を広めた。21世紀の今日でもミースの建築物からは無駄を削ぎ落とした美しさが伝わってくる。そして、その設計思想は、「Less is more(より少ないことは、より豊かなこと)」という言葉に顕われている。
 携帯電話はもっと「Less is more」でよいのではないだろうか。そんなことを考え始めた。

■なぜに、ケータイは機能てんこ盛りになったのか?

 昨今の携帯電話を眺めてみる。きれいに写真が撮れるケータイ、音楽が聞けるケータイ、ワンセグが見られるケータイ、電子ブックが読めるケータイ、ハイビジョン撮影ができるケータイ、楽器になるケータイ・・・携帯電話は機能てんこ盛りである。
 なぜそんなことが起きるのか。メーカーの開発者は「ユーザーのニーズに応え続けた結果です」というだろう。だとすれば、それは生物学でいう「平行進化」か「収斂進化」という現象が家電業界で起きていることになる。「平行進化」とは、生物の進化の過程で異なった種が似通った方向に進化する現象である。その結果、異なる種が系統に関わらず身体的特徴が似通った姿になる場合もある。それが「収斂進化」である。土中で生活する「モグラ」と昆虫の「ケラ」の前足は機能も形状も極めて似ているのが顕著な例として挙げられる。
 平行進化や収斂進化をするが如く、消費者ニーズの変化や競合環境に適応するため、家電と携帯電話の機能が収斂してきたとも考えられる。

■本当に高機能は求められているのか?

 本当にそんな高機能だったり多機能だったりする携帯電話が求められているのだろうか。
 インターネット調査の株式会社アイシェアが2008年8月27日~29日に実施した「多機能携帯とシンプル携帯に関する意識調査」※1。20歳代から40歳代の男女801人を対象に「多機能携帯とシンプル携帯、どちらに注目しているか」と質問したところ、「シンプル携帯」と答えた人が全体の4割を占めた。「シンプルがいという回答は40歳代のサンプルに偏っていないか」と思うかもしれない。確かに年齢が上がるほど支持層は高まるが、20歳代=38.6%、30歳代=40.1%、40歳代=44.8%と、20歳代でも約4割の支持が集まっている。調査は2008年7月のiPhone3G日本発売の後に行われている。発売日にソフトバンクモバイルの店頭に多くの行列ができた様子がメディアで繰り返し報じられたが、そうでない人も多数いたのである。
 携帯電話といえば、かつてはモデルチェンジが頻繁になされ、その度に機能は高度化し、多くのユーザーがそれを熱狂的に追いかけた。筆者もその一人だった。調査では「最低限の機能があればいい」「多機能携帯は機能が複雑でわからない」という回答も多い。ユーザーの「ケータイ疲れ」が見てとれる。筆者も現在は同じ気持ちである。

■au(KDDI)の「シンプル携帯」の実験

 「シンプル携帯」が求められるのは「ケータイ疲れ」のせいだけではない。上記の調査において、シンプル携帯を選択した回答者に限定して「なぜシンプル携帯を選択しましたか?」と質問したところ、「(多機能携帯は)使わない機能があり、無い分割安だから」とする回答が56.7%を占めた。
 多機能化は端末価格に顕著に跳ね返る。かつては販売店がキャリアの販売奨励金を使って端末価格を割り引いたり、キャリアも端末価格を安くして通信費で利益を回収するモデルをとっていた。2007年秋の販売方式の変更によって、端末価格は初期一括払いなら5万円を軽く超えるようになった。そんな中で、シンプル携帯の価格は魅力的だ。
 機能てんこ盛りの雄ともいうべきau(KDDI)は、別ブランドとして立ち上げた「iida」ブランドで、「手に馴染むデザイン」「メールの使いやすさ」といった基本機能に徹した「misora」という端末2万円前半の価格で投入した。※2 「iida」はデザインを切り口にしつつ、様々な特徴を持たせた端末を投入する実験的ブランドであるが、「misora」はシンプル携帯に対する消費者の反応を見るための試みであったと解釈できる。販売結果は公表されていないが、「価格の割にはとてもいい」とする意見がネット上では散見される。

■シンプル&低価格を求める潮流

 不景気を背景に、「機能はいらない、低価格で買いたい」とする消費者のニーズは確実に一つの潮流となっている。
 ECサイト最大手の楽天が11月26日に「楽天市場2009年ヒット商品番付」を発表した※3。同サイトのヒット商品ジャンルを独自の切り口で集計した番付であるが、前頭三枚目に「家電の二極化/高価・安価」がある。楽天は「価格破壊による安価化と消費者のこだわりによる高価格化の2極化が著しかった」と分析している。安価については「メーカーの宣伝費や卸問屋の中間マージンを徹底的に削減したサードパーティモデルが堅調に推移」とし、高価は「高額ヘッドホンのヒット等、商品機能と消費者ニーズがマッチすると高価格でも売れるということが示された」という。この経済情勢では二極化のうち安価の
方により拍車がかかるのではないだろうか。

■洗濯機の消費者調査から

 安価に対するニーズは、白物家電でより顕著な傾向にあるように思われる。前出の株式会社アイシェアが2009年11月2日~6日に行った洗濯機に関する調査の報告を発表した※4。調査結果中の「新製品の価格に対する評価」は「とても高い(39.1%)」「少し高い(45.2%)」で、合計84.3%もの人が「高い」と回答したという。
 携帯電話同様、洗濯機も機能の高度化が進んでいる。回転式・ドラム式・乾燥機能付とタイプによって価格も様々であるが、7万、8万、10万円越えから20万円近いものまでと、機能に比例して総じて高価化しているのが現実だ。
  携帯電話は「ガラパゴス」といわれるが如く、日本市場での海外勢のシェアはまだまだ低い。しかし、ガラパゴスの外側を見れば、白物家電は既に日本のお家芸ではなくなっている。冷蔵庫と洗濯機の世界シェア№1は、中国のハイアール・グループが握っている。ハイアールの洗濯機はソフマップなどの店頭で2万円を切るものから3万円程度で販売されている。価格を武器に日本の家電市場においては安価な外国勢がぐっと存在感を増しているのである。

■「バリューライン」で考える

 「バリューライン」という考え方がある。横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取る。すると、「安くてそれなりの価値のもの(エコノミー)」「そこそこの価格で、ほぼ妥当な価値のもの(中価値)」「高くて価値の高いもの(プレミアム)」という比例した関係が出来上がる。これがバリューラインだ。競合に勝つことと、消費者に受け入れられるためにはバリューラインを超え、「価格以上の価値」を提供することが必要だ。例えば「低価格なのに中間価格と同等の価値=グッドバリュー」「低価格なのに高価格のものと同等の価値=スーパーバリュー」という存在である。
 携帯電話の「iida misora」の「徹底した引き算」で基本機能に絞り込み、さらに基本の使い勝手と質感を高めるという実験は、「グッドバリュー」「スーパーバリュー」へのチャレンジである。
 洗濯機はどうだ。前出の調査では、「洗濯機使用者の7割が何らかの不満を抱えている」との結果も発表している。そして、その不満点は「運転音がうるさい(37.2%)」「洗濯時間が長い(27.3%)」「水の使用量が多い(21.5%)」「洗濯物が絡まる(20.3%)」と意外にも基本的な部分での不満足が多い。価格.comなどで、海外製洗濯機の評価を見ると、「騒音が大きい」というような意見が散見される。「徹底した引き算」で機能を絞って、基本機能の性能を向上させるような「カイゼン」は日本メーカーの得意技ではなかったか。巻き返さなくていいのか。

■バリューラインを超えろ!

 快進撃を続けるファーストリテイリングの柳井会長兼社長は「世の中には(価格が)”高くて良い服と、安くて悪い服しかない”という常識を打ち破り、安くて良い服を作ろうと思った」。とその原点を語っている※5。
 バブル崩壊によって衣料品市場は30%以上市場縮小している環境下で、ユニクロは大胆な「引き算」による「エコノミー戦略」で低価格を実現し、品質を徹底的に高めることで、「グッドバリュー戦略」に転換し、機能性を付加し、さらにファッション性を高めるという価値向上で現在は「スーパーバリュー」のポジションを獲得している。
 国内アパレル市場で「一人勝ち」といわれるファーストリテイリングはバリューラインを大きく飛び越え、ガラパゴスの日本市場も飛び越えて世界展開を加速した。
 今年は「種の起源」を著わしたダーウィンの生誕150周年にあたり、ちょっとしたブームだ。過去の生物の歴史を見てもむやみに肥大化・大型化した生物が生き残った例はない。そして、環境に適応するための変化ができなかった種も途絶える必定である。自分たちは生き残れる商品を作っているのか、今一度考えてみるべきかもしれない。


※1:http://release.center.jp/2008/09/2502.html
※2:現在は在庫分で販売終了予定
※3:http://ranking.rakuten.co.jp/yearly/banduke/
※4:http://release.center.jp/2009/11/2401.html
※5:日経フォーラム世界経営者会議・日経新聞09年11月25日朝刊 

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2010.01.18

会社を潰すのは「現場」だ ~会社は急には変われない~

 2010年1月18日、日経新聞5面「核心」で日本航空の法的整理に至る問題点が指摘されている。少し長くなるが、記事の冒頭を引用する。
 <各航空会社との競争が激化するなか、経営者の怠慢もあって業務改革が遅れた。中年社員や退職者は既得権益に固執。また、公的な融資に安易に依存してきた。官僚も政治家も、地方空港を乱造して、そこへの運行を日航に半ば強制した。要するれば、世界大競争という現実を前に、過去の成功体験にとらわれ、予防的に手を打つのが遅れた。>
 記事のタイトルは『日航は「あすの日本」か』であり、「危機見えても手を打てず」とサブタイトルにある日航の状況そのものが、現在の日本を象徴しているという論である。
 記事の最後も印象的だ。ケネディ米元大統領の墓前の碑文からはじまる。<「国に何をしてもらうかではなく、国のために何をできるかを問え」。つい最近までの日航のように改革を嫌い、国を頼み、借金頼みを続ける現代日本人にとって耳が痛い話である。>とある。

 長引く不景気で多くの企業が苦境に立たされている。その中でも、回復の見込みが立たない企業ほど、リーマンショックで景気が冷え込んだ結果、顧客離れが起きたとか。確かに株価時価総額の下落幅を見てもその劇的変化は間違いない。しかし、例えば日本市場は人口動態から見れば、市場縮小が確実なのはわかりきっていたことだ。経済危機と相まって、市場縮小のインパクトの大きさが昨今取りざたされているが、経済危機がなくても「危機はとっくに起こっていた」のである。非連続的に見える変化も必然が隠れている。変化を見ていない。見たくなかっただけ。

 では、見ていなかったのは誰か。
 「会社は毎日つぶれている」という本がある。6,000億円の巨額赤字を抱え、日商岩井とニチメンが経営統合した双日を再建した初代社長の西村 英俊氏の著書である。「会社を潰すのは不況ではない、社長だ」と本にはキャッチコピーがついている。会社は平時でもつぶれる要素は内外に散在している。危機が発生してから対処するのではなく、日々つぶれる要素を発見して排除し続けることがトップの役目であると説いている。トップが「見ていない」「見たくない」では、一発でアウトだ。

 確かにトップの役割は重い。だが、トップの英断によって変れる企業は一握り。だとすると、そうでない企業は「緩やかな死」、もしくは「突然死」を待っているしかないのか。

 本当は、現場の方が危機を察知しやすいはずだ。
 当Blogでもオススメ書籍としている「カモメになったペンギン」。ハーバード・ビジネススクールの組織行動論担当教授ジョン・コッターが「企業変革の8ステップ」を分りやすく絵本にしたものだ。ある日、好奇心旺盛な若いペンギン、「フレッド」が地球温暖化の影響によって自分たちの住むコロニーがある氷山が崩壊の危機にあることを発見した。ペンギンの世界は一人の指導者とそれをサポートする十数羽のメンバーによる会議体で運営されている。フレッドは行動力のあるボードメンバーの一人である女性リーダー「アリス」に相談する。紆余曲折あるが、優秀な指導者「ルイス」によって、コロニーの移住計画を立案・実施するチームが結成される。
 いわゆる組織変革とリーダーシップがテーマであるが、優秀なトップ一人がいるだけではダメだということがポイントの一つである。そして何より、危機を発見し、指導者会議に熱心に伝えたのは一般ペンギンなのだ。つまり、「現場」だ。現場が「見ていない」「見たくない」であったら、ペンギンのコロニーは大惨事と化したはずなのだ。

 では、現場は何をするべきなのか。手書きカードを配るJALの社員の心情はわかるものの、今さらそれは間に合わない。もっと前に、危機意識を働かして、何か動き出せることもあったのではないかと。現場がアンテナを張り、危機があればそれに対応する動きをいち早く行える組織が生き残れる組織なのではないか。

 日航には株式会社ジャルエクスプレス(JEX)という子会社がある。Wikipediaにも記述されているように、同社は客室乗務員をスカイキャストと呼んでいる。<通常の業務に加え、他社は外部委託する機内清掃などをスカイキャストやJEX社員が行う事によって、費用削減と時間短縮をし、多頻度運航を行うものである>とある。08年10月の朝日新聞にもその様子が紹介され、「客室乗務員から社長までが 機内掃除に加わるといった独自のコスト削減策で、原油高の中でも好調を保つ」との記事になっていた。今回の日航の法的整理で同社がどうなるか心配だが、小さな子会社は方向転換もしやすく、危機意識が高く、動きがよかったのは間違いない。そして、それは「現場発」の動きだったのだ。

 「会社は急には変れない」。特に大きな企業ほど慣性の法則に従って、停止や方向転換が難しい。そして、組織は上に行けば行くほど、「本当の危機感」が持てなくなる。
 ジョン・コッターは「危機感と本当の危機感は違う」と指摘する。「本当の危機」をリアルに思い描けるか。「このままだと、本当に死んでしまう」というレベルのリアリティーだ。ある朝、新聞を見ると自分の会社の倒産記事を見る。自分がハローワークに並ぶ姿を想像する。そんな危機感だ。
 
 「会社を潰すのは不況ではない、社長だ」。確かにそれは間違いないだろう。しかし、日々目の前の危機を「見ていない」「見たくない」として、「明日が今日の続き」だと思ってたら、「現場も間違いなく、会社を潰す」。
 ケネディは「国に何をしてもらうかではなく、国のために何をできるかを問え」と言った。では現場として「会社に何をしてもらうかではなく、会社のために何をできるかを問え」と考えよう。それは、「会社のため」ではなく「自分のため」である。自分としての「本当の危機」が現実とならないために。

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2010.01.14

「マーケティング観察眼」のススメ

 セオドア・レビット教授の説く「マーケティング近視眼(Marketing Myopia )」ではない。「観察眼」。マーケティングセンスを高めるために必要なことは何かと聞かれれば、その一つは間違いなく「観察力を高めること」だといえる。さらに、観察したものを自分なりに「解釈する」。そんな練習のオススメだ。

 まずは「ネタ探し」だ。常に「アンテナ」を立ててそこに何かが引っかかる状態にしておく。そして街を歩いてみるのもいい。もしくは店舗内を観察するのもいいだろう。

 コンビニエンスストアに注目してみよう。ヒットを狙う商品がしのぎを削る店内はネタの宝庫だ。また、コンビニ自体も過当競争が進み、店舗の統廃合やリニューアルが進んで新しい動きが活発だ。新しいタイプの店舗では、店内で商品を飲食できるイートインコーナーを併設した店舗の増加に気がつかないだろうか。1980年設立当初よりイートインメニューを売り物としているミニストップだけでなく、ファミリーマートやナチュラルローソンなど、他チェーンでも展開が目につく。
 イートインコーナーで飲食をしている消費者の姿に注目しよう。ランチタイムなどが賑わっている。そこで、どんなものを食べている人が多いだろうか。オフィス街のコンビニで筆者が気になったのは、カップスープとおにぎり、総菜、サラダなどを組み合わせて食べている来店客の姿だ。若年層、中年、男女問わず幅広い客層がそんなメニューをランチにしている姿が見受けられた。商品の棚を見ると、総菜のラインナップ充実はコンビニ業界のしばらく前からのトレンドだが、カップスープの棚に新商品が随分増えていることがわかる。特に、ただスープではなく、パスタや穀類、春雨などの炭水化物が一緒に入った低カロリータイプのものが充実している。

 さて、そんなコンビニ・イートインコーナーの昼下がりの風景を観察したら、少し情報を補完してから「解釈」をしてみよう。
 カップスープの棚の新商品は、果たして本当に増えているのだろうか。今後も増えるのだろうか。ちょっと、「Google先生」の力を借りよう。「2010 カップスープ 新製品」というクエリで検索をしてみる。 約 50,300 件がヒット。検索上位には、アサヒフードアンドヘルスケア、クノール、日清食品、永谷園など各社の発売予定の新商品がズラリと並ぶ。今後の競争激化が予想されるホットな市場であるのは間違いなさそうだ。

 では、なぜ、炭水化物入りカップスープは売れるのか。ここから先は「解釈」もしくは「論理的妄想」の世界を展開しよう。
 まずは商品価格に注目だ。「カップスープとおにぎり、総菜、サラダなどの組み合わせ」は、価格的にはほぼ確実に500円、ワンコインを下回る。カップスープ約150円、おにぎり約120円、サラダ約150円。計420円也。昼食予算の削減を図る傾向が強い消費者にとっては頼もしい存在だ。昨今の経済環境を考えれば合理的な選択であるといえる。
 他に理由は考えられないだろうか。「価格」以外に明確な要素。例えば、同じ数値的なものを考えるなら、各商品の「カロリー数」。「ダイエットのために低カロリーな“そば”にしようと思ったけど、つい、“天ぷらそば”を食べちゃった!」なんて経験、ないだろうか?で、それは何キロカロリーあるかご存じだろうか?意外とわからないだろう。実は約480kcalである。コンビニ棚の商品には、ほぼ間違いなくカロリー数表示がされている。カップスープ約100kcal、おにぎり約90kcal、サラダ約90kcal。計280kcal。ちょっと低カロリーすぎる気もするが、わかりやすいカロリー数でダイエットに最適だ。
 イートインコーナーの人々を見ると、昨今、ガッツリ系のメガ盛り弁当や、大盛りカップ麺を食べている人より、ダイエットメニューの人がよく見受けられる。そして、筆者のご同輩である中年男性諸氏もエースコックの「はるさめヌードル」などを食している。
 「モノゴトは、大きく一方に振れると、その反動でさらに反対に振れる」。これは、筆者の持論である。大食いブームやメガメニューが人気を博したのは、時を同じくした健康ブームや、その後のメタボ検診導入の反動ではないか。では、それが沈静化した今日、また、反対に振れて健康・ダイエット志向が高まるのも不思議ではない。

 いかがだろうか。街歩きで見かけたコンビニの変化。そしてそこで昼食を摂る人々とそのメニュー、商品。その「観察」から「解釈」をしてみた一例だ。「こじつけ」「屁理屈」と思われるかもしれない。しかし、これは「練習」なのだ。
 とにかく「マーケティング観察眼」を働かせて、「屁理屈でもいいから理屈をこねてみる」。そんな練習を繰り返すと、いつか、いつもと違った景色が見えてくるはずだ。それが、筆者からのオススメである。
 

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2010.01.12

赤い海を行く花王の「徹底力」

 競争のない市場を切り開く「ブルーオーシャン」。しかし、成熟市場において実現は難しい。好むと好まざるに関わらず、戦いは血で血を洗う競争の「レッドオーシャン」となるのが現実だ。如何ともしがたい現実の前では、「徹底した戦い方」ができるか否かで生き残りが決まるのである。

 ブルーオーシャンのキモの一つは、「バリューイノベーション」といわれる考え方である。付加価値を生み出しつつ、顧客にとって重要度の低い価値を除去したり減らしたりする「引き算」して価値向上とコストダウンを両立させるのである。
 現実には成熟市場ほど消費者の欲求は高まり、削ぎ落とせる要素を見いだすことは難しい。故に、要素を次々に「足し算」の競い合いになる。そして赤い海で勝ち残るためには、競争相手が行った「足し算」を上回る、さらなる「足し算」をいかにに迅速に行って相手の動きを無力化するかである。

 成熟市場の典型の一つに食器用洗剤がある。食器洗剤の三大メーカーは、花王、P&G、ライオンだ。1995年まで花王、ライオンで市場の8割のシェアを占めていたところに、P&Gは「ジョイ」で参入。2008年のシェアは花王 34.9%・P&G 31.7%・ライオン 20.5%(日本経済新聞社)である。
 現在のシェアの劣勢を挽回しようと、ライオンが満を持して「チャーミーマイルド」を改良発売したのが昨年12月のこと。元々は「手にやさしい」を売り物に、「チャーミーシリーズ」に「マイルド」の名を付け2000年に製品改良された商品だ。ライオンは独自の調査で<主婦の55%が手あれを感じており><台所用洗剤を購入する際に重視する項目は、「洗浄力」に次いで「手にやさしい」こと>を明らかにしたという。(マイライフ手帳

 現在のトップシェア商品は花王の「キュキュット」。2004年春、それまでのトップ商品、P&Gの「ジョイ」対抗のキラー商品とすべく、主力の「ファミリー」の派生商品として上市された。P&Gの「ジョイ」の基本的アプローチは、「強い洗浄力によって短時間で洗い物が済むため、手肌に悪い影響がない」というもの。それに対して、キュキュットは素早く確実な汚れ落ちを、「すすいだ瞬間、指先でキュッと汚れ落ちを実感できる」という、「情緒的価値」を加えて大成功した商品だ。
 花王がキュキュットの新製品を上市する。ニュースリリース:<1月16日、“楽しい食器洗い”を応援する「キュキュット」シリーズから、確かな洗浄力で手にやさしい『キュキュット ハンドビューティ』を新発売><食器用洗剤に「手へのやさしさ」を求める人は3割以上と、「汚れ落ちのよさ」「すすぎの早さ」に続いて3番目に高いニーズ>だという。

 基本的な論理構成はライオンと同様だが、花王の製品特性の付加の仕方が絶妙だ。ライオンの場合、チャーミーシリーズでは、「チャーミーマイルド」と<“落とす・すすぐ・乾く”が手早くできる『チャーミーVクイック』>とは棲み分けがなされている (08年5月のニュースリリース)。P&Gの「ジョイ」が「すばやい汚れ落とし」に特化しているように、「汚れ落ちの良さ」と「手へのやさしさ」は本来同居しにくい。技術的な問題ではなく、消費者が感覚的に対極に認識してしまいがちだからだ。しかし、『キュキュット ハンドビューティ』はどうだろうか。「汚れ落ちのよさ」「すすぎの早さ」「手へのやさしさ」と三段積みである。前出の花王のニュースリリースでは、<長年のスキンケア研究で培ってきた知見と技術を活かし、“優れた洗浄力”と“手へのやさしさ”を両立する食器用洗剤を実現>とある。スキンケア製品も展開している花王ならではのエンドースメント(裏付け)もなされており、消費者の認識における不整合も防いでいる。

 もしかすると、この「三段積み」は、技術的には最初から実現できたことなのかもしれないとも思う。しかし、それでは「キュキュット」のUSP(Unique Selling Proposition=その製品ならではの独自の提供価値)がな何なのかぼやけてしまう。「汚れ落ちのよさ」に加えて、「すすぎの早さ」が体感できるというUSPが十分浸透する。そして、市場の「手へのやさしさ」への関心の高まりと、競合の動きを察知して、後からその属性を付加したのではないだろうか。
 リーダーの戦略は「同質化」である。その戦略の基本を確実に、かつ徹底して行うところが、「赤い海の覇者」、花王の底力だといえるだろう。
 

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2010.01.07

コンセプトが「伝わる」ってこういうこと!

 製品コンセプトが「伝わる」、「伝わらない」で見え方が全く異なってしまうという一つの例。
 発売は昨年11月なので少し前になるが、アサヒフードアンドヘルスケアの「スープカフェ」というカップスープ商品がある。ラインナップはコーンポタージュ、ホットショコラ、 クラムチャウダーの3種。商品の特徴は「フタが付いていること」。そう、スタバやタリーズ、その他カフェのテイクアウトでおなじみの、フタの一部が開いてそこから飲むというスタイルだ。

 筆者だけなのかもしれないが、この商品をコンビニの店頭などで見ても、全く響かなかった。「フタ付きだと何がうれしいの?”カフェ”ってオシャレッぽいってこと?」。さらに、「スープなのにココアがラインナップされているってどういうこと?」と理解不能。以来、店頭で見かけても手に取ることなく、ほとんど気にもとめない存在になっていた。

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 ところが、店頭にPOPが導入された瞬間に、この商品のコンセプトが一発で伝わった。「フタ付きだから、片手で飲める」。まだ伝わらない。しかし、POPの側面に「デスクで便利、片手で飲める!」と書いてある。さらにPOP上部に書いてあるコピーも重要だ。「フタ付きだから、冷めにくく、においが広がらない。」
 この商品はオフィスのデスクで、昼食時以外の小腹が空いた時、「コーヒーの代替」として、仕事の片手間に飲むスープなのだ。コーヒーを飲みすぎておなかがじゃぶじゃぶにならないし、カフェインで空きっ腹の胃が痛む事もない。また、人から見られても、いかにも「なにか食べてます!」という風情ではなく飲みものを飲んでいるだけのような様子で食べられる。
 小腹を満たす需要なら、ココアのラインナップも納得がいく。コーヒーはおなかはふくれないけど、ココアはおなかがふくれる。「おなかすいたけど、塩味じゃないんだな~」という時に、ココアはミルクも入ってて、チョコも入ってて、小腹が満たされる。
 フタの重要性は、さらに用いられるタイミングが問題だ。昼食時なら昨今デスクで弁当を広げる人も多いため、においを気にする必要はない。しかし、他の人が仕事をしている時に食事っぽいニオイがしてきたらたまらない。それが防げるのだ。

 今のタイミングでPOPを投入し、商品コンセプトの浸透を図ったのは、季節的な要因もあるのだろう。厳冬の朝、ぬくぬく毛布の誘惑に負けて寝坊した始業時間、おかずの匂いをさせずに暖かくおなかを満たす事ができたなら、とても幸せだ。そんな利用シーンを想像させる。

 コンセプトを整理するためには、5W1H的な考え方が意外とわかりやすい。スープカフェの場合は以下のような感じになるだろう。
・Who?(誰が)=オフィスワーカーが
・When?(いつ)=ランチ以外の小腹が空いた時に
・where?(どこで)=自分の席で
・How?(どのように用いる)=仕事の片手間に、片手で持ってすする
・Benefit(すると、どんないいことがあるのか)=人目やニオイの拡散を気にすることなく小腹が満たせる
・Why?(なぜ、その便益が享受できるのか)=フタ付きの片手で持てるカップサイズのスープだから

 以上がPOPを見て解釈できた、「スープカフェ」のコンセプトだ。
 さらにヒットを狙うのであれば、「どんな時に、どんなふうに食べるといいよ!」と明示できれば良いのではないかと思う。もしかすると、「スープカフェ」というネーミングも利用シーンを想起させるものに変更した方が良いかもしれない。

 コンセプトが伝わるか否かは売れ行きを確実に左右する。この商品に今後注目してみたい。

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2010.01.06

転 ~ 2010年「この1字」より

当Blog記事を転載していただいている,GLOBIS.JP( http://www.globis.jp/ )の新春企画。
金森の執筆部分のみ、転載します。

-----------<以下転載>------------

米国の金融バブルとその崩壊、中国など新興国の目覚ましい台頭。世界を巡る情勢が激動した2000年代が終わり、2010年代へと入った。あらゆる自明性が失われ、混沌の中にたたずむ私たちは、その第1歩をどのように歩めばいいのか。GLOBIS.JP執筆陣が漢字一字でその方向性を示す。(このシリーズは3回連載です。書:編集部・藤井亜希子)


金森努(グロービス経営大学院准教授 連載「それゆけ!カナモリさん」著者)

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辞書をひもとけば、「転」には実に興味深い意味がいくつもあることがわかる。一つ目の意味は「方向をかえること。うつること」。景気の低迷が長引いている。もっと景気のよい方向に変えて、次のステージに移ってもらいたいと願う。次の意味は「めぐること。まわること。ころがること」。デフレスパイラルなどといわれるイヤな回転を抜け出して、良い方向に転がり始めるようにと祈りたい。三つめの意味は「変化すること」。世の中が良くなれ良くなれと願い、祈るだけでは何も変わらない。そのためには我々自身が変わらねばならないのだ。世の中は「ハーフエコノミー」が当り前な「ニューノーマル」に変化してしまったのだから。誰もが、あらゆる企業が一から出直しである。もし変われなければ、四つめの意味が該当する。「ひっくりかえること。ころぶこと」。心機一転、反転攻勢をかける年にしたい。旧来の常識や慣習に縛られて転ばないように。


その他の著者の文字はこちら。

2010年「この1字」(その1) http://www.globis.jp/1161
2010年「この1字」(その2) http://www.globis.jp/1162
2010年「この1字」(その3) http://www.globis.jp/1163 (1月7日公開)

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2010.01.05

「これって、○○と似てない?」と思ったら・・・

 「同質化」という戦略がある。他社が開発した商品とそっくりな特性を持った商品を後から開発し、上市する戦略だ。既にヒットしている商品であれば、ハズレ商品を開発してしまうリスクがたいため、かなりオイシイ手段である。
 しかし、誰もができることではない。先行商品とそっくりなものを、すぐさま作り上げる開発力と、その商品を流通チャネルにねじ込んで先行商品を追い落とすぐらいの営業力が必須なのだ。企業体力あっての戦略であるため、基本的にはリーダー企業の戦略である。
 例えば、「スポーツ飲料」というカテゴリーを大塚製薬が初めて「ポカリスェット」で開拓したあと、飲料業界第1位の日本コカ・コーラは「アクエリアス」を開発。100万台近くに上る自社自動販売機を販売の主軸に、両製品は互角な売上げになるまでにあっという間に育てたのだ。

 以上のように、「同質化戦略」は、誰もができるものではない。故に、「あれ?この商品は○○と似てる」と思っても、微妙に差別化して、新たなターゲットを狙っていたり、先行商品から少しずつパイを削り取る戦略だったりすることが多い。
 そんな観点で見ると面白い商品がある。

 エースコックのニュースリリース
 <世間で話題の“生姜”をテーマに、寒い季節にぴったりのホットな商品「あつあつさん」シリーズを開発しました>とある。商品は「生姜あんかけ風うどん」と「生姜とろみ醤油ラーメン」。
 「世間で話題の生姜」というが、ここ数年間をかけて、「生姜ブーム」を巻き起こした仕掛け人といえば、本家は永谷園だ。生姜のこだわり商品を生み出すために「生姜部」という専門部隊まで設立している力の入れようである。
 その成果が「生姜の知恵シリーズ」。シリーズ名より「『冷え知らず』さんの・・・」という商品名の方が圧倒的に認知度が高い。展開商品はカップスープを主軸に、即席スープ、ボトル缶飲料、グミ・飴・キャラメルといった菓子にまで展開している。しかし、その中の「ぞうすい」や「はるさめスープ」などは、モロにエースコックの新商品とかぶりそうだ。エースコックのほうがコンビニやスーパーの棚確保の力が勝っているため、「同質化」を仕掛けたように見える。さらに、「あつあつさん」とは明らかに「冷え知らずさん」を意識しているようにも感じられる。
 危うし、「冷え知らずさん、逃げて~」・・・。と考えるのは早計。上記ニュースリリースを見ると、いかにもエースコックらしいガッツリ系の商品パッケージが確認できる。あんかけ、とろみという商品名がストレートにわかるシズル感のある写真だ。カロリー数が書いていないが両商品とも300Kcal前後であるらしい。つまり、ターゲットが明らかに違うのだ。「冷え知らずさん」はスープをおにぎりなど一緒に食べたい人、主に女性狙い。「あつあつさん」はあくまでこのカップ麺をメインに食べる人向けだ。実は冷え性の男性も少なからず市場には存在しているが、「冷え知らずさん」はいかにも女性向けなので手が出しにくいという意見もある。そのニーズギャップを巧みにとらえたのがエースコックの「あつあつさん」だといえるだろう。

 これは明らかに「同質化」だろうという商品は、アサヒ飲料の「食事の脂にこの1本」だ。ニュースリリースには、<脂っこい食事にぴったりの中国茶>とある。これは、どっからどー見ても、サントリーの「黒烏龍茶」対抗だ。
 しかし、サントリーとアサヒ飲料では飲料メーカーとしては明らかにサントリーが上位企業だ。下位企業が上位に同質化を仕掛けるのは定石ではない。

 実は、「食事の脂にこの1本」も非常に巧妙な差別化がなされているのだ。価格は140円(税別)で、容量は490ml。黒烏龍茶は160円で350ml。一般に「特保」の指定を受けている商品はそのプレミアム分、価格が高い。アサヒ飲料はあえて、特保を取らずに通常の飲料の価格・容量で勝負しているのだ。もちろん、特保がない分、効能は担保されていない。しかし、昨今のデフレの世の中で、「安くていっぱい飲めるし、”食事の脂に”と言っているなら間違いないだろう」と選択する消費者も多いのではないかと踏んだのだろう。この例は、あえてスペックを一段落としてリーダー企業が作った市場のおこぼれをかすめ取る、フォロアーによる「模倣戦略」であるとも解釈できる。

 アサヒ飲料の狙いはまだある。類似商品に「香るプーアル茶」がある。「脂流食楽シリーズ」というネーミングが「食事の脂に」と同様な効き目を期待させるが、どれほど明確なアピールではない。実は特保飲料には「体型のことを気にしていると思われたくないから、手が出せない」という女性も多い。そのニーズギャップを拾おうとする狙いだろう。

 リーダー企業に戦いを挑むチャレンジャーは、リーダーの10倍、知恵を絞っている。単なる「模倣商品」と見てしまうのではなく、どんな知恵を絞った成果の商品なのか考えてみるのも勉強になるはずだ。

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2010.01.04

あらゆるビジネスは「韓国の百貨店」に学べ

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

本日よりBlog更新再開です。

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 1月1日の日経MJ一面。特集の本論ではないものの、「韓国の百貨店」に関する記述がとても重要だと思った。以下、記事を抜粋する。

 <販売不振に苦しむ大手百貨店の首脳が、打開策を求めて訪れる国がある。韓国だ。><韓国の出生率(2008年)は1.19と日本より深刻だ。百貨店が人口減少時代を生き抜くためのヒントも韓国にある。><「日本の百貨店の問題は、社会と共に高齢化したことだ」と現代百貨店の河へい(火へんに丙)鏑社長は指摘する。同社は「stay young(若いままで)」をテーマにした中高年への若返り提案に力を注ぐ。実際の年齢より10歳程若い着こなしや健康管理、趣味などを、商品やイベントを通じて積極的に訴える。>

 ハーバード大学大学院の教授セオドア・レビットの格言。「顧客はドリルが欲しいのではない。穴を空けたいのだ」。
 もっと正確に引用すると、「昨年度、4分の1インチのドリルが100万個売れた。これは、人が4分の1インチのドリルを欲したからでなくて、4分の1インチの穴を欲したからである」と、レオ・マックギブナという人物の言葉をレビット教授が引用した一節である。(レビットのマーケティング思考法・ダイヤモンド社)

 上記の言葉は「ニーズ」と「ウォンツ」の関係をもっとも端的に説明した言葉である。顧客は何か実現したい理想の状態を求めている。それが「ニーズ」だ。そして、実現できていない現状を解決する「対象物」として求められるのが「ウォンツ」。この関係がしばしば混同される。顧客は単なるモノとしての「ドリル」に対価を払うのではない。「穴を空けられる」という「価値」に対して対価を払っているのだ。
さらにニーズは深掘りしなくてはならない。「なぜ、4分の1インチの穴を空けたいのか?」。「日曜大工でボルトを入れる穴を空けたい」なのだとすれば、「電動ドリル」が最適だろう。「子供の工作を手伝うため釘の下穴を空けたい」なら、電動ドリルではなく「錐(キリ)」がちょうどよいはずだ。深掘りすれば顧客が本来求めているものがわかり、適切なものが提供できるのだ。
 
 韓国の百貨店が指摘する、日本の百貨店の問題もまさしくそこにある。日本の市場は人口動態と同じく高齢化が進む。高齢者が求める、高齢者らしい服、化粧品、その他の品々。それらは「ウォンツ」だ。なぜ、年寄りなりの商品を欲するのか。恐らくは「着こなす自信がない」や「若作りしてと、人から言われたくない」などだろう。そして、本来のニーズは「若くありたい」はずなのだ。韓国の百貨店は、高齢化が進む市場、顧客のニーズを的確に捉え、深掘りすることによって繁盛しているのだ。

 レビット教授はレビットのマーケティング思考法で、米化粧品会社のレブロンの経営者、チャールズ・レブソンの言葉を引用し、次のようにも書いている。
 <「工場では化粧品を作る。店舗では希望を売る」。なるほど、女性は化粧品を使う。だが女性は化粧品を買うのではない。希望を買っているのである。レブソンは人間の衝動を正しく理解して、その上にあの金字塔を立てたのである>。
 まさしく、韓国の百貨店が行っているのはそういうことなのだ。

 教授が同書を記したのは1974年のことだ。(和訳は翌年)。それ以降も今日に至るまで「提案型営業」や「コンサルティングセールス」が重要といわれるようになって久しい。それはニーズの深掘りができるか否かにかかっているのである。単なるモノではなく、顧客が本来必要としている価値を提供することがマーケティングの本質でもあるのである。韓国の百貨店から学ぶのは、日本の百貨店だけではなく、全てのビジネスが今一度考えるべきポイントである。

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